ソーシャルバイヤーとは、一般消費者が必要としている海外商品を代理で購入し、購入手数料を上乗せして販売することで利益を上げる「代理購入者」を指します。
ソーシャルバイヤーの代表例として、中国人の転売でしょう。中国市場において、様々な日本ブランドの製品は多くのニーズがあります。
そのため、このソーシャルバイヤーの存在が中国市場と日本製品の橋渡しになると期待されています。
この記事では、ソーシャルバイヤーについて、またソーシャルバイヤーがインバウンド市場で注目される理由・日本製品の販売に貢献する理由を解説します。
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ソーシャルバイヤーとは
ソーシャルバイヤーとは、一般消費者が必要としている海外の商品を代理で購入し、購入手数料を上乗せして販売することで利益を上げている、いわゆる「代理購入者」です。また、ソーシャルバイヤーによるこうした行為は購入代行とも呼ばれています。
中国では盛んに行われており、中国語では 「代購(ダイゴウ)」「海淘(ハイタオ)」 といいます。
代理購入には2つのパターンがあります。
- 事前に代理購入者が希望者を集め、希望購入商品をヒアリングした上で訪日&購入するパターン
- 売れ筋商品(例:神薬)を爆買いし、中国国内のオークションサイトなどで転売するなどの「転売屋」のようなパターン
ソーシャルバイヤーは、基本的には海外でしか買えない商品を購入したいニーズに応える形で買い付けを行います。同時に、実は中国国内で購入できる海外製品の買い付けにおいても、ソーシャルバイヤーの需要があります。
これはどういうことかというと、同じ製品でもソーシャルバイヤーから購入した方が安くなることがあるということが影響しています。
現在中国では、海外製品の正規輸入品を中国国内で購入しようとすると、 関税や増値税(≒日本での消費税)、消費税(≠日本の消費税、いわば「贅沢税」のようなもの)そして商社のマージンが載せられ、非常に高額になります。
ところがソーシャルバイヤーが代理購入した商品の場合、個人輸入に該当するため、これらの諸税がかからなくなる、ないしは安くなるので、消費者は安価に海外製品を購入することができます。そのため、ソーシャルバイヤーが中国国内で販売されている製品を、海外で大量に購入することもあります。
中国市場の先読みの指標、ソーシャルバイヤーとは
2015年の新語・流行語大賞に選ばれた「爆買い」という言葉は、訪日中国人観光客が品物を大量に購入していく様子を表したものです。そのような「爆買いは訪日中国人観光客によるもの」というイメージが強い一方で、爆買いをしていたのは実は観光客だけではなく「ソーシャルバイヤー」と呼ばれる転売目的の人も多くいたといわれています。今年の初め、中国ではこうした個人の輸入代行を行うソーシャルバイヤーの納税義務を強化しました。これを受けて複数の著名な日本メーカー、ブランドや、百貨店の売上が減少しています。今後も...
なぜインバウンドで注目を集めるのか
ソーシャルバイヤーは、中国向けインバウンドビジネスにおいて注目されています。その大きな理由は、ソーシャルバイヤーの抱えるマーケットの大きさです。現状と主な理由についてまとめます。
ソーシャルバイヤーの市場規模は19兆円以上
ソーシャルバイヤーは、海外旅行が盛んになっていく中で増え、特に中国市場で盛んになってきました。
世界的な情報調査会社であるニールセンの調査によると、そのようなソーシャルバイヤーの市場規模は2015年時点で19兆円にのぼります。特に中国では、中国国内の消費者が欲しがる商品をバイヤーが代理で購入し販売するというビジネスモデルがすでに社会に浸透しています。代理購入での購入者数は2013年に1,800万人だったのが2015年には 約2倍の3,560万人になったというデータもあります。
知人や信頼のおける人物の発信=口コミ
ソーシャルバイヤー浸透の背景にあるのは、中国人には「知人や信頼のおける人物の発信=口コミ」 から情報収集する傾向があるためです。大手企業や政府の情報は信用できないという中国人は考えているようです。
また、ECでの買い物の際も、取引相手が「信用」のおける人物であるかどうかが購買行動の重要な指標となっています。
このような状況から中国ではソーシャルバイヤーが人気になったようです。
中国ECアプリの小紅書(RED)とは
中国ではあらゆるサービスがオンライン化しており、ショッピングもスマホで完結するECが人気です。ECの2大巨頭はアリババの「タオバオ」「Tmall」そして京東の「JD.com」ですが、その他にも多様化する消費者のニーズにこたえるECプラットフォームが存在します。こうした細分化されたECサービスのうちの一つが、小紅書(RED/シャオホンシュ)です。情報収集チャネルとしても活用されているこのECは、スマートフォンのアプリでサービスを展開しています。そしてその人気は日本でも徐々に知られつつあり、日...
微店(YouShop/ウェイディエン)とは?中国最大級CtoCコマースアプリへの出店方法・機能・インバウンド市場に影響する越境ECトレンドを
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ソーシャルバイヤーが日本製品販売に貢献する4つの理由
ソーシャルバイヤーは情報発信の場としてSNSを利用しています。最近では徐々に認知が高まっているところですが、実は中国では政府の規制によりFacebookやTwitterといった世界的に利用されているSNSにアクセスすることができません。
代わりに使われているのが微博(Weibo)や微信(WeChat)といった中国独自のSNSです。これらは消費者にとって重要な情報収集チャンネルです。こうした中国独自のインターネット環境があり、日本製品を売る場合にもソーシャルバイヤーを活用することが有効な手段となってきます。
ソーシャルバイヤーが日本製品の売上に貢献する4つの理由を説明します。
1. 自社製品を中国人に認知してもらえる
人気のソーシャルバイヤーには10万人以上のフォロワーが付いていることもあり、中国市場に参入するためにはソーシャルバイヤーに口コミで情報を発信してもらうことがとても有効な宣伝方法となります。ソーシャルバイヤーに商品の特徴やメリットなどを理解してもらい、中国で売れると判断してもらえれば一気に情報が拡散されます。
2. 気軽に買える窓口=消費促進
WeChatはLINEのようなメッセージ送信ができるアプリですが、ショッピング機能や決済機能もあるため、バイヤーと消費者がメッセージのやりとりをするだけで売買を成立させることができます。消費者にとっても、商品の購入が手軽にでき、歓迎されます。
3. 輸出手続きはソーシャルバイヤー自身が行う=手間がかからない
メーカーがECモールに出店する場合には、基本的にはメーカーが手続を行ったり、代行に任せる場合にもその在庫状況などを管理する必要があり、販売個数が増えるにしたがって作業も増えてしまいます。
ソーシャルバイヤーの場合は、多くの場合、ソーシャルバイヤー自身で輸出作業を行うため、販売個数が増えたとしてもメーカーの負担が増えることはありません。
4. 中国での越境EC展開のためのテストマーケティング
ソーシャルバイヤーによる自社製品の販売を通じて、中国市場の製品に対する反応を知ることができます。
自社製品をソーシャルバイヤーの情報拡散力をもってして、自社製品が、いつ、いくらくらい、どれぐらいのペースで売れるのかという貴重なデータを集積することができます。
こうした販売実績の各種データは、テストマーケティングを行って収集するデータに等しく、中国越境EC展開の第一歩にもなります。
【2019年最新/保存版】中国EC人気サイトランキング5選
日本の日常でもECの利用が増えてきています。海外でも同様の傾向があり、インバウンド市場でも自社商品の購買チャネルとしてECの利用価値はますます高まっています。海外のECサイトを正しく利用することは、市場を広げ、売り上げを上げていくために重要になってくると考えられます。この記事では訪日旅行に関連した市場の中でもひときわ大きな存在感を持つ「中国」のECサイトについて解説します。目次越境ECとは?「旅アト」との関係は?そもそもECとは?越境ECとは?そのメリットは?越境ECと深い関係にある「旅ア...
ソーシャルバイヤーの存在が中国市場と日本製品の橋渡しに
ソーシャルバイヤーを利用して中国市場に参入する最大のメリットは、すでにソーシャルバイヤーをフォローする何万人もの消費者(フォロワー)に、直接自社製品の情報を届けられるということです。
日本の製品は安心感や信頼があり、中国人にとても人気ですが、消耗品など繰り返し購入するものはその都度日本に来て購入するわけにもいかず、ソーシャルバイヤーから買うという中国人も少なくありません。
消耗品だけでなく、ベビー用品、お菓子、化粧品など、様々な日本ブランドの製品に中国市場のニーズがあります。こうした需要にダイレクトにアプローチできるソーシャルバイヤーとのコネクションは、メリットこそあれデメリットはほぼなく、越境EC展開を考える場合に活用することも検討に値するでしょう。
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インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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