日本を訪れる外国人観光客の多くは、日本のレストランやホテルなど、様々な場所で受ける接客サービスの質の高さに驚くそうです。これは何も、高級ホテルなどハイレベルな接客が求められる場所に限らず、コンビニやファーストフード店といった比較的カジュアルな場所でも、日本の接客サービスは高く評価されています。
インバウンドを意識した場合、質の高い接客サービスというのは大きな魅力である一方、場合によっては過剰な接客で違和感を与えているケースもあります。
この記事では、訪日外国人観光客が本当に求めている接客サービスと、それを踏まえた上でのインバウンド集客に有効な対策を紹介します。
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日本と海外の接客サービスの違い
日本に滞在中の訪日外国人観光客が、日本人の懇切丁寧な接客サービスに驚くことが多いのは、そもそも海外と日本で「接客」に対する考え方が大きくことなるという背景があります。ここでは海外と日本の接客サービスの違いを見ていきます。
海外:スーパーのレジ打ちは座ったまま
まず、海外ではチップの習慣がある国が多く、レストランやホテルなどで働く従業員は、より多くのチップをもらうために良質なサービスを提供するのが一般的です。そのため、チップ制で働く従業員と、チップなしで決まった賃金で働く従業員では、接客態度に差が出るのはごく自然なこととして捉えられています。
例えば、欧米など多くの国ではスーパーのレジ打ちは座って行うのが基本で、利用客にもフランクな態度で接することがスタンダードです。利用客も必要以上の接客サービスを求めている訳ではないので、何ら問題ありません。
一方、日本でスーパーのレジと言えば、基本的に立ち仕事であり、「いらっしゃいませ」から始まり「ありがとうございました。またお越しくださいませ」まで、マニュアルに沿った言葉遣いや所作で接客するのがスタンダードです。
このように、高級店でなくても、どこに行っても一定水準以上の接客を受けられることが、日本の接客サービスが評価される大きな理由のひとつと言えます。
日本:おもてなし精神の接客は感動、そして戸惑い?
日本では「おもてなし」や「お客様は神様」といった概念が浸透しており、礼儀正しさを重視した丁寧な接客サービスが基本水準になっています。
こういった文化に馴染みがない訪日外国人観光客にとっては、素晴らしい接客サービスだと思われる場合もあれば、マニュアルに沿った機械的な接客が不自然に見えたり、求めてもいない過剰なサービスだと思われるケースもあります。
訪日外国人観光客の取り込み・満足度の向上・リピーター獲得まで繋げることを考えるならば、日本流の接客サービスを押し付けるのではなく、ケースバイケースで利用客が求める接客サービスを提供することが重要です。
訪日外国人観光客が求める接客サービスを把握する
では、訪日外国人観光客が求める接客サービスとは一体どんな内容なのでしょうか?
実際のところ、飲食店・小売店・宿泊施設など、利用場所やシーンによって異なります。
居心地の良いフランクな接客
訪日外国人観光客が接客サービスに求めるのは、時に親近感の持てるフランクなコミュニケーションであったりします。
例えば、東京都渋谷区にある「ALCB(ABOUT LIFE COFFEE BREWERS)」は、利用客のほとんどが外国人という人気コーヒースタンドです。5坪という非常に小さな店舗でありながら、連日様々な国からの旅行者が訪れ、インバウンド集客の成功例の一つとして見ることができます。
ALCBが意識しているのは、外国人利用客のグローバル基準に合わせたフランクな接客サービスです。英語が流暢でないスタッフでも積極的なコミュニケーションを取りるようにしています。このように「利用客 対 店員」ではなく、「人 対 人」の自然なコミュニケーションを重視することが、居心地の良さや「また来たい」と思わせる魅力を生み出しています。
他にも、個人が運営するゲストハウスなどは、オーナーと宿泊客が一緒になってパーティーをしたり、家族のようなフレンドリーな関係性を築くことにより、満足度の向上や高評価を得る結果へと繋がっています。
このように、マニュアルに沿った機械的な接客よりも、居心地の良さ・積極的なコミュニケーション・自然体を重視した接客が好まれるケースがあります。
日本らしい丁寧できめ細やかな接客
カジュアルな利用シーンに対して、高級ホテルや百貨店など高級志向の場所では、日本らしい懇切丁寧な接客サービスが求められます。利用客も相応の金額を払うため、高いレベルの接客を受けることは当然と言えます。特に日本は「おもてなし」の文化が根付いているので、利用客に喜んでもらえるような工夫や心温まる接客サービスというのが非常に喜ばれます。
こうして満足のいく接客サービスを受けた利用客が、個人のSNSや不特定多数が見る口コミサイトに良い評価やコメントを投稿すれば、それを見た人が新しい顧客としてやってくるという良いサイクルにも繋がります。
ニーズに合わせた接客を提供することがポイント
接客という観点からインバウンドを見た時、大事なのはシーンに合わせて求められる接客サービスをきちんと提供することです。カジュアルな飲食店・ショップ・ゲストハウスなどの宿泊施設では、一対一のコミュニケーションを意識したフランクな接客が喜ばれる傾向があります。
一方で、高級店や高級宿泊施設などでは、せっかくの旅行なので贅沢しようと考えている旅行客も多く、金額に見合った、もしくはそれ以上のきめ細やかな接客サービスが期待されます。
尚、利用客がその店や施設にどんな接客を求めているかを把握する一つの方法として、Tripadvisorなどの口コミサイトで評判をチェックするのもおすすめです。こういった口コミサイトは率直な意見が書かれていることが多いので、貴重な意見を実際の改善に活かすことができます。
訪日外国人観光客集客の困りごとは「コミュニケーションとWifi」
平成30年度に観光庁が実施した「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」によると、旅行中に困ったことの上位5項目は以下のとおりです。- 施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない(20.6%)
- 無料公衆無線LAN環境(18.7%)
- 公共交通の利用(16.6%)
- 多言語表示の少なさ・わかりにくさ(16.4%)
- クレジット/デビットカードの利用(10.0%)
調査結果からも分かるように、コミュニケーション問題がトップに挙がっています。
多くの訪日外国人観光客は、日本の親切で丁寧な接客サービスに対して好印象を抱いているものの、肝心な意思疎通ができなければ、最終的には不満を抱く結果つながってしまいます。
また、その他の項目も、インバウンド観光においては整備を急ぐべき項目です。受け入れ環境が揃っていなければ訪日外国人観光客にとっては利用しづらく、一度利用してもらったとしても不便な印象を与えてしまいます。これらの課題をクリアすることで、確実にインバウンド集客の成功へ近づくことができます。
1. メニューなどの外国語対応
訪日外国人観光客との円滑なコミュニケーションを図るためにできることは数多くあります。もちろん外国語を話すスタッフの常駐は理想的ですが、それでは人材確保や人材育成が必要になり、ハードルが高くなってしまいます。
会話での意思疎通ができない場合でも、利用客が問題なく店や施設を利用できるような対策はすぐにでも取り掛かることができます。
- 公式サイトの多言語化
- 外国語メニューもしくは写真付きのメニュー
- 外国語での説明付きの商品カード
- 食べ方や使い方の明示 など
このように、目で見て分かるツールを準備をしておくことで、結果的には便利だった、使い勝手が良かった、良い接客サービスだったと思ってもらえます。
2. Wi-Fi完備
利用する施設で無料Wi-Fiが使えるかどうかも、訪日外国人観光客にとっては重要なポイントです。アンケートの結果を見ても、日本滞在中に困ったことの2番目に「無料公衆無線LAN環境」が挙がっています。無料Wi-Fiが利用できれば、旅行中の情報収集に役立てるだけでなく、その場で撮った写真をSNSなどに投稿してもらうことができ、店や施設の宣伝にも繋がるというメリットもあります。
3. 決済手段の充実
クレジットカード・デビットカードなどのカード決済やモバイル決済など、決済手段の選択肢を増やすこともインバウンド集客にとって魅力となります。例えば、中国ではAlipayやWeChat Payなどのモバイル決済が普及しており、日本でも百貨店・レストラン・ドラッグストアなど様々な店舗で導入が進んでいます。
日本政府観光局の統計によると、2018年の中国人観光客の数は約838万人であり、訪日外国人観光客の中でも最も大きな割合を占めています。中国人観光客の利用客を見越して、銀聯カードでの決済やモバイル決済を導入することは、インバウンド集客において有効な対策です。
まとめ:訪日外国人観光客のニーズに対応した接客サービスを提供しよう
訪日外国人観光客に選ばれるスポットを目指すならば、利用客のニーズを的確に把握し、それに応じたサービスを提供するのがい大前提となるでしょう。
「接客サービス」は、顧客満足度を大きく左右する要因でありながら、ケースバイケースで求められる内容が違うため、利用客の傾向に合わせた接客サービスとなっているかどうかが確認すべき指標となります。
インバウンド集客においては、日本式の接客サービスよりはむしろ、外国語対応・Wi-Fi環境・決済方法などの整備が重要です。公式ホームページ・SNSなどを通じて現状どこまで対応しているかを明示し、積極的に発信していきましょう。
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