観光地「量より質」でパリ・ローマに勝負をかける京都:インバウンド潜在顧客に足を運ばせるために必要なたった一つのこと

平成29年10月に実施した京都観光総合調査の結果をもとに、京都市観光協会がインバウンドの潜在市場の外国人が持つ京都のイメージを分析しました。京都を訪れたインバウンド客の興味関心等を探る「着地側の調査」に加え、持続可能な観光地づくりの実現において、潜在市場の外国人にとって京都がどのように映るかといった「発地側の調査」も欠かせません。分析結果から明らかになった、現在の京都のイメージと、今後のインバウンド誘客のあり方について見ていきましょう。


インバウンド潜在市場が感じる京都の魅力とは?

本調査では、アメリカ・オーストラリア・イギリス・フランス・ドイツ・スペイン・中国・台湾・香港・日本に在住の20歳以上の男女にWEBアンケートを実施し、全5,000サンプルのデータを入手しています。「あなたが京都の魅力だと思う点について、当てはまるもの全てをお選びください。」という質問から、全10地域の人々が抱く京都へのイメージや魅力を分析しました。

京都への認知度が比較的低い、ドイツ・フランス・スペインをはじめとするヨーロッパの非英語圏は、伝統工芸や伝統文化、街の歴史など「観光資源の魅力」を評価する傾向にあります。

英語圏では上質なサービスや外国人の観光のしやすさ、清潔感や治安など「観光の快適さ」を重視するといった結果になりました。

香港や台湾は、伝統文化への関心が他地域に比べ低く、交通の利便性や食事といった「日常生活の魅力」に触れることを期待しています。同地域は訪日旅行のリピーターが多いことも理由の1つでしょう。

本調査の結果から、アピールすべき京都のイメージを、市場の特性に合わせ柔軟に対応させていくことが重要と言えます。

有名観光地ブランドにふさわしい質の高いサービス提供が重要


「あなたが京都の弱みだと思う点について、当てはまるもの全てをお選びください。」という質問に対し、全ての地域において「滞在費用の高さ」が上位に挙がりました。

一方で、京都市観光協会は、受け入れ容量に限りがあるため「量より質」「観光客数より消費額の最大化」を目標としています。「安価に済ませられる観光地ではない」といったイメージの定着にふさわしい質の高いサービスや付加価値の高い体験を提供することこそ、今後の京都の課題と言えるでしょう。

「言葉が通じない」と回答した割合は日本を除くと最も多いといった結果になりました。引き続きインバウンドの外国語対応は、一大観光地の京都においても早急に強化すべき課題と言えます。

外国人対応の研修とは

小売店や飲食店、宿泊施設などでは、訪日外国人観光客を受け入れる機会が増えています。しかし、英語でのコミュニケーションや外国人ならではの対応に関し不安を感じる場合も少なくないでしょう。和歌山県某市では多言語に対応する音声翻訳アプリを消防本部へ導入し始め、また静岡県では外国人の宿泊や観光のサポート強化を目的に、宿泊、観光施設や観光案内所を利用する外国人のための多言語コールセンターを今夏設置することが報道されています。この記事では、訪日外国人を受け入れる飲食店や旅館、ホテルなどの施設で訪日外国人...


世界の有名観光都市との差別化「体験」が鍵に

▲[居住地別の「叶内のイメージ」に最も当てはまる都市]出典:京都市観光協会ホームページ

京都市の姉妹都市を中心に選定された世界の有名観光都市10箇所から、各観光地のイメージにあてはまるものを選んでもらい、各地域で最も回答が多かった観光地を比較しました。調査の結果、京都は「魅力的な民俗芸能・風習がある」と「自然が美しい」という項目で、全ての地域から支持を集めていることがわかります。

英語圏やアジア圏では他項目でも京都の名前が挙がりましたが、ヨーロッパの非英語圏ではパリやローマが選ばれるなど、差が顕著となりました。京都の強みである「伝統・文化」をアピールする上でライバルとなるパリやローマなどの有名観光地との差別化が今後の課題と言えるでしょう。

フランスの居住者はパリに回答が集中した一方で「民俗芸能・風習」「自然の美しさ」では、京都が大きく上回っています。京都は歴史や伝統文化が感じられる古都というだけでなく、ヨーロッパにはないエキゾチックな街並みや文化、桜などの美しい自然が楽しめる観光地としてアピールすることが効果的と言えるでしょう。

ヨーロッパの非英語圏で共通することは、京都に対して「魅力的な民族芸能・風習がある」というイメージがある一方で、実際に鑑賞・体験できるという認識まで至っていないという点です。

実際に「他の街では体験できないことが多い」という項目では、パリやニューヨークが挙げられています。今後は、ヨーロッパの観光客がどのような「体験」に魅力を感じているのかを探り、彼らが持つイメージと京都でできる「体験」をリンクさせられるような情報発信が求められるでしょう。

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潜在市場の興味関心を分析し、さらなるインバウンド誘客へ

京都市のように、訪日外国人観光客に対する「着地側の調査」だけでなく、潜在市場のインバウンド需要も探る「発地側の調査」も実施することは、今後のインバウンド戦略を練る上で非常に効果的だと言えます。今回の調査では、市場別にアピールすべき魅力が異なることをはじめ、ヨーロッパの非英語圏に向けた、体験需要のさらなる調査と京都の魅力の情報発信の強化が課題であることが明らかになりました。

オーバーツーリズム問題への対策も講じている京都市ですが、「量より質」「観光客数より消費額の最大化」を目標に、どのようなインバウンド戦略を打ち出し世界の有名観光地と差別化を図っていくのか、今後も京都市のインバウンド対策には注目が集まります。


<参考>

・京都市観光協会:国によってこんなに違う!国別の京都のイメージから考えるインバウンド戦略

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!