3月24日、オリンピックの延期が正式に決定されました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は未だ終息の兆しは見えず、3月25日、小池知事から東京都内の「外出制限」の要望が伝えられただけではなく、同日には外務省から「全世界への外出禁止」が呼びかけられました。
この記事を書いている間にも状況は刻一刻と変化し、全世界が緊迫した状況にあることが感じられます。インバウンド業界関係者にとって、これらのニュースは悪いものばかりに聞こえるかもしれません。
あらゆる不確定要素に左右されるインバウンド業界において、本シリーズではインバウンド対策の本質を再確認することを目的としています。
もちろん、日本の感染状況も予断を許さない状況ではありますが、オリンピック自体がインバウンド業界にとって大事なイベントであることはかわりありません。
今回はインバウンド業界がこの一年をどう過ごしていくべきかについて、詳しくお話したいと思います。
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「五輪延期」がインバウンド業界に与えたインパクト
安倍首相は3月24日の記者の取材で、「遅くとも2021年夏までに開催する」と、延期日の目処に対する考えを明らかにしました。私たちインバウンド業界に身を置く者には、どのような影響があるのでしょうか。オリンピックが延期したことによるインバウンド業界へのインパクトは、ネガティブなものだけでなく、ポジティブな側面もあると考えています。二つに分けて説明したいと思います。
「五輪延期」のネガティブなインパクト:巨額の経済損失
ネガティブなインパクトといえば、主に宿泊施設、警備会社、不動産業への経済的な損失でしょう。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストによると、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は日本のGDPを1兆7,000億円押し上げる、といいます。この経済効果が一時的に「おあずけ」となった影響は大きなものです。
インバウンド業界という側面で見れば、交通インフラ、宿泊施設、飲食店、各種アクティビティ、小売店などへも多大なる影響を与えると考えられます。ラグビーワールドカップでインバウンド需要を取り込めた事業者は、オリンピックへの期待は一層高かったのではないかと考えられます。
また、関西大学の宮本勝浩名誉教授によると、開催1年延期に伴う経済的損失は6,400億円あまりにのぼるといいます。
これらのGDP押し上げの「おあずけ」および直接的な経済損失のマイナス効果は軽視はできないでしょう。
「五輪延期」のポジティブなインパクト:「最悪のシナリオ」は避けられた
ポジティブに受け取りたい事実としては、ともかくオリンピックの中止という「最悪のシナリオ」は避けられたことです。また、安倍首相が「完全な形」での実施を目指すと発言していたように、無観客開催といった「不完全な形」での開催で、オリンピックによる経済効果が目減りしてしまうような事態も避けられました。
延期決定は日本経済のみならず、インバウンド業界にとっても大きなダメージはあったものの、悲観し続けていても意味はありません。
延期という事実に直面した今、インバウンド業界関係者はこれから何をすべきかについて、建設的に考えてみましょう。
今からの一年間弱、何をすべきか?
もともと2019年から2021年の3年間は「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と呼ばれ、2019年のラグビーワールドカップを皮切りに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームと、世界が注目するスポーツイベントが連続して日本で開催される年として注目を集めていました。2021年は他にも、世界水泳選手権が7月16日〜8月1日、世界柔道選手権大会が9月12日〜9月19日に開催される予定です。
延期後のオリンピックの正式な開催日は未だ決まっておらず、2021年上半期開催も視野にあることから、来年はほぼ一年中、大型のスポーツイベントが目白押しとなることが予想されます。
こうした機運の中で、いかにターゲットに合わせたインバウンド対策がとれるかが重要であり、この一年間弱の期間はインバウンドの戦略の見直しや旅マエに向けたプロモーションの準備をする時だといえます。
オリンピックの開催が来年となった今、これからの一年間はどのようにインバウンドと向きあうべきなのでしょうか。地方自治体と民間事業者の視点から、私の経験も踏まえて解説いたします。
地方自治体がすべきこと:補助金の活用を
インバウンド業界に数年身を置いている方なら予想がつくかもしれませんが、新型コロナウイルスの終息宣言が行われたのちに、オリンピックに向けたインバウンド需要回復を目的とした補助金が拠出されることでしょう。
終息宣言が行われるまでの期間は、インバウンドに関する統計データをはじめとした情報をもとに、自身の自治体がどのようにして訪日外国人と向き合うかを再検討した上で、この補助金をいかに活用するかがキーポイントとなります。
戦略に沿って補助金をうまく使い、「日本(自身の自治体)は安全・安心」だということを、ターゲットの方に対して旅マエのフェーズで効果的にアピールしていくことが重要です。
民間事業者がすべきこと:体制を立て直すチャンス
民間事業者はもし今年オリンピックが開催されたとして、万全な準備で臨めていたでしょうか?万全だったと答えられる事業者はそう多くないのではないかと思います。そういった事業者の方々は、この局面において今回の延期はむしろ「チャンス」と捉えるべきです。だからこそ、インバウンドの客足が「底」を迎えるタイミングを読み、回復期を狙った本格的な準備を進めていくべきです。
一案としては、今後予想される自治体の公募案件への備えや、在日外国人のインフルエンサーを起用した日本の「安全・安心」PRの準備を今のタイミングで進めていくべきでしょう。
その他、経済産業省は事業者の支援を5,000億円規模で行うとしています。弊社の記事で補助金関係の情報がまとめられていますので、ご参考になれば幸いです。
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2021年のスポーツツーリズムイヤーに向けた準備を
オリンピックの延期が決定したことにより、結果的に2021年はオリンピック、柔道、水泳、マスターズなど世界的なスポーツイベントが夏から秋にかけて集中することが予想されます。昨年のラグビーW杯のように、スポーツツーリズムは欧米豪市場のインバウンドを取り込むチャンスです。
欧米豪市場のインバウンドを取り込むと考えた場合、一般的に旅マエの期間は早ければ1年、もしくは半年前からといわれています。
大会の開催から逆算すると、今年の秋には欧米豪市場への旅マエの情報発信をスタートするイメージです。それまでにはコロナが終息していることを願いたいものです。
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