香港デモの長期化を受け、台湾政府が香港のデモ参加者の亡命を受け入れたい考えを示していることが明らかになりました。中国の共産党当局は台湾政府の方針に反発し、依然として一触即発の状況が続いています。
今回は、香港デモの経緯、台湾や日本の新たな動きをふまえ、インバウンドのリピーターが多い香港と台湾市場への今後の対応について見ていきます。
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香港デモのこれまでの展開を整理
犯罪容疑者となった香港市民の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯引き渡し条例」改正案の提出に対し、香港では6月から抗議デモが行われています。
この改正案により、何かの犯罪事実をでっち上げられ中国当局に引き渡されかねないとして、香港の若者たちが立ち上がりました。改正案は香港政府により事実上廃案となりましたが、抗議デモは未だ収束の目処は立っておらず、8月現在もほぼ毎週末実施されています。
報道によると、6月以降警察に身柄を拘束された人数は700名に上っており、香港トップの林鄭月娥行政長官の辞任、逮捕者の釈放、警察の暴力追求や民主化を要求する目的で、引き続きデモの拡大と過激化の勢いは衰えていません。
SNS上では応援の声あがる、中国工作員の動き報道も
SNS上では香港の抗議デモに対し、応援やサポートを表明する声が集まっています。Twitterで「香港加油」と検索すると、香港への応援メッセージを綴るツイートが多数見受けられます。
抗議デモをめぐる状況はさらに複雑さを増しているようです。香港国際空港では8月13日、一部の抗議デモ参加者が、中国政府系メディア「環球時報」の付国豪記者を、抗議者に扮した警官と疑い殴るといった事件も起きています。
翌日、本件に関し中国メディアは付氏を英雄として大々的に取り上げたものの、15日には報道が急激に減り、こうした事態が「付氏は(香港デモ主催側に対する国際的な批判を高めるための)中国情報機関の工作員だったのでは」との憶測を呼んでいます。
またデモには、中国政府の手配したものも開催されているといった発言をする中国ウォッチャーも存在します。デモの意義を訴える声、やりすぎた行動として批判する声も入り乱れ、先行きが読みづらい状況だと言えるでしょう。
台湾は香港支援に新たな動き、中国が反発
長期化と過激化を続ける香港デモの現状を受け、7月には台湾の蔡英文総統が人道的見地から「香港の友人たち」の亡命の受け入れを検討すると示唆しました。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、抗議デモが始まって以降、実際に香港から台湾への移住申請は45%増加しているとのことです。
このことを受け、中国政府は8月19日、香港の抗議デモにおいて少数の過激派による犯罪行為の隠蔽に手を貸し、香港を混乱に陥れる彼らの行為を助長したとして、台湾の新たな動きを批判しています。
日本では香港の渡航先危険度を引き上げ「レベル1」
外務省は8月14日、香港全土の危険レベルを「レベル1(十分注意してください)」に引き上げる対応を取りました。
一部の抗議デモについて、警察の許可していない場合でも行われるケースやゲリラ的に実施される傾向が強まっていること、抗議者と警察当局の衝突が過激化していることなどが大きな要因です。
外務省は、香港を訪れる際に最新の治安情報の入手に努めること、抗議活動の可能性がある場所には近づかない、万が一遭遇した際も撮影は避け速やかに立ち去ること、身分証を携帯し職務質問を受けたときに備えるなど、警戒を呼びかけています。
一連の抗議活動では,デモ・集会等は基本的に事前申請され,警察の許可の下,総じて平和的に行われていましたが,最近の抗議活動の動向として以下の状況が発生しており,具体的には,警察不許可にも拘わらず抗議活動が行われたり,ゲリラ的な抗議活動が行われるなど流動化の傾向がみられ,また抗議者と警察当局の衝突がエスカレートするなどの傾向もみられます。
(外務省HPより引用:2019年8月25日)
まとめ:インバウンドの巨大市場・香港の最新動向に注目
混乱収束の見通しが立っていない香港の抗議デモですが、状況は依然として流動的と言えます。インバウンドの巨大市場でリピーターも多く、地理的に距離も近いことから今後も重点市場となるであろう香港・台湾の動向から、今後も目が離せません。中国の政治的複雑性もあるため、中国・台湾・香港のそれぞれの最新動向を把握し、インバウンド対策へ慎重に反映していく必要があるでしょう。
<参照>
・Newsweek:香港デモと中国の対立が台湾に飛び火、三つ巴の緊張関係に
・exciteニュース:<香港デモ>殴られた記者は工作員の可能性、中国当局突然報道を沈静化
・外務省海外安全ホームページ:香港
・JETRO:日本外務省、香港全土の危険度をレベル1に引き上げ
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