香川を愛するカナダ人が「お遍路」の誤解を解く!「多言語対応」と「宿泊施設対策」で世界の「歩き巡礼」ブーム取り込みなるか

公開日:2020年03月02日

2019年10月、高松市在住のカナダ人男性が英語で四国遍路を紹介する書籍を出版しました。四国霊場88か所を歩いた体験を自らの視点で記しており、「お遍路」の認知拡大のきっかけにもなりそうです。

こうした世界中の「歩き巡礼」ブームの現状や各巡礼路での受け入れ態勢を参考に、訪日観光客の間で注目が高まっている「お遍路」の現状と課題について解説します。


外国人が「お遍路」の本を発売

高松市在住でカナダ出身の会社経営者マーク・グルネウォルド氏は、2019年10月、米国の出版社を通じてAmazonで「Your Pilgrimage in Japan」(日本における巡礼)という英語書籍を発売しました。

タイトルの「日本における巡礼」は四国遍路を指しており、書籍ではグルネウォルド氏自身の「お遍路さん体験」について記しています。香川で生活を送る中で四国遍路を知り、2016年から約1年間かけて88か所を巡ったとのことです。日本人、外国人を問わず誰に対してもオープンな四国遍路の文化に興味を持ち、体験をブログに綴ったものが今回の書籍の原点となりました。

書籍の執筆に至った理由の1つに、四国は英語での発信力が弱いことを挙げています。また四国遍路について「タダでごはんが食べられる」「お金のかからないバケーション」など誤った情報が海外で発信されており、自らの経験談で正しい情報を発信したいという動機もあったそうです。

海外の読者からは早速反響が寄せられており、「行ってみたい」「新しい日本の一面を知った」などの声が挙がっているようです。

お遍路は外国人に人気なのか?

四国経済連合会と四国アライアンス地域経済研究分科会が共同で実施した調査によると、お遍路さんは10数年前と比べて約4割減と、大幅に減少していることが明らかになりました。

一方で徳島県の祖谷(いや)のかずら橋では、外国人の来訪が増え2018年度では約5.4 万人に達しており、外国人からのお遍路人気の高まりがうかがえます。国・地域別に見てみると、フランス・アメリカ・オーストラリアといった欧米豪諸国からのお遍路さんが多いようです。

次項で詳しく紹介するスペインのサンティアゴ巡礼をはじめ、世界の巡礼路で出会った巡礼者から四国のお遍路の存在を知り、四国を訪れるケースも少なくありません。

世界的な「歩き巡礼」ブームを活かし訪日観光客の受け入れ態勢を整備することで、お遍路人気はますます高まりそうです。

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世界的な「歩き巡礼」ブーム

巡礼者同士の交流から四国のお遍路の認知拡大が見込まれるため、世界の巡礼路事情も把握しておくとよいでしょう。世界的にブームとなっている「歩き巡礼」について、主な巡礼路を3つ紹介します。

1. サンティアゴ巡礼(Camino de Santiago)

スペイン北西部・ガリシア州に位置する「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」は、エルサレムとローマとともに、キリスト教の三大聖地の1つとされています。

11世紀より多くの巡礼者が集まり、最盛期の12世紀には年間50万人がこの巡礼路を歩きました。現在でも毎年20数万人がサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して歩いており、信仰以外にも、観光やスポーツなどさまざまな動機で巡礼路を辿る人が増えています。

巡礼者は身分証明となる巡礼手帳を携帯することで、巡礼者向けのアルベルゲと呼ばれる宿に格安で宿泊できます。アルベルゲや道中の飲食店などで手帳に押してもらうスタンプが、巡礼の証明です。徒歩で100km以上、自転車で200km以上を踏破すると、「コンポステーラ」と呼ばれる巡礼証明書がもらえます。

2. ヴィア・ドロローサ巡礼(Via Drorosa)

ラテン語で「苦難の道」を意味するヴィア・ドロローサは、およそ2000年前にイエス・キリストが十字架を背負い、丘の上の磔刑場まで歩いたとされる600mの道です。

イスラエル東部のパレスチナ自治区にある古都エルサレムの名跡で、始発点は世界文化遺産にも登録されています。ヴィア・ドロローサの始発点から終着点までには、イエスにまつわる出来事を記念した14か所の「留」(りゅう)というステーションが設けられています。

毎週金曜日に行われる巡行は観光客でも参加できるため、世界各国から巡行者が集まります。

3. メッカ巡礼(Makkah)

メッカ巡礼とは、イスラム教徒が毎日の礼拝やラマダンの断食などとともに行うべき5つの義務の1つです。

健康で資金に余裕のあるイスラム教徒は生涯に一度行うことが求められています。毎年イスラム暦の12月になると、世界中から300万人ものイスラム教徒が最大の聖地・サウジアラビア西部のメッカを目指します。

メッカ巡礼の時期のみ巡礼者専用の空港ターミナルができます。またマスジド・ハラームという巨大なモスク(礼拝堂)の外には、10万人が宿泊できるホテルもあるとのことです。イスラム教徒は世界に約15億人いるといわれており、メッカ巡礼に合わせて受け入れ態勢を整備していることがうかがえるでしょう。

外国人に四国遍路をしてもらうために必要なこと

サンティアゴ巡礼の取り組み例をふまえ、より多くの訪日観光客に四国遍路をしてもらうために必要な3つの対策を紹介します。

多言語対応

四国遍路で課題となっているインバウンド対応の1つが、多言語対応です。宿泊施設のホームページは日本語表記のみの場合も多く、情報を得ることが難しいうえに、電話予約をしようにも多言語に対応できるスタッフがいないといった問題があります。

多言語対応の一環として、四国遍路関する情報を一元的に収集できる総合窓口の設置という案が挙がっています。お遍路の作法や服装、宿泊施設の予約方法、日本の生活習慣をはじめ、遍路道の案内や非常時の対応などを多言語で発信するコンシェルジュ機能の整備が期待されます。

宿泊施設

スペインのサンティアゴ巡礼路にある巡礼宿「アルベルゲ」は、公営なら5~10ユーロ、民営でも高くて15ユーロほど(編集部スタッフが訪問した2018年9月時点での情報)と格安で泊まれます。2段ベッドが並ぶ男女共用の相部屋での素泊まりが主流のため、宿泊費を大幅に抑えられます。

ところが四国遍路は1泊2食付きの宿が多く、宿泊費が高くなります。高い航空券代を負担して訪れる外国人お遍路さんは、平均で50日程度滞在する四国遍路において宿泊費を抑える傾向があります。

このことから「四国版アルベルゲ」といえるような安価な宿の整備が求められます。人口減少や少子化にともない廃校となった学校など使われていない公共施設を改装し、巡礼客向けの宿泊施設として再利用するといった施策が考えられます。

宿泊予約の受付

四国遍路の宿泊施設は、大手旅行予約サイトに掲載されていない小規模な宿が多くあります。さらに言葉の問題から、宿側も外国人遍路からの問い合わせに戸惑ってしまうケースも少なくありません。

英語での的確な情報収集とスムーズな予約受付を求めている外国人に向けた対策の1つが、外国人の歩き遍路に対応できる着地型旅行会社の設立です。予約サイトを通じて遍路沿いの宿泊施設と遍路客を有料で仲介することで外国人からの申し込みにもスムーズに対応できるようになります。また外国人の遍路客も好みに合った宿泊施設が予約できるメリットが生まれます。

四国遍路にインバウンドを誘客するには?「新時代の遍路受入態勢」報告書を発表

目次聖地巡礼旅は世界的に人気な旅スタイル宿泊施設の整備が最重要課題聖地巡礼旅は世界的に人気な旅スタイル株式会社四国銀行は6月18日「新時代における遍路受入態勢のあり方~遍路宿泊施設の現状・課題等調査~」報告書を発表しました。四国では現在、四国遍路の世界遺産登録に向けた活動を展開中です。もし実現した場合には、インバウンドの更なる増加も見込まれ、今後の受入態勢等の対策が重要となります。今回の調査は、将来の世界遺産登録を見据えたものでもあり、遍路受入態勢の現状や課題を分析しました。新時代における...


まとめ:インバウンドの受け入れ態勢を整備しさらなる地方誘客促進へ

1200年の歴史が残る四国をはじめ、日本には「古くから歴史のある国」といった印象が強く、カナダやアメリカのような短い歴史を持つ国から訪れた訪日客は、より特別な印象を抱きやすいのかもしれません。

多言語対応や宿泊施設、予約受付方法を改善し、インバウンドの受け入れ態勢を整備することが、今後の四国遍路活性化のカギといえるでしょう。


<参照>

・日本経済新聞:四国遍路を世界に 高松のカナダ男性 英語で書籍

・四国経済連合会 四国アライアンス地域経済研究分科会:新時代における遍路受入態勢のあり方〜遍路宿泊施設の現状・課題等調査〜

・compathy Magazine:宗教も国境も越えて歩こう。世界の巡礼スポット4選

・日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会:サンティアゴ巡礼とは

・イスラエル・ヨルダンの旅:ヴィアドロローサ(悲しみの道)Via Dolorosa

・RETRIP:キリスト最後の歩み「ヴィア ドロローサ」エルサレムの歴史スポット

・コトバンク:メッカ巡礼

・TABIZINE:荘厳で神聖、知られざる「メッカ巡礼」の姿【サウジアラビア】

・産経新聞:イスラム教の聖地メッカへの大巡礼が最高潮に 信者200万人集結

・WORK HARD, TRAVEL HARDER:【スペイン巡礼の宿】最新情報!コスパ最強のおすすめアルベルゲ3選

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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