日本を訪れる外国人観光客が増加する中で、東京や京都など、これまでの人気の観光地以外にも訪れたいと考える人が増えています。
それだけではなく、観光客の増加はそれぞれの訪日目的の多様化にもつながっています。
そんな中、岐阜県では外国人からのニーズを見極めてインバウンド事業に取り組むことで、2018年の外国人の県内宿泊者数が過去最高となりました。
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岐阜県のインバウンド事例
岐阜県では、地域の持つ特性を活かしたプロモーションと観光地の整備を進めたことで、外国人観光客の宿泊者数が平成21年に比べると約8倍程度と格段に伸びました。
これは自治体の観光客誘致への取り組みの成果が表れたと言えます。
空港がなくアクセスが良いとは言えない立地でありながらも、訪日外国人の訪問率は47県中17位となっています。
10年間で8倍に 岐阜県、外国人宿泊者数が過去最高の122万人を突破!
目次県を訪れる訪日旅行を促進匠の技や自然アクティビティをPR県を訪れる訪日旅行を促進国土交通省観光庁は、「宿泊旅行統計調査(平成30年・年間値(速報値))」を発表し、岐阜県における外国人延べ宿泊者数が、対前年同期比26%増の122万7,320人となり、過去最高であった平成28年の101万3,490人を大幅に更新したことが明らかになりました。県では、平成21年度より「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」を積極的に推進中。平成30年の外国人延べ宿泊者数は、開始した平成21年と比較して、約8倍...
人口たった8万人の岐阜県高山市で、インバウンド宿泊者数が55万人超え!その4つの理由とは?
合掌造りの民家や古い街並みが残る岐阜県高山市は、多くの訪日外国人観光客が訪れる人気観光エリアです。高山市の発表によると、2018年の外国人観光客数は、宿泊ベースで 55 万 2,000人となり過去最高を記録しました。8万人強という高山市の人口に対して、6倍以上の訪日外国人観光客が訪れている計算です。しかし地方都市であるが故に、人口減少によって観光客受け入れの担い手となるべき人材不足が深刻な問題となっています。今回は高山市のインバウンド誘致を例に、地方のインバウンド観光の魅力と課題を検証しま...
飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト
岐阜県が取り組んだ観光対策の一つとして、「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」というものがあります。
このプロジェクトのコンセプトは、「観光・食・モノ」という三つの柱を軸に「岐阜ブランド」を構築し、文化、芸術・学術交流、スポーツ、まちづくりなど各国との多層的・多重的な地域間交流を目指すことにあります。
また、海外からの観光客誘致や、農産物・県産品の販路開拓を目指しています。
HIDA TAKAYAMA
特に外国人観光客にとって大きな魅力を持つ観光の飛騨高山に関しては、「HIDA TAKAYAMA」の名で公式観光サイトを立ちあげています。
高山市のホームページからは、観光客向けの情報ページに飛ぶことができ、英語だけでなく、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語などを含む複数の言語で閲覧することが可能です。
岐阜県には、ナチス・ドイツ時代にユダヤ難民向けにビザを発行したことで知られる外交官の杉原千畝にまつわる記念館があり、当時のユダヤ人を祖先にもつイスラエル人が高山市を訪れるため、ヘブライ語にも対応しています。
同様に、観光マップを11言語に対応させているのに加え、商店街単独の免税カウンターを設置するなど、外国人観光客が観光しやすい環境整備に力を入れています。
イスラエル人が岐阜高山を訪れる理由とは?訪日外国人数の大躍進を実現した市役所の取り組み
岐阜県高山市は今や"HIDA TAKAYAMA"として訪日外国人に人気の観光スポットですが、その裏には自治体による継続した取り組みがあります。結果として、8年間で約6倍の訪日外国人観光客が訪れるようになりました。2018年のインバウンドの宿泊者数も、過去最高の146万人を記録し、その伸び率では日本で1位となっています。高山市役所は公式ホームページ等でインバウンド情報を幅広く情報提供しています。おすすめのイベント、グルメ情報等HIDA TAKAYAMAの魅力をあますことなく伝えようとする意気...
「ニッポンの匠の技」体験コンテンツ
岐阜県には「美濃焼」「関の刃物」「飛騨木工」「美濃和紙」など、日本トップレベルの伝統工芸産業が数多く存在します。
それらの伝統工芸品を単にお土産として購入するだけでなく、インバウンド客に向けて、自分でも体験できる観光資源に昇華する取り組みがなされています。
実際に1人3万円以上する刀鍛冶体験を、毎月50人以上の外国人観光客向けて提供した実績もあり、2019年10月時点で73種類の現地ツアー・アクティビティが用意されています。
このような着地型観光商品を開発・販売することは、訪日外国人の集客につながるだけでなく、岐阜県の持つ伝統工芸の世界へのアピールの機会ともなっています。
岐阜県のインバウンド需要(2018年)
岐阜県のインバウンド需要の伸びは、このような伝統工芸品に関連した体験型コンテンツの充実だけが要因なわけではありません。
岐阜県は、宿泊先としても人気があり、訪日外国人の岐阜県への平均宿泊数は3泊であり、総宿泊数は全国で13位となっています。
インバウンド需要・対応状況
2018年の岐阜県における訪日外国人の総訪問者数は81万333人でした。訪問率は、県内に空港や港がないにもかかわらず2.6%で、全国17位となっています。
訪問率とは日本を訪れた外国人観光客のうちその都道府県を訪問する割合を示しています。訪日外国人観光客のうち、2.6%が岐阜県を訪れているということになります。
2019年度における岐阜県の免税店舗数は402店で、外国人向けの観光案内所は29施設ほどあり、案内表示などの英語対応状況は50-75%となっています。
また、Japan.Free Wi-Fiに対応した施設は2,104施設であり、1人1回当たり旅行消費単価は2万4,034円でした。
岐阜県のインバウンド需要
岐阜県は、その地理的配置からいって「空白スポット」となりがちに思われますが、訪日外国人の訪問率、訪問数、およびインバウンド宿泊人泊数共に高めの数値となっています。
訪日外国人の割合
岐阜県を訪れる訪日外国人の割合は、台湾が最も多く、28.63%でした。次に多かったのは中国の18.75%、次いで香港の12.13%と、上位三カ国を中華圏の国が占めました。
4位はタイの6.68%、続いて5位は韓国6.29%と、ここまですべてアジアの国となりました。
6位にアメリカの4.48%、7位がオーストラリアの3.97%でした。
インバウンド消費金額
岐阜県におけるインバウンド消費金額の内訳では、「買い物」にもっともお金を割いている人が多いという結果となりました。
特に、中国人観光客の買い物に使う費用は、平均1万5,687円と突出して高い結果になりました。
香港は、宿泊費(平均9,455円)や飲食費(平均7,644円)に金額を使う傾向にあり、全体としての平均使用金額は、香港からの観光客がもっとも多い結果となりました。
地方に訪日観光客を呼ぶモデル、岐阜県の取り組み
高山市には主要な空港や港はありませんが、独自の戦略のもとインバウンド誘致を進めてきたことで多くの訪日外国人観光客を取り込むことに成功しています。
地域での観光客誘致への取り組み方によっては、どの地方や地域にも、訪日外国人を呼び込むチャンスはあると言えます。
地図・経路検索機能を兼ね揃えたGoogle マップ
外国を旅行している人にとっていまや欠かせないスマホアプリの一つがGoogleマップです。
ガイドブックや公式サイトで行き方を調べると、最寄り駅・路線からのアクセス方法しか掲載されていないケースが多く、空港など離れた場所からのアクセスを調べることは困難です。
その点Google マップは、現在地から最寄り駅までのルート表示、乗り換え案内、全体経路図など必要な情報が一度に入手できます。
Google マップの経路検索結果にバスの情報を表示させ、訪日外国人観光客の利用促進を図ることが重要です。
サイクルツーリズム
「SATOYAMA EXPERIENCE」とは、岐阜県の飛騨里山で行われているサイクリングツアーのことです。岐阜県では里山に広がるのどかな田園風景を、レンタル自転車で移動できるサービスを展開しています。
伝統的で豊かな自然景観の残るこの地域でのアクティビティは、トリップアドバイザーの「エクセレンス認証」を2017年に受賞しました。エクセレンス認証とは、一定して高い口コミ評価を得たツアーや施設に与えられる認証のことです。
地元の人々にとっては日常的な風景であっても、外国人観光客にとってはそれが魅力的にうつるということが顕著に示された例と言えます。
「サイクルツーリズム」成功事例3選、インバウンドの地方誘客の方法
サイクルツーリズムは、訪日外国人観光客誘致のために作成された観光業を強化するテーマの一つです。「自転車」を含む13のテーマで観光事業を強化するとし、訪日客の地方誘致に向けた周遊ルートを構築するため、国をあげてサイクルツーリズムに取り組む姿勢が伺えます。全国で実施されているサイクルツーリズムの中から和歌山県・滋賀県・岐阜県飛騨市における取り組みに注目し、どのようにインバウンドの地方誘客へ繋げているのかを見ていきましょう。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコン...
ムスリムへの配慮
岐阜県高山市では、豚肉やアルコールなどを含む食材を食べることができないムスリムの観光客向けに、専用の英語表記観光パンフレットを用意しています。
また、こういったムスリム観光客が安心して飲食店に入れるように、多言語メニュー等の作成に関わる費用は高山市が補助金を出すなどの対策を行っています。
また、ムスリム受け入れ可能性施設であることを店頭に表示し、飲食店選びの際などに困らないような工夫がされています。
市が用意した観光パンフレットにも、このマークが記載されており、多様化する観光客に対応するための取り組みの一つの例と言えます。
ゴールデンルートの寄り道としてだけでない岐阜県の事例
このように岐阜県では、他の観光地からの寄り道としての観光だけでなく、なるべく長期滞在してもらえるようなインバウンド対策が行われています。
岐阜県の持つ伝統工芸品を観光資源とした体験型コンテンツによるや、サイクリングによる日本の伝統的な田園風景の体験など、コト消費の流れを意識した取り組みが見られます。
誘致だけではなく、実際に来てくれた外国人観光客の方が安心して過ごせるよう、観光向けホームページや観光マップの多言語化や、ムスリム向け観光パンフレットの作成など、多様性の受け入れ体制を強化しているのも、特記すべき点です。
新しい観光スポットの提案によって、さらなる訪日外国人の集客が目指されています。
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短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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