人口たった8万人の岐阜県高山市で、インバウンド宿泊者数が55万人超え!その4つの理由とは?

合掌造りの民家や古い街並みが残る岐阜県高山市は、多くの訪日外国人観光客が訪れる人気観光エリアです。

高山市の発表によると、2018年の外国人観光客数は、宿泊ベースで 55 万 2,000人となり過去最高を記録しました。

8万人強という高山市の人口に対して、6倍以上の訪日外国人観光客が訪れている計算です。

しかし地方都市であるが故に、人口減少によって観光客受け入れの担い手となるべき人材不足が深刻な問題となっています。

今回は高山市のインバウンド誘致を例に、地方のインバウンド観光の魅力と課題を検証します。


年間50万人以上の訪日外国人観光客が高山市を訪れる理由

高山市は、東京や大阪などの大都市から約4時間かかる地方都市です。不便な場所にある観光地のように思えますが、東京〜大阪のゴールデンルートを旅する多くの外国人にとっては、むしろ移動の途中で立ち寄りやすい場所として魅力があります。

都道府県別訪問率を見ても、岐阜県をはじめとする東京と大阪間のエリアは比較的高い訪問率になっていることが分かります。

高山市はこの魅力的な立地に加え、独自の戦略のもとインバウンド誘致を進めてきたことで、これだけ多くの訪日外国人観光客を取り込むことに成功しています。 

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官民一体となって取り組むインバウンド戦略

高山市では、早くから行政と民間が連携して、積極的にインバウンド誘致を進めてきました。

誘致成功によって訪日外国人観光客で賑わうようになったことで、地方観光の可能性を全国に示していると言えます。

ここでは高山市が取り組むインバウンド戦略の3つのポイントについて解説します。

    1. 地域の価値を高めるコンテンツ作り

    まず高山市は、インバウンド観光のために新たな見どころを創出するのでははく、もともと持つ観光・自然資源、伝統文化を活かすことに注力しました。

    市内に数多く残る歴史的建造物はもちろん、のどかな田舎風景、そこで暮らす地域住民との触れ合いなどです。

    近年、訪日外国人観光客は地域の特性や日常の暮らしを体験するなど、日本特有の文化などに触れる体験にニーズが高まっています。

    地方においては、官民が連携し、今ある資源をいかに観光コンテンツ化していくかが重要なポイントです。

    2. 積極的なプロモーション

    インバウンド誘致成功には、積極的なプロモーションが欠かせません。ウェブサイト・SNSなどあらゆるツールを使った発信は当然のこと、海外へ出向いて積極的にプロモーションすることも有効な手段です。

    高山市は海外戦略として、海外で実施される旅行博への出展や、現地旅行会社へのプロモーションに取り組んでいます。

    さらに市長自らが出向いてPRを行うなど、アプローチ方法にも工夫をこらしています。

    3. 受け入れ環境の整備

    訪日外国人観光客の受け入れのためには、パンフレットやウェブサイトの多言語化をはじめ、Wi-Fi整備、宿泊施設の充実など、旅行客が滞在しやすい環境を整えることも必要不可欠です。

    高山市の特筆すべき取り組みの一つに、国ごとに魅せ方が異なる観光パンフレットが挙げられます。

    観光客が魅力に感じるポイントは国ごとに異なるため、国のニーズに合わせた内容で作成しています。

    このように、基本的な環境整備に加え、一方踏み込んだ細やかな対応もインバウンド戦略には有効です。

    4. LCC拡充・ビザ緩和などインバウンドを後押しする要素

    高山市を訪れる外国人観光客が増えているのは、もちろん高山市の魅力とインバウンド誘致の努力があってのことですが、日本全体で訪日客数が増えていることも関係していると言えます。

    日本を訪れる外国人観光客の数は2018年は3,000万人を超え、毎年右肩上がりの順調な推移を見せています。

    欧米からの訪日客も増加傾向にありますが、特にアジア圏からの訪日客の増加が顕著です。要因は様々ですが、LCC(格安航空会社)の拡充によりアジア圏を中心とする観光客が増加していることや、ビザの緩和により特に中国からの観光客が増加していることなどが挙げられます。

    高山市の平成30年の観光統計によると地域別では欧州地域が対前年比 16.31%増と順調に推移しており、国別では中国が 27.79%増と非常に高い増加率となっています。

    地方のインバウンド観光の魅力と可能性、観光客増加で人手不足等の問題も

    好調な訪日外国人観光客数の増加に伴い、近年は地方へと足を伸ばす観光客の数も増えています。より日本らしい風景・食事・体験へのニーズが高まっています。地方は都心部に比べよりディープな日本体験を提供できるので、今後インバウンド誘致の可能性に満ちています。

    そして地方でのインバウンド誘致のためには、地域が持つ魅力を観光コンテンツ化・プロモーション・受け入れ環境整備の3つのポイントが鍵となります。戦略を立てて集客に取り組めば、大都市から離れた地方であってもインバウンド集客を飛躍的に伸ばすことが期待できるでしょう。

    ひと度インバウンド誘致が成功して観光客の数が増加すれば、地域が活性化され大きな経済効果も期待できます。しかし増加の裏では、様々な課題も出てきています。大都市とはまた違う地方ならではの課題もあり、柔軟な対応が必要になります。

    人口減少が進む地方では、観光客を受け入れるための環境整備のうち、人材確保が大きな課題となっています。宿泊施設・飲食店・小売店・交通機関などあらゆる分野で人材が揃わなければ、十分なサービス提供が難しくなるため早急な対策が求められます。

    高山市でも、若者の流出や高齢化による生産年齢人口の減少などが原因で、働き手不足が深刻化しています。特に宿泊施設への影響が顕著に見られ、市内に新しい宿が次々とオープンしているものの、肝心の働き手が十分に集まらず、営業日を減らしている宿も見受けられます。

    人口減少というのはすぐに解決できる問題ではないため、人材不足を補うことにフォーカスして対策する必要があります。

    1.海外人材の登用

    ▲[外国人労働者数の推移]内閣府発表の資料「外国人労働力について」から引用
    ▲[外国人労働者数の推移]内閣府発表の資料「外国人労働力について」から引用

    近年、留学や技能実習など様々な理由で日本に住む外国人労働者が増加しており、2017年には120万人を突破しています。

    慢性的に働き手不足が深刻化する中、今後あらゆる分野において外国人の積極的な登用が必要となるでしょう。

    外国人を採用することは人材を確保できるというだけでなく、外国語での接客が可能になるというメリットもあります。

    対応言語は採用する外国人の母語によって異なりますが、少なくとも外国人観光客の受け入れに役立つことは間違いありません。

    2.ITの活用

    最新のIT技術を利用して、少人数でも現場が回るような体制を整えることも重要です。

    例えば、業務の効率化を図る事務システムや会計ソフトなどを導入することも対策の一つです。

    また翻訳・通訳アプリやキャッシュレス決済システムの導入といったIT活用も検討する必要があります。

    外国人観光客とのスムーズなやり取り・コミュニケーションが可能になれば、業務の効率化につながり限られた人員での営業も可能となります。

    3. 価格競争での苦境

    地方が直面する問題は人材不足だけではありません。インバウンド観光の波に乗って、大手ホテルなど格安料金を提示する宿泊施設が新たに参入することで、価格競争への対応も必要になります。

    昔ながらの老舗宿や個人経営の小規模な宿の中には、価格競争に抗えず経営が立ち行かなくなる宿も出てきており、インバウンド観光の恩恵を受けるどころか、苦しい局面に立たされています。

    こうした事態を免れるためには、価格だけではない独自の魅力アピールや小規模宿ならではのアットホームな接客サービスを提供するなど、競合の宿泊施設との差別化を図ることが求められます。

    地方の特性を活かしたインバウンド誘致と対策が必要

    今後地方のインバウンド観光はますます活性化されることが予想されます。この流れに乗り、地方が持つ魅力を活かしたインバウンド誘致を行うことで、多くの訪日外国人観光客を取り込むことが期待できます。

    そして、それと同時に様々な課題への柔軟な対応も求められます。中でも、受け入れ環境整備の一環である人材確保は、地方では特に大きな課題となります。

    外国人雇用やITを駆使したサービス利用といった対策により、外国人観光客が求める「日本らしさ」が失われるという視点もありますが、まずは十分な受け入れ体制を整えることを優先すべきでしょう。

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    この記事の筆者

    訪日ラボ編集部

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