今できるインバウンド対策は「あえて国内」観光業が注力すべき4つの施策とは?

公開日:2020年08月11日


新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、国内外ともに観光需要が減退し、日本の観光業は大きな打撃を受けています。特に入国制限により観光目的での訪日旅行はほぼ不可能となっており、インバウンド業界の回復には相当の時間がかかることが予想されます。

一方で、インバウンドの回復期は遅かれ早かれいつかはやってくるといえます。そのタイミングを見据え、「今できること」に取り組むことが、回復期の売上や集客を左右すると考えられます。

では、インバウンド業界に属する事業者が今できることはなんなのでしょうか。それは「国内」観光向けの施策だと考えます。

今、「国内」観光向けの施策に注力していく必要がある理由、そしてその取り組みがインバウンド回復時にどのように寄与するかを考察します。

観光業の現状

現在も流行している新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、観光業界は大打撃を受けています。

7月15日に日本政府観光局が発表した6月の訪日外国人数は2,600人で、先月の1,700人よりは増加したものの、引き続き前年比では99.9%減と大きく落ち込みました。

また、訪日外国人観光客が減少しているだけでなく、国内旅行や日本人向け海外旅行、外国人の日本旅行すべてにおいて旅行取扱額にも大幅な減少がみられています。

5月の延べ宿泊者数は781万人泊で前年同月比84.8%減、主要旅行業者の総取扱額も前年同月比97.6%減となりました。

ただし、6月の延べ宿泊者数は1,394万人泊と大幅に回復しており、今後の新型コロナウイルスの感染状況にもよりますが、国内観光はある程度回復していくものとみられます。

一方、インバウンドについては、入国制限が146か国に敷かれており、いまだ回復の兆しがみえません。日本への入国制限緩和の協議が始まった国も増えてはいますが、ビジネス目的での渡航に限られており、観光目的での入国が許可されるのはまだ先になる見通しで、インバウンドの早期回復は難しいと考えられます。

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インバウンド対策として今「国内」市場に向き合うべき理由

146か国に入国制限が実施されている現状では、観光地の活気の回復をインバウンドに頼ることは不可能といえます。

一方で、いずれインバウンドが回復する時期が来ても、その時に日本の観光業自体が廃れてしまっていては、元も子もありません。まずは国内観光の需要を喚起することで観光業の経営維持を図ることが求められます。

観光庁は、今後1年の行動計画を定めた「観光ビジョン実現プログラム2020」の中で「2030年6,000万人は達成可能」とし、インバウンド再起へ指針を示しています。

このプログラムにおいて第一に挙げられているのが、「国内の観光需要の回復と観光関連産業の体質強化」です。その上で、各国の感染状況を見ながら段階的に訪日外国人観光客の受け入れを再開し、インバウンドの本格的な回復へとつなげていくとしています。

国としても、まずは国内観光を回復させ、次にそれを基盤としてインバウンドの回復へと進んでいく方針であり、事業者への給付金の交付や需要喚起策を通して国内観光の立て直しが図られています。

そこで国内観光の起爆剤になると期待されているのが、政府主導の国内観光需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンです。

このキャンペーンについては、開始直前になって東京が対象から外れたことや、7月22日の開始後もキャンペーンの対象となる旅行商品の条件が不透明であることなどから、たびたび物議を醸しているほか、東京などの都市部を中心に新型コロナウイルスの感染が再び拡大していることから、開始時期は適切だったのか、旅行を促すことで感染を広げることになるのではないかといった声が上がっています。

しかしながら、これまで観光客を受け入れることで収益を得ていた観光地や宿泊施設、娯楽施設、飲食店などは窮地に陥っています。新型コロナウイルスの感染拡大防止は大前提として、可能なところから観光需要を呼び戻し、観光業界を立て直していくためには、有効な施策といえるのではないでしょうか。

また、ウィズコロナ・ポストコロナにおいてインバウンド需要を取り戻すには、まず新型コロナウイルスの感染を抑え込み、「日本は安全」であることを海外にアピールする必要があります。その意味でも、「Go To トラベル」キャンペーンにより需要を喚起し、国内観光の受け入れを開始することは重要でしょう。

同時に、訪日外国人観光客の受け入れが本格的に再開し客足が戻るまでは、在日外国人向けの環境整備に取り組むことで、インバウンド回復期に差をつけられます多言語対応や決済方法の拡充など、今まで不十分だった分野を中心に改善していくと良いでしょう。

観光庁「2030年6,000万人は達成可能」インバウンド再起へ指針示す【観光ビジョン実現プログラム2020】

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観光業界のプレイヤーが今、注力すべき4つの施策

まずは国内観光の回復を目指すとしても、国内観光も現在は新型コロナウイルスの感染状況に左右されがちで、できることを着実に進めていくしかありません。

日本の観光業を守るために今できる「国内」市場向けの施策を、4つに分けてご紹介します。

旅行需要をつかむ:Go To トラベルの事業者登録

新型コロナウイルスの感染拡大防止との両立などについて議論はあるものの、政府主導の観光需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンは最大限に活用したいところです。

Go To トラベル事業に参加するためには、登録申請が必要となるので、早めに事業者登録を行いましょう。

当面の事業期間は、2020年7月22日から2021年3月15日までで、販売期間は、宿泊商品および宿泊を伴う旅行商品が2021年1月31日宿泊(2月1日チェックアウト)まで、日帰り旅行も2021年1月31日までとなっています。

登録手続きの詳細については、「Go To トラベル事業者向け申請サイト」で確認することができます。

Go To トラベル事業者向け申請サイト

経営を継続する:補助金の申請

新型コロナウイルスの影響による売上減に直面する事業者が、経営を継続していくためには、政府や各自治体などによる補助金の活用も有効でしょう。

政府はインバウンド再起に向けた「反転攻勢に転じるための基盤の整備」として、従業員の休業手当への助成金である「雇用調整助成金」などの制度の拡充とスムーズな実施に取り組む方針です。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた休業補償支援策は、雇用調整助成金制度をベースに、計画の提出を不要とする「雇用調整助成金の特例」や、非正規労働者も助成対象とする「緊急雇用安定助成金」、休業手当の全額助成を可能とする「雇用調整助成金の特例」などの拡充が加えられてきました。

さらに7月からは、新制度である「新型コロナ休業支援金」が創設され、事業者が申請できない場合でも、労働者自らが助成金を申請できるようになりました。

政府が実施する経営維持、雇用維持のための支援制度に対するアンテナを高く張り、有効に活用していくことが重要です。

受け入れ環境整備

旅行需要を喚起するためには、旅行者が安心して旅行ができる環境を整備することが欠かせません。

日本のインバウンドの取り組みに大きな影響を与えてきたデービッド・アトキンソン氏は、日本が観光立国たるために必要な条件として「気候」「自然」「文化」「食事」の4つの条件を挙げました。

これに加え、アフターコロナの時代に求められる新たな観光の条件として、「安全・安心」が挙げられます。

これまでも無意識に旅行先の選択基準とされてきた「安全・安心」が、新型コロナウイルスの流行を経て、はっきりと選択基準として顕在化したのです。

訪日外国人にとっての「安全・安心」とは、下記のように捉えることができるでしょう。

  1. 安全:医療体制が整っているとともに、衛生管理やクラスター発生防止策をはじめとしたコロナ対策が、各自治体やホテル、飲食店、商業施設等でしっかり取り組まれている
  2. 安心:上記の案内や情報発信が多言語で行われており、かつタイムリーである

観光庁も環境整備を進める方針で、安心安全を示す感染拡大予防ガイドラインの実施徹底などによる「反転攻勢に転じるための基盤の整備」に取り組むとしています。

さらに、仕事と休暇を同時に行う「ワーケーション」、出張先で観光も楽しむ「ブリージャー」など、働き方改革に応じた新しい旅行スタイルを普及させ、国内需要を喚起していく方針です。

観光4大要素に追加すべき「安全・安心」とは?インバウンド復活を成功させる「2つの新条件」

日本国内において新型コロナウイルスの第二波が懸念されている中、政府は入国制限の緩和に慎重な姿勢を示しています。観光目的の渡航に対する制限はもちろんのこと、ビジネス目的でも緩和の合意に至ったのはベトナム一国のみとなっています。6月17日に日本政府観光局(JNTO)が発表した統計によれば、4月の訪日外国人の数は、前年同月と比べて 99.9%減という衝撃的な減少幅を記録しましたが、これが新型コロナウイルスの流行以前まで回復するにはどのくらいかかるのでしょうか。IATA(国際航空運送協会)は、国際...


情報発信を絶やさない

旅行需要が回復した際に、旅行先として選択してもらうためには、情報発信を継続的に行っていく必要があります。

特にアフターコロナの観光で差別化要因となり得る「安全・安心」については、積極的に分かりやすい情報発信を意識する必要があるでしょう。

インバウンド回復期に備え、海外向けプロモーションも始めるべきだといえます。国家間の旅行が開始されてからプロモーションを始めるのでは、他の観光大国に観光客を奪われてしまうでしょう。訪日旅行ができない今の期間を、旅行先の国を選ぶ「プレ旅マエ」期間と位置付け、積極的なプロモーションを行いましょう。

【旅マエ編】インバウンドで話題の旅マエ・旅ナカ・旅アトを徹底解説

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また、4月6日に日本政府観光局(JNTO)は、東アジア、東南アジア、欧米豪の3つのエリアごとに訪日プロモーションスケジュールを公開しています。

自社のターゲット国に対するプロモーションのスケジュールを把握し、タイミングを合わせてプロモーションを行うと効果的でしょう。

【東アジア】インバウンドV字回復の鍵は中国か:JNTO「反転攻勢」の訪日プロモーションスケジュールから施策のタイミングを探る

4月6日に、JNTO(日本政府観光局)が最新の観光プロモーションスケジュールを公開しました。昨年から世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスの影響によって、インバウンド業界全体は今大きな打撃を受けています。しかし、そういった状況にあってもアフターコロナを見据え、インバウンド業界の大きな動向を把握しておくことは、非常に重要です。今回は、東アジア各国を対象としたJNTOのプロモーションスケジュールを紹介します。インバウンド業界の「反転攻勢」とすべく、JNTOのインバウンド拡大に向けた施策と...

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まとめ

新型コロナウイルス感染収束の兆しが見えない中、インバウンドの回復までは相当の時間がかかると予想されます。

いずれ訪日外国人が戻ってくる時期に備えて、アフターコロナに適応した観光業の体質強化を進めるためには、まずは国内の旅行需要を喚起することが必要になります。

新型コロナウイルスの流行を経て、日本のインバウンド業界は新たなフェーズに突入しました。従来の常識にとらわれず、柔軟な発想で、新たな旅行スタイルに対応していくことが求められます。

アフターコロナの観光においては、特に「安全・安心」が旅行先の選択基準として重要な条件となります。旅行需要を喚起し、顧客を獲得するためには、より精緻な計画とプロモーション戦略が必要となるでしょう。Go To トラベル事業 登録申請のご案内 (旅行会社・宿泊事業者・第三者機関等)

<参照>

一般社団法人 日本旅行業協会:Go To トラベル事業 登録申請のご案内 (旅行事業者・宿泊事業者等)

補助金ポータル:雇用調整助成金の特例だけじゃない!?コロナ不況の休業補償を支える3つの支援制度を紹介

トラベルジャーナルオンライン:観光ビジョンで基盤整備と国内強化 「あり方の検討深める1年」 訪日再開へ備えも

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!