インバウンドの聖地巡礼ブームに伴い、オーバーツーリズムが問題となっている鎌倉市では、近隣住民の生活と観光地としての質を保つため、オーバーツーリズム対策に取り組んでいます。
ゴールデンウィークは日本人も多く訪れることから、江ノ電鎌倉駅では、今年で3年目となる江ノ電沿線住民の優先入場が実施されました。
アジア人観光客を中心とした迷惑行為に対する条例制定など、直近の対策に触れた上で、日本のオーバーツーリズムの現状と対策の一例として見ていきましょう。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
大混雑の江ノ電鎌倉駅!沿線住民の優先入場実施へ
鎌倉市は5月3日から5日までの3日間、「江ノ電沿線住民等の移動円滑化に係る社会実験」を実施しました。江ノ電鎌倉駅の混雑時に、事前に市から発行された証明書を持つ沿線住民を、優先的に入場させるといった取り組みです。
これまでゴールデンウィーク期間中は、鎌倉駅に沿線住民と国内外からの観光客で、駅の外まで長蛇の列ができました。市は住民の生活の質を保つため、2017年から本社会実験の実施に踏み切っています。
過去2年の実施期間中は天候の影響から行列発生日が少なく、実際に優先入場を実施したのは2018年5月4日のみでした。最大100メートルにもなった列に対し、85名の沿線住民が証明書を使用し駅構内に入場した結果、最大約20分の待ち時間短縮を実現しています。
利用者のアンケートによると、約8割が「とても有意義」「有意義」と回答し、約9割が今後の実施を希望したこともあり、2019年の継続実施が決定されました。
【訪日ラボ監修/無料】インバウンド対策を始めるなら「インバウンドの教科書」にお任せ
観光客の9割が住民の優先入場に理解
今年は前年比約2倍の2,811枚の証明書が発行されたうち、計136人が優先入場を利用しました。対象者は、これまでの長谷〜腰越駅間に加え、和田塚と由比ヶ浜駅沿線の住民と通勤通学で利用する人も含め、約4万3,000人です。
実施時間は10時から16時までとしていましたが、3日は17時まで延長するなど、連日駅前には最大100メートルの長蛇の列ができる大混雑でした。行列ができた際は、証明書を持つ住民の後ろに一般の観光客等が並ぶといった対応をしています。
5月3日に列に並び乗車待ちをしていた132名にアンケートを実施したところ、約9割が沿線住民らの優先入場に対し「理解できる」「おおむね理解できる」と回答しました。昨年に引き続き、観光客らの沿線住民に対する理解は非常に高い結果となっています。
訪日客の聖地巡礼に湧く鎌倉、マナー条例を制定
2019年4月に鎌倉市は、混雑している観光地での食べ歩きや危険な場所での撮影などを「迷惑行為」とし、自粛を促すマナー条例を新たに制定しています。
以前から、混雑した小町通りで食べ歩き中に食べ物が衣服につくトラブルや、漫画「スラムダンク」のアニメの聖地として人気の鎌倉高校前駅付近の踏切で、多くの訪日客が危険な撮影をするといった迷惑行為が相次いでいました。
近隣住民からの苦情が殺到したことから、「迷惑行為」を明確に定め、自粛を促す条例制定に至りました。
特に台湾や中国からの訪日外国人観光客にとって、鎌倉はスラムダンクの聖地として非常に人気で、熱狂的なファンが連日詰め掛けています。
一方撮影に夢中になるあまり、踏切に立ち入る人やドローンを飛ばす人まで見受けられ、安全性ならびに近隣住民の通行の妨げになるといった問題が指摘されてきました。条例制定については、中国メディアでも報道されており、市が鎌倉高校前駅付近の踏切における撮影を自粛するよう呼びかけていることを説明しています。
【鎌倉】外国人観光客の「迷惑行為」で苦情、マナー条例施行へ…"スラダン"聖地巡礼で大混雑
2019年4月、鎌倉市は混雑する観光地での食べ歩きや、危険な場所での撮影などを「迷惑行為」とし、観光客のマナー向上を狙いとする新たな条例を定めました。中国人や台湾人に人気の漫画の聖地で写真撮影の自粛要請が出たことで、現地メディアでも大きく取り上げられています。 年間2,000万人以上の観光客が訪れる鎌倉で、訪日客が急増した背景と観光地の現状、そして訪日客のマナー対策について、今回の条例施行を参...
【訪日ラボ監修/無料】インバウンド対策を始めるなら「インバウンドの教科書」にお任せ
インバウンドのオーバーツーリズム対策強化で観光地の質低下を防止
鎌倉市では、ゴールデンウィーク期間の日本人観光客の増加ならびに、近年の訪日外国人観光客の急増にも対応するため、江ノ電鎌倉駅での社会実験やマナー条例の制定等に取り組んでいます。
持続可能な観光地づくりを目指す上で、まずは近隣住民の生活の質を保つことを重視し、地域の受け入れ態勢を整備するといったオーバーツーリズム対策の強化が重要と言えるでしょう。
オーバーツーリズムは、日本では京都で顕著となっているほか、ベネチアやバルセロナなど世界規模で対応が急務となっている問題です。訪日外国人観光客が急増する日本の主要観光地では、海外の先行例も参考にした上で、インバウンドの地方誘客促進や観光地の質低下を防止するための条例制定などの、オーバーツーリズム対策の実施と効果に注目が集まります。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
<参考>
・鎌倉市:江ノ電沿線住民等の移動円滑化に係る社会実験の結果について
・カナロコ:GW、混雑したら「住民優先」江ノ電・鎌倉駅で社会実験
・カナロコ:「連休は住民優先」観光客9割が理解 江ノ電鎌倉駅の実験
・カナロコ:鎌倉市がマナー条例案 混雑時食べ歩き、迷惑撮影を自粛へ
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!