世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ2019」が、2019年10月30日から11月3日にフランス・パリにて開催されました。「サロン・デュ・ショコラ」は今年で25周年を迎えたこともあり、例年以上の賑わいを見せていました。
今回は、インバウンドの日本のお菓子への注目度や訪日フランス市場の最新動向をふまえ、「サロン・デュ・ショコラ2019」に出展した日本メーカーのブースにおける、フランス人来場者の反応をレポートしていきます。
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レポート「サロン・デュ・ショコラ2019」で注目を集める日本のメーカー
世界各国から230の出展者が集う「サロン・デュ・ショコラ 2019」でも、日本のメーカーに対する注目の高まりが顕著です。メーカーごとのブースだけでなく、会場内には「Japan Area」という特設ブースが設けられ、明治やトーキョーチョコレートのシェフによるデモンストレーションが連日開催されました。
"Matcha"や"Sake"の認知拡大から人気のチョコにも変化が
メリーチョコレートの海外戦略ブランド「トーキョーチョコレート」は、「サロン・デュ・ショコラ」に出展した最初の日本企業です。和の食材を使用したチョコレートを世界に広めたことが評価され、今年は「レ メイヤー デ メイヤーアワード」(最高のショコラティエ賞)を受賞しました。
会場のブースでも、フランス人来場者が絶えず足を止めていたのが印象的でした。出展を始めた当初はまだ抹茶などの和の食材の認知度も低く、抹茶チョコは苦くて粉っぽいなど、比較的ネガティブな反応も見受けられたとのことです。
しかし、フランスでのMatchaやSakeなどの認知拡大に合わせ、徐々に和の食材を使用したチョコレートの知名度も高まっていき、現在では人気商品となりました。
リピーターが多く訪れるメーカーも
愛知県名古屋市に本店を構える「CHOCOLATERIE TAKASU」は、今年で3年目の出展となり、リピーターも多く訪れたとのことです。
「ゆずのチョコレートが欲しい」など、特定の商品をリピートする常連客の姿もありました。ブースに日本画を展示するなど、ユニークな造りから、初めて訪れる来場者にも注目されていたのが印象的です。
日本画をあしらったパッケージのほか、本の形が特徴的なパッケージの新作チョコレートは完売し、「パッケージだけでも購入したい」という声も挙がるほどの人気ぶりでした。
七味やゆず、抹茶など、和の食材を使用したチョコレートを、興味津々に試食するフランス人の来場者の姿が見受けられました。
日本文化を紹介するブースも人気
京都の老舗ショコラティエ「サロンドロワイヤル」は、昨年に続き、販売ブースの横に茶道を体験できるブースを設けました。ブースの周りには大きな人だかりができたほか、向かいの「JAPAN AREA」の客席にのぼり、上から眺めようとする来場者が見受けられるほどの人気ぶりでした。
日本文化への関心拡大を実感するとともに、チョコレートがメインのイベントでありながら、思わぬかたちでフランス人の来場者を魅了したと言えるでしょう。
菓道家の三堀純一氏が手がける、煉切の作法パフォーマンス「菓道」の実演をしているブースでは、展示された色鮮やかな完成品を一目見ようと、多くのフランス人の来場者が詰め掛けました。煉切について積極的に質問する姿も見受けられ、世代を問わず熱心に聞き入っていた様子が印象的でした。
インバウンドのお菓子の消費額
農林水産省の統計によると、2018年の訪日外国人観光客の消費額は4兆5,189億円となっています。
そのうちお土産等を含む食料品の買い物代は、買い物代全体の約2割を占める、3,075億円に上りました。中でも菓子類の買い物代は1,639億円と、10%のシェアとなっています。
日本のお菓子は、訪日外国人観光客の間でも、人気を集めていることが伺えるでしょう。
特に日本らしいお菓子として、スーパーで手に入る庶民的なお菓子も人気を集めています。抹茶味のキットカットやポッキー、アルフォートなどは、世界的にも高い評価を受けています。
空港の免税店をはじめ、街中のドラッグストアやドンキホーテなどでは、こうした日本ならではのお菓子を購入する訪日外国人の姿が頻繁に見られるようになりました。
好調なインバウンドのフランス市場
「サロン・デュ・ショコラ 2019」において、日本のメーカーに足を運ぶフランス人来場者が多く見受けられたように、実際に訪日フランス人市場の伸びも好調です。
日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の訪日フランス人観光客数は、前年比13.5%増と、30万人の大台を突破しました。インバウンドの欧州市場では、英国に次ぎ2番目に多い国になります。2019年も1月〜9月までの累計で、前年同期比9.3%増の25万2,300人と、好調に推移を続けている状況です。
背景としては、アニメやゲームなどのポップカルチャーの認知拡大や、日本文化の祭典「ジャポニスム2018」の開催が考えられます。特に「ジャポニスム2018」では、日本の芸術や文化、食などさまざまな分野を紹介するイベントが8か月に渡り開催され、老若男女問わず幅広い世代が、日本の魅力に触れる機会となりました。
データでわかる訪日フランス人観光客
欧州2位の巨大市場:2016年英国に次ぐ客数の伸び&消費額を記録ポイントは4月・7月・10月:春夏秋バランスよく訪日客数が増加
フランスで"本物"の日本文化発信!ジャポニスム2018「京都の宝ー琳派300年の創造」展【現地レポート】
2018年10月26日〜2019年1月27日まで、パリ市立チェルヌスキ美術館にて、「京都の宝ー琳派300年の創造」展が開催されました。"世界にまだ知られていない日本文化の魅力"を発信する、日仏友好160周年を記念した複合型文化芸術イベント「ジャポニスム2018」の公式企画として注目され、多くのフランス人が足を運びました。日本文化への関心の高まりが顕著なフランス・パリで、"本物"の日本文化発信ならびに訪日旅行の需要喚起・認知拡大のきっかけとなり得るイベントとして、現地レポートを報告します。目...
フランスのインバウンド観光客対策/日本との関係は?なぜ日本文化好き?フランス人向けのおもてなしを研究
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日本のお菓子の知名度向上→インバウンド誘客のきっかけ作りへ
「サロン・デュ・ショコラ2019」を通じ、フランスにおける日本文化への関心拡大を実感するとともに、世界的に評価の高い"食"の観点から、日本の魅力を発信することの可能性を改めて感じました。
また海外向けに日本製品をPRする際には、日本文化が体験できるデモンストレーションなどの実施により、その効果を高められることも確認できました。展示会、SNSコンテンツ、店頭など、どこであっても、まずは情報の受け手の立場に立ったうえで、商品の良さを伝える方法を考える姿勢が重要と言えるでしょう。
また、日本の衛生水準は世界的にも高く評価されており、こうした点でも「食品」は今後インバウンド市場で需要を拡大できるポテンシャルの高い分野だと言えるでしょう。同じく、日本人の美的センスに心酔する人も少なくありません。パッケージも含めて完成する「お菓子」は、食品の中でも特に、今後インバウンド領域での成長の見込める市場かもしれません。
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<参照>
・農林水産省:訪日外国人旅行者の食料品等の購入額(確報値)2018年
・訪日ラボ:【JTB調査】好調な「訪日フランス人市場」観光客数は2018年30万人超&今年9か月累計は25万人に:欧州市場では英国に次ぐ第二位
・訪日ラボ:お菓子のインバウンド消費額は1,589億円!?「外国人観光客×お菓子」の関係を数値から見る
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