昨今は労働人口の減少もあり、業務における効率化が求められています。IT化の波も広がっていますが、さらに先を行く新テクノロジー導入の流れも見られます。インバウンド業界も例外ではありません。
今回は、インバウンド市場に応用できる「7つのテクノロジー」をご紹介します。
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1. IoT
IoTとは、インターネットオブシングスの頭文字です。インターネット環境を使い様々なデバイスやサービスを接続し、シームレスな環境を目指した相互コネクション機能を指します。この技術を駆使すれば、例えば宿泊者がホテルに到着し、エアコン、TV、照明など全て連動して操作する快適な空間を演出することが可能です。
事例:日光市・IoT観光ガイド
外国人に人気の観光地の一つ、日光市ではIoTとビーコンを使って面倒なガイドマップの代わりにプッシュ機能で観光情報を教えてくれるサービスをはじめました。日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語などといった外国語の対応もされており、IoTならではの最新情報を常に配信出来ます。ビーコンは微弱電波の為、一度設置すれば長く使用することができ費用負担を少なく済ますこともできます。
現在では類似のサービスが自治体を中心に使われ始めています。
2. 顔認証システム
顔認証システムは、監視カメラなど特別に設置されているカメラから対象を絞り込み、画像データベースと照らし合わせることを可能にした技術です。公的機関や空港、イベント会場などスピーディに本人認証を行う必要のある場所で活用されています。2020年の東京オリンピックでは世界初の顔認証システム導入を予定し、期間中アスリートをはじめ約30万人の利用を見込んでいます。
事例:Alipay、NECと三井住友銀行の実証実験
中国ではすでに、顔面認証によるゲート認証や支払いが実装されています。アントフィナンシャルが提供するのAlipay(支付宝)のサービスは現地ファストフード店やスーパーに展開されており、日本でも多くのメディアに取り上げられました。アプリで事前にアカウントと「顔」を紐づけており、支払いはユーザーの顔を画面に向けるだけで完了します。インバウンド業界でも期待ができる新技術です。日本でも、NECと三井住友銀行の共同で開発された顔認証技術が社員食堂で期間限定導入されたことがあります。
3. VR
バーチャル・リアリティ(VR)とはその名の通り、あたかも自身がその世界に飛び込んだかの様な仮想現実を楽しめるテクノロジーです。その活用の幅は広く、ゲームなどエンターテイメントの他にも様々活用されて来ています。スマホと連動させて使えるVRヘッドセットが登場するなど、広範囲にソフトコンテンツの普及が見込めます。
事例:JNTO「旅マエVR」
「旅マエ」に重点を置くJNTOは様々な方法で日本のインバウンド市場を盛り上げています。VRという360度別世界に入り込める特徴を活かし、日本の観光スポットや文化の紹介を、今までとは違ったアプローチで促進するコンテンツを作成しました。利用客はあたかも日本にいるかの様に楽しめ、今までに増して訪日外国人へ強いアプローチが期待できるとされています。固定カメラではなく観光客の視点に合わせ動き回るカメラを導入し、今までの「写真と文章」や「視野の固定された動画」以上の情報を提供することに成功しています。
コンテンツはYouTubeでの再生回数が1,300万回を突破する作品もあり、現代の人々の嗜好をよく捉えたインバウンド施策の成功例と言えるでしょう。
4. AR
AR(拡張現実)は実在する風景に仮想の視覚情報を重ねて表示する技術です。仮想の世界を現実世界へ「拡張」させる機能は、世界的大ヒットを記録したスマホゲームの「ポケモンGO」で一気にその認知を拡大したと言えるでしょう。
事例:Google・Google翻訳
世界的IT企業Googleの「Google翻訳」アプリもAR対応されているサービスの一つです。アプリのカメラ機能で撮影された文字を解析し、画像内の外国語を翻訳して画面上に表示します。英語はもちろん、英語以外の言語にも対応しています。海外旅行中には、買い物や食事など様々なシーンで活用されていくでしょう。
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5. ロボット
技術革新が進み、次なる発展を遂げたロボットが私たちの世界に入り込もうとしています。日本では長崎ハウステンボスに第一号店を開店した「変なホテル(ロボットホテル)」が大きな注目をあびました。現在東京を中心に18店舗を展開しています。ロボットの進化とその活用は、労働人口の減少という社会問題の解決にも必要不可欠です。インバウンド業界でもすでに活用が進んでいます。
事例:京都市・RoBoHoN
日本を代表する観光地「京都」では、2017年12月に「観光ロボット・RoBoHoN」を導入しています。株式会社JTB西日本とシャープ株式会社は、ロボットクリエーターの高橋智隆氏の監修および株式会社ゲンの企画・プロデュースのもと、シャープ製のモバイル型コミュニケーションロボット「ロボホン」を使った京都の観光案内パッケージ「RoBoHoNと行く『ロボ旅』(京都)」の販売を12月15日(金)より開始する。この商品は首都圏発の旅行商品となっている。
GPSを搭載したRoBoHoNは、観光情報やその土地の歴史、文化などを音声で案内します。もちろん、外国語での案内も可能です。市内の飲食店や体験施設にも設置し、英語・中国語でサービス内容を案内を提供しています。
観光ロボットのレンタルは、訪日外国人がイメージする”日本=ロボット”と旅行体験を重ねることにもなります。漫画の世界に入り込んだような新しい体験を提供することができます。
手で持ち歩けるコンパクトさは旅程の邪魔になりづらく、新たなブームとなる可能性も大いにあるでしょう。
6. AI
アーティフィシャル・インテリジェンス(AI)の略であるAIは、自動化やインターネットによる様々なサービスの高品質化に続く動きです。機械が学習し、個別の案件へ適切な対応を返します。人的労働の代用が可能であり様々な産業で活用が期待されています。インバウンドで応用されるAIは主に「リコメンド機能」や、外国人旅行客の不安を取り除くための「Q&Aサービス」の形で広く活用されています。
地方自治体で広く取り入れられ始めたAI機能搭載の「チャットボット」は、多言語での問合せへの自動応答が可能であり、多くの訪日外国人の旅をサポートしています。
事例:Tifana・AIさくらさん
AIさくらさんは、道案内など観光客の要望に人工知能を持って対応できるサービスです。旅行客のニーズに深く対応するため、訪日外国人が特に多いアジア圏の言語に絞りサービスを提供しています。質問を利用客に聞き返すことのできる機能を備えており、まだまだ改善を要する個人向けAIサービスの中でも、高い精度を期待できるサービスとなっています。
2Dの可愛らしい風貌のキャラクターが接客対応してくれ、これもまた”日本らしい”インバウンド体験を提供する事ができるでしょう。
7. ビッグデータ
ビッグデータはその名の通り、大量のデータを意味し、マーケティングの文脈ではインターネットサービスにおけるユーザーの行動履歴を指します。こうしたデータをもとにユーザーの行動を予測し、購入の促進を図る試みも進んでいます。ビッグデータの活用も様々な業界で進んでおり、インバウンドも例外ではありません。
膨大なデータを必要とする為、自身でデータ解析を行うのはリソースを要しますが、オープンになっている解析データもあり、こうしたものの活用も役立つでしょう。
事例:ナビタイム・電車混雑予測情報
乗り換え案内でお馴染みのナビタイムは、同社アプリを通して収集したデータを解析しています。月間約5,100万のユニークユーザーから集めたデータで、混雑時間や迂回ルートなどの提案に活かされています。公共交通全体で18億件のも上る交通データを駆使し、2020年に迎えるオリンピックなどで世界からの訪日外国人をスムーズに輸送したりすることに活用できると考えられます。
同社が持つデータより、インバウンド客の事前事後行動を予測することも可能とされ、今後の活用に期待されている。
まとめ
世界では次々と新しいテクノロジーが登場し、発展しています。その活用の波は観光業にも押し寄せています。新しい技術はその画期的な特徴とともに、どんな技術なのか、どのように実際の社会に応用することができるのか、簡単に理解できない場合もあるでしょう。
今回紹介した7つの技術も、よく耳にするけども自社のサービスに応用できるのかアイデアがなかったという場合もあるのではないでしょうか。
いくつもの事例に目を通し耳を傾けるうちに見えてくるものもあるはずです。先端技術にはキャッチアップを怠らないような姿勢が今、インバウンド業界にも求められています。
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<参照>
https://www.revfine.com/technology-trends-travel-industry/
https://japan.cnet.com/release/30104231/
https://jpn.nec.com/press/201903/20190318_01.html
https://robotstart.info/2017/12/08/robotabi-jtb.html
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