日本の観光地と聞いてすぐに思い浮かぶのは、東京や京都、大阪などかもしれません。
そんな有名な観光地に比べるとやや地味な印象がある東北ですが、実は見どころがたくさんあり、一年のうちのどの季節に訪れても魅力的な場所です。
首都圏からのアクセスが良い事や、アジアからの国際定期便が就航したことも追い風となって、近年では東北への訪日観光客が増加の傾向にあります。
今回は、東北の空港とそのインバウンド対策について注目してみました。
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東北への訪日観光客が増加中
2019年に観光庁から発表された平成30年の宿泊旅行統計調査の結果によると、青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県および福島県の外国人延べ宿泊者数は120万人を突破して過去最高を更新しました。
この結果は、全国トップの伸び率という快挙です。
東北の訪日客が増えている
東北への訪日外国人宿泊者数の増加で特に顕著なのが、宮城県と岩手県です。
宮城県は、2016年から仙台空港へのLCC誘致に力を入れており、台北・上海・北京・ソウル線が就航しています。
特に仙台 - 台北線の就航により台湾からの訪日観光客の増加が、伸び率に大きな影響を与えています。
2018年には仙台市内の外国人宿泊者が20万人を突破し、14年から4年で3倍になっています。
岩手県は、スキーリゾートがアジア圏で有名になり、訪日観光客の増加につながっています。
東北全体でも2017年、2018年と2年連続で4割を超える伸び率となるなど、東北への訪日観光客が増えているという結果になりました。
アジア圏からの伸び率が好調: 特に台湾は1位に
平成30年の市場別外国人宿泊者数は台湾が1位でした。
その要因として、仙台空港には台北との定期便が週に13便あることや、いわて花巻空港に2017年から新しく台湾との国際定期便が就航したことが挙げられます。
また、訪日観光客の伸び率としては香港・台湾・タイが好調で、それぞれ30%以上増加しています。
さらに、SNSもアジア圏からの訪日観光客を増加させる助けとなりました。
「世界で最もロマンチックな鉄道」として福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅間を運行しているJR只見線が有名になり、アジア諸国からの注目を集めました。
東北大震災の影響はもう受けていない?
2011年に起こった東北大震災は、日本全体のはもちろんのこと、特に東北の観光に大きなダメージを与えました。
「復興の状況がわからない」「いつまた地震が起こるかと思うと怖い」という声も上がり、2011年は訪日観光客の数が激減しました。
しかし、日本政策投資銀行が2018年末に発表した「東北インバウンド意向調査」では、東北の震災に対するネガティブなイメージが減少していることが分かりました。
特に、「安全と分かれば、支援のため被災地を積極的に訪問したい」という回答が35.5%と高く、「震災があったが、日本旅行は控えようと思わない 」「震災直後は日本旅行を控えていたが、今はそう思っていない」と合わせると約80%が日本旅行に対してポジティブな意識を持っていることが分かります。
東北の空港はいくつある?東北6県の空港一覧
東北地方とは、一般的に青森県、秋田県、岩手県、福島県、宮城県、山形県の6県を指します。
それぞれの県に空港があり、合わせて9つもの空港が東北地方にあります。
- 青森県:青森空港・三沢空港
- 秋田県:秋田空港・大館能代空港
- 岩手県:いわて花巻空港
- 福島県:福島空港
- 宮城県:仙台空港
- 山形県:山形空港・庄内空港
国際線が就航している仙台空港・福島空港・山形空港・いわて花巻空港・青森空港の5つを順に紹介します。
1. 仙台空港
仙台空港は、宮城県仙台市のJR仙台駅から約14kmに位置する東北地方で最大の国際空港です。
波を打つような曲線をした屋根が特徴的な空港で、1,200mのA滑走路と、新設された3,000mのB滑走路の2本が「Y」の字に交わる形をしています。
東北大震災の際には滑走路やターミナルビルにも冠水し、飛行機なども大きな被害を受けましたが、地域住民や空港職員らなど約1600人のためにラウンジを開放しました。
「機能回復には半年はかかる」と予想されながら、33日後には日本航空の第1便が再開し、半年かからずに全面復旧した「復興のシンボル」としても知られています。
2. 福島空港
福島県唯一の空港が、福島市にある福島空港です。
隣接した福島空港公園には、公園・緑地スペース・日本庭園・展望台・運動場・イベントスペース等が整備され、さまざまな祭事や体験学習などが年間を通して行われています。
福島市、郡山市、白河市の各都市からは東北新幹線を利用すれば1時間〜1時間半程度で東京や仙台へ出られてしまうことから、利用客の減少に悩まされています。
震災後から国際線の定期便も運休しており、2019年9月現在運航している国際線は台北線のチャーター便のみです。
今後はハノイ・バンコクへのチャーター便の運航も予定されています。
3. 山形空港
「おいしい山形空港」という愛称の山形空港は、山形盆地の中心、山形県東根市に位置します。開港当初1,200mだった滑走路は2度の延長を経て現在は2,000mになっています。
国際定期路線誘致のため、2,500mへの延長が計画されましたが、利用客の減少や隣接する仙台空港との旅客争奪競争などの問題があり計画は凍結されています。
国際線は、2019年9月現在定期便の就航はありませんが、ツアーパッケージでの台湾へのチャーター便が運航します。
4. いわて花巻空港
岩手県花巻市にある「いわて花巻空港」の正式名称は花巻空港です。
釜石自動車道の花巻空港インターチェンジに直結しており、国道4号線花巻東バイパスとも接続するなど、市内からのアクセスの良さが特徴です。
国際線は毎週水曜日と土曜日に、台北行きの定期便が就航しています。
5. 青森空港
本州最北端の国際空港である青森空港は、青森県青森市にあります。
国内でも屈指の雪の多さに悩まされる空港ですが、「ホワイトインパルス」と命名された空港除雪隊は作業スピードが日本一早いとも言われており、PRに力を入れています。
国際線は、ソウル・天津・台北線が就航しています。
東北の空港のインバウンド対策は?
近年の訪日外国人観光客の増加に対応しようと、各空港もインバウンド対策に力を入れるようになっています。
ここでは、仙台空港と青森空港のインバウンド対策をご紹介します。
仙台国際空港
仙台国際空港では、東北地方の空港で初めてムスリム(イスラム教徒)向けの礼拝室を設置しました。
ムスリムの海外旅行市場は2026年には約34兆円規模になることが予想されており、世界中で注目されている市場です。
Mastercard-CrescenRating Global Muslim Travel Index 2017 (GMTI 2017) によると、2016年に海外旅行をしたムスリムは 約1億2,100万人で、インドネシアやマレーシアからのムスリムの訪日観光客の数も順調に増加しています。
その他、ウェブサイトの多言語化(英語・韓国語・中文簡体字・中文繁体字)やSIMカードの自動販売機の設置、フリーWi-Fiの提供などをしています。
青森空港 : ムスリムへの考慮
青森空港も、仙台国際空港と同じくムスリム旅行者受け入れのために祈祷室を新設しました。
さらに、スピーディーな入国審査のために審査ブースを4か所から6か所に増設し、以前は国内線専用1レーン、国際線共用1レーンだった保安検査場を国内線専用2レーン、国際線専用2レーンに増設しました。
チケットロビー、出発ロビー、搭乗待合室のスペースも拡張し、レストランやフードコートは2階の西側、売店は東側に集約して利用客の利便性の向上を図っています。
ウェブサイトは日本語を含め5カ国語で表示が可能です。
東北の空港がインバウンド市場の拡大に貢献
国内の他の観光地に比べると、訪日観光客からの知名度はまだまだ低い東北ですが、今後大きく増加するであろうムスリムの観光客受け入れのための対策や利用客の利便性を考えた対策をしています。
台北線の運航やSNSでの拡散などで台湾からの観光客が増えており、今後も国際線の拡大ができればさらに東北へ訪日観光客が訪れるきっかけとなるでしょう。
訪日してから東北地方のことを知る観光客も多く、東北地方を訪れた観光客は「また訪れたい」という人も少なくないようです。
市場拡大のためには、まずは知ってもらうことが大切です。航空便や設備などが整った東北では、今後SNSやインターネットサービスを通じたPRにより、大きく市場を拡大していく可能性も高いでしょう。
<参照>
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/puresu/puresu/ks190305.pdf
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