2019年7月12日に「地方空港活性化と今後の日本ツーリズムの展望」をテーマとしたセミナーが開かれました。
世界最大の航空情報会社OAGがデータと海外から見たインバウンドツーリズムについて説明し、JTB総合研究所が観光交流拡大計画の戦略を発表しました。
セミナーでは、周辺地域の航空事情により、増加する訪日客の航空座席の不足が懸念されていることや、その対策として地方空港が訪日リピーターのための国際空港として利用できるような、効率の良いシステムの確立の必要性が強調されました。
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アジアの空港規模拡大=日本の航空路線が増加する絶好機
今後20年間成長が見込まれると言われるアジア太平洋地域では航空設備を拡大しています。日本はその中心に位置し、規模拡大した空港から日本行きの航空便就航が予定され、周辺空港と共に成長するチャンスに恵まれています。- 4年の間に空港を11カ所新設
- 2023年には滑走路10本を増設
- 2030年に向け新空港6カ所・滑走路7カ所を建設中
航空便の増加が見込まれる中、日本政府は2020年に訪日客4,000万人、2030年には6,000万人へと増加することを目標にしています。
アジア太平洋地域の航空路線増加
空港の規模拡大が検討されている理由としては、新興国の経済成長と所得増加により海外旅行の機会が増えたことが挙げられます。中国・タイ・シンガポール・インドネシアが対象です。
アジア各国の航空機利用率が増加しているのは、LCCなど価格の安いチケットが増えたことや、単通路のナローボディ機が主力運行となっている航空事情も背景にあります。
2019年北京大興国際空港は世界最大の旅客数
中国の北京では2019年9月末に「北京大興国際空港(PKX)」の開業を予定しています。北京に既存する2つの空港はいずれもハブ空港の役割があり、これらと合わせると世界最大の旅客数になります。隣国中国の国際空港は中国へのインバウンド旅行客の増加をもたらすとも考えられ、日本の観光業界への脅威となることも指摘されています。
航空路線増加への対応
2019年に就航を予定している航空機の座席数の総計は1億2,500万席です。2020年に政府が目標とした4,000万人の訪日客への座席供給は可能ですが、今後は性能が向上したナローボディ機が増え、大型機のワイドボディ機が減ることから、1便で約100座席が減少することが考えられます。
したがって、後に目標としている2030年6,000万人への座席供給には不足することが懸念されています。現在の国際線は主要7空港から発着されていますが、地方空港の活性化により国際線就航を増やすことが、この目標の達成に有効だと言われています。
訪日リピーターの地方空港路線誘致「第二の空港」へ
初めて日本を訪れる人たちは、日本観光の代表的都市の京都・大阪・東京へ向かう目的が大半なことから、ゴールデンルートである成田、羽田、関空の利用がメインとなることは変えられない現状です。しかし、旅慣れた訪日リピーターの目的は地方訪問であり、目的地の近隣空港への誘導を行うことで、地方空港へのインバウンドとなります。
現状は国際線の就航が主要7空港に集中しています。主要7空港を除くと、日本から海外への就航先はたったの10都市です。日本の地方都市とつながる国際線は少ないと言えるでしょう。国際線就航中の日本の34空港へ、新たな国際線を誘致することができれば、訪日数6,000万人の目標達成への距離もぐっと縮まるはずです。
リピーター率高し!ミレニアル世代へ向けた観光整備も重要に
航空便予約方法においても、パッケージツアーの利用ではなく、個人が短時間で予約できるスマホやインターネット予約による航空便利用が全体の58%です。自分で旅行を手配するミレニアル世代(22〜37歳)やZ世代(0〜21歳)が利用者の半数を超えています。
これらの世代は、慣れてくると航空便の乗り継ぎも自分で行い、リアルタイムで予約販売が可能な設備を駆使し、旅行日程作りを継続的に行う傾向が見られることから、若い世代層への観光整備に取り組んでいく必要があります。
民営化第1号、仙台空港に航空路線を誘致
空港の民営化第1号であり、民営化後3年が経過する仙台国際空港では、10月からタイ・バンコクへの就航が始まる予定です。当初想定していたLCCではなく、309席の大型旅客機が週3回の往復が予定されています。観光業界では、仙台だけでは受け入れのキャパシティが足りないことも考えられ、東北地方全域への誘致も視野に計画が進められています。
その他、新幹線と空港を結ぶアクセスの改善や訪日外国人向けのAIチャットの導入も行い、今後もバンコク線就航に伴う様々な計画を進行していくとしています。
インバウンドと共にアウトバウンドのプロモーションも
JTB総合研究所がまとめた、各国の所得水準と海外旅行者数の資料によると、2015年には日本人の収入に対し海外旅行は少ない状況でした。若年層の海外旅行離れと地方空港から海外への航空線の不便利さが原因となっていますが、訪日旅客数増加により地方空港の国際線が開設したことで、地方空港からのアウトバウンドが2018年は過去最大の利用者数となりました。
地方空港の国際便が増えることで、日本に住む外国人が増えることも考えられます。定期的な帰省による航空機の利用により安定した乗客数が確保されることも想定できます。例えば、日本在住のフィリピン人による利用により、日本とフィリビン間の航空便の乗客数は安定しています。
地方空港は訪日リピーター&在日外国人に需要あり
2018年までの訪日数の増加は初めての訪日と2、3度目のリピーターが含まれていますが、これからは訪日が4回目である「真の」リピーターが増えていくと考えられます。こうした訪日客は地方訪問を主な目的とする場合も少なくないと考えられます。地方での対応とアクセスのしやすさが、今後のインバウンド市場の拡大を左右していくと言えるでしょう。インバウンド対策にお困りですか?
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<参考>
トラベルWatch : OAGとJTB総研、地方空港活性化のポイントを紹介するセミナー実施。ナビタイムや仙台空港の事例紹介も
訪日ラボ 最新版セミナー&インバウンド情報まとめ
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