国立競技場、Osaka Metroと同じ轍を踏まないために…「残念な外国語」防ぐには?

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2019年は、翌年に控えたオリンピック開催に向けて、各所で「インバウンド対策」が早急に進められてきました。

日本のインバウンド受け入れ整備には様々な課題が指摘されてきましたが、「和製英語」もその一つです。

「和製英語」とは、ネイティブに伝わらない日本語表現をベースにした英語表現で、SNSでは「残念な外国語」として取り上げられている様子が見られます。

オリンピックの開催に伴い竣工した国立競技場にも、こうした意味の通らない外国語表記があふれているとして、話題となりました。

この記事では、和製英語の問題点や、自動翻訳ツールを使う場合に注意したいことなど、多言語対応における課題について、実際の例から考察します。

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多言語対応の失敗例

多言語対応」は、インバウンド対策のなかでも代表的な施策です。

しかし、単に外国語を併記するだけでは、インバウンド対策の本来の目的である「日本語がわからない旅行者が情報を理解できるようにし、滞在を楽しめるようになる」ということを実現できない場合もあります。

1. 国立競技場にあふれる「不自然な英語」

2019年12月、国立競技場が各メディアに向けて公開されました。この際、各所に施された英語表示が非常に不自然であるとして話題を集めています。

当時、案内のためのディスプレイには「HELLO,OUR STADIUM」という表示があり、これがTwitterにアップされています。

日本語の感覚をもとにこの英語を読めば、これを目にした人に歓迎の意を伝えたい発信者の意図を感じることができるかもしれません。

しかし、英語のネイティブスピーカーにとっては違和感を感じさせるようです。「Hello new stadium!」や「WELCOME TO OUR NEW STADIUM」であれば上記のような意図が通じるはずとの意見が見られました。

新国立競技場の不自然な英語について紹介するTwitterの投稿
▲新国立競技場の不自然な英語について紹介する投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:新国立競技場の不自然な英語について紹介する投稿(https://twitter.com/Urbandirt/status/1206067353739354112)

国立競技場には日本人の来場者も多いと考えられますが、オリンピック開催時には多くの外国人も観戦に来るはずです。ネイティブスピーカーや、訪日外国人にとって違和感なく意味が読み取れる表現を調べ、採用すべきだったでしょう。

同じく国立競技場には「情報の庭」という場所があります。この「情報の庭」の訳として「Joho no Niwa」というアルファベットが併記されています。

新国立競技場の多言語対応の失敗例を紹介するTwitterの投稿
▲新国立競技場の多言語対応の失敗例についての投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット
Twitter:新国立競技場の多言語対応の失敗例についての投稿(https://twitter.com/AlastairGale/status/1206116235575873541)

これでは日本語のわからない来場者にとって、何の意味もくみ取れません。

実際のところ、この「情報の庭」はイベント開催のための空間です。「ジョウホウ」という名称にこだわりがあるのなら「Event space "Joho no Niwa"」という形で日本語の音を残し、同時に意味を伝えることのできる形が、本当に有効な「多言語対応」です。

2. 御堂筋線=「マッスルライン」をそのまま掲載してしまったOsaka Metro

2019年の3月には、国立競技場の英語同様、大阪メトロの英文ページの訳が不正確であるとして、ネットユーザーの間で話題となりました。

「堺筋線」は「サカイマッスルライン」、「御堂筋線」を「ミドウスジマッスルライン」、駅名の「太子橋今市」は「プリンスブリッジイマイチ」となっており、それぞれ駅名の中の漢字を、固有名詞と識別せずに訳出していた自動翻訳ツールのアウトプットを、そのまま公の場に出してしまったといういきさつだったようです。

機械翻訳の誤訳に要注意、多言語対応前に知っておきた機械翻訳ソフトの仕組みと苦手なこと

2019年3月18日、大阪メトロの公式サイトの外国語ページで複数の誤訳が見つかったという理由で、外国語ページが全面非公開に追い込まれるという事態が発生しました。増え続けるインバウンド旅行客の利便性を向上させるつもりが、全く伝わらないどころか、笑いのタネにすらされてしまいました。今回は、そもそも機械翻訳ソフトはどのような仕組みで訳文を作り出しているのか、「機械翻訳ソフト」が「苦手なこと」は何か、インバウンドで成功するためにはどのように「多言語翻訳」に向き合えばよいのかを解説していきます。目次...


3. 適当な「中国語」

誤訳が生まれてしまうのは英語だけではありません。

日本における中国語の誤訳について紹介するTwitterの投稿
▲日本における中国語の誤訳について紹介する投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:日本における中国語の誤訳について紹介する投稿(https://twitter.com/63710847Kin/status/1085532214832508928)

資料が置かれていると思しきデスクに張られた「ご自由にお取りください」という案内に併記された中国語について、まったく意味が伝わっていないとしてSNSで指摘されているケースもあります。

中国語の意味は「你有你的自由」(あなたにはあなたの自由がある)となってしまっています。

おそらくは訳出した際に、中国語で「自由」という単語が使われる場面が、日本語の「自由」が使われる場面と異なるということを理解していなかったことが一因に考えられます。

日本における中国語の誤訳について紹介するTwitterの投稿
▲日本における中国語の誤訳について紹介する投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:中国語の誤訳について紹介する投稿(https://twitter.com/chibatch_/status/1180331636350521344)

ゴミの分別を示す「ペットボトル」の「ペット」を、愛玩動物(コンパニオンアニマル)と訳してしまっているケースもあるようです。

日本だけじゃない…中国の変な日本語

同じような不自然な外国語訳は、海外でも珍しくはありません。

海外の空港における日本語の誤訳について紹介するTwitterの投稿
▲海外の空港における日本語の誤訳について紹介する投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:海外の空港における日本語の誤訳について紹介する投稿(https://twitter.com/JA520N/status/1236136092614750208)

日本語は「漢字」「ひらがな」「カタカナ」の3つの文字を用いて表記しますが、日本語を母語としない人の場合、似た字体をあてはめてしまうことがあるようです。

「ホンコン」と表記すべきところ、形の似ている「木」「ソ」を用いた案内版が、国の玄関口ともいえる空港で採用されてしまっています。

国立競技場や地下鉄の不自然な外国語表記がどのくらいショッキングな印象を与えるのかは、このような事例をみれば想像できるのではないでしょうか。

また、中華料理の一つである「肉夹馍」は、いわば中国式のハンバーガーですが、日本語でどのように表記すべきかわからなかったのか「肉じゃが」と訳しているレストランもあります。

▲[肉夹馍(中国式ハンバーガー)=肉じゃが]

▲[肉夹馍(中国式ハンバーガー)=肉じゃが]

無料で利用できるオンラインの翻訳サービスの機能が向上し、それに頼ればよいと考える場合もあるかもしれません。

翻訳の敷居が下がるのは良いことですが、翻訳した資料や看板を掲出する際には、ネイティブのチェックや、それでおかしくないか再度検索をかけるといった誤訳発見の対策を講じるべきでしょう。

訪日外国人観光客の増加に伴い、多言語対応が求められている

2019年の訪日外客数は、3,188万人となりました。

観光立国を目指し、日本政府は各国での旅行博参加などプロモーションに取り組んでいます。また企業や自治体も、現地向けに情報発信をし、訪日旅行の魅力を訴求しています。

こうして高まった認知をベースに、実際に日本に足を運んでくれた訪日外国人に対して、その期待に応えられるかどうかには、多言語対応の質も大きく影響するはずです。

主に求められる言語は「英語・中国語・韓国語」

2019年の訪日観光客の内訳を見てみると、中国・韓国・台湾・香港の東アジアの国々が70.9%を占めています。次にアメリカ・オーストラリア・フランス等の欧米豪が12.9%、その次にタイやフィリピンといった東南アジアが11.9%となっています。

世界の共通語である英語と、市場7割を占める東アジアの言語への対応に優先的に対応し、観光客の割合によってはその他の言語についても対応していくべきでしょう。

多言語対応は慎重に

意味が伝わらない英語や中国語を記してしまえば、失笑を招くばかりか、情報が伝わらず、せっかくの日本滞在での様々な機会を逃してしまうことにもなりかねません。

無料で利用できるオンラインの翻訳サービスでも対応できる範囲はありますが、できるかぎりネイティブチェックにかけたり、施設など観光コンテンツの「顔」となるような場所では、有料の専門業者を頼ることも検討すべきでしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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