JTBでは訪日旅行客数上位の15カ国と地域に対し、2015年より『JTB訪日旅行重点15カ国調査』を実施しており、インバウンドの旅マエから旅ナカまでの"意思決定の過程"に関する動向を調査しています。
2019年版の調査結果から、日本でも最近注目が高まっている「決済手段」に着目し、インバウンド消費における国別の最新の決済・キャッシュレス事情について見て行きましょう。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
キャッシュレスとインバウンド消費の関係性とは?
日本国内では2018年より、「PayPay」や「LINE Pay」といったキャッシュレス決済への注目が高まっています。2018年4月に経済産業省が発表した『キャッシュレス・ビジョン』において、2025年にはキャッシュレス比率を40%、将来的には80%まで高めるといった指針が影響していると言えるでしょう。
政府によるキャッシュレス推進の背景としては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪・関西万博が挙げられ、インバウンド対策を進める観光業界においても重要なトピックです。
『明日の日本を支える観光ビジョン』で掲げられた、訪日外国人旅行消費額を2020年までに8兆円、2030年までに15兆円にするといった政府目標達成には、キャッシュレス化の促進が欠かせません。インバウンド客の決済手段におけるストレスを緩和させ消費拡大を目指すとともに、受け入れ態勢の強化としても必要不可欠な取り組みです。
主要15カ国の国別決済のトレンドが明らかに(東アジア・東南アジア・欧米豪)
『JTB訪日旅行重点15カ国調査2019』では、日本滞在中に大人1人あたりの買い物にかかった費用の決済手段の内訳について、現金・クレジットカード・モバイル決済・デビットカード(銀聯カードなど)から選択する調査を実施しています。
インバウンド市場ごとの特徴について見て行きましょう。
モバイル決済比率が5%未満の韓国・台湾・香港

台湾ではもともとキャッシュレス浸透率は低いですが、国内のキャッシュレス比率は9割とキャッシュレス先進国と言われる韓国は、訪日旅行においては現金利用率が15カ国中最も高い結果となっています。
背景としては、リピーター率が高いため、地方などよりニッチな観光地を巡る際に現金を利用する機会が多くなっていることが挙げられます。短期の旅行期間でまとまった額をはじめに両替した中で、やりくりしていることも考えられるでしょう。
モバイル決済の割合が5〜15%と高い東南アジア

東南アジアは、新興国が多く与信の必要なクレジットカード決済の割合が低い傾向にある一方で、モバイル決済の割合は5〜15%と高い結果となりました。
特にモバイル決済の割合が最も高かったのはインドネシアで13.4%、次にベトナムが10.5%となっています。東南アジアの中でも銀行口座の保有率の低いインドネシアやベトナム、フィリピンでは、クレジットカードの代替手段としてモバイル決済取引が活発です。
東南アジアのモバイル決済事業者は、タイは「PromptPay」シンガポールは「PayLah!」インドネシアは「Go-Pay」などが挙げられ、現在は「LINE Pay」や「WeChat Pay」も参入を強化しています。
訪日旅行で利用されているモバイル決済サービスは、日本国内で普及が進む「LINE Pay」や「Alipay」「WeChat Pay」などです。中国系のモバイル決済への対応は、ひいては6億5,000万人と言われる東南アジア市場の取り込みにも効果的と言えるでしょう。
クレジットカード利用率の高さが顕著な欧米豪市場

欧米豪市場では、アメリア・オーストラリア・イギリス・フランス・ドイツで共通した特徴が見受けられました。クレジットカード利用率が4〜5割と高い傾向にあります。一方で、モバイル決済の利用率は、ドイツは8.3%と比較的高いですが、ドイツ以外は5%ほどに留まりました。クレジットカードやPayPalが普及している欧米豪では、あえてモバイル決済を選択する必要性が他市場に比べて低いと言えるでしょう。
イギリスやドイツでは、非接触対応のクレジットカードも多く利用され、Apple PayやGoogle Payなどに対応しています。若者を中心に、あらゆる銀行業務を全てモバイルアプリ上で完結できる次世代銀行「ネオバンク」や「チャレンジャーバンク」も存在感を増しており、Apple PayやGoogle Payにカードを登録することで利用できるモバイル決済サービスの需要が高まりつつあります。
決済方法の多様化が進む訪日中国人観光客
中国における決済事情は、東アジア・東南アジア・欧米豪と比べても特殊となっており、クレジットカードが33.5%と最も高い一方で、現金も26.8%、モバイル決済は25.4%と3つの決済手段が幅広く利用されています。利用率が最も高いクレジットカードですが、中国では一部の富裕層が持つことができるといった現状のため、本調査におけるクレジットカード利用者は所得水準の高い富裕層と言えるでしょう。
中国では現金の国外持ち出しに規制がかけられているため、現金以外の決済手段が併用される傾向にあります。モバイル決済では、中国で広く浸透するデビットカード「銀聯カード」が提供する非接触ICの「Quick Pass」の需要も高まっています。日本でも話題となっているQRコード決済が可能な「Alipay」や「WeChat Pay」が主流となっており、日本でも導入が進んでいる状況です。
インバウンド各市場の決済事情にキャッチアップせよ
『JTB訪日旅行重点15カ国調査2019』の結果から、インバウンドのターゲット市場によって対応すべき決済手段が大きく異なることが明らかになりました。
訪日客数の半数を占める韓国・台湾・香港市場では、引き続き現金決済が主流となることが予想でき、東南アジア市場ではモバイル決済の需要が高い傾向にあり、欧米豪市場はクレジットカード決済が最も浸透しているといった動向が見受けられます。
引き続き拡大するインバウンド市場ですが、やみくもにキャッシュレス対応を講じるのではなく、ターゲットとなる国や地域の決済事情の最新情報にキャッチアップし、需要に応じた対策を講じることが大切です。
<参考>
・JTB INBOUND SOLUTION:インバウンド消費の決済動向は?キャッシュレス対応策を考える
【7/9開催】消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント
2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。
これだけ市場が大きく、経済インパクトのある中国インバウンド。 いま多くの企業が「中国向けに本格的な戦略を立てるべきではないか?」と検討を始めています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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