ラグビーワールドカップの開催を目前に控え、大分県では宿泊施設不足に関する問い合わせが相次いでいます。そこで、大分県が推進しているのが「農泊」です。
宿泊をしながら農業体験ができるとして、訪日客の間で人気が高まっている「農泊」を活用し、地域の魅力発信と宿泊施設不足の解決を目指す、大分県のインバウンド対策について見ていきましょう。
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コト消費需要高まる訪日客に農泊をPR
農泊とは、農山漁村滞在型旅行を意味し、農山漁村において日本ならではの伝統的な生活体験と地域の人々との交流を楽しみながら、農家民宿や古民家を活用した宿泊施設等でその土地ならではの魅力を味わうものです。
「農泊」という言葉は、グリーンツーリズム発祥の地と言われている大分県宇佐市安心院町の「安心院町グリーンツーリズム研究会」が農村民泊の略として、平成15年から使用しています。
近年では農泊は日本人観光客だけでなく、訪日外国人観光客にもPRが進み、コト消費需要が高まっていることもあり注目を集めています。農林水産省では、2020年までに農泊500地域創設を目指し、冬場や通年対応可能なコンテンツの開発や活用といった、観光コンテンツの多様化などに取り組んでいます。
九州ではこれまで台湾向けに農山漁村のPRのため、台湾ブロガーによる情報発信等を行ってきました。
ラグビーW杯開催の大分県で宿泊施設不足に
ラグビーワールドカップの開催に先立ち、大分県には「チケットはあるが宿泊先がない」といった問い合わせが相次いでいるとのことです。
試合会場に収容される観客数が4万人なのに対し、試合会場へシャトルバスが運行される大分市と別府市の宿泊施設の部屋数は、それぞれ5,000室となっています。観客のうち半数が県外から訪れるとしても、選手やスタッフ、一般観光客を含めると、大分県の受け入れ能力を超える宿泊者数になることが予想できるでしょう。
大分県によると、福岡や佐賀、宮崎などの周辺の県に宿泊する観光客も多いとのことですが、県内に宿泊者を取り込む上でのキーワードが「農泊」です。
単なる宿泊地に留まらず大分県の魅力発信にも繋がる農泊は、訪日外国人観光客が農業体験を通じ大分の魅力に触れることで、リピーター獲得への効果も期待できるでしょう。
インバウンド向けの農泊整備で、宿泊施設不足の解消&満足度向上へ
大分県は日本の農泊の発信拠点として、さまざまな取り組みを実施しています。3月には、農泊の先駆けと言われる大分県宇佐市の「安心院町グリーンツーリズム研究会」が中心となり、農泊を推進する「未来ある村 日本農泊連合」が結成されました。
大分県は同連合と連携し、ワールドカップ期間の農泊ツアー推進に取り組んでいます。農泊事業者に、訪日外国人観光客の利用が多い民泊仲介サイト「Airbnb」へ積極的に登録するよう呼びかけているとのことです。
試合会場までの交通手段は、最寄り駅まで農泊経営者が送迎するほか、タクシーを呼ぶと行ったことを検討しています。
受け入れる側の農家側も急ピッチで準備を進めている状況です。言葉の壁に対する不安解消に向けて、スマートフォンの翻訳アプリを導入しているケースもあります。
ワールドカップの開催に向けて、ホテルだけでなく農泊など、多種多様な宿泊形態を用意することで、あらゆるインバウンド客のニーズに応え満足度を向上するとともに、宿泊施設不足を乗り越えようとする姿勢が伺えます。
まとめ:農泊をきっかけに大分の魅力をインバウンドに発信
ワールドカップの開催を目前に控えた大分県では、農泊のPRを含め、日本人観光客はもちろん訪日外国人観光客の受け入れ態勢の整備に取り組んでいます。
農泊は、ただ宿泊するだけでなく、農業体験や地元の人との交流を通し、より深く大分県の魅力に触れてもらえるチャンスとして、インバウンドの満足度向上とリピーター獲得が期待されるでしょう。今後も、日本の農泊の発信拠点である大分県の、農泊を活用したインバウンド対策とその効果に注目が集まります。
<参照>
・毎日新聞:ラグビーW杯「宿泊施設不足」のピンチ逆手に「農泊」で大分の魅力発信
・九州農政局:農泊・インバウンド(外国人の訪日旅行)促進
・農林水産省:インバウンド受入拡大に向けた農泊の取組状況と今後の課題
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