「ユニバーサルデザイン」と聞いて何をイメージしますか? 駅に設置されている“多目的トイレ”や、シャンプーボトルに刻まれた3本の“ボコボコ”などが身近な例かもしれません。
ユニバーサルデザインは障がい者や高齢者にとって使いやすいものと思われがちですが、実は訪日外国人のおもてなしにも必要な考え方です。今回はユニバーサルデザインとは何か、そして訪日外国人にとってのバリアとは何かを考えます。
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ユニバーサルデザインとは
1980年代にアメリカ・ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏によって提唱された概念が「ユニバーサルデザイン」です。ユニバーサルとは「普遍的な、全体の」を意味し、製品や環境、建物、空間などをあらゆる人が利用できるようにデザイン(設計)することを言います。具体的には、使い方が直感的にわかることや、どんな人にも使えること、ちょっとしたミスが危険につながらないことなどが挙げられます。
さまざまなバックグラウンドを持つ訪日外国人が日本で快適に過ごせるようにデザインすることは、見方を変えれば日本に住む私たちが快適であることにもつながります。
バリアフリーとの違いは?
ユニバーサルデザインに似た言葉に「バリアフリー」があります。バリアフリーは、障壁(バリア)をなくすことを意味します。
例えば、車いすでの移動に際して通路の段差が重大なバリアとなる一方で、健常者にとっては障壁と認知されません。バリアは特定の人に生じるものです。
バリアフリーはこうした特定の人にとっての障壁を解消することを目指しており、この点がユニバーサルデザインと異なります。
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訪日外国人にとっての“バリア”とは
人が不便を感じるシーンはさまざまです。日本人にとっては特に不便を感じないようなことが、外国人を非常に困惑させることもあります。
1. 言葉の壁
訪日外国人観光客にとって、まず第一のバリアとなるのは言葉が通じないことでしょう。日本人のほとんどは学生時代に英語の基礎知識を学んでいますが、英会話はできないと思っているのではないでしょうか。正しい文法や正確な発音がわからないことをコンプレックスに感じているため、外国人に話しかけられると逃げるように立ち去ってしまう人も見受けられます。
しかしコミュニケーションは言葉だけでとるものとは限りません。身振り手振りや顔の表情、時にはイラストを描くなどしてお互いの理解を深めることは可能です。日本の場合は言葉よりも心の壁のバリアフリー化が必要かもしれません。
2. 異文化の壁
日本は隣国と海で隔てられているために独自の文化が形成されやすく、それが訪日外国人観光客にとっての魅力になっています。
ただし日本では当たり前の習慣が、外国人にとってはよくわからないものであるという相手の立場になった視点を欠いていては、良好な関係を築くことは難しいでしょう。
生活に欠かせないトイレの使い方ひとつとっても大きな違いがあります。中国では水洗トイレの配管が詰まりやすいため、トイレットペーパーは便器に流さず個室のゴミ箱に捨てるのが一般的です。また公共のトイレは日本ほど清掃が行き届いていないため、便座から腰を浮かせた状態で用を足す人も多くいます。
旅行中の中国人がもし、日本のトイレを中国と同じように使うと、通常の清潔さを保つのは難しくなるでしょう。
最近トイレの個室で、多言語でトイレの使い方をレクチャーするステッカーが貼られています。このステッカーは「ユニバーサルデザイン」の発想に基づく対応策の一つです。
日本のトイレの使い方を文字やイラストで案内することで、訪日外国人を望ましい行動へと誘導します。訪日外国人の文化的背景を理解し、こちらの意図が伝わる表現を掲示することは、結果的に日本に住む私たちが快適さを維持することにもなります。
3. 通貨の壁
日本では現金払いが主流ですが、海外に目を転じるとクレジットカードに代表されるキャッシュレス決済にシフトしている国が非常に多くあります。例えば訪日外国人市場で最も多くを占める中国は、QRコード決済が支払い全体の6割を占めていると言われています。また同じく多数が日本旅行に来ている韓国でも、およそ9割がキャッシュレス決済と言われています。
こういった国の人々にとって通貨の単位もよくわからない中で、見慣れない紙幣や硬貨を扱うことには苦労が伴います。
普段から使い慣れているキャッシュレス決済のほうが、よほど便利に感じられることは容易に想像できます。
訪日外国人のおもてなしにはユニバーサルデザインの発想が不可欠
ユニバーサルデザインは、あらゆる人にとって便利で快適であることを実現しようとする考え方です。日本人にとって見慣れている道路の標識でも、外国人にとっては全く意味が分からないものというケースも決して少なくありません。ユニバーサルデザインの採用は、こうした”バリア”も同時に解消するものとなりえます。
訪日外国人は日本文化を楽しみに来ているものの、滞在中の食事や宿泊、移動で日本式を強いられることは必ずしも快適とは言えないでしょう。なぜ日本式のやり方が必要なのか、理解できる形で提示することが必要です。
人が不便を感じるシチュエーションは大きく「環境」「意識」「情報」「制度」の4つに分類できます。訪日外国人の受け入れ環境をデザインする際には、この4つの視点から、誰にでも快適さを提供できるものになっているのかどうかについて、現状を見直してみると良いでしょう。
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<参照>
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