遺すは負の遺産か、それとも...?オリンピックレガシーをめぐる8つのテーマ、過去の開催国の事例

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※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下、2020年東京大会)が間近に迫っており、政府と地方自治体、国民が一丸となって大会に向けて準備を進めています。

そんな中、オリンピックが開催国に長期的で持続可能な効果をもたらす「オリンピックレガシー」を創出することは開催国の大きな目標となっています。

レガシーは英語で「遺産」「受け継いだもの」という意味を持ちます。

この記事では1964年東京大会のオリンピックレガシーや、過去の開催国のレガシーについて紹介します。

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オリンピックレガシーとは

1996年のアトランタ大会の際に、「オリンピックの開催都市と開催国に何が残せるのか」という議論がされたことをきっかけに生まれたのが、「オリンピックレガシー」という概念です。

オリンピックレガシーとは具体的にはどのようなものなのか、1964年の東京大会のレガシーと2012年のロンドン大会での成功例を紹介します。

オリンピックによって長期的・持続的にもたらされる効果

国際オリンピック委員会IOC)によると、「オリンピックが開催都市と開催国にもたらす長期的、持続的効果」をオリンピックレガシーとしています

つまり、オリンピック開催をきっかけとして、開催国に長期的な利益をもたらすにはどうしたらよいかを考え、行動することが「レガシー」を残すために重要であるといえます。

オリンピックレガシーには以下の5つの分類があり、それぞれに有形・無形のものがあります。

  • スポーツ・レガシー:スポーツ施設の整備やスポーツ参加と健康の向上
  • 社会的レガシー:文化・教育・民族・歴史認識の向上、市民の大会参加や国際交流
  • 環境レガシー:環境都市への再生、新エネルギーの導入
  • 都市レガシー:都市開発、インフラ整備
  • 経済的レガシー:雇用創出、経済の活性化、消費活動・観光客の増加

1964年:東京オリンピックのオリンピックレガシー

第二次世界大戦後の1964年に開催された東京オリンピックは、「戦後復興」を世界に示す非常に重要な役割を担いました。

有形のレガシーは、五輪を機に東海道新幹線の開通と首都高速道路の建設が行われ、大会のための競技施設や訪日外国人観光客を受け入れに対応したホテルや宿泊施設を次々とオープンしたことなどが挙げられます。

無形のレガシーは、冷凍食品が選手村で使われたことにより一般にも広く普及したことや、プラスチック製のバケツでごみを分別する方法が確立したことなど、衛生環境の向上にも貢献したことといえるでしょう。

また、外国人でも案内がすぐにわかるような絵文字ピクトグラムが広まったこともオリンピックレガシーの一例だといえます。

1964年(昭和39年)東京オリンピック大会

※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。1964年に初めて日本で開催された東京オリンピックは、一体どのようなオリンピックだったのでしょうか。2020年に開催される東京オリンピックと比較してみると、56年の時を経て日本の文化や生活環境など、オリンピックを取り巻く多くの状況が変化していることがわかりました。ここでは2つのオリンピックの違いや、当時の世界情勢によ...

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2012年:ロンドンオリンピックでの成功例

2012年のロンドン大会のオリンピックレガシーは、先進国における成功事例として取り上げられています。

ロンドン大会最大のレガシーとも言われるロンドン東部地区の開発は、第二次世界大戦以降何度も計画され、「30年かかる」とも言われていました。しかし、大会の会場と選手村になるオリンピックパーク、隣接する大規模なショッピングモールの建設を、このロンドン大会によって完了させることができました。

元選手村の住宅には2015年時点で6,000人以上が住み、ショッピングモールは生活用品が豊富にあることから、周辺住民にも高く評価され賑わっています。

その他にも、地域を巻き込んだスポーツ振興の促進などに貢献しました。

オリンピック開催後の東京が目指すもの

では、2020年東京大会のレガシーとして、東京が目指すものは何でしょうか。

高度経済成長の中、前回の東京大会では戦後復興をアピールできました。

少子高齢化や人口の減少、経済活動の鈍化などの問題を抱えた現在の日本でどのようなレガシーを打ち出すのか、世界が注目しています。

2020年東京大会のレガシーのテーマを見てみましょう。

東京オリンピックのレガシーを生かす8つのテーマ

2020年東京大会には8つのテーマがあります。

  1. 競技施設や選手村のレガシーを都民の貴重な財産として未来に引き継ぐ
  2. 大会を機に、スポーツが日常生活にとけ込み、誰もがいきいきと豊かに暮らせる東京を実現する
  3. 都民とともに大会を創りあげ、かけがえのない感動と記憶を残す
  4. 大会を文化の祭典としても成功させ、世界をリードする文化都市東京を実現する
  5. オリンピック・パラリンピック教育を通じた人材育成と、多様性を尊重する共生社会づくりを進める
  6. 環境に配慮した持続可能な大会を通じて、豊かな都市環境を次世代に引き継ぐ
  7. 大会による経済効果を最大限に生かし、東京、そして日本の経済を活性化させる
  8. 被災地との絆を次代に引き継ぎ、大会を通じて世界の人々に感謝を伝える

これら8つのテーマを通して、上記で述べたスポーツ・レガシー、社会的レガシー、環境レガシー、都市レガシー、経済的レガシーを次世代へと引き継いでいくことが目標とされています。

オリンピックで文化の活性化や多様性の尊重、環境保全などを達成して終わりではなく、さらに東京、日本を良くしていこうという想いが読み取れます。

各国のオリンピックレガシーについての問題

オリンピックレガシーは、近年の大会開催国にとって重要な課題となっています。

しかし、計画通りに進まなかったり、莫大な負債が残ってしまったりするなど、負のレガシーが残されてしまう問題も発生しています。

北京オリンピック、リオオリンピック、平昌オリンピックでは多くの問題が残りました。

北京オリンピックの例

大気汚染をはじめとした環境汚染が深刻だった北京では、2008年の五輪招致の公約に環境改善を掲げました

1998年に環境改善計画をスタートしましたが、水不足と大気汚染という問題を抱えたまま、2001年に開催権を獲得しました。

オリンピックに向けて風力発電を導入し、競技施設に太陽発電装置を設置したにもかかわらず、安価な石炭を求める一般家庭に普及することはありませんでした

工業化が急速に進んでいた中国では「大会の間だけ綺麗にすれば良い」という考えが蔓延しており、大会中には見られた青空も、大会後には元通りの汚染された空に戻ってしまったのです。

リオオリンピックの例

リオオリンピックでは、大会後に民間住宅として販売される予定で、約900億円という莫大な資金が選手村の建設に費やされました

しかし、蓋を開けてみると3,604戸中たった6.6%の240戸しか売れず、販売は中断されました。

また、大会後は民間に管理権を譲渡する計画だった自転車とテニスの会場は、入札に参加したのは1社のみで、譲渡は中止になりました。

その他の競技施設もことごとく廃墟化し、大会が終わった直後には負債が約72億円、2017年4月時点でまだ約36億円残っています

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※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、

平昌オリンピックの例

平昌大会で韓国は、6つの競技会場と開閉会式用のスタジアムを新設するのに加えて、6つの既存施設を改修するのに合計約885億円を費やしました。

さらに、ソウルから大会開催地であった江陵への高速鉄道などのインフラ整備に約1兆1000億円を投じたにもかかわらず、江陵の大会施設は閑散としています

大会をきっかけに地域活性化を見込んでいた江陵は、いまだに観光地としての賑わいはみられません。

冬季オリンピックでは、競技のマイナーさと競技人口の少なさから、大会に使用した施設がその後まったく使われないという大きな課題を抱えています。

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2020年東京大会で何を遺せるか

オリンピックレガシーの概念に沿って、オリンピック開催後の未来に何を残せるのかを考えることは重要です。

オリンピックの恩恵をその場限りにせず、長期的・持続的に都市や国を活性化させていくことが求められます。

過去の歴史を振り返り、日本にも当てはまる問題点を克服し、前向きな遺産を残したいものです。

そのためには、理想だけでなく現実的な計画をたて、政府と国民が一丸となってオリンピックレガシーの実現に向けて活動していくことが重要だといえるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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