2022年市場規模95兆円超の「ヘルスツーリズム」とは:定義・推進事例を紹介

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ヘルスツーリズム(またはウェルネスツーリズム )とは観光庁の定義によれば、「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復、増進、保持する新しい観光形態」を指します。

ヘルスツーリズムの市場規模は年々拡大しており、Global Wellness Instituteの2018年のレポートによれば、2017年における世界のヘルスツーリズム市場は6,390億ドル(約66兆3,097億円)にのぼり、2020年には9,194億ドル(約95兆4,071億円)になると推計されています。

このような世界的なヘルスツーリズムの広がりを受けて、日本でも、ヘルスツーリズムをインバウンド誘致の手段の一つとして活用する取り組みが各地で行われています。

今回の記事では、ヘルスツーリズムの定義や市場規模を踏まえて、ヘルスツーリズムのインバウンド集客としての可能性や、実際に行われているヘルスツーリズムの事例について紹介します。

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ヘルスツーリズムとは

観光庁の定義によると、ヘルスツーリズムとは「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復、増進、保持する新しい観光形態」の事を指します。

ヘルスツーリズムの市場は近年拡大しており、世界的にもその認知度が高まっていることから、インバウンド対策の方法のひとつとしても注目されています。

ヘルスツーリズムの定義と種類

観光庁は、ヘルスツーリズムを「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や 身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復、増進、保持する新しい観光形態」と定義しています。

ヘルスツーリズムは、「ウェルネスツーリズム」と呼ばれることもあり、どちらも旅行を通して心身の健康増進を目指すツーリズムのことを意味します。

ヘルスツーリズムといわれる旅行の種類は、医療的側面が強いものからレジャー的側面が強いものまでさまざまです。

ヘルスツーリズムの普及や人材育成を推進する「日本ヘルスツーリズム振興機構」によると、ヘルスツーリズムは大きく3種類に分けられます。

  • ウォーキングやゴルフなどの「スポーツ・アクティビティ」
  • 温泉やスパの「リラクゼーション」
  • 薬膳料理やアレルギーフリー食を味わう「ヘルシーフード」

ヘルスツーリズムでは、これら3つの種類を組み合わせたプログラムが多く行われています。

ヘルスツーリズムの市場規模

ヘルスツーリズムの市場規模は年々拡大しています。

Global Wellness Instituteが2018年に発表したレポートによると、2017年に世界のヘルスツーリズム市場は、約6,390億ドル(約66兆3,097億円)に達し、同年に催行されたヘルスツーリズムの回数は約8億3,000万回となっています。

ヘルスツーリズムが拡大することにより、旅行者が利用する宿泊施設や、レストラン、買い物やアクティビティなど様々な産業に大きな経済効果をもたらします。

2017年のヘルスツーリズムによる経済効果は、宿泊施設で約1,300億ドル(約13兆4,902億円)、レストランで約1,110億ドル(約11兆4,148億円)、アクティビティで約1,000億ドル(約10兆3,771億円)、買い物で約980億ドル(約10兆1,696億円)となっています。

また、ヘルスツーリズム市場の2015年から2017年における年間平均成長率は6.5%といわれており、観光業全体の成長率の約2倍のスピードで急速に成長しています。

今後、アジア太平洋地域や中東地域を中心にヘルスツーリズム市場は拡大し、2017年から2022年の年間平均成長率が7.5%で、2022年には市場規模が9,194億ドル(約95兆4,071億円)になると推測されています。

▲[ヘルスツーリズム市場の成長予測:2017年〜2022年]:Global Wellness Tourism Economy
▲[ヘルスツーリズム市場の成長予測:2017年〜2022年]:Global Wellness Tourism Economy

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インバウンドとしての可能性

世界的に広がりをみせるヘルスツーリズムですが、日本においても、インバウンド対策の手段として注目されています。

その理由として、日本にはヘルスツーリズムの資源となりうる施設や習慣が多く存在することがあげられます。

代表的なものとしては、温泉や和食などがあり、これらは健康によい日本の代表的な文化として世界でも広く認知されています。

また、観光庁が発表した2019年の「訪日外国人消費動向調査」では、「訪日前に楽しみにしていたこと」として「日本食を食べること」が1位、「温泉入浴」は5位となっており、日本を訪れた際に和食や温泉を楽しみたいと考える訪日外国人観光客も少なくありません。

このようなニーズをうまく取り込み、ヘルスツーリズムとして発信していくことで、インバウンド誘致にもつながると考えられるでしょう。

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政府によるヘルスツーリズム推進の取り組み

ヘルスツーリズムは、年々市場を拡大しており、地域の経済活性化やインバウンド対策にもつながることから、日本の観光産業の軸として政府も積極的にヘルスツーリズムを推進しています。

ここでは、政府による「ヘルスツーリズム認証制度」を紹介します。

「ヘルスツーリズム認証制度」立ち上げ

経済産業省では、2018年からヘルスツーリズム認証委員会を立ち上げ、「ヘルスツーリズム認証制度」を実施しています。

ヘルスツーリズム認証制度では、プログラムの内容や事業者の取り組みの体制を第3者の目線で評価し、プログラムの品質を保証しています。

認証されることにより、消費者が安心してプログラムを体験できるだけでなく、事業者のブランドの確立やPRポイントの創造にもつながり、ヘルスツーリズムの浸透を促しています。

2020年11月現在、国内では39のプログラムが認定を受けており、兵庫県神戸市の海辺をウォーキングし、天然温泉に入浴する「ウェルネスウォーキング」や、長野県飯山市のブナの原生林をめぐる「なべくら高原 森林セラピー散策」などが例として挙げられます。

ヘルスツーリズムの事例

日本では各地で実際にヘルスツーリズムが実施されており、各地の宿泊地や観光地などを活用した旅行プランが提唱されています。

本記事では和歌山県、群馬県、大分県の3県で取り組まれているヘルスツーリズムの事例について紹介します。

1. 和歌山県・熊野古道

熊野古道は和歌山県にある3つの大社と周辺の街をつなぐ旧道です。熊野古道では和歌山県立医科大学などと共同で、心身に影響を及ぼすことが分かっている五感を刺激しながら熊野古道を歩くウォーキングを実施しています。

ウォーキングは、熊野を知り尽くした健康的に楽しみながら案内してくれる古道歩きのインストラクターである、熊野セラピストが一緒に歩いてくれることが特徴です。

さらに「健康案内人」がペース配分や水分補給をサポートしてくれます。企画にはバランスが考えられた弁当や温泉、健康チェックなども含まれています。

また熊野古道ウォーキングは、国内の旅行者からの人気を集めているだけではなく、日本ならではの自然や食が楽しめることから、欧州豪を中心とした訪日外国人観光客からも注目されています。

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2. 群馬県みなかみ町

群馬県みなかみ町では、日本百名山にも選ばれている谷川岳を中心として、自然環境を活用したアウトドアスポーツや温泉滞在とヘルスツーリズムを組み合わせたプログラムを企画しています。

このプログラムは、2020年2月に「第12回ヘルスツーリズム大賞・奨励賞」において奨励賞を受賞しています。

プログラムのコンセプトには「運動」「栄養」「休養」「継続」「シェア」「計測」という6つを掲げており、体の状態を把握することで自律神経を整えるポイントを知ることに重点を置いています。

また、このプログラムの参加者の99%は県外からの参加者であるため、参加者の健康増進だけでなく、地域の交流人口の増加にもつながっています。

3. 大分県竹田市

大分県竹田市では市観光ツーリズム協会と連携して、温泉と自然散策を組み合わせた「こころ・からだ よみがえる 健康ながゆ旅」というウォーキングツアーのプログラムを実施しています。このプログラムはヘルスツーリズム認証を受けています。

このプログラムは、専門の相談員による血管年齢やストレス度といったチェックを受け、ガイドと長湯ダムを散策して有酸素運動をするという内容です。

さらにパワースポットの散策や森林浴、飲泉などに加え、有機食材のヘルシーな昼食や温泉への入浴なども含まれています。最後には再度チェックを受けアドバイスをもらえます。

地域活性化と参加者の健康を促進するヘルスツーリズム

ヘルスツーリズムとは、自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復、増進、保持する新しい旅行のスタイルです。

ヘルスツーリズムは世界的にも市場規模を拡大しており、今後もさらなる成長が見込まれています。

日本においても、インバウンド対策の一環として、和食や温泉などの日本文化を取り入れたヘルスツーリズムが推進されています。

またプログラムの品質向上やブランドの確立に向けて、政府による「ヘルスツーリズム認証制度」がなされています。

ヘルスツーリズムは、地域の資源を活かしながら、参加者の健康促進だけでなく、経済の活性化や交流人口の増加にもつながる持続可能な観光として注目を集めています。

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<参照>

Global Wellness Institute:WELLNESS INDUSTRY STATISTICS & FACTS

訪日ラボセミナーレポートのご紹介&最新版インバウンド情報まとめ

訪日ラボでは、インバウンド対策に課題を抱えるご担当者様向けに、お悩み・課題解決を支援すべく、最新レポートの公開や無料のオンラインセミナーを実施しています。

【セミナーレポート】「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント


2023年は2,500万人の外国人旅行者が訪れた日本のインバウンド市場。コロナ前の2019年に迫る勢いの回復をみせており、2024年の訪日外国人数は3,000万人を上回るとの予想もあります。

日本を訪れる外国人旅行者の間で、特に人気が高いアクティビティが「桜の鑑賞」です。桜の開花時期に合わせて日本を訪れる外国人も多く、日本の重要な観光資源の一つとなっています。

そこで訪日ラボでは、「『桜シーズン』に向けたインバウンド施策のポイント」と題したセミナーを開催しました。
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本セミナーは大好評につきアーカイブ配信を行っておりますので、ぜひご覧ください。

詳しくはこちらをご覧ください。

「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント【セミナーレポート】


【インバウンド情報まとめ 2024年3月】2023年年間宿泊者数 1位は韓国 他

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この記事では、2024年3月版レポートから、2月〜3月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

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インバウンド情報まとめ 2024年3月

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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