中国人が日本の家電や日用品などを爆買いしているシーンは珍しくありませんが、人気なのはモノばかりではありません。
海外の学校の児童・生徒が、学校教育の一環として日本を訪れる「訪日教育旅行」に対する中国からの注目が高まっています。
訪日教育旅行を通して若い世代に日本の魅力を知ってもらうことで、将来的な観光リピーターとなり訪日客の増加が期待できるとして、観光庁も訪日プロモーション方針として注力しています。
訪日教育旅行が中国からの人気を集める理由と、その背景にある日本と中国の教育に対するスタンスの違いに迫ります。
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増えつつある中国人の訪日教育旅行
観光庁も注力し、昨今中国からの参加者が増加傾向にある「訪日教育旅行」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
観光庁が新たなターゲット層として掲げる「訪日教育旅行者」とは? 日本の学生への教育的な効果も
観光庁は、平成28年度の訪日プロモーション方針を発表。今後、注力するターゲット層として、富裕層や今までうまく取り込めていなかったヨーロッパやアメリカ、オーストラリアの外国人観光客に並んで、「訪日教育旅行者」を掲げています。 「訪日教育旅行」とはいったいなんなのでしょうか。今後、増加すると思われるこの訪日教育旅行について解説していきます。 インバウンド対策なにから始めたら良いかわからない? 「インバウンドコンサル」の資料を無料でダウンロードする 「調査・リサーチ」の資料を無料でダ...
訪日教育旅行とは
訪日教育旅行とは、海外の学校に通う児童・生徒が、教職員などの引率のもと学校教育の一環として日本を訪れる団体旅行のことです。
「語学学習」「異文化学習」「国際交流」などさまざまな学習テーマを持って世界中から訪れる青少年たちを、日本各地で受け入れています。2015年には延べ4,000校を超える小学校・中学校・高等学校で交流が行われ、訪日教育旅行生は6万5,000名を超えました。
地域別には、台湾の高等学校からの訪日教育旅行生が最も多く、日本の有名大学への視察や共通項のある学校との交流求める傾向があります。
特に着目したいのが、中国からの訪日教育旅行生の増加です。2013年には韓国、アメリカ、オーストラリア以下だった中国ですが、2015年には急増し、台湾に次いで2番目の訪問者数となりました。
中国からの訪日教育旅行の例として、2019年8月には、中国広東省から小学生〜高校生までの生徒約40名が関西を訪れました。
7泊8日の日程のなかで、寿司づくりや茶道の体験、菓子工場の見学や防災センター、リサイクル施設などを訪問し、毎晩夕食後には教員たちによる研修授業が行われるなど、日本の文化や社会を学ぶユニークで先進的な訪日教育旅行の例といえるでしょう。
「日本の教育」の魅力
注目が高まる中国からの訪日教育旅行ですが、日本の教育はなぜ中国人の心を惹きつけるのでしょうか。
文化的な秩序、礼節を学ばせたい
中国人が教育旅行の行き先として日本を選択する理由の背景に、日本人の秩序や、マナー遵守などの精神を子供に学ばせたいという親の意図があります。
たとえば、日本独自の片付け方法や清掃方法、マナー教育を学べるプログラムは、家政婦がいるのが当たり前で、親が仕事で忙しく子供に十分なマナー教育をできない中国の富裕層からの需要があります。
また、日本の小売店やホテルなどでの接客態度の良さや、街中にゴミが少ない清潔さ、日本人の勤勉さなどを、日本への旅行や報道を通して知って日本の礼節やマナー意識の高さに感銘を受け、子供にそれらを学ばせたいと考える親は少なくありません。
中国・アジアのご家族世帯がこれを目指して日本に訪問する。~日本で学ぶ整理収納清掃(3S)がアジアのマナー教育に進化~
[一般社団法人日本整理収納協会] 日本整理収納協会は、8 月7 日に中国富裕層の海外旅行者(家族)を対象に日本スタイルのかたづけ・掃除を「おもてなし
さらに近年の中国では、道徳や哲学に重きを置く「儒教」を題材としたテレビのクイズ番組や、儒教を教育に取り入れた私立学校が注目されるなど、一部のエリートを中心に道徳的精神を重んじる動きも見られてきています。
中国式への反省
中国人が「日本式」の教育を求める背景には、1980年代生まれの世代を指す「80后(バーリンホウ)」と呼ばれる、今の子供たちの親世代の意識が影響しています。
80后は一人っ子政策のもとに育ち、現代的高等教育を受けられるようになった世代です。親や祖父母からの期待を一身に背負い、学歴競争を勝ち抜くためスパルタ式の教育を受けてきました。
一方でインターネット利用世代でもあるため、日本など国外の文化や教育について知る機会があります。そのとき、自分自身の子供時代を振り返り、勉強漬けで子供らしい経験を十分にできなかったという同じ思いを、自分の子供にはさせたくないと考えるのです。
中国の学校では特に国語、数学、英語など受験に必要な科目に多くの時間が割かれ、大量の宿題をこなすため、ろくに遊ぶこともできないケースが珍しくありません。一方、日本の学校では受験科目以外にも体育、音楽、図工など幅広い科目を学び、生徒の自主性を尊重する課外活動や、文化系・運動系のクラブ活動も盛んです。
実際、訪日教育旅行で日本の学校を訪れた中国人生徒が、クラブ活動の経験がないため、日本人生徒による吹奏楽の演奏などの歓迎に驚くこともあるそうです。
このような背景から、「詰め込み型」「スパルタ式」の教育が中心の中国に比べ、課外活動などの「体験」に重きを置くなど「心の育成を重んじる」日本式の教育への評価が高まっていると考えられます。
まとめ:中国からの注目高まり、訪日中国人観光客増にも期待
中国の詰込み型スパルタ教育を受けた世代が親になり、受験や就職対策だけではなく、豊かな人生を送るために必要な、さまざまな体験を通して心の育成を重視する日本式の教育への注目が高まっています。
観光庁が注力しているという背景もあり、中国からの訪日教育旅行は今後さらに増加していく可能性があります。
訪日教育旅行を通して中国の若者が日本の魅力を知り、リピーターになることで、将来的に訪日中国人観光客の増加も期待されます。
<参照>
JNTO:訪日教育旅行ガイド
恋する中国:中国人観光客から見た日本
「人民網日本語版」2011年9月21日:日本式の教育と中国式の教育 両者に大きな違い
Newsweek:共産党が怖がる儒教の復権
華鐘通信:日本と中国の教育スタンスの違い
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