中国ライブコマースは「ブランディング」割り切りが大事!「売上」と「注文金額」のカラクリ 販売現場の真相とは?

中国ではライブ配信を通した商品の販売、「ライブコマース」の売上規模が年々拡大しており、注目が集まっています。

中でもアリババライブコマースサービスである「淘宝直播(タオバオライブ)」はライブコマースの牽引者的な存在を担っており、2018年のGMV(流通取引総額)が1000億元(約1.5兆円)であったのに対し、2019年には2000億元(約3兆円)と倍増しました。

これに続き2019年にはライブコマース事業に参入する事業者が一気に増加し、2020年となった今ではライブコマースは消費者にとって身近な購入チャネルの一つになっています。

今年の6月に開催された中国ECの大規模商戦である「618」では、大物芸能人や人気アイドル、出店企業の経営者らによる豪華なライブコマースが連日行われ、ライブコマース経由での売上が1億元(約15億円)を超えるブランドも多数に上りました。

このようにライブコマースでは配信者の知名度や売上規模がフォーカスされることが多いですが、その内訳については様々な意見があります。

今回はライブコマースに関する数字を元に、販売現場の真相を見ていきたいと思います。


似て非なる「売上」と「注文金額」のカラクリ

中国では大型のECイベントが終了すると、各社揃ってイベント全体の売上金額を発表します。6月に開催された「618」では天猫が6982億元(約10兆5400億円)、京東が2692億元(約4兆672億円)を叩き出し、中国でも大きくニュースになりました。

しかし、これらの金額が実際に指しているのは「注文金額」であり、キャンセルや返品分が差し引かれていない数字です。実際に売上としてカウントされる注文はここから大きく減少します。

「注文」してから決済を行う中国ECの慣習

中国のECサイトでは商品代金の決済の前に「注文」と呼ばれるステータスが存在し、先に注文を受け付けた後、決済まで完了したら商品を発送する仕組みになっています。日本の場合、先に注文だけを完了させた後支払期日までに決済を行うコンビニ決済などが該当します。

支払期日までに決済が完了しなかった場合は注文がキャンセル扱いとなり、キャンセル料などは発生しません。まずは気軽に注文を行い、決済をするかどうかは支払期日までに決めれば良いのです。

中国ECアプリで注文商品の配送状況を確認できるメニュー
▲[タオバオの注文ステータス]:筆者キャプチャ

中国現地でEC業界動向の解説を行うメディア「東哥解読電商」によると実際には4~5割の注文は決済されずにキャンセルされていると見られており、冒頭でご紹介した「618」の実績も、実際に決済された金額は半分程度であると言及しています。

これらのカラクリはライブコマースの売上でも指摘されており、大物インフルエンサーによる配信で大きな数字が出た際も、実際にはキャンセルや返品などの数字が含まれている可能性があることや、空注文ができてしまう下地があることを念頭に置くべきでしょう。

プラットフォームや配信者が見せたい数字なのか、純粋な売上金額なのか、受け手側も冷静な見極めが必要です。

ライブコマースで発生する「返品」に注目

上記では注文キャンセルの割合について言及しましたが、ここからはキャンセルの次に多い「返品」について探っていきます。

中国のECサイトでは基本的に無条件で商品の返品が可能になっており、ユーザーにとっての返品ハードルが低く設けられています。

そのため返品率が高い傾向にありますが、ライブコマースではさらに返品率が高いと言われています。

EC業界の動向解説メディア「東哥解読電商」によると、特に返品率が高いカテゴリであるアパレル商品の場合は一般的に30%程度が返品される中、ライブコマース経由の販売では返品率が40%に上ると言及しています。

この原因の一つとして、ライブコマースが「衝動買い」を起こしやすい構造であることが挙げられます。

ライブコマースでは、ライブ配信限定商品や、ライブ配信限定価格の商品が販売されます。そのため、機会を逃したくないと考えその場で購入に踏み切る衝動買いが起きやすくなっています。


中国ECアプリでの商品販売の様子
▲[タオバオライブでライブ配信限定商品を販売する店舗]:筆者キャプチャ

その分、このような衝動買いはライブコマース経由の注文金額を押し上げる一因でもあるため、一概にデメリットとは言えません。

しかしながら、支払い後のキャンセルに加えて返品も含めると、売り手側の手元に残る利益の減少は避けられません。

利益を出すのは至難の技?配信者への成功報酬は売上の30%、「配信ルーム」使用料も

キャンセルや返品によって注文金額の数字が減少し、手元に残る金額はわずかとなることが分かりました。それでは一体、ライブコマースで利益を出すことは可能なのでしょうか。

結論から言うと、すでに割引率の高い商品を販売していることがほとんどであるライブ配信では、手元に残る利益は非常に少ないと言えます。ライブコマースで販売する商品はほとんどがセール品であり、はじめから利益率が低い特徴があります。

こうした値引率を許容できない場合は、配信者に商品を取り扱ってもらえないこともあります。セール価格や配信中の値引きは、配信しているライブへのアクセス数増加にもつながり、配信者にもメリットがあります。

また、商品の割引率が高いだけでなく、更に配信者への成功報酬を支払う必要もあります。一般的には売上の30%がライブ配信者に支払われています。薇婭(viya)などの有名配信者の場合は商品の価格交渉に強みを持っており、100元(約1,500円)で販売されている化粧品でも、そのうち65元(約975円)を取り分にすることができると言われています。

中国のECアプリのライブ配信で商品を宣伝する女性
▲[タオバオライブにて美容液を販売する薇娅(Viya)]:筆者キャプチャ

このほかにも自社のアカウントではなく有名配信者のアカウントを利用してライブ配信をする場合は「配信ルーム使用料」が別途必要となります。結果として、ライブコマースでは売上が上がっても利益がほとんど残らない構造になっています。

しかしながら、それでも多くのEC事業者や販売者がライブ配信を利用して商品を販売する理由は、店舗や商品のブランディング、集客に有効であることが挙げられます。

見かけの数字の裏側を理解した上で活用することが大切

売上金額や視聴者数など華やかな数字が取り上げられることの多いライブコマースですが、その売上と利益は全くの別物であることがわかります。

プラットフォームや有名配信者は自身のブランディングのためにも特定の数字を強調しますが、これらの裏にはシビアな現場の状況があります。

多くの人に商品を注文されても、キャンセルや返品を経て手元に残る利益はどんどん減少していきます。

ライブ配信で利益を追うことに執着せず、ブランディングや集客と割り切るなど目的に応じた活用を検討していくことが重要です。

ライブコマース市場では日々新たな配信者の育成が行われたり、配信ステーションが設立されたりと、成長市場であることは間違いありません。

商品の販売のみならず、大型セールイベントで使用可能な特別クーポンをライブ配信限定で配布するなど、消費者と店舗を直接つなぐ強力なツールとして、最大限活用できる方法を考えていくべきでしょう。


<参照>

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この記事の筆者

兵頭 和(ビントウ)

兵頭 和(ビントウ)

2016年中国北京での社会人インターンを経て2017年よりEC事業会社にて越境EC(天猫国際)運営、国内ECの開発企画、ディレクションを担当。現場目線で中国のアプリやサービスを解説する。愛媛生まれ。