2017年の楽天トラベルの調査によると、島根県は前年比135%の訪日外国人客の宿泊数を記録しました。地方のインバウンド成功事例として大きな注目を浴びています。
インバウンド需要を大きく伸長させることができた背景には補助金制度の整備や、DMO「山陰インバウンド機構」を設立するといった取り組みが奏功したとみられています。今回は島根県の各種インバウンド施策について紹介します。
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島根県インバウンド情報
最初に、島根県におけるインバウンド対応の現状を振り返ります。
2017年に引き続き、2018年も訪日外国人客数は大幅に増加しました。県内施設のインバウンド対応も確実に前進しています。
2018年の状況
大きな伸びを記録した2017年に続き、2018年も島根県のインバウンドは大きく成長を続けています。
島根県の観光動態調査では、2018年の外国人宿泊客の延べ人数は90,465人と、2017年より22,692人増加し前年比33.5%増を記録しました。
延べ宿泊数の全体では微減していますが、国内客の減少を外国人客でカバーした形です。
国・地方別内訳では台湾が最も多く、約19,000人が台湾からの旅行客でした。
対応状況
島根県内のインバウンド対応状況は下記の通りです。
- Japan Free Wi-Fi(2019年)761施設
- 外国人観光案内所(2019年)16施設
- 案内表示の英語対応(2016年)50%-75%
- おもてなし事業者登録件数(2019年)109件
- 免税店舗数(2019年)84店舗
全国と比較すると決して高い水準ではありませんが、行政の後押しもあり着実に対応がすすめられています。
後述する「外国人観光客誘致事業補助金」は、こうしたインバウンド受け入れ環境の整備全体を後押しするものです。
観光施設におけるインバウンド対応の充実や免税店増加が進めば、課題となっている消費単価の向上につながり、さらなる成功が期待されます。
インバウンド消費額
2018年の島根県における外国人の1人1回あたり旅行消費金額は25,681円と推計されています。
国・地域別の傾向として際立っているのが、中国の買物費の高さ、ならびにフランスの宿泊費の高さです。
中国の一人あたりの買物費は23,180円と、2位の台湾11,866円を大きく引き離しています。
また、フランスの1人1回あたりの旅行消費金額は約40,000円と推計されていますが、そのうち3分の1以上、15,884円を宿泊費が占めます。
飲食費の割合も他の国籍より高く、宿泊や食事など、訪問先で過ごすことに対しての対価を多く支払う傾向にあります。
消費額が最も多かったのは中国で46,500円前後と推計され、買物費の高さが反映されています。
島根県のインバウンド需要
日本人には出雲大社や石見銀山などで観光地としての知名度を持つ島根県ですが、インバウンド需要については、現状まだまだ低い状況と言えます。
山陰インバウンド機構
島根県のインバウンド施策において大きな役割を担うのがDMO「山陰インバウンド機構」です。DMOはDestination Management Organizationの略で、地域と連携し、プロモーションやデータ収集等の事業に多角的に取り組みながら観光地経営のかじ取り役を果たす法人のことです。
世界に通用する「山陰ブランド」を確立する一般社団法人
山陰は日本で最も古い歴史のある地域の一つで、日本最古の歴史書「古事記」には山陰地方が舞台とされる神話が多く収録されています。
山陰インバウンド機構は島根県・鳥取県からなる山陰地方広域にわたり、観光を多角的にサポートしています。
日本人が大切にしている「縁」にスポットを当て、神話や伝説を切り口に山陰地方の魅力を体験する「縁の道~山陰~」の旅を提案し、日本の心を探求するリピーターへの訴求を図ります。
広域観光周遊ルート「縁の道~山陰~」
「縁の道~山陰~」は鳥取県・島根県から山口県萩市を周遊する広域観光ルートです。
12のエリアで構成され、多くの観光スポットや美しい景観を擁します。
公式ウェブサイトでは各エリアのおすすめスポットなど詳細な情報提供に加え、所要時間を想定したモデル行程を紹介しています。
こうした情報発信により、具体的な旅行計画の作成を支援しています。公式facebookアカウントは1,200名以上の「いいね!」と1,400名以上のフォロワーを獲得しています。
公式サイトの特徴
公式Webサイトは8か国語に対応しています。配信するコンテンツは幅広く、鳥取・島根両県の英語版観光ガイドブックや多言語に対応したフリーペーパー、プロモーション動画などを展開しています。
Instagramのハッシュタグ「#Sanin_stagram」で山陰の魅力を発信するといった、SNSを活用した広報活動にも取り組んでいます。
また、3国語に対応するインバウンド向け公式アプリ「Visit San’in Tourist Pass」では、地図やナビゲーションサービス、アプリ上に配信されるクーポンを用いて山陰地方を案内します。
今年最も地方誘致に成功した島根県 ウェブ上での集客方法がすごい!山陰インバウンド機構の効果的なインバウンド向けPR方法から学べる5つのこと
楽天トラベルの「人気上昇都道府県・人気都道府県ランキング」によると 島根県は2016年と比較して135.0%増の訪日外国人観光客の宿泊数を記録 しました。この伸び率は全国でもっとも大きい数値でした。島根県が、2017年の地方誘致において大きな成功を収めたといえる理由の1つが 日本版DMOである山陰インバウンド機構に参加していたこと です。山陰インバウンド機構では観光客向けに 広域観光周遊ルート「縁の道~山陰~」を整備 しており、訪日外国人観光客から大きな人気を博していました。訪日客の地方誘...
行政と一体となった施策
島根県は県内のインバウンド市場底上げのため、行政による施策の充実に取り組んでいます。
海外からの旅行客誘致のための補助金や地域独自の通訳案内士制度を創設し、多くの外国人観光客が安心して観光できる環境の整備をすすめます。
外国人観光客誘致事業補助金
島根県は、外国人観光客の誘致活動の活性化や受入れ環境の整備に対し補助金を交付しています。
具体的に助成対象となるのは、誘客パンフレットの作成費や先進地の視察など誘致活動のほか、多言語環境整備にかかった費用や免税対応のための改装費、Wi-Fi環境の整備費などです。
前もって申請すれば、限度額の範囲内でかかった費用の半分につき補助金が交付されます。
なお、限度額は項目によって異なり、施設整備やプロモーションには20〜50万円まで、旅費についてはさらに細かい規定が定められています。
対象となる事業者も民間事業者から団体まで幅広く門戸が開かれ、助成対象も多岐にわたることから使い勝手の良い制度といえるでしょう。
外国人観光客送客促進支援補助金(バス助成)
平成27年には、旅行そのものに対しての助成制度も創設されています。
島根県内に宿泊する海外からの団体旅行に対し、バス1台当たり5万円の補助金が支給されるというものです。
台湾、香港、中国、韓国、東南アジア、欧米豪からの訪日旅行を企画する旅行会社が対象になります。
支給要件は、島根県内を貸し切りバスで移動し県内で1泊以上宿泊をすること、バス1台につき外国籍の旅行参加者が15名以上であることです。
これまではアジア圏が出発地の旅行のみが支給対象でしたが、平成31年度からは欧米豪諸国も加わり、さらなる広がりを見せています。
団体旅行や個人での受け入れに向けたサポート制度
行政は補助金以外にもインバウンド受け入れ推進のため独自の制度を整備し、外国人観光客の「わからない」「不便」を軽減させ、しっかりとしたおもてなしの提供が可能な環境を目指します。
まず、しまね観光案内サイン・ガイドラインを策定し、観光案内板をわかりやすくする取り組みをすすめています。
多言語化だけにとどまらず、文字の大きさやピクトグラムの利用についても指針が定められ、全ての人にわかりやすいサインを県内に普及させます。
ほかにも、鳥取県と合同で山陰地域限定通訳案内士制度を設けています。
山陰地域限定通訳案内士として登録すると、通訳ガイドとして鳥取県と島根県限定で報酬を得て活動できます。
養成研修の受講を修了し、試験に合格することで登録できます。現在、英語・中国語・韓国語のガイドが活動しています。
成功事例から学び、効果的なインバウンド施策を
このように、島根県では官民を挙げてインバウンド受け入れ態勢の強化に取り組んでいます。
日本版DMO「山陰インバウンド機構」が中心となり、推し進める観光プロモーション事業と行政による受入れ体制の整備の両輪でもって、山陰地方における観光地全体のボトムアップに貢献しています。
島根県が提供する施策は補助金制度にとどまりません。独自の通訳案内士制度や観光案内サインに対するガイドライン策定など具体的な施策により、個人旅行でも安心して周遊しやすい環境が整えられました。公的な外国人観光客の受入れにかかる環境整備の好事例といえるでしょう。
インバウンド受入れ数の観点からみると島根県の数字は大きいものではありませんが、成長率や今後のポテンシャルは計り知れないものがあります。
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