訪日教育旅行とは|交流国・日本に対する評価・意義とメリット・受け入れの流れ・費用の考え方・事例

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訪日教育旅行とは、海外の学校に通う生徒が引率教師の下、教育の一環として日本語学習や文化体験などさまざまな学習目的を持ち、日本を訪れる団体旅行のことを指します。

文部科学省が2019年8月27日に発表した調査によると、2017年度の「高等学校等における学校訪問を伴う外国からの教育旅行の受入れ」人数は39,531 人であり、前回2015年度の調査と比較し6,730 人増加しています。

また、受入れ学校数も2004年度は僅か806校であったのに対し、2017年度は1,256校に拡大しており、生徒間での国際交流促進や地域の観光振興など、各ステークホルダーに対し恩恵を生み出すという点で注目度が高まっていることがうかがえます。

本記事では訪日需要回復後、増加が見込まれる訪日教育旅行者を受け入れるにあたり、導入までのプロセスや成功事例にみる重要なポイントについて解説します。

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訪日教育旅行とは

近年需要が拡大傾向にある訪日教育旅行では、異文化交流の質を高めるために、学校への訪問や日本人の家へホームステイするといった、交際交流を狙ったプログラムが人気を集めています。

また、日本は治安が良いことや、教育水準が高いレベルにあることで知られており、これらが訪日教育旅行先としての日本の人気を下支えしています。

主な交流国:台湾、中国、アメリカ、韓国、オーストラリア

文部科学省が2015年に調査した「高等学校等における国際交流等の状況について」によると、台湾からの訪日教育旅行者が全体の23%を占めており、次いで中国が13%となっています。その後はアメリカと韓国が同率9%、オーストラリアが8%の割合を占めている構成になっています。

国や地域によって、教育旅行の目的やニーズは異なります。たとえば、台湾では学習素材として教育色の豊かなプログラム、オーストラリアでは日本文化体験やスポーツ交流などのプログラムが人気となっています。

そのため、訪日教育旅行者がどのようなニーズを持って旅行先を検討しているのかを理解することが、受入れ国や誘致する自治体にとっては非常に重要です。

また、日本は他のアジア諸国と比べて旅行費用が割高となる傾向があり、価格競争の面で不利な立場ですが、旅行先での安全面や教育の高い質などは、他国と差別化が可能な日本ならでの強みとして訴求できるでしょう。

教育旅行が自治体にもたらすメリット

訪日教育旅行は、受け入れ学校と生徒、そして自治体に「教育的メリット」と「経済的なメリット」をもたらします。

さらに具体的に分けると以下のように6つのメリットになります。

  1. 国際理解教育の促進
  2. 実践的な英語学習
  3. 主体的・対話的で深い学びの実現
  4. 地域社会との連携強化
  5. 継続的な国際交流の足がかりに
  6. 将来の観光リピーター獲得による地域振興への期待

冒頭3つの「国際理解教育の促進」「実践的な英語学習」「主体的・対話的で深い学びの実現」に関しては、受け入れ先の「生徒」に対する具体的なメリットです。

特に文化圏が異なる者同士の同世代間での交流は、今までの常識などの相対化、あるいは客観視する機会となり、視野を広げるという意味では実用面だけに収まらない大きな恩恵が期待できます。

続いて「地域社会との連携強化」「継続的な国際交流の足がかりに」に関しては、受け入れを行う「学校側」のメリットになります。地域が一致団結をし、訪日教育旅行への受け入れ体制を強化することは、ひいては地域社会の連携強化につながり、長く信頼関係を築く上では重要な布石です。

最後の「将来の観光リピーター獲得による地域振興への期待」に関しては、受入れ地域の具体的なメリットです。訪日教育旅行者は、将来リピーターとして家族や友人を連れて訪日する可能性が高いため、インバウンドによる地域の振興へつながると期待されています。

新型コロナ収束後に訪日教育旅行をする・検討するために

新型コロナウイルスの影響で、一時的に訪日教育旅行の誘致が難しくなっています。一方で、受け入れ準備に時間を確保できるようになることは、ポジティブな側面と言えるでしょう。

訪日教育旅行受け入れまでの流れ

受け入れまでの全体的な流れは、JNTOが国内の一元的な窓口となって海外の学校や旅行会社からの訪問申請に対応します。そして、訪問希望校の訪日ニーズや希望に合わせて、各自治体において教育旅行を担当している部署に受け入れを依頼し、その後、各自治体の訪日旅行担当者が受入れ校の選定を行い、対象校へ依頼を行います。

受入れ校が決定し、訪問側と無事マッチングした後に、教育プログラムなど細い調整を行う流れとなります。

成功のポイント1. 連携・調整

受け入れまでの連携や調整業務の観点で、重要なポイントが3つあります。

1つ目は、観光機関との連携を密に行うことです。受入れ校と地域が、JNTO、観光部局・教育部局・教育委員会など様々なステークホルダーと密な協力体制をつくり、地域が一丸となり、受け入れの成功という目標に向かっていくことが重要です。

2つ目は、訪日教育旅行者の受け入れを行うホームステイ先への対応です。訪日教育観光客ニーズの中には、「日本人と交流したい」、「日本文化や生活を体験したい」というような意見が多くあり、一般家庭で数時間の交流を行うホームビジットや、日本の農業や漁業を学ぶ農泊などのプログラムが人気を集めています。

しかしながら、これらのプログラム運営において負担が生じてしまうため、安全管理や受入れ先に過度な負担が生じないような事前のルールの整備などが必要です。

3つ目は、受入れ校と訪問校の目的に合った交流の実施を行うことです。訪問校だけでなく、受入れ校にも目的があります。

たとえば、一方が、観光や文化体験といった目的が強く、一方が語学やディスカッションなど実学的な学習目的が強かった場合、双方が満足のいく結果にはつながりません。事前にお互いの交流目的の理解を深めたり、期待値の調整を行うことが実りのある交流につながるでしょう。

成功のポイント2. 費用

費用面で重要なポイントは、受け入れ側に必要な予算の確保、受け入れ側の労働や金銭負担を軽減可能なフォロー体制の構築が挙げられます。

まず、1つ目は受入れ側に必要な予算の確保です。

受け入れを行う過程で様々な費用が生じてきます。たとえば、通訳ができる人材の確保や、受入れ校の学校交流における記念品代や昼食代、教材費などに対する補助費用負担などです。

これらの費用が受入れ校の負担にならないように、受け入れを検討している自治体は、継続的に予算確保をしていくことが賢明です。

2つ目は、受入れ校の労働負担や金銭面での負担を軽減できるような仕組みやフォロー体制を構築することです。

受け入れまでの準備期間がタイトなスケジュールになってしまうことや、教育プログラムの関係で一部の教員に負担が重くのしかかるケースも考えられます。継続について消極的になり、一回限りの受け入れで終わってしまう可能性があります。

持続可能な国際交流の場を作っていくためには、受入れ校に全ての準備を任せるのではく、自治体側の金銭的な支援や、各地域の訪日教育旅行担当部署が負担を軽減できるプログラムの提案を行ったり、準備期間にゆとりを持たせた提案を受入れ校側にしていく必要があります。

訪日教育旅行の成功例

訪日教育旅行の成功事例として、埼玉県にある浦和西高校を取り上げます。

国際教育に特段力を入れていなかった同校が、いかに受け入れを進め、そしてどのような成果を残すことができたのかを知ることは、今後の受け入れを検討する上で重要な事例となります。

浦和西高校の例

浦和西高校は、2019年1月に埼玉県の観光課と連携を行い、中国の北京大学付属中学校の生徒68名、教員7名、引率2名を初めて訪日教育旅行客として受け入れを行いました。同校は、一度だけ台湾修学旅行を実施した年があるのみで、国際交流に特段力を入れてきたという学校ではありません。

交流プログラムの内容としては、半日と決して長い時間ではありませんが、体育館での歓迎セレモニーと部活動の見学、参加という2本立てのプログラムを用意しました。

同校にとって、この受け入れが初めての取り組みであり、事前準備の負担など懸念事項が払拭できていない状況での開催となりましたが、地域の観光課と密に連携することで、負担を軽減しスムーズな開催につながった他、持続可能な国際交流の機会を機会を学校側で生み出していくことの自信になったとしています。

生徒側も言語が通じない中でも、ジェスチャーや表情など身体的な表現を使用して、交流ができることに楽しさを感じたり、また異なる文化を育んできた人と交流できた実績が将来の自信につながった、などのコメントを残しています。

今後、オリンピックなど国際交流ボランティアが求められる際に、生徒たちが主体的に参加する1つのきっかけにつながるとして、期待が高まっています。

教育旅行受け入れで、国際的相互理解の機会を創出

新型コロナウイルスの影響により、国境をまたぐ移動は、依然としてハードルが高い状況が続いています。

一方で、訪日教育旅行の受け入れを検討している学校や自治体にとっては、未来の受け入れのための準備期間が十分にあるという見方もできます。

教育旅行受け入れの成功のポイントと合わせて、地域や学校の強みを分析し、未来の受け入れのための戦略づくりに時間を割くことも、インバウンド市場の拡大と無関係ではありません。

教育旅行の受け入れは、異なる文化的背景を持つ他者を理解する機会となり、外国人とのコミュニケーションの実践の場となります。こうした経験は、今後のインバウンド市場拡大において必要な観点や思考を養うことにもなるはずです。


<参照>

文部科学省:平成29年度 高等学校等における国際交流等の状況について

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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