2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、各地でホテルの開業ラッシュが続いています。なかでも東京の銀座には、欧米からの訪日外国人観光客をターゲットにした宿泊特化型の「新ホテル」が続々とオープンしています。
そこで銀座のインバウンド向け「新ホテル」の現状と、インバウンド誘客を狙うホテルの多様化についてご紹介します。
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銀座にインバウンド向けの新規ホテルが続々進出
2018年〜2020年に銀座で新しくオープンするホテルは12施設にものぼります。「ミュッセ」「ブラッサム」「アロフト」など、まだ馴染みのない名前が多く、そのほとんどが海外から初上陸したブランドや、国内の大手企業が手がける新ブランドのホテルです。
銀座にホテルが続々とオープンする背景として、銀座の世界的な知名度の高さが挙げられます。銀座はインバウンドにとって新宿と並び知名度が高く、インターネットのホテル検索で選ばれやすい傾向にあります。
欧米人観光客をターゲットにした宿泊特化型ホテル
10年間で約4倍に達した訪日外国人観光客数ですが、これまで半数以上を占めていた韓国や中国からの観光客数は伸び悩んでいる状況です。
その一方で、2019年のラグビーW杯や2020年の東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、欧米からの旅行需要拡大が期待されます。欧米からの訪日客は長期滞在が主流で所得水準も高い傾向にあるため、消費へのインパクトが大きくなります。銀座での欧米人観光客向けの宿泊特化型ホテルの増加は誘客促進と受け入れ態勢の強化に効果的といえるでしょう。
一例としてご紹介するのは、JR九州ホテルズが首都圏進出2号店として2019年8月にオープンした「ザ ブラッサム 日比谷」です。一般的なビジネスホテルとは一線を画す施設として勝負に出ました。具体的には、シングルルームを設けず全255室のほぼすべてをダブルかツインにしたほか、ラグジュアリーホテルに匹敵する広さを持つプレミアルームも12室設けられています。レストランは1か所のみにすることで料金を抑えた宿泊特化型ホテルとして、インバウンドを取り込みます。
関西発のインバウンド特化型ホテル
関西地方を中心に5施設を展開する「からくさホテルズ」は、インバウンド比率が平均約9割と非常に多いのが特徴です。2019年には「からくさホテルプレミア東京銀座」をオープンしました。首都圏進出の第1号店として、稼働率も80%以上と好調です。
競争の激しいホテル業界に新規参入したにもかかわらず高い稼働率を誇る理由として、インバウンドに特化したブランディングが挙げられます。からくさホテルズによると、2018年の市場全体の外国人宿泊者比率は大阪が39%、東京が36%となっており、多くが複数名での訪日です。しかしツイン以上の客室が占める割合は、大阪では全8万室のうち約20%、東京では全15万室のうち12%に留まっているとのことでした。
「からくさホテル」では全室ダブルまたはツイン以上とし、20平方メートル以上の広さを確保したほか、隣り合う部屋を繋げるコネクティングルームも備えており、最大6人での宿泊が可能です。需要と供給のギャップに着目し、インバウンドをターゲットとした複数人で宿泊できる部屋をメインにすることで、インバウンド客の誘客に成功したといえるでしょう。
「からくさホテルプレミア東京銀座」は宿泊料金が1泊1室3万円弱と、通常のからくさホテルより1万円ほど高いのが特徴です。そのぶん客室面積を拡大し、日本ならではの朝食を各部屋で提供するといった工夫から、欧米人観光客から人気を集めています。
インバウンド誘客狙うホテルの多様化も顕著に
昨今のホテル業界はインバウンド誘客を狙うホテルのなかでも、欧米豪の富裕層を意識したラグジュアリーホテルから、若者をターゲットにした低価格ホテルまで、多様化が顕著になっています。
2019年6月には超高級ホテル「東京エディション銀座」の建設が着工しました。運営を委託されたアメリカのマリオット・インターナショナルは、「エディション」ブランドを最上級ブランドと位置づけており、現在は19もの高級ホテルプロジェクトを進めています。インバウンドの富裕層が各地の高級ホテルを回遊することで、消費拡大を狙います。
若者向けのリーズナブルなインバウンド特化型ホテルも新たにオープンしました。「タビノス浜松町」は世界的に人気がある「日本のマンガ」がコンセプトのホテルです。ツインとダブルのみの客室は1泊1室1万円ほどで、宿泊場所よりもマンガやゲームなどを絡めたコト消費を優先させる、若い訪日外国人観光客をターゲットとしています。
まとめ:インバウンドの宿泊需要の取り込みで差別化を図る新規参入ホテル
近年のインバウンド需要の拡大により、ホテル業界もリピーターの取り込みが重要との見方が強くなりました。インバウンドならではのニーズを捉える特化型ホテルの導入により、他のホテルとの差別化を図る戦略が見受けられます。
インバウンドの富裕層をターゲットにした銀座の宿泊特化型の高級ホテルや、宿泊費を抑えたい若者向けのホテルなど、インバウンドを意識したホテルの多様化は、今後ますます顕著となるでしょう。
<参照>
・日経X TREND:知られざるホテルが銀座で大増殖 インバウンド比率9割超も
・産経新聞:【経済インサイド】訪日客4000万人時代へ ホテルが挑む差別化戦略
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか
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→2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? / 2025年訪米旅行者支出「125億ドルの損失」予想 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年5月後編】
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