オーバーツーリズムとは、観光地に訪問客の急増などが原因で地域住民の生活や自然環境、景観などに対して負の影響をもたらしたり、観光客の満足度を著しく低下させるような状況を指します。
京都を筆頭に人気観光地では訪日外国人観光客の急増によって様々な弊害が起こり、「観光公害」として問題視されています。
これは日本に限った話ではなく、世界各地の観光地において共通のオーバーツーリズム問題を抱えており、様々な対策が行われています。
オーバーツーリズムによって引き起こされる問題の解決は容易ではありませんが、世界の先行事例などをもとに有効なオーバーツーリズム対策を考察します。
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インバウンド誘致成功でオーバーツーリズムに
京都・鎌倉・箱根といった日本を代表する人気観光地では、バス・電車などの公共交通機関が訪日外国人観光客で混雑を極め、乗り場に大行列ができている風景が日常茶飯事となっています。これらの交通手段は市民も利用するため、通勤や通学に影響が出るなど地元住民の生活の弊害となっています。
訪日外国人観光客が来てくれるのは喜ばしいことですが、近年その数が急増していることでこのような問題が数多く発生しています。
旅行者全体数の増加が背景にある
ここまで多くの訪日外国人観光客が集中しているのは、人気観光スポットだからという理由に加え、近年の訪日外国人観光客数の急増が背景にあります。
日本政府観光局の統計データによると、訪日外国人観光客数は2013年まで穏やかな右肩上がりの成長曲線をたどっていましたが、2013年に1,000万人を超えてからは飛躍的に増え続けています。2018年には3,000万人超えを達成し、たったの5年で約3倍に急増しました。
政府が掲げる目標:2020年の訪日外国人旅行者数4,000万人
訪日外国人観光客数が3,000万人を超え、各地を訪れる観光客の数も大幅に増えています。さらに政府は2020年の東京オリンピック開催のタイミングで4,000万人超えを目標としています。
このことから今後もさらなる訪日外国人観光客の増加が見込まれ、東京はもちろんのこと大阪・京都などの主要都市、地方の人気観光地により一層多くの外国人観光客が押し寄せることが予想されます。
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オーバーツーリズムの弊害
観光客の数が増えれば増えるほど、避けて通れないのが観光公害などの問題です。訪日外国人観光客が急増している日本に限らず世界各地でこのオーバーツーリズムの弊害は問題視されており、それぞれに共通する問題もあれば、観光エリア・スポットの性質によって異なる問題もあります。世界各地で実際にどのような問題が起きているのでしょうか。
深刻さを増す観光公害
日本を含め世界各地で見られるオーバーツーリズム問題には数多くの共通点があり、その内容は多岐にわたります。
- 観光地の混雑・渋滞
- ごみやタバコのポイ捨て
- マナー違反
- 騒音問題
- トイレ不足
- 宿泊施設不足など
このように観光客が過度に集中することによって様々な問題が発生しており、どこも同じように頭を抱えている状況です。そしてこれらの問題が深刻化・慢性化することで、そこに住む地元住民の生活にも悪影響を及ぼす結果となっています。
また、人が集中しすぎてゆっくり観光ができず、結果として日本人観光客の足が遠のくという問題にも繋がっています。
追いつかないインフラ整備
オーバーツーリズム対策が急がれる昨今ですが、インフラ整備などすぐに対処できていない現状もあります。訪日外国人観光客数が急増し、様々な問題が起きてからようやく対策が検討されるというように、後手に回るケースがほとんどです。
要因としては、交通機関の混雑解消・トイレ整備等のインフラ整備には膨大な予算も必要となることから、予算組み・計画・実施に時間がかかっていることなどが挙げられます。
オーバーツーリズム対策:世界の観光地から学んで活かす
日本では近年になってオーバーツーリズム問題が叫ばれるようになってきましたが、海外の人気観光地では早くから問題が深刻化しており、既に実績をあげている対応策というのも多くあります。
海外の事例を積極的に参考にし、今まさに観光公害を抱えている場所、そして今後訪日外国人観光客の集客に力を入れる場所において、有効な対策を早急に進めることが求められます。
1. 入場制限などの規制を設ける
訪日外国人観光客の急増問題に対し、ダイレクトに効果を及ぼすのが入場制限などの規制です。海外で規制を実施した事例としては、フィリピン・ボラカイ島での一時な島の閉鎖といった大規模なものから、ヨーロッパにおける人気施設の入場規制・高額な入場料の設定などがあります。
また日本においては、白川郷で事前予約による入場規制が行われ、功を奏した事例のひとつとなっています。
ただし規制を設けるということは、観光客数の減少に繋がるということも忘れてはいけません。観光客数の減少は経済にも影響することから容易に実行できる内容ではありませんが、規制をかける場合はそこに行けなかった観光客を周辺観光地・スポットへ誘導する仕組みなども同時に検討する必要があります。
取りこぼした分をどこか別の場所で受け入れることができれば、エリア全体の経済の好循環にも繋がります。
2. 観光客の分散により過度な集中を避ける
過度に集中する観光客をうまく周辺に分散させることも効果的な対策です。前述したボラカイ島は島を一時閉鎖する入場規制を行いましたが、同時にフィリピンのその他の島へ誘導する措置を取るなど、観光客の分散に力を入れています。分散というのは一極集中を避ける目的であるのはもちろんですが、観光客の少ないスポットを活性化させる効果もあります。
例えば、京都で有名な寺社仏閣の中でも、貴船神社は京都の奥というロケーションから、訪日外国人観光客数はまだそこまで多くありません。
このように日本各地では主要観光スポットの周辺に、知名度は低いものの魅力的なスポットは数多く存在します。こうした場所へ観光客を分散させることで、まだ注目の当たっていないスポットの観光地化を図ることにもなります。
また、場所の分散以外にも、時間・時期の分散もひとつの手段です。京都市などでは既に実施されており、観光客が集中する時間帯・季節を避けるように様々な取り組みが実施されています。
中でも力を入れている朝観光の推進事業で、夏シーズンに寺社仏閣のオープン時間を早めて、さらに精進料理の特別朝食が食べられるという体験付きのイベントなどを実施し好評を博しています。このように観光客が集中する日中の時間帯、春・秋などの季節以外に分散させることに力を入れるのも効果的な対策です。
3. 宿泊施設不足の解消
近年ホームシェアリングサイトAirbnbなどのマッチングサイトを通した民泊が宿泊先の選択肢として選ばれています。海外の事例としては、2016年にリオオリンピックが開催されたブラジルで、宿泊施設不足の解消にAirbnbが大きな役割を果たしました。Airbnbの公式発表ではオリンピック期間中に約6万人を超えるゲストが民泊を利用しました。
このように民泊は世界的に見ても、ホテルなどの主要宿泊施設だけで収容できない分を補う役割を果たしています。
日本でも2020年に東京オリンピックが控えており、一時的に宿泊者数が急増する場合においても民泊が一助となると予想されます。また観光主要エリア以外で滞在先の選択肢が増えることは、周辺観光地への観光客の分散にも繋がります。
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オーバーツーリズムを見据え、早い段階での対策を
2020年の訪日外国人観光客数4,000万人を目標とする日本では、オーバーツーリズム問題を見越して先回りで対策を施す必要があります。その際は日本国内の問題だけでなく、世界各地で起こっている問題・対策にも目を向けることによって有効な対策のヒントを得ることができるでしょう。観光地がパンクして悲鳴をあげる前に、早い段階で対策を実施することが求められます。
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