6月4日(木)楽天グループのインバウンド向け体験予約サイト『Voyagin』は、 自治体向けに「体験商品」造成における考え方や、市場国別のトレンド、 成功事例などを紹介する基礎セミナーを開催しました。
新型コロナウイルス流行とその後の観光市場への影響をふまえて、渡航の正常化を待つ今、地方ができることは何なのか、またこれからの地方はインバウンド市場を前にどのようにターゲットを設定するべきなのかについて、理解が深まる時間となりました。
同セミナーに出席した訪日ラボ編集部が、内容の一部を紹介します。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
ウィズコロナ・アフターコロナでも「リアルの体験」で攻めるべき観光市場
Voyaginは、訪日観光客のニーズに沿った「付加価値型の体験コンテンツ」を、オンラインで販売しています。
インバウンド市場における「コト消費」という分類が提唱されて久しいですが、新型コロナ以降、海外との行き来が大きく制限されるなか、体験商品の開発、購買にどうつなげるかという点で課題感を持つ事業者も少なくないでしょう。
オンライン体験が広く人々に認知され始め、実際に成功例も出てきています。人込みに出かけずに体験の価値を確認できる点は、参加者の満足感を高めていると考えられます。
こうした中においても、Voyaginでは、「五感を刺激するリアルの体験」にこだわるべきであると考えるといいます。
体験商品の作り方:「安心」が必要な時代に注目すべき、自然・アウトドアの体験
世界各国でもオンライン体験の名のもとに、様々なジャンルのコンテンツの提供が進んでいます。それと同時に、ソーシャルディスタンスを意識したユニークな取り組みも見られています。
たとえば、アメリカのサンフランシスコの公園では、グループごとに滞在すべきエリアを、芝生の上に白線で示しています。また、ドライブインシアターは世界各国で事例があります。
多数の他人と同じ空間に滞在しないで済むことが、新型コロナウイルスの感染予防となります。こうした事例で用いられている、滞在時の「安心」の形を観光に応用することが、ウィズコロナ時代の「新しい観光コンテンツ」の一つの正解ということになるでしょう。
たとえば「自然・アウトドア」を主軸に据えた旅行は、観光客が安心して楽しめる一つの形式です。
カヌーの上にテーブルと椅子をセットして水上で食事を楽しんだり、各コテージに距離のあるキャンプ場で滞在する旅行は、ウィズコロナ時代にふさわしい旅行スタイルと考えられます。ウイルスの感染予防のリスクを最小限に抑えた滞在であり、なおかつその土地でしか味わえない自然環境を五感で受け止めることが可能となります。
実現にあたっては、ガイドラインの作成や受け入れ側の人材育成、地元観光資源の保全といった複数の領域での準備と、観光資源の魅力の定義づけやプロモーションをバランスよく進めていく必要があります。
渡航の正常化を待つ今、観光客の受け入れに即時結びつくことはなかなか期待できませんが、ガイドラインの作成等の準備、観光資源の魅力の定義づけやプロモーションには着手できると考えられるでしょう。
Voyaginの主要顧客層は英語圏
Voyaginの主な顧客層は、アメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダ等英語圏のユーザーであり、近年では中国、香港、台湾、韓国など東アジアや東南アジアのユーザー数も伸びています。
ユーザーは日本での体験・ツアーといった体験商品を予約します。一件の予約あたりの参加人数は1~3名が最も多く、旅行の形式はFITです。
実績ベースの人気カテゴリは「観光名所ツアー」が20.6%、「フード・ドリンク」が16.4%、続く「自然・アウトドア」が13.5%です。その他、テーマパークやローカルツアー、工芸・アート、伝統文化、リラクゼーション等が続きます。
2019年9月に開催されたラグビーW杯ではイギリスやオーストラリアからの訪日外客数が激増しましたが、この増加を受けて、体験商品を販売するVoyaginでも予約件数の増加が見られました。
FITとは?個人旅行が増加
近年、観光客のニーズの多様化により、パッケージツツアーを利用せずに個人で旅行を手配をする人が増加しています。こうした個人手配の海外旅行のことを
ラグビーW杯で世界が感激した「日本の良さ」…経済効果のインパクト・海外の反応・海外メディアの反応を総まとめ【年末振り返り】
2019年、日本で行われた世界大会で最も注目されたのがラグビーワールドカップ2019日本大会(以下、W杯)です。海外メディアで絶賛されたり、経済効果のインパクトも収支予想よりも48億円上振れるなど、結果を振り返れば大成功を収めた本大会。国内では流行語大賞にも関連ワード5つがノミネートされ、そのうち「ONE TEAM」が年間大賞に選ばれました。12月11日に丸の内で開催された「ラグビー日本代表ONE TEAMパレード ~たくさんのBRAVEをありがとう~」には、平日にもかかわらずファン約5万...
量から質への転換
観光庁が毎月発表している統計では、訪日外客数は2019年末まで、年々増加していました。ところが、訪日外国人の費目別旅行消費額に着目してみると、「娯楽等」の消費額は平均で6,383円ととても高いとはいえません。
また、「訪日旅行市場」という指標では日本のインバウンド業界は確かに成長していますが、世界の「海外旅行市場」というマーケットで訪日旅行市場をとらえてみると、スペインやフランスなど、まだまだライバルとの間には実力の差があるといえます。
こうした背景に加え、新型コロナの流行収束と観光市場の回復には時間がかかると考えられることから、Voyaginではまずは、従前から指摘されていたように「旅行消費額」全体の向上を図るべきであると主張しています。
Voyaginの執行役員 宮崎有生氏によれば、「娯楽等」の消費額の押し上げを主眼におき、宿泊・飲食・交通費といった項目でも単価の上昇を起こすことで、旅行消費額全体の向上も目指せるといいます。
そして、高付加価値の体験コンテンツこそ、こうした消費傾向を引き起こすために重要な存在であると指摘しています。
観光庁「訪日外国人消費動向調査」2019年のトレンドはラグビーW杯で英仏「激増」&インバウンド消費7年連続で過去最高
観光庁は2020年3月31日、2019年の「訪日外国人消費動向調査」を発表しました。インバウンド消費額は4.8兆円、訪日外国人客数は3,188万人と、ともに前年を上回り、過去最高を記録しました。また2019年秋にはラグビーW杯が開催されたことから、欧米豪を中心に、期間中のインバウンド動向に大きな変化が見られました。今回は、観光庁が発表した最新の「訪日外国人消費動向調査」のデータをもとに、インバウンド消費の数値的推移や訪日目的の変化、さらに2020年の見通しなどについて解説します。関連記事2...
訪日消費額、前年同期の3分の2に満たず…新型コロナ影響、1人当たり消費額は微増【観光庁:訪日外国人消費動向調査2020年1
4月15日、訪日外国人消費動向調査1-3月期の1次速報が発表されました。調査結果には、新型コロナウイルスの影響が顕著に表れています。同日に発表された訪日外客統計では、訪日外客数は前年同月比93%減という結果になっていました。今回の消費動向調査速報では、訪日旅行消費額が前年同期比3分の2以下に減少したことが明らかとなりました。訪日外客数のデータと比べて減少率が低くなっているのは、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する以前の1、2月のデータも含んでいるためであり、次期はさらなる減少が予想され...
狙うべきターゲット層は「Educated Traveler」「SIT」
インバウンド市場のうち、人数ベースでは大きな比率を占める団体旅行客ですが、低予算、短期滞在であることから、あまり大きな消費額は期待できません。
それでは、一回の滞在での消費額が100万円以上と定義する「富裕層」を狙えばいいのかというと、彼らの場合ニーズが様々であり、手配の難しいコンテンツを希望されるだけでなく、予定の変更もちゅうちょなく行う方も少なくないため、手配にかかるコストは小さくないといいます。
そこでVoyaginでは、限られた予算でインバウンド戦略を実行していく自治体は、団体旅行と富裕層の間の予算で旅行をするFITを意識したコンテンツ開発や訴求を行っていくべきだと考えているそうです。
セミナーでは、FITの中でも旅慣れた旅行者である「Educated Traveler」や、特定の趣味(自転車、スキー、武道、アニメ、芸術、建築、アートなど)を深く追求する「SIT(Special Interest Traveler)」というカテゴリに分け、その消費者心理について共有しました。
Educated Travelerは観光名所だけでなく、文化・歴史的背景を学ぶことや、異文化交流に重きを置き、そのための時間や予算を惜しまない傾向にあります。SITの場合は、趣味嗜好にマッチすることへの投資に非常に積極的です。
![▲[自治体がターゲットにするべき層]:Voyagin ▲[自治体がターゲットにするべき層]:Voyagin](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6757/main_voyagin.png?auto=format)
着目すべき「予約のタイミング」RWC期間には、体験当日から3日以内のブッキングが約29%
Voyaginの主要顧客層である英語圏のユーザーの訪日旅行における体験予約のタイミングに着目してみると、2019年ラグビーW杯の際には、体験当日から2週間以内の予約が約55%、そのうち体験当日から3日以内が約29%で、全期間のうち最多を占める結果となりました。
今後、英語圏からの訪日外国人に向けたコト消費の訴求においては、体験当日や前日の予約に対応できる体験商品を準備できるかどうかも重要な指標となりそうです
また、観光客の渡航正常化について正式な発表がなされていない今、自治体やインバウンド関連の事業者は、訪日外国人をターゲットにした体験商品に向き合うタイミングなのかどうかという疑問を抱く場合もあるでしょう。
これについてVoyaginのコンテンツプロデューサーのアレクサンダー・スタンコフ氏は、今がそのタイミングととらえて問題ないと話します。
確かに、2020年度に関しては、海外旅行を検討していた日本人の国内旅行需要への振り替えニーズが見込まれます。ところが中長期的には、人口減少と繁忙期分散のハードルの高さから、訪日観光客の取り込みは間違いなく必要になります。
セミナーでは、訪日観光客の戻るタイミングについて具体的な予測も交えてお話しされています。また地方の観光資源の磨き上げの方策のヒントについても複数の視点から提言しており、参加者にとって次のアクションにつなげることのできる情報共有となったようです。
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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