アリババ 米政府の次なる規制対象か:コロナ禍でも売上34%増 大躍進の先は

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2020年8月20日に、中国Eコマース最大手のアリババグループ・ホールディング・リミテッド(阿里巴巴集団、以下「アリババグループ」)が2020年4〜6月期の決算を発表しました。

アリババグループとは、中国最大手のB to B卸売プラットフォーム「Alibaba」以外に、モバイル決済サービス支付宝Alipay/アリペイ)やC to C ECプラットフォーム淘宝網(タオバオ)など、様々な電子商取引サービスを展開している中国の巨大企業です。

今回の決算によれば、グループ全体の売上高は、前年同期比34%増の1,537.51億元(約2兆3,063億円)と好調を見せ、アリババグループ最高財務責任者(CFO)マギー・ウー(武衛)は「すでに新型コロナウイルス感染症流行前の水準まで全面的に回復した」と述べました。

一方、2020年6月末以降、インドやアメリカをはじめ、世界中で中国発のアプリやウェブサービスに対する風当たりが強まっています。

インドの禁止令を受け、アリババグループはインドで一部ネットサービスを停止すると示しました。

この記事では、アリババグループの2020年4〜6月期決算に基づき、注目のハイトライトをピックアップします。さらに現在注目されるアメリカやインドでの「中国アプリ排除」についても整理します。


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全体売上高34%増:「中国小売事業」と「クラウドコンピューティング事業」が牽引

アリババグループが発表した2020年4〜6月期の決算報告によると、グループ全体の売上高は前年同期比34%増の1,537.51億元(約2兆3,063億円)で、営業利益は前年同期比42%増の347.05億元(約5,206億円)となりました。

新型コロナウイルスの流行による「巣ごもり」がオンライン消費の成長に拍車をかけ、さらに在宅勤務も推進されて、中国国内Eコマースなどの小売事業とクラウドコンピューティング事業の成長を押し上げたと考えられています。

中国小売事業の売上高は前年同期比34%増の1,013.21億元(約1兆5,198億円)となり、クラウドコンピューティング事業の売上高は前年同期比59%増の123.45億元(約1,852億円)となりました。

また、アリババグループの中国小売事業では、2020年6月に月間モバイルアクティブユーザー数が8.74億に達し、前四半期より2,800万人成長しました。

2020年6月30日までの年間アクティブ・コンシューマー数が7.42億に達し、前四半期より1,600万人増加しました。

最高財務責任者(CFO)マギー・ウー(武衛)は「アリババグループの中国国内におけるコアコマース事業は全面的に新型コロナ危機前の水準まで完全に回復した」と説明しました。

「天猫」GMVが27%増、「淘宝直播」のGMV増加率100%超え

中国国内消費者向けのB to C ECサイト天猫(T-mall/テンマオ)」においては、現物商品の取引によるGMV(流通取引総額)は前年同期比27%増で、新型コロナウイルス流行前の2019年12月に発表された決算と比べたら、すべての主要カテゴリは同等かより速いスピードで成長しています。

特に一般消費財、家庭用品、家電のカテゴリーの成長が著しいです。

また、淘宝直播(タオバオライブ)を利用する業者も増えています。

淘宝直播はライブコマースプラットフォームであり、誰もがリアルタイムで商品のレビューや販促を行うことができます。

2020年4〜6月期の淘宝直播経由のGMVは前年同期比で引き続き100%を超えており、業者自ら運営しているライブコマースのGMVが全体の約60%を占めています。

天猫 インバウンド用語集

インバウンド用語 天猫 とは について解説します

ライブコマースとは

今日、「ライブコマース」と呼ばれるインターネットを利用したライブ配信による販路が注目を集めています。リアルタイムで顧客と直接コミュニケーションが取れるうえに、動画プロモーションにより画像や文字だけでは伝わらない商品細部まで紹介することが可能であり、顧客の購買意欲向上につながります。本記事では、インバウンド集客にも有効性が期待できるライブコマース導入におけるメリットやデメリット、ライブコマース市場が大きく発達している中国のプラットフォームについて解説します。目次ライブコマースとは日本ではIn...


「天猫国際」GMVが40%増:越境EC市場が拡大傾向

新型コロナウイルスにより海外渡航が制限された中、中国人消費者が依然として海外のハイクォリティやブランド品への欲求が高く、それによって、アリババグループが運営している越境ECサイトの「天猫国際」の成長につながりました。

2020年4〜6月期の「天猫国際」のGMVは前年同期比で40%超えの増加となりました。

【中国】年間取引額2兆円の越境EC、国産プラットフォームTOP5と市場シェア:進出前に理解したい「3つの分類」特長とメリット・デメリットを整

新型コロナウイルスの世界的な流行により、国を超えた行動に制限かかかる中、現地を訪れることなくECサイトを通して直接海外商品を購入できる越境EC市場に注目が集まっています。越境ECを活用することにより、旅マエに越境ECを通して購入した商品を旅ナカ(インバウンド)で再購入したり、旅ナカで購入した商品を旅アトに越境ECで再購入するなど、消費者との長期的な関係性作りも可能になります。今週には、中国のECセールでも近年存在感を増している「618」も控えています。今回はインバウンド市場でも消費意欲の旺...


アリババ、米中ハイテク戦争の次の標的になるか

アリババグループは中国内市場が明るい一方、現在国際的に、中国企業に対する規制や禁止などの動きが活発となりつつあります。

インドで一部サービスが停止に

2020年6月29日に、インド政府は中国製アプリが「インドの主権、防衛、国家の安全と社会秩序に悪影響を与えるため」を理由にし、TikTokやWeibo、WeChatなど59個の中国企業が提供するモバイルアプリを利用禁止対象にしました。

そのうち、アリババグループ傘下のUCWebが提供するUC BrowserやUC Newsも含まれています。

UC BrowserはAndroidデバイスで使用できるブラウザーで、主に中国やインドで使われています。

UC Browserにとってインド市場はもっとも重要であり、世界中4.3億以上のユーザーのうち、インドは1.3億人を占めています。

StatCounterの調査結果によると、2019年のインドモバイルブラウザー市場において、UC Browserは23%のシェアを獲得しており、GoogleのChrome(62%)に次ぐ人気です。

ただし、インド政府の禁止措置が発表されて以来、UC Browerのインドでのシェア率は減少し続け、2020年8月には8%まで落ち込んでいます(2020年8月25日調査)。

アリババグループも2020年8月20日に、UC Browserなどインドでの一部ネットサービスを停止すると発表しました。さらに、約350名のインド社員のリストラも行ったとインド現地のメディアに報道されました。

インド、TikTokやWeChat含む59の中国産アプリを使用禁止に:世界最大の市場を失う中国企業、国境紛争の激化背景

インド政府は現地時間6月29日夜に、中国企業が提供する59個のモバイルアプリを禁止すると発表しました。ショートムービーアプリの「TikTok」、マイクロブログ「Weibo」、中国国内とのメッセージには欠かせない「WeChat」も含まれています。関連記事あなたのスマホにも実は入っている?実は「中国製アプリ」目次禁止された中国製アプリ:TikTokやWeChatも背景に高まる国境の緊張中国アプリ、インド市場を失い日本へ?禁止された中国製アプリ:TikTokやWeChatもインド電子・情報技術省...

米「クリーン・ネットワーク」計画の対象に

アメリカでは2020年8月6日に、TikTokWeChatを運営する中国会社「バイトダンス」と「テンセント」との取引を禁止する大統領令が発令されました。

現時点ではアリババグループは規制の対象に含まれていませんが、一部の海外報道機関はアリババグループがアメリカ政府の次のターゲットになるではないかと予測しています。

中国を中心に大きな存在感を示しているアリババグループは、欧米での知名度はまだ低い現状にあります。

アリババグループの収益構成を見ると、8割以上が中国国内の事業によって構成され、グローバル事業は7%、クラウドコンピューティング事業は8%しかないことがわかります。

他方、アリババグループは2015年から積極的な海外進出を進めており、創業者の馬雲は、2025年までに売上の半分以上を中国以外に依拠するという目標を揚げました。

例えば、アリババグループの「天猫国際」は2019年6月26日に英語版を立ち上げ、出店する海外ブランドは3年間で約2倍の4万ブランドに拡大させると目指しています。

また、2020年4月16日に天猫国際は今後1年間で1,000の海外ブランドの中国進出を支援すると発表しました。

また、アリババグループ傘下のクラウドサービス「Alibaba Cloud」は世界3位のIaaS市場シェアを持ち、アメリカやオーストラリア、イギリス、日本など世界200以上の国と地域にサービスを提供しています。

このように、世界中でますます存在感を強めるアリババグループが、トランプ政権による中国当局の脅威を排除する動きの対象になる可能性がないとは言い切れません。

実際に、2020年8月5日にアメリカのポンペオ国務長官が発表した「クリーン・ネットワーク」計画では、アリババグループが名指しされました。

現時点では「クリーン・ネットワーク」計画は実施するかどうかが不明であり、法的拘束力もありませんが、海外進出を狙うアリババグループにとっては大きな脅威になるのではないかと考えられています。

中国アプリ規制が日本で検討開始/TikTokや「荒野行動」「アズレン」禁止に惜しむ声も

2020年6月末より、中国アプリに対する世界からの風当たりが強くなっています。インドでは中国との係争地域でのインド兵死亡をきっかけに、6月29日、ショートムービーアプリのTikTokはじめとする59のスマホアプリの使用禁止を発表しています。アメリカやオーストラリアでも同様の規制が検討されています。また6月30日から香港では国家安全維持法が施行され、香港での反政府的活動の取り締まりが開始されました。TikTokは同地域から撤退することが伝えられていました。こうした中、7月28日には日本でも、...


中国かアメリカか:日本に対する影響は?

新型コロナウイルスがもたらした消費者ライフスタイルの変化と企業運営モデルのデジタル化により、アリババグループの売上を牽引し、堅調な成長を見せました。

しかしながら、世界中の中国ネットサービスに対する規制が顕著となり、アリババグループを含めて、今後中国IT大手企業の海外市場における行き先が曇っています。

他方、このような規制の動きによって、アメリカをはじめとする西側諸国は、中国人消費者が失うのではないかと懸念されています。

WeChatを例にあげると、アメリカではWeChatのユーザーは中国人観光客やアメリカ在住の中国人を含めて1,900万人を超えており、彼らにアプローチするために、WeChatを活用しているアメリカのブランドや企業が少なくありません。

そのため、WeChatとの取引を規制する命令が実施された場合は、海外企業が今後中国人観光客や海外在住の中国人にリーチすることが難しくなるだろうと考えられます。

現時点では、日本では中国が提供するアプリやソフトウェアに対し、アメリカやインドほど具体的な規制の動きはありません。

ただし、自民党「ルール形成戦略議員連盟」が「TikTok」などの使用制限を求める提言をまとめる方針を確認したことも報道され、今後日本でも中国かアメリカか、選択肢を迫られることが避けられなくなってくるでしょう。

またそれによって、日本のインバウンド企業および訪日中国人市場へのアプローチの仕方にどのような影響が出るのか、これからも注目が集まります。


<参考>

Alibaba Japan:アリババグループ、2020年4-6月期の決算を発表

Alibaba Japan:天猫国際、今後1年間で1,000ブランドの中国進出を支援すると発表

綜投网:阿里将停止印度部分服务 印度禁用59款中国应用

Alibaba Group:2020年6月份季度业绩

Alibaba News:阿里巴巴集團公佈2020年6月份季度業績

Alibaba News:阿里巴巴集團董事會主席兼首席執行官張勇業績電話會議發言

CNN BUSINESS:After TikTok and WeChat, Alibaba could be the next target in Trump's tech war

香港01:國際電商戰場猛如虎 阿里巴巴在海外卡了甚麼關?

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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