なぜ日本では8月15日が「終戦記念日」なのか 世界では?立場で変わる節目の日

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日本では8月15日を「終戦記念日」としています。毎年、終戦記念日が近づくとテレビでは戦争に関する番組や特別ドラマなどが放送され、当日には政府が主催する戦没者を追悼する式典が催されています。

また、広島と長崎に原子爆弾が落とされた8月6日と9日には、原子爆弾投下の時刻に合わせて式典以外でも各個人で黙祷をしたり、SNS上には戦争への反省や平和を願う多くのコメントが投稿されています。

今年で戦後から75年が経ち戦争の歴史を忘れないようにする取り組みとして、NHK広島では当時の男子中学生の日記をもとに「もし75年前にSNSがあったら?」というTwitterアカウントを作成し公開しています。

この取り組みは広く注目を集めましたが、虚実をおりまぜた構成に批判の起こる一幕もありました。

敗戦国の日本では、終戦記念日はお盆の時期に重なることもあって追悼や鎮魂のイメージが強くありますが、戦勝国や他の敗戦国では日本とは違う意味を持っています。各国での終戦の日の違いや終戦記念日への見解をそれぞれ解説します。

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日本の8月15日は「終戦記念日」

日本における第二次世界大戦の終戦の日は、1945年8月15日とされています。この日の正午に昭和天皇による「玉音放送」があり、この放送によって第二次世界大戦における日本のポツダム宣言受諾と休戦が国民に伝えられました。以来毎年8月15日を日本政府は「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とし、政府主催で全国戦没者追悼式を行ってきました。

しかし、世界的には9月2日を終戦の日として認識している国がほとんどで、8月15日を終戦の日としているのは世界で日本だけとなっています。

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世界では9月2日を終戦記念日として認識している

第二次世界大戦で日本と敵対した連合国(アメリカ・イギリス・フランス・カナダ・ロシア)では、日本がアメリカ戦艦ミズーリ号上で降伏文書へ調印した9月2日を終戦記念日としています。日本でも国家として公式に「終戦」となったのは降伏調印をした9月2日です。

なぜ連合国側と日本とでは終戦の日の認識が違うのかというと、日本がポツダム宣言を受託した8月14日には、すでにアメリカでは日本が降伏する事実が報道されており、当時のトルーマン大統領は日本が降伏文書へ調印したのを見届けてから「VJ Day(Victory over Japan Day:対日戦勝記念日)」の布告をすると宣言していたためです。

戦勝国と敗戦国:ヨーロッパでは5月8日、イタリアは4月25日が「解放記念日」

ヨーロッパの戦勝国では、ドイツが降伏文書に調印して無条件降伏した1945年5月8日を「VE Day(Victory in Europe Day:ヨーロッパ戦勝記念日)」としています。第二次世界大戦のヨーロッパ戦線の終戦記念日として、国旗を掲げたり記念式典が行われたりなどして祝われています。

また、日本と同盟を組んで戦い、同様に敗戦国となったイタリアとドイツでは、終戦の日付やその意味も日本とは違います。

イタリアではムッソリーニが率いたファシスト勢力をミラノなどから追い出した4月25日を「解放記念日」として毎年お祝いしています。

一方、ドイツでは連合国に無条件降伏した5月8日を「Stunde Null(零時)」とし、ナチス支配から解放された日としてイタリアと同様に祝われています。

しかし、国として「終戦記念日」と定められているわけではなく、戦没者への追悼式典は11月末の「国民哀悼の日」に行われています。イタリアとドイツでは「敗戦の日」よりも「解放の日」という認識が強く、同じ敗戦国でも日本とは違う捉え方をされています。

中国では?1949年中華人民共和国政府成立で戦争が終了

第二次世界大戦当時、現在の中華人民共和国はまだ存在せず、当時ポツダム宣言にも参加していた国民党政府が率いる「中華民国」に対して、日本の支那派遣軍は1945年9月9日に南京で降伏文書へ調印し降伏しました。

国民党政府は9月2日のミズーリ号で行われた降伏調印を戦闘の区切りとして、翌日から3日間を抗日戦争勝利記念の休暇としたことから、中華民国では9月3日が「対日戦勝記念日」とされました。

一方、中華人民共和国では2014年に、9月3日を「対日戦勝利記念日」と制定するまで、正式に決められた終戦記念日は存在していませんでした。これは、第二次世界大戦当時の中華民国は、国民党と共産党が覇権を巡っての内戦状態であったことが関係しています。

国民党軍が支那派遣軍と戦闘していた一方で、中国の北部では共産党軍が日本の関東軍と戦闘を行なっていました。

しかし、ソ連軍の介入によって戦線が複雑化し、一度ソ連軍に降伏した関東軍は引き渡された共産党軍による武装解除を拒否したため、共産党軍は関東軍を攻撃し1945年8月以降も戦闘が続きました。

終戦の日が明確ではなかったばかりか、共産党が率いる中華人民共和国の成立が1949年なため共産党軍との正式な降伏文書が交わせず、1972年の日中共同宣言を持って正式に戦争状態が終わりました。

日本が進軍していた地域での記念日

日本が戦争中に侵攻していた3つの国での記念日を紹介します。

韓国

韓国では8月15日を「光復節」という祝日に制定しています。

光復節という名称には「奪われた主権を取り戻す」「光を取り戻した」という意味が込められ、1911年から36年間続いた日本の統治からの独立を祝う記念日として、記念式典などが行われています。

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8月15日は日本にとっては終戦記念日ですが、戦前に日本統治を受けていた国や地域にとっては独立記念日です。隣国の韓国では「

台湾

韓国と同じく日本の統治下にあった台湾では、8月15日はとても複雑で捉え方が難しい日となっているようです。

台湾は第二次世界大戦時日本に属していたため「敗戦国」としてその日を迎えましたが、10月25日に当時の中華民国に編入されたため中華民国からは「勝戦国」側とされ、1949年から1987年までは戒厳令によって終戦時期の出来事について語ることは許されませんでした。

そのため、「終戦の日」は台湾では一般的ではなく、9月3日の「軍人節(軍隊記念日)」と10月25日の「光復節(台湾が中国に編入されたことを記念する日)」が戦争に関する日付として浸透しています。

フィリピン

日本が進軍していたフィリピンでは、日本陸軍の山下軍司令官がバギオ市内で降伏文書に正式に調印した9月3日が終戦の日とされていますが、ルソン島北部の自治体キアンガンでは降伏を表明した9月2日を「勝利と解放の日」として、10年に一度大規模な式典が催されています。

戦後70年の2015年9月2日には「山下降伏70年記念式典」が開催され、元兵士やその家族、学生や市民団体など約1万人が参加し国歌斉唱や国旗の掲揚、献花などが行われました。

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8月15日は日本にとっては終戦記念日ですが、戦前に日本統治を受けていた国や地域にとっては独立記念日です。隣国の韓国では「

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海外市場へは異文化の「常識」を踏まえたアプローチを

日本においては「終戦記念日」といえば8月15日だという認識がありますが、戦勝国や敗戦国、また占領下にあった国などそれぞれの立場では、戦争が終わった日や終戦の意味も違っています。

国際社会において、さまざまな価値観や文化・習慣を持つ人たちと接する場合には、自分たちの常識だけで考えるのではなく、相手の常識も理解することが必須となります。

特に、戦時中に日本の占領や進軍によってネガティブなイメージを現在にも持ち続けている国・地域の場合には、戦争と関連する日付に注意が必要です。現地でセールを開催する、あるいは新商品をリリースするという場合には、こうした日付を避けるようにするべきでしょう。

反日感情を高めてしまうことのないよう、インバウンド・観光客・ビジネスかかわらず、ターゲットとする国・地域の目線に立ち、理解を深めることが重要となります。

<参照>

東洋経済オンライン:日本人だけが8月15日を「終戦日」とする謎 各国の思惑で終戦日はこんなにも違う!

NHKブログ:「もし75年前にSNSがあったら?」1945年、広島の中学1年生だった新井俊一郎さんの日記原文(1945年7月4~10日)

NPO法人 Mielka:9月2日は第二次世界大戦の終戦日!?~国によって違う終戦~

雑学ネタ帳:ヨーロッパ戦勝記念日(VEデー)(5月8日 記念日)

J-WAVE 81.3FM JK RADIO TOKYO UNITED:海外の終戦の日

Yahoo!ニュース:台湾は「8月15日」をどう捉えている? 「終戦」と「光復」の間でゆれる戦争観

infoseekニュース:山下奉文将軍とフィリピン 降伏した山中で出会った人々

北ルソン便り:「9月3日はフィリピンの終戦記念日」


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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