観光大国オーストラリアの新型コロナ対応総まとめ:13兆円規模の政府補償・懲罰ありの外出制限・日常生活への影響

世界中で猛威を振るうコロナウイルスは観光立国オーストラリアに甚大な損害と被害を与えています。

この記事では、コロナによる豪経済への被害や影響、政府が提案した補償策、人々の生活について現地よりお届けします。(検査数等の情報は特に断りがなければ2020年4月19日のもの、1豪ドル=67.83円で換算)

オーストラリア国内の感染拡大は3月上旬から加速

オーストラリアでは2020年1月に初の感染者が出た後、1月末日に感染者数9名、2月末日23人と緩やかでした。

感染者数が100名を超えた3月10日頃から急激に増加し、4月19日時点で、感染者数6,606名、死亡者数70名となっています。

新型コロナウイルスによる死亡率が低いオーストラリア

オーストラリア感染者数は6,000人を超えており、豪人口約2,500万に対する感染率は日本より高くなっているといわれています。

ところが、死亡率は他国と比べても低いだけでなく、集中治療室での治療者数も48名と少なく、重症患者が少ないことも特徴的です。

政府もこの要因を解明できていませんが、現地報道では一つの要因として、国外感染者が多くそのほとんどが若い世代だったため、回復したからではないかと言われています。

海外からの帰国者への扱い、検査数が影響?

また、現在海外からの帰国者は強制的に14日間の隔離措置がとられ、国内到着後ホテルなど政府が決めた期間で検疫の結果を待つ必要があります。この滞在場所として多くの都市で5つ星ホテルが使用されていますが、ホテルまでの移動費、滞在費、食事など全てを検疫の費用として国が負担しています。

また、もう一つの理由として、挙げられているのが検査数です。オーストラリアでの総検査数は42万件で、人口1,000人当たりの検査数では、感染者が多いイタリアの約16人に最も近い約13人にものぼるというデータがあります。

この検査数の多さが、早い段階でウイルスの重症レベルを正確に把握できることにつながり、結果として死亡者数を少なくおさえられたのではとの見方もされています。

しかし、市中感染増大の予断が許されない現在、オーストラリア国内の感染ピークはまだ迎えていない可能性が高く、引き続き厳しい規制が必要だとの情報もあります。

コロナウイルス流行のオーストラリア各観光地への影響

2019年後半からオーストラリア観光業界は多くの危機に直面しました。観測史上最悪と言われる大規模な森林火災や大雨による洪水による被害などで、一部の観光スポットが閉鎖になりました。

インバウンド需要が特に見込まれる旧正月春節)の期間には例年中国からの観光客を乗せた観光バスが多く見られますが、今年は新型コロナウイルスの影響で、どこの観光地もとても静かな状態になってしまいました。

また、2月、3月上旬はコロナウイルスへの警戒は強まってきていたものの、日本を含む他国の観光客は訪れていました。

感染者が急増した3月中旬頃からキャンセルが相次ぎ、3月19日には市民権、永住権保持者以外の入国が原則禁止が決定されます。観光業は壊滅的なダメージを受け、多くの企業がスタッフの解雇、削減を余儀なくされました。

▲年間約1,000万人が訪れるオペラハウス。今までにない静けさを見せています。
▲年間約1,000万人が訪れるオペラハウス。今までにない静けさを見せています

インバウンド観光市場はシュリンク

オーストラリア政府観光局によると、2019年度観光客数は約950万人、総消費額は454豪億ドル(約3兆円)であり、国際観光収入ランキングでは世界7位に入るほどのインバウンド先進国です。

しかし今回の新型コロナウイルス対策により鎖国状態となり、この需要はほぼ見込めないものとなりました。

観光業界への影響は少なくとも12か月続くと予想されており、政府からサポートが得られない場合、多くの従業員が仕事を失うとみられています。

観光業以外にも大きく影響:留学、海外からの人材が入国できず

また、コロナウイルスの影響は世界各国から留学生を受け入れる教育業界、深刻な労働者不足をワーキングホリデービザホルダーや学生ビザで補っている畜農業などにも出ています。今後、オーストラリア経済全体への影響は避けられないとみられています。

豪経済減速の影響は在豪日経企業にも出ています。NAA豪州の調査によると、在豪、ニュージーランドの日系企業を対象にしたアンケートで76%の企業が「影響が出ている」と答え、前年比で売上が減ったと回答した割合は6割に昇りました。

ただし、豪、ニュージーランド政府の対応については約8割が評価できると答え、窮地ではあっても政府への高い信頼を感じていることが浮き彫りになりました。

豪インバウンドの復活の道は?

コロナウイルスのワクチンが開発中の今、インバウンドの厳しい状態はまだまだ続くと言わざるを得ません。

オーストラリア政府は企業や人々をサポートする経済対策を発表し、その一つに観光、教育、農業など大きく経済的影響を受けた産業への10億豪ドル(約678億円)の基金も含まれています。

約90%が従業員5人未満のスモールビジネスである観光業界は、こうした政府のサポートを活用しながら過去に例を見ない冬の時代をまず耐え凌ぐことが、コロナ収束後に向けた復活の道になっています。

首相支持率は過去10年で最高に:新型コロナウイルス対策の経済刺激パッケージ

豪政府は新型コロナウイルスに対する経済影響を緩和するため、経済刺激パッケージを発表しました。

このパッケージは2回に分けて発表されました。政府およびオーストラリア準備銀行による支援策と合わせて、総額1,890億豪ドル(約12兆8,000億円)、GDPの約10%が投入される見込みです。

この支援策によって、企業や家計を支える姿勢を見せたモリソン首相の支持率は、3月の41%から、過去最高の59%を記録しました。

企業への支援

特に中小企業に関連するサポートをいくつか紹介します。

この後に紹介するジョブキーパーペイメントは1,300億豪ドル(約8兆8,000億円)規模の賃金補助政策で、オーストラリア史上最大の単一の政府支出となります。

この法案は発表後大きな話題になり、法案が可決される前にすでに73万社以上がプログラムに登録しました。


・従業員への賃金補助(JobKeeper Payment)

新型コロナウイルスの影響を受けている企業などが、賃金の支払いを継続するための補助金です。
従業員一人につき、2週間あたり1,500豪ドル(約10万1,750円)が支払われます。
カジュアル(日本でいうアルバイトのような、出勤日数、時間等に制約がない雇用形態)は、雇用期間が1年以上という条件がありますが、16歳以上のフルタイム、パートタイム、カジュアル全ての従業員に支払われます。
この補助金は会社を通じて支払われますが、通常雇用時の給料額にかかわらず全額従業員に渡されるものとなり、会社が一部を差し引くなどの行為は禁止されています。

・源泉徴収額の免除、返金(Cash Flow Boost)
雇用者に対してのキャッシュフロー支援で、従業員の給料から差し引く源泉徴収が免除、返金となるサポートです。年間売り上げによって補助額が異なりますが、最低2万豪ドル(約135万円)、最高10万豪ドル(約638万円)の補助を受けられます。

・固定資産の一括減価償却額の引き上げ(Increasing the instant asset write off)
年間売り上げが5億豪ドル(約339億円)以下の企業限定で、減価償却対象になる固定資産の一括減価償却額のリミットが、3万豪ドル(約203万円)から、15万豪ドル(約1,017万円)まで引き上げられました。
2020年3月12日から年度末の6月30日までの期間限定ですが、機材や車などの資産が経費として一括で計上できます。

・アプレンティス、トレーニーへの給料補助(Apprentice and trainee wage subsidy)
オーストラリアには、見習い制度と呼ばれる、職業訓練学校で勉強中に賃金を得ながら、実務経験を積める制度があり、これによる就業者はアプレンティス、トレーニーと呼ばれます。
見習い制度下での従業員を雇っている企業に対し、2020年1月から9月の期間中、一人当たり最大2万1,000豪ドル(約14万5,000円)まで、給料の50%を支給します。
他にも運転資本として使用される場合、無担保ローンのの元金を政府が50%補償などが盛り込まれ、これ以外にも各州政府による、サポートや、電話、電気などの会社による中小企業へのサポートが行われています。

個人への支援

今回の経済支援パッケージは個人へのサポートも充実しています。

失業・育児手当など、通常福祉金受給は全てセンターリンクと呼ばれる機関に出向き、申請する必要がありますが、コロナウイルスによる福祉受給金を受け取るために、受付開始時間前に100人以上の人が並ぶ列ができてしまい、ニュースになりました。

政府はこの事態を重く受け止め、すぐにオンラインの環境を整え、オンラインでの申請に誘導しています。


・失業手当の条件緩和+コロナウイルス追加補助
失業手当をもらうには、世帯収入、資産査定、永住権の場合は取得からの経過期間、個人事業主は受給不可など厳しい条件がありましたが、これらが大幅に緩和、一部免除されました。
さらに失業手当などの受給者には2週間あたり、550豪ドル(約3万7,000円)のコロナウイルス追加補助を受けられます。

・収入補助受給者への一時金支給
多くの子育て世帯がもらっている育児手当など、社会補助受給者を対象に、一時金として受給者一人につき750豪ドル(約5万円、非課税)が支払われました。
一時金の支給は2回行われる予定で、7月ごろ第2弾が行われる予定です。

・保育園支援パッケージ
この補助は保育園の運営継続の支援するための補助ですが、利用家庭に対し自己負担金なおの差額を含む料金を請求しないなど、子育て世帯にも大きな支援となりました。
多くの家庭がコロナウイルスの感染防止のため欠席または退園を選択していましたが、この支援により欠席扱いで保育園の席を確保でき、いつでも登園できるようになりました。
また、預けなければいけない事情がある家庭にも廃園、休園になることなく安心して預けられる支援になっています。

・スーパーアニュエーション(私的年金)の引き出し
オーストラリアでは公的年金の他に、雇用者負担で積み立てる私的年金があり、個人で追加で積み立てることもできますが、原則65歳になるまで引き出すことができません。
スーパーアニュエーション(私的年金)と呼ばれるこの制度では、雇用主により、従業員の給料額の9.5%を従業員加入の私的年金口座に振り込みます。ビザ、雇用形態関係なく、全従業員が対象です。
今回は経済的苦境を理由に、65歳未満でも年度をわけて一回につき1万豪ドル(約67万8,300円)、最大計2万豪ドル(約135万6,600円)を引き出せることが決まりました。
また通常引き出す場合は税金がかかりますが、今回は非課税となります。


これ以外にも、家賃支払い義務が果たせない場合の6か月にわたる立ち退き猶予や、各州政府が発表したサポートがありますが、これらのほとんどは市民権、永住権保持者に向けたものです。

学生ビザ、ワーキングホリデービザなどの他ビザホルダーはほとんどが対象外になっています。このため、日本領事館は、経済的に厳しく家族などの経済的援助を受けられない場合には帰国を強くすすめる旨を発表しており、実際多くの人がビザの有効期間が残っていたとしても帰国という選択をしています。

ロックダウンの状況、自宅待機でオージーライフはどう変わったのか

オーストラリアの状況は3月18日の非常事態宣言から日に日に変化しています。海外への渡航禁止、外国人の入国禁止に加え、各州が次々と州境閉鎖措置など厳しい規制を発表し、生活は大きく変わりました。

また、一時期よりは落ち着いたものの、コロナウイルスによる騒ぎにより、「パニックバイイング」と呼ばれる買いだめが起きました。

トイレットペーパー、米、小麦粉などが品薄になり、各小売店では購入個数制限をするなどの対応を行なっています。

厳しい制限措置、スーパーは入場制限

屋内外問わず家族以外との面会は2人まで、葬儀は10人、結婚式は新郎新婦含め5人までと定められています。

カフェ、レストランはテイクアウトのみの営業で、常にソーシャルディスタンスは1.5メートルを保つ必要があり、スーパーなど行列ができやすいところにはあらかじめ1.5メートルごとに印がつけられ、入場制限も始まっています。

買い物、運動などの生活に必要な行動はできますが、不可欠な国内旅行やサバーブ外への移動は禁止されています。

ビーチに出かける人々、立ち止まって話すこともNG

規制の中、持て余した時間を使うためビーチに多くの人が集まりシドニーの有名なビーチが閉鎖となりました。その後も家の近くではないビーチで日焼けや運動をする人が多いことを受けて、各地のビーチが閉鎖となりました。

面会人数を守れば友人などとの運動も可能ですが、立ち止まって話すことや、外で食事をすることは違反の対象になってしまいます。

違反を取り締まるために警察が州境や高速道路、住宅街などを巡回し、怪しい場合は声をかけます。正当な理由がない場合には、州によっては最大1万豪ドル(約68万円)を超える多額の罰金や懲役刑を課せられる場合があります。

子供向けテレビでも「ソーシャルディスタンス」を教育

公園の遊具も使用できないように整備され、親たちも外出が厳しい中どう子供達を遊ばせるか考える日々です。

子供向けのテレビでも、ソーシャルディスタンスを教えるために両手を広げた距離をお互い保とうと歌いながら教えています。

日に日に措置はアップデートされ、厳しくなっていますが、こうした自宅待機の規制は新規感染者数の減少につながっています。

▲豪保健局が毎日発表している感染者の推移。3月23日の自宅待機などの規制から新規感染者数は目に見えて減っています
▲豪保健局が毎日発表している感染者の推移。3月23日の自宅待機などの規制から新規感染者数は目に見えて減っています

オーストラリアの助け合い精神「Mateship」の心

このような厳しい状況下ではありますが、オーストラリアに息づく、Mateship(助け合いの精神)が様々な場所で見受けられます。

面会人数制限のため誕生日パーティが開けない子供のために、通りをデコレーションをして、ソーシャルディスタンスを保ちながら通りすがりや、車から祝いの言葉をかける心温まるニュースも報じられています。

町内によってはFacebookでコミュニティグループを作成して情報交換しているそうです。

家の前に食べ物や、入手が困難なトイレットペーパーを無料で分け合うスペースを作るなど、この困難な状況を乗り越えようとする人々の姿を多く目にします。

▲地域住民有志で作られた、シェアケアスペース。オージーの助け合い精神が詰まっている
▲地域住民有志で作られた、シェアケアスペース。オージーの助け合い精神が詰まっています

観光立国であるオーストラリアが、国、州政府の強い政策、国民性により耐え忍んだ後、どんな経済施策で経済成長を続けていたインバウンド先進国へ戻るのかは、日本の観光業界にとっても注目のトピックといえるでしょう。

<参照>

https://www.health.gov.au/sites/default/files/documents/2020/04/coronavirus-covid-19-at-a-glance-coronavirus-covid-19-at-a-glance-infographic_16.pdf

https://www.tourism.australia.com/content/dam/assets/document/1/c/0/i/f/2240151.pdf

https://www.nna.jp/news/show/2029383?id=2029383


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!