近年、東南アジアからの訪日観光客が増加しています。今も人口が増加し続けている地域なので、今後さらなる訪日観光客の増加が期待されています。
そんな中、インドネシアやマレーシアで非常に多くの人が信仰しているイスラム教への対応が必要となってきています。
しかし日本ではムスリム(イスラム教徒)に対する理解がまだ十分ではなく、「ハラール」についても詳しいことは知られていないというのが現状でしょう。
そこで今回は、イスラム教向けの対応「ムスリムフレンドリー」とはなんなのか、そしてハラールフード・ハラール認証とはどういったものなのかについて詳しく見ていきます。
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ムスリムのインバウンド市場における存在感、日本は対応に遅れ
先述の通り、近年インドネシアやマレーシアなどからムスリム(イスラム教徒)が多く訪れるようになっています。
そこでムスリムを迎え入れるために、「ムスリムフレンドリー」の対応を行っていく必要があります。
ここでは、ムスリムの海外旅行の市場規模や、ムスリムフレンドリーについて詳しく見ていきます。
2026年には34兆円!ムスリムの海外旅行市場
日本を訪れるムスリムの数は元々はそこまで多くありませんでしたが、年々増加傾向にあり、この傾向はしばらくの間続くと考えられています。
では、具体的にどのように予測されているのか見ていきましょう。
2014年の時点では、日本を訪れる訪日外国人観光客のわずか2.4%、数にすると約15万人にとどまっていたムスリムですが、2016年にはわずか2年で約4倍となる70万人にも膨れ上がりました。
今後さらに増加していくと予想されていて、東京オリンピックが開催される2020年には140万人にもなり、訪日外国人観光客全体の3.5%にまで上るとみられています。
訪日ムスリム増加の要因として考えられるのは、マレーシアとインドネシアの観光ビザの緩和、 LCCの増便、 本国の経済成長、人口増加などです。さまざまな要因が重なっており、特に経済成長や人口増加は今後も続いていくと考えられているので、さらなる訪日ムスリムの増加が期待できるでしょう。
ムスリムが増加した要因については下記の記事で詳しく解説しています。
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「ムスリムフレンドリー」とは?
ムスリムへのインバウンド対応を考える上で重要となるのが「ハラール」と「ハラーム」です。
ムスリムが生活するうえで合法なもの・非合法なものがイスラーム法によって決まっており、合法なものを「ハラール」、非合法なものを「ハラーム」といいます。
そして「ハラール」や「ハラーム」に対応した、ムスリムにやさしい環境のことを「ムスリムフレンドリー」といいます。
日本ではムスリム対応をした飲食店や観光施設などがまだまだ少ないため、ムスリムフレンドリーの認識が低いと言われています。これから増加していく訪日ムスリムが過ごしやすい環境になるよう、国をあげて取り組んでいく必要があります。
ムスリムの食事
ムスリムが日本を訪れた際、最も不安に感じることだと言われているのが「食」の問題です。
イスラム法の決まりによって食べられるもの食べられないものがあるため、日本人がよく食べるものもムスリムは食べられないといったことが起こります。
では、ムスリムの食事について詳しく見ていきましょう。
ハラールフードとは?
「ハラールフード」とは、イスラーム法で許されている食べ物のことです。
日本の飲食店などでムスリム向けにメニューを出しているところは少ないというのが現状でしょう。ハラールフードの基準は非常に厳しく、ただ禁止されている食材を使わないというだけでなく、調理法や調理器具にまで細かな決まりがあり、それらを全て守る必要があります。
ハラールフードでないもの
では、ハラールフードでないもの、つまりムスリムが食べることができないものにはどういったものがあるのでしょうか。
例えば、ムスリムが食べられないものとして最も有名なのが豚肉です。この決まり自体はよく知られていますが、肉そのものだけでなく豚骨や豚のエキス、ゼラチンなども食べることができないといいます。
豚肉の他にアルコールも禁じられています。この決まりも有名ではありますが、飲酒だけでなく料理酒などの調理で使われるお酒も口にすることができないというのは、あまり知られていません。
このように禁止されている食品そのものだけでなく、豚のエキスや料理酒などにも気をつける必要があるため、細心の注意を払って提供する必要があります。
また、地域や個人によって価値観が異なるため、同じムスリムでも食べるものは異なります。どんな食材を使っているのか、どのような調理を行ったのかを明示することが「ムスリムフレンドリー」であると言えるでしょう。
「ハラール認証」とは?
「ハラール認証」とは、ムスリムの人たちが安心して食べられるものであることを専門家が保証する制度です。
認証される施設や設備、そして原材料や製造工程が常にハラールであることが監査されます。
また、現場の従業員や管理者の理解が不足していると、ハラールでないものが混ざってしまうおそれがあります。そのため、ハラール認証ではしっかりとした従業員教育やマネジメント体制が求められます。
【事例】ハラール対応をした2つの飲食店
ムスリムに食事を提供する際は、食材や製造工程などさまざまなことに気をつけなければならないということがわかりました。
では、実際にハラール対応をしている飲食店の事例について詳しく解説していきます。
1. カレーハウスCoCo壱番屋
カレーハウスCoCo壱番屋は全国に展開する人気のカレーチェーン店です。
そんなCoCo壱番屋は、2017年9月に「カレーハウスCoCo壱番屋 ハラール秋葉原店」をオープンしました。
2020年の東京オリンピック開催に向け、日本の国民食であるカレーライスをより多くの人に楽しんでほしいという思いから、NPO法人日本アジアハラール協会の認証を取得してオープンしたそうです。
2. 和食 折紙 浅草
東京浅草にある和食店「和食 折紙 浅草」もハラール対応の食事を提供しています。
ハラール認証済みの和牛や国産牛を使用した本格的な和食を提供している「和食 折紙 浅草」は、調理師もハラール食材についての講習を受けるなど、スタッフが一丸となってハラール対応についての知識を深めています。さらに、店内に礼拝室を設置するといった本格的なムスリム対応も行っています。
複数のムスリムスタッフが働いているため、ムスリムが安心して来店できる飲食店であると言えます。
成長続けるムスリム市場、まずは基礎的な知識から
東南アジアからの訪日観光客が増加していることに伴い、訪日ムスリムも増加してきています。
日本ではムスリムに対する知識がまだ浅いためか、飲食店や観光施設などでのハラール対応は遅れていると言えます。
いきなり全面的な対応に移行するというのは難しいと思われますが、ムスリムに対する知識を深めることでより適切な対応をすることができます。
特に飲食店にとって「ムスリムフレンドリー」への対応は、東南アジアからの訪日観光客誘致に効果的なインバウンド施策です。まずはムスリムの基礎的知識を学ぶことで、本格的な対応への一歩を踏み出しましょう。
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