【海外の反応】神社をつなぐ熊野古道が外国人観光客を惹きつけた魅力とPR手法とは

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和歌山県の「熊野三山」と称される神社、熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社を目指す参詣道、「熊野古道」が外国人観光客から注目を集めています。人気の理由は、世界遺産であるということだけにとどまりません。

熊野古道はインバウンド人気が高く、魅了される人々が年々増えているのは、熊野古道独自のインバウンドのプロモーションにあります。今回は、熊野古道が人気の理由やその魅力、現在取り組んでいるプロモーション施策について紹介します。

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神社等をつなぐ参詣道 熊野古道の概要

近年、和歌山県にある世界遺産「熊野古道(くまのこどう)」を訪れる外国人観光客が増えています。熊野古道が外国人観光客から魅力的に映る理由について紹介します。

熊野古道とは?

熊野古道は紀伊半島の南にある3つの神社と、伊勢や大阪、和歌山などを結ぶ古い道のことで、ユネスコの世界遺産に登録されています。3つの神社は「熊野三山」と呼ばれ、それぞれ新宮市の「熊野速玉大社」、田辺市の「熊野本宮大社」、那智勝浦町の「熊野那智大社」となっています。

熊野古道には次の6つのルートがあります。伊勢神宮からの参詣者が多く歩いたとされる「伊勢路」、田辺市から東に向かう「中辺路」、高野山と熊野本宮大社へと続く「小辺路」、吉野・熊野と熊野三山を結ぶ「大峯奥駈道」、紀伊田辺から海岸線にそって歩く「大辺路」、京都・大阪から熊野へと続く「紀伊路」です。

特に、伊勢路は伊勢神宮との関係が深く、「伊勢へ七度、熊野へ三度」と伝えられているように、主要な参道として知られています。江戸時代からお伊勢参りのあと、この道を通って熊野詣がおこなわれていたとされています。

海外からの反応が高まる熊野古道

和歌山県観光交流課の発表によると、熊野古道のある和歌山県の2019年の外国人宿泊者数は501,844人泊となっており、過去最高を記録しています。

なかでも世界遺産エリアの高野町、田辺市、新宮市などは過去最高を記録しています。訪れる観光客の内訳を見てみると、欧米豪市場は年々増加の一途をたどっており、特に個人観光客からは「高野山・熊野」エリアである高野町、田辺市などが人気となっているようです。

観光地へのアクセスバスの運行などがスタートしたことから、紀伊半島南方面への周遊観光が進んだことも、ほかの市や町へのスムーズな移動を助けることにつながり、結果的に町の宿泊者数に影響を与えていると考えられています。

熊野古道が「訪れるべき日本の観光地」アンケートで東京をおさえ1位に

外国人向け日本情報サイト「ガイジンポット(GaijinPot)」が発表したデータによると「2020年に外国人が訪れるべき日本の観光地ランキング」で「熊野地方(和歌山県)」が1位となっています。

このランキングは読者約2,000人のオンライン投票によっておこなわれたもので、2位は東京都、3位は中山道(岐阜県、長野県)、4位は札幌市(北海道)、5位は琵琶湖(滋賀県)、6位は日光市(栃木県)、7位は横浜市(神奈川県)の順位となっています。

同サイト編集部は「熊野が提案している『スピリチュアルな旅行』は、世界のトレンドになりつつある」「熊野には外からの訪問者を幻想的な山々や広大なビーチに抵抗なく招き入れることができる風土がある」とコメントしています。

海外からの反応:外国人観光客にとっての魅力とは

熊野古道がこれほどまでに外国人観光客から熱い視線をあびているのには、大きく分けて3つの理由があります。

日本でしかできない体験

熊野古道は紀伊半島の南にある世界遺産です。熊野古道にはアウトドアなどを好むオーストラリア人やアメリカ人、自国にも「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」という巡礼路を持つスペインの人たちなどが、好んで訪れます。

彼らが熊野古道を訪れる理由としてあげられるのが、「自身の経験を大切にしたい」という価値観です。20代、30代の旅行者は、新しいことや一生に一度しかできない貴重な体験が得られる旅行を求めています。

これまで高い快適性やサービスを旅行に求めていた50~60代の世代向けにも、ハードな日程にもかかわらず、3泊4日で10万円以上する着地型ツアーがあり、好評を得ています。

自然と美しい風景のみならず、古道沿いの集落、日本食、歴史など日本ならではの経験が観光客を惹きつける理由になっているようです。

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接客を通じた地元の人との交流

熊野古道を訪れた外国人環境客は「宿」と「接客」において、大きな満足感を感じています。古道沿いの集落にある宿泊施設は、客室が10室以下の小さな民宿が大半です。

大型ホテルのような広々としたスペースや、ラグジュアリーできらびやかな内装は施されていませんが、小さな宿ならではの「交流の深さ」が観光客から魅力的に感じられるようです。

たとえば、従業員が少なければ、宿のご主人や女将さんと直接的に会話する機会が増えます。

外国人観光客と従業員との距離が近いことで、自然とコミュニケーションが生まれます。食事時には配膳された料理を楽しみながら料理や旅の日程などについて質問したり、世間話をしたりと会話を楽しむことができます。

こうした熊野古道がある地域に住む地元の人々との交流は、旅ナカの一コマとして強く記憶に残り、地域の魅力につながっているようです。

外国人観光客の受け入れ態勢の整備

和歌山県は熊野古道を訪れる外国人観光客受け入れのため、さまざまな態勢を整えています。そのうちのひとつが「交通整備ガイド」です。

観光客は熊野古道を「歩く」目的で訪れますが、地域を運行する公共交通機関の表示が事業者や場所によって異なり、分かりにくいといった現状を踏まえ、バス停を1つにまとめたり、路線ごとに系統番号を割り振ったりして熊野地域の移動をスムーズにおこなえるようにしています。

英語が話せず、会話が難しいときも「~はどこですか?」「この近くに~はありますか?」などの例文と「観光案内所」「お土産屋」「コンビニ」などの単語が記載された「指差し確認ツール」をつくり、コミュニケーションを円滑におこなえるような施策もおこなっています。

熊野古道の外国人目線でのプロモーション

観光地をアピールするための施策として「外国人目線」を取り入れています。日本人視点でのPRをいったん脇に置いた外国人目線でのプロモーションについて紹介します。

外国人スタッフの採用

熊野古道では世界に通用する観光地を目指し、外国人目線でのプロモーション活動がおこなわれています。

はじめに、英語圏(カナダ)からネイティブのスタッフを国際観光推進員として雇用しました。設立メンバーのひとり、事業部長のブラッド・トウルさんは「ツール、看板、ウェブサイトのイメージが統一すれば、強いメッセージを伝えることができる」として、熊野の今のままの姿を整理・理解して分かりやすく伝える工夫を日々おこなっています。

さらに、アンケートや調査の分析結果から外国人旅行者の動きやニーズの実態をリサーチし、外国人ターゲットを欧米豪と在日外国人の個人旅行者に絞ることで、より深くターゲットのニーズに対応した旅プランやPRの方向性が定まっているようです。

「神社の巡礼」等のテーマターゲティング

熊野古道がある和歌山県田辺市では、熊野古道の強み・魅力について外国人目線で分析をおこなった結果、日本の中のある地域といった漠然としたものとしてではなく、巡礼やトレイルという具体的なキーワードで捉えなおすことにしました。

もともと熊野古道は、「再生・癒し・浄土」を求める人々が、聖地を目指して歩いた道です。

そこで、熊野古道をPRしていくうえで、日本という国をテーマにするのではなく「巡礼」「トレイル」といった旅の目的をテーマとし、その目的や嗜好をもつ層をターゲットに設定しています。「巡礼」というテーマに合致した欧米と「トレイル」というテーマに合致したオーストラリアをメインターゲットとしています。

前述した外国人目線でのターゲットの絞り込みが功を奏し、ブランディングが統一され、結果的に訪日旅行客の増加につながっているようです。

共通点のある地域との共同プロモーション

熊野古道のような巡礼道を持っている国は、ほかにもあります。

たとえば、スペイン・ガリシア州には前述した「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」という巡礼路があることから、2010年度より和歌山県と姉妹道提携を結び、青少年交流事業に取り組んでいます。

2019年8月にはガリシア州の青少年交流訪問団15名が、田辺市本宮町にある熊野本宮大社や県世界遺産センターを訪問しました。そこで、熊野古道や和歌山県の魅力について学んでいます。

参加者らは「和歌山とガリシア州は地理的には非常に遠く離れているが、つながりを深く感じる」「和歌山や日本のことが好きになった。非常に意義深い訪問になっていると思う」とコメントしています。

英語のネイティブ話者が一から記事を執筆

プロモーション施策のひとつには「ネイティブ外国人がコンテンツを一から作成する」というものがあります。

これまでの外国人観光客向けのガイドブックやパンフレットは、英訳が複数あったり、内容や表現が統一されていなかったり、外国人にとって非常に分かりづらいものでした。

宗教性の高い「神道」という言葉に対して外国人それぞれが抱くイメージが異なり、英訳の際にデリケートな国・エリアに対する配慮が必要でした。そこでネイティブな外国人目線で伝えるべきことを整理し、適切な表現をするためのリサーチをおこない、一から英文で書き直すことにしました。

この情報発信施策により、熊野の魅力がしっかり伝わり、ブランディングに成功しています。

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外国人目線での魅力発信でインバウンドを呼び込む

熊野古道は外国人観光客にとって非常に魅力的な旅行スポットです。より強く外国人を惹きつけるためには、外国人目線での施策が有効となってきます。

接客を通じて地元の人と交流ができること、どんな国の人でも受け入れられる態勢が整っていること、そして、外国人目線でのプロモーションをおこなうことが、魅力発信における成功の秘訣といえます。

インバウンド対策をひとつの決められた型で捉えるのではなく、訪れる観光客の国別の嗜好性に合わせてターゲティングをし、外国人目線での魅力ポイントを踏まえたうえで態勢を整えることが求められています。こうしたポイントをおさえることが、今後のPR活動の肝になっていくでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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