※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。
日本オリンピック委員会(JOC)は、2030年冬季オリンピックの国内候補地を札幌に決定しました。
国際オリンピック委員会(IOC)は札幌について、既存施設を利用した開催が可能な点と、国と自治体の支持が得られている点を評価しています。
しかし市民による冬季五輪開催の支持率は伸び悩んでおり、札幌が今後、いかに市民の理解を得ていくかが注目されています。
本記事では、2030年冬季オリンピックの開催地選定の状況や、札幌市での取り組みをお伝えします。
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冬季オリンピック2030年について
2030年に開催される冬季オリンピックには、札幌のほかアメリカ・ソルトレイクシティーやスペイン・バルセロナ周辺が招致に関心を寄せています。
札幌は当初2026年の招致を目指していましたが、地震の影響などで2030年に目標を変更しました。今年1月にはJOCが札幌を国内候補地に決定したものの、冬季五輪開催に対する市民の支持が十分ではないという課題が残されています。
今後の冬季オリンピック開催地
冬季オリンピックは2022年に中国・北京で、2026年にはイタリアのミラノとコルティナダンペッツォでの開催が予定されています。2030年の開催地が札幌に決定すれば、札幌での冬季オリンピック開催は1972年から58年ぶりの2回目となります。国内では1998年の長野オリンピック開催以来、3回目の冬季オリンピック開催になります。
2030年の国内候補地に札幌が決定
札幌のほかにはアメリカの国内立候補都市に選ばれたソルトレイクシティーや、スペイン・バルセロナが2030年冬季オリンピックの開催に関心を示しています。
札幌は当初、2026年の招致を目指していましたが、胆振東部地震が起きた影響などで2030年に目標を変更しました。JOCは2019年の11月から12月にかけて国内候補地の募集を実施しましたが、立候補の意思を表明したのは札幌のみでした。
既存施設で対応可能な点が評価
IOCの将来開催地委員会は、費用負担などを理由に招致に消極的な都市が増えている状況を受け、設けられました。
そのIOCの将来開催地委員会は札幌について、既存施設を活用した開催が可能なこと、そして地元自治体と国が開催を支持している点を高く評価しています。
アメリカ・ソルトレイクシティについても既存施設ですべての競技会場をまかなえることを評価した一方、スペイン・バルセロナについてはジャンプの競技会場を新設する必要があると指摘しました。
開催費用を請け負う五輪開催地の選定にあたっては、候補地に既存設備が充実しているか否かも重視されています。
冬季オリンピックの課題
オリンピックの招致に関心を示す都市は減少傾向にあります。五輪開催に後ろ向きな都市では、費用の負担や、開催後の経済効果が保証されていないことが懸念材料となっているようです。
各国が開催地を辞退
オリンピックの招致を辞退したり、招致に関心を示さない都市が増えている状況を踏まえ、IOCは2019年6月に開催地の選定手続きを変更しました。オリンピックの開催地は原則、開催の7年前に決定するという規則を削除。時期にとらわれず開催地を決定できるよう、ルールを見直しました。
この手続きの変更により、2030年冬季オリンピックの開催地は2023年以前に決定する可能性も出ています。
辞退の理由
カナダ・カルガリーでも2026年冬季オリンピックの招致を決める投票が行われましたが、反対派は56.4%で否認。カルガリーの辞退は、費用の負担と経済効果の不透明さが市民の恐れをあおった結果ではないかとも指摘されています。
カナダ以外の都市でも同じく、五輪開催に消極的な傾向があります。
ギリシャ・アテネで開催された2004年夏季の五輪開催地には11都市が立候補していたものの、2024年のオリンピック開催地の募集に手を挙げたのはわずか2都市でした。招致に関心を寄せる都市が減少している様子がうかがえます。
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過去の大会では予算超過
過去の大会では予算の超過が相次いでおり、五輪予算の専門家によると「1960年以降の五輪は全大会で予算をオーバーしている」とも指摘されています。
史上もっとも費用がかかった大会はロシア・ソチで行われた2014年の冬季オリンピックで、510億ドル(約5兆7500万円)が費やされました。なお、2008年に開催された北京五輪の費用は400億ドル(約4兆5000万円)でした。
費用面の問題だけではなく、五輪用に建設した施設がほとんど使用されないなど、設備の放置も問題視されています。
札幌の取り組みと今後
2019年10月時点で、札幌市民による冬季オリンピック開催の支持率は46%でした。費用の負担を懸念する声も多く、招致に向けて十分な理解が得られた状態とは言えません。
開催地選定には市民の支持が得られているか否かも重視されるため、札幌には市民の理解を促すような働きかけが期待されます。
開催都市の市民の支持率がカギ
札幌が当初招致を目指していた2026年冬季オリンピックの開催地選定では、83%の国民と87%の市民から支持を集めていたイタリア・ミラノが開催地に決定しました。
もう一つの候補地だったスウェーデンでは住民の支持率が55%だったことからも、イタリアの招致の成功は住民による支持率の高さが決め手になったといわれています。
市民の賛否は拮抗している
2019年10月に北海道新聞が実施した調査によると、市民による冬季オリンピック開催の支持率は46%でした。札幌市・スポーツ局招致推進部の2019年7月の資料では、2014年時点で68%だった賛成率は2018年に51%を記録する減少傾向が続いており、現在は賛否が拮抗している状態です。
開催を反対する主な理由としては、「他にもっと大事な施策があると思う」が57%、「招致活動や施設の整備、維持にお金がかかる」が33%を占めていました。
開催地選定には市民の支持率も重視されることを踏まえ、札幌は年内にも支持率の調査を実施する考えを示しています。
予算の確実な見通しが必要
今年延期が決定した東京オリンピックでは、2013年の招致段階では7,340億円としていた経費が3兆円規模に膨らむとの見方も出ています。札幌の五輪開催についても費用負担を懸念する声が多いことから、招致に向けて確実な予算計画が立つか否かは、市民の支持率を左右するカギとなりそうです。
冬季五輪の開催を支持する意見には「インバウンド客の増加を見込めるのでは」という見解もあります。
加えて、札幌は将来的な人口の減少と、超高齢化社会へ進行していくことが懸念されており、そうした社会環境に合わせて都市機能をどのように整備していくのかという点にも関心が寄せられています。
市民の理解を得るためには、市民の不安を一つずつ払拭していく必要があるでしょう。
開催地の招致に期待
冬季五輪の開催に反対する札幌市民は、他の施策への人的・経済的リソースが減ることや、開催にかかる費用の負担を懸念しています。
一方で、冬季オリンピックが札幌で開催されれば、スノーリゾート都市としてのブランドを確立する機会にもなり、インバウンド客の増加を見込めるという見方もあります。
2030年度には北海道新幹線が札幌まで延伸される予定もあるため、招致が成功すれば北海道を活気づけるきっかけにもなるでしょう。
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