「百貨店×インバウンド」は今どうすべき?爆買いの恩恵にあずかれなかった地方都市、今知るべき「インバウンドが買いたくなる工夫」

公開日:2020年03月19日

インバウンド爆買いブームも落ち着き、百貨店業界の衰退が叫ばれるなか、特に地方の百貨店が存続の危機に直面しています。

新型コロナウイルスの影響により、訪日中国人客が激減していることから、今後さらなる影響が懸念されます。今回は、百貨店におけるインバウンド動向をふまえ、地方の百貨店が考えるべき今後の対応について解説していきます。


インバウンドの爆買いに支えられていた百貨店

新型コロナウイルスの影響により、百貨店をはじめとする小売業では、消費の落ち込みが見受けられます。2020年1月24日〜30日までの春節期間において、百貨店大手の免税売上高は、前年比2桁マイナスという結果が多く見られ、特に時計や宝飾品、化粧品などの売上が激減しています。

これは、春節期間中の1月27日に中国当局によって、中国人観光客の団体旅行が規制されたことによる訪日旅行キャンセル増加の影響と考えられます。

インバウンド比率が高い三越伊勢丹の主要3店舗では、昨年の春節期間と比べ免税売上高が20%減少したほか、高島屋も免税売上高が15%減少しました。

日本百貨店協会によると、2019年の免税売上高は前年比2%増の3,461億円と、3年連続で過去最高を更新していました。しかし、2018年は前年比25.8%増と、大幅な伸び率を記録したことに比べると、伸び率が鈍化しているのも事実です。

背景には、中国当局による免税品の販売規制強化や、中国の景気減退などが挙げられます。また、2020年の今後の新型コロナウイルスの動向によっては、マイナス成長が発生する可能性も否めません。

地方の百貨店の衰退

地方都市では近年、中心市街地で営業してきた百貨店の閉店が相次ぎ、日本百貨店協会によると、2008年の280店舗から2020年には207店舗と、12年で80店舗近く数を減らしています。

主な理由として、地方都市の過疎化や若者の百貨店離れ、ネットショッピングの普及などが考えられます。

内閣府によると、中心市街地活性化基本計画をまとめて首相の認定を受けた自治体は145市2町で、その多くが百貨店をはじめとする大型商業施設で中心市街地ににぎわいを取り戻し、コンパクトシティ実現につなげようとしていますが、いまだ成功例はほぼ見受けられません。

経営再建中である1700年創業の企業が創立した老舗百貨店「大沼」も、2020年1月27日、山形地裁に破産を申請しました。現存する百貨店では松坂屋、三越に次ぐ老舗企業で、1993年2月期のピーク時には約196億円の売上高を記録しています。しかし、郊外型店舗との競争などから経営不振が続き、17期連続で減収、2019年2月期には約74億円にまで減少しました。

ライバルはアウトレット?

訪日中国人の爆買いが落ち着きを見せてきた近年は、コト消費への注目が拡大していますが、依然としてインバウンドの日本製品購入への意欲が高いのも現状です。日本の工芸品を買いたいといった声や、サントリーのウイスキー「山崎」の売り切れなどから、日本でのショッピング需要は継続しているといえるでしょう。

訪日旅行の楽しみとして、アウトレットについて言及する中国人もいます。「三井アウトレットパーク 大阪鶴見」では、インバウンドに人気の観光地からのアクセスも良いため、良いものを安く買うことを目的に、観光終わりの夕方頃から訪れる中国人観光客が多く見受けられます。

こちらでは免税対応のお店がほとんどで多言語対応のポップも用意されているほか、中国語対応のスタッフが接客するお店もあります。

インフォメーションでパスポートを提示するともらえる、英語・中国語・韓国語対応のスペシャルクーポンも、インバウンドを惹きつける要素の1つです。

このように、全国のアウトレットでは、着実にインバウンド対応が進められています。

場所だけでなく「ブランディング」

百貨店の集客において、立地ももちろん重要ですが、インバウンドのターゲットを明確にし人気商品を分析するといったブランディングも大切です。

あべのハルカス近鉄本店では、インバウンド客の90%が中国人であることから、売上が好調な化粧品やブランド品を中心に話題性のあるショップを導入するなど、ブランディングに力を入れました。

集客も、中国で多くのフォロワーを抱えるキー・オピニオン・リーダーを起用した店舗や商品を紹介する動画を制作し、口コミマーケティングを実施しています。その結果、2018年の2月期連結決算によると、営業利益は前期比59.6%増の48億8,700万円となりました。

百貨店・デパートの地方誘致・地方創生に関するインバウンド対策事例集

百貨店・デパートはどうやってインバウンドにおいて地方誘致・地方創生に取り組むべきなのでしょうか?「様々なインバウンド対策を進める「株式会社そごう・西武」」など、各社・各団体の先行事例を集めてみました。

そもそもインバウンドが地方に期待しているのは?

「Reluxトラベルラボ」が実施した「2020年春節インバウンド旅行動向調査」によると、人気都道府県ランキングでは北海道が第1位に、人気上昇ランキングでは長野県が第1位、次いで山形県が第2位となるなど、地方都市への注目の高まりがうかがえます。

インバウンドが地方に期待するものとして、日本ならではのおもてなしや温泉文化が楽しめる旅館、食事を楽しむことを目的とした宿泊施設「オーベルジュ」などの人気が上昇しています。

地方におけるインバウンド消費拡大のヒントは、百貨店などの買い物スポットとあわせて、滞在先となる宿泊施設などの百貨店以外の魅力にもあるといえるでしょう。

「メイドインジャパン」への購買意欲は大きい…情報発信が肝

依然としてインバウンドの「メイドインジャパン」製品への関心は高く需要もあることから、ターゲット層を明確にしたブランディングを行うことが重要でしょう。特に訪日中国人観光客は口コミを重視する傾向にあるため、インフルエンサーなどを起用した口コミマーケティングが1つの手段として効果的といえます。

また中国市場に限らず、存在が知られなければインバウンドの誘客は難しいのは当然です。情報発信の重要性について、その露出先や内容について、成功例とその理由を掘り下げてみるのもいいかもしれません。

商品に魅力があるかないかは当然売上を左右しますが、同時に決済回りのインフラ整備や多言語対応といった環境も、インバウンドの消費意欲を左右します。

人口の減少など、地方の経済が縮小することは今後避けられないでしょう。インバウンドが「本当にお金を払いたい」と思えるものを用意できるような発想の転換や試行錯誤が、大都市以上に必要なのではないでしょうか。

<参照>

・PRESIDENT Online:地方百貨店の活路「松本方式」のすごい売り方

・産経新聞:消える地域の顔 地方百貨店、相次ぐ閉店

・毎日新聞:山形「大沼」が破産申請 1700年創業、松坂屋と三越に次ぐ老舗百貨店

・日本経済新聞:百貨店、春節の免税売上高2桁減 中国客の減少響く

・ビジネス+IT:必要なのは「小規模店舗」。止まらない"百貨店の撤退"、地方に希望はあるのか

・内閣府:中心市街地活性化

・日本百貨店協会:https://www.depart.or.jp

・LIVE JAPAN:コレ日本のほうが安いネ!外国人がまとめ買いする"アウトレット"の人気商品4選

・NIKKEI STYLE:中国人の心に刺さるSNS発信 免税店売上高5.4倍に

・Loco Partners:Reluxトラベルラボ、「2020年春節 インバウンド旅行動向調査」を発表 人気の都道府県、第1位は「北海道」!宿泊スタイルも多様化

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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