言うまでもなく、日本のインバウンド市場で最も大きな存在感を示すのは訪日中国人観光客です。
訪日中国人観光客が日本を旅行先に選ぶ理由は近さだけではありません。
見てみたい・体験してみたいコンテンツがあり、交通面や心理的な面の両面からアクセスしやすいことが大切です。
ここでは日本での中国人受入れ状況の実情を解説のうえ、中国人の目に日本のどこが魅力的に映るのかを知り、対策を考えます。
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なぜ中国人が日本旅行を選ぶのか
中国と日本は関わりが深く、古代から人の往来が続いてきました。今日では中国人の海外旅行先として日本は1,2を争う人気を集めています。
2018年の訪日旅行客全体の約27%、消費金額も全体の約34%が中国人でした。
数ある行き先の中から彼らが日本を選ぶ理由について、考えられる要因を3つ解説します。
理由1.ビザ発給の緩和
2019年1月、大幅にビザの発給要件が緩和されました。
これにより中国からの訪日観光ビザの申請も容易になり、団体旅行者のビザ申請が旅行会社からできるようになるなど、訪日旅行のハードルが低くなりました。
また、中国政府は2019年8月に中国から台湾への個人旅行に必要な許可証の発行を停止し、個人旅行を事実上禁止しています。
台湾旅行を計画していた中国人が行き先を他国に変更しているという背景もあります。
理由2.中国語への対応
中国人訪日旅行者の激増を受け、日本でも中国人観光客に対応するための施策が充実してきました。そのひとつが中国語を含む多言語対応です。
中部国際空港セントレア近くのホテルで営業するセブンイレブンは中国語を話すスタッフが常駐します。
商品の陳列も中国向けを意識したもので、中国人で大盛況を呈します。
電車のアナウンスや看板でも中国語を含めて案内されるようになり、中国人が安心して旅行しやすい環境の整備が進みました。
理由3.良い体験ができること
手続きの手軽さや言語だけでなく、日本には豊富な見どころや日本食など様々な楽しみ方があり、良い体験が期待できるのも魅力です。
景勝地観光ひとつをとっても、異なる時期に訪れると体験できる内容は全く違ったものになり、中でも日本らしい桜や紅葉の景色が喜ばれます。
観光クルーズやツアーが充実ぶりも魅力的です。特にクルーズ旅行は条件付きではあるもののビザ不要で上陸でき、比較的安価であることから人気を集めています。
また、買い物を主目的として訪日する中国人も多く、女性を中心に中国よりも安価に購入できる化粧品などのショッピングを満喫する姿が良く見られます。
中国人観光客の旅行の特徴
中国人観光客の消費傾向や訪日層について紹介します。
中国人においてもミレニアル世代の旅行需要は高く、年齢別でみると男性は30代、女性は20代が大きな割合を占めています。
また、男女別では約6割が女性です。 女性の心をつかむことが中国人対応施策のカギと言えるでしょう。
訪日中国人は夏に多く来日する
中国人が最も多く来日するシーズンは何といっても夏です。
中国の学校では7月から8月の時期が夏休みにあたり、学生や家族連れが旅行計画を立てやすいことが要因と考えられます。
7月から8月にかけての2か月間に訪日中国人が集中しており、2018年の7月には1か月で約88万人もの訪日中国人を受け入れました。
中国人を対象とした施策には、夏季の需要をいかに取り込むかが重要となってきます。
また、春節(旧正月)、建国記念日である国慶節(10月)も長期の連休となり、旅行需要が高まります。
消費金額の約半分は買物代!
中国人の一人当たり消費金額は近隣国の中では高い傾向にあります。中国人の買物への需要の高さがその理由です。
以前ほど中国人の「爆買い」が取りざたされなくなったとはいえ、日本旅行の目的に「ショッピング」を挙げる人は多く、一人当たり112,104円を買い物に費やします。
旅行消費金額のうち、買物費の占める割合は約50%です。
一方で宿泊費の割合は21%にとどまりますが、これは買物費が高いために相対的に低くなっていると考えられます。
訪日中国人の約半数が初来日
観光庁の調査によると、訪日中国人の約54%が初来日であると回答しています。
他のアジア諸国と比べるとリピーター率の低さは顕著です。訪日経験のある中国人をリピーターとして取り込みできればさらなる需要が喚起されます。
初来日時に満足度の高い滞在経験を提供したうえで、プロモーションの取組みや旅行会社との連携などの再来訪につなげる施策に取り組むことが効果的と考えられます。
訪日中国人に対応する施策例3選
前述したように、中国人フレンドリーであることから日本が中国人に旅行先として選ばれているといえます。
ゴールデンルート以外の地方でも中国人対応を充実させることで、訪日中国人を多く取り込めると考えられます。
中国人のための利便性向上と安心の提供に効果的な事例を解説します。
LCC就航で地方空港へ集客
茨城県東部の小美玉市に位置する茨城空港では積極的に国際線LCCの就航を誘致し、第三の首都圏空港としての存在感を示しつつあります。
現在は上海・西安・台北の3都市に直行便が定期運航しており、中国人が首都圏や関東エリアに訪れる際の拠点です。
成田空港と比べると東京への距離は遠いですが、東京方面へ直通の高速バスが整備されており、航空便利用者は片道500円で利用できます。
これらの取り組みが評価され、訪日誘客支援空港に認定されています。
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近年、訪日外国人の数は増加を続け、2018年には3,000万人を突破しました。延べ人数にして、出国日本人数の約1.5倍の人が日本を訪れているといます。京都や東京など人気観光地への集中が著しく、増えすぎた外国人観光客で日常生活で不便を強いられたり、マナーの周知が間に合わなかったことにより想定外の事態に出くわしたりといった、観光公害も大きな問題になっています。訪日外国人の入国の玄関口としては成田空港と関西空港がツートップで飛び抜けていますが、こうした点からも人気スポットへの観光客集中の理由がう...
キャッシュレス対応
キャッシュレス先進国として知られる中国では、決済時のキャッシュレス比率が60%にのぼります。
中でも「支付宝(Alipay)」や「微信支付(WeChat Pay)」といったスマホでのQRコード決済が急速にシェアを伸ばしています。
導入により馴染みのない通貨での支払いによるストレスを軽減でき、インバウンド中国市場の消費拡大が狙えるとともに、リピーター客の取り込みや宣伝効果も期待できます。
中国のキャッシュレス事情 │ メリット・モバイル決済・インバウンド向けキャッシュレス決済導入3事例
中国では、キャッシュレス化の進展によって決済におけるキャッシュレス比率が約60%まで普及しているといわれています。日本の社会でも、「キャッシュレス決済」の比率を2025年に40%に高めるなどして、キャッシュレス化が推進されています。こうした状況のなか、中国のキャッシュレス事情から、各種決済サービス利用における利点や欠点、インバウンドでのキャッシュレス決済導入の実態を紹介します。目次中国のキャッシュレス事情とは?「銀聯カード」は中国人の財布代わりモバイル決済の普及最新の顔認証決済が登場モバイ...
健康や医療分野の対応
日本の医薬品は高品質で飲みやすく信頼性も高いとされ、中国では高い人気を集めます。
特に人気のある医薬品は「神薬」と呼ばれ、訪日した中国人の多くが買い求めますが、不正購入品の転売や一部で出回る偽物が問題となり注意喚起がされています。
また、富裕層を中心に水準の高い医療を受けるために海外へ渡航する「医療ツーリズム」が流行しています。
内容はがん治療や美容・湯治まで幅広い目的で、付随して観光が可能である点や同伴者の消費行動が期待でき、日本国内でも新たな市場としてスポットが当たっています。
一方で医療目的であることを隠して来日し、健康保険に加入して医療機関を受診する「タダ乗り医療ツーリズム」などの問題が顕在化してきました。
中国人が神薬と呼ぶ「龍角散」人気の理由
中国ではECであれ店頭であれ、商品が偽物ではないかという疑念を抱く消費者はいまだに少なくありません。こうした中、中国人にとって、日本商品は偽物がないというイメージがあり、ECや訪日旅行の滞在を利用して、食品や医薬品といった身体に直接作用するようなカテゴリの商品を買いたがる傾向にあります。上述のような消費者の考え方も影響し、中国人に「神薬」と呼ばれる日本の医薬品でも特に人気のある商品が存在します。「龍角散」もその神薬の一つに名を連ねています。「龍角散」は同じ社名の日本企業が製造、販売するのど...
中国人は「日本の医療」をどのように爆買いするのか?政府も注力する医療ツーリズムを解説
中国人の訪日観光客と言えば、家電製品などを大量購入する「爆買い」のの姿を思い浮かべる人も多いでしょう。しかしこうした爆買いの傾向は以前より目立たなくなってきており、次なるブームとして、スキーやスノーボードといったスノースポーツに巨額を投じる「爆滑り」や、研修や子供の学びに焦点を当てた「爆学」といったトピックが話題にされています。こうした流れの一つとして、現在中国人による大きな市場形成の可能性に注目が集まっているのが「医療」です。医療機関の受診と、治療や健康促進、整形を目的とした「医療ツーリ...
増加する訪日中国人に対応し好影響を
世界一の人口を抱え、経済的にも豊かになった中国からの訪日旅行者マーケットの成長は留まるところを知りません。
ビザの発給基準緩和や中国語対応など、旅行しやすい環境が整っていることもあり今後も増加が続くとみられています。
国別の訪日旅行者数で1位の中国ですが、初来日のゲストが多く地方への誘客はまだまだというのが現状です。
今後はリピーターの呼び込みやゴールデンルート以外の地方への分散がさらなる需要拡大の焦点となるでしょう。
季節ごとの対応や買物好きの国民性を加味した施策や、健康・医療分野など新たな市場の開拓など、中国人対応をより洗練させることも有効と考えられます。
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<参照>
在重慶日本国総領事館:2019年1月4日から訪日観光査証の緩和を実施します
JNTO:2018 年における訪日外国人の消費動向【国籍・地域別】
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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