新型コロナウイルス感染拡大の影響で移動が制限される今、越境ECとよばれる国外との電子商取引が注目を集めています。
その中でも、アメリカは世界で2番目のEC市場を誇り、AmazonやeBayといったECプラットフォームを通して多くのアメリカ人が海外から商品を購入しています。
一方で、その市場規模の大きさのため競争率が高く、消費者の特性や現地のトレンドなどを押さえた効果的なマーケティングが必要となります。
今回の記事では、アメリカの越境ECとプラットフォームを取り巻く環境、進出の際に気をつけるべきポイントや有効なマーケティング手法について整理します。
関連記事
訪日アメリカ人を集客・誘致する際に押さえておきたい10個の数値
インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
アメリカの越境EC基本情報
ここでは、アメリカの越境ECの市場規模やユーザーの特性、参入する際に気をつけるべきことについて紹介します。
世界第2位の規模を誇るアメリカのEC市場
デジタルマーケティングリサーチ専門会社eMarketerが発表した「Top 10 Countries, Ranked by Retail Ecommerce Sales, 2020 & 2021」によれば、アメリカにおいて2020年のEC市場規模が7,945億米ドル(約84兆6,933億円)、2021年は8,431億5千万米ドル(約89兆8,794億円)にのぼると予測されています。
また同調査から、アメリカは中国に次いで世界で2番目に大きなEC市場であることがわかります。
統計調査データプラットフォームStatistaによれば、2016年は2億960万人だったアメリカのECユーザー数は、2021年には2億3,050万人に達すると予想されており、その浸透率は、2021年に79.0%、2025年には85.5%まで上昇すると推計されています。
アメリカにおけるECユーザー数が多い背景としては、インターネットの普及率の高さがあげられます。
Statistaの「Digital population in the United States as of January 2020」によれば、2020年1月時点で、アメリカには2億8,800万人を超えるアクティブなインターネットユーザーが存在しており、全人口の87%を占めています。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンと巣ごもり消費の影響から、アメリカでは急速なEC化が進み、今後EC市場がさらなる成長を見せるでしょう。
また経済産業省の「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、アメリカにおける越境EC利用度は34%であり、アメリカ人が日本から購入した金額は9,034億円に達したとわかります。
アメリカの越境ECユーザーの特性
PayPalが発表した「2020 PayPal Borderless Commerce Report」によれば、2018年時点でアメリカの越境ECユーザーが購入した商品カテゴリのトップ3は、「衣類・靴・アクセサリー」、「ジュエリー・時計」、「おもちゃ・ホビー」となっています。
また、PayPalの「PayPal Cross-Border Consumer Research 2018」によれば、越境ECを利用する理由に対して、「商品の価格が安い」が72%でもっとも高く、「自国ではその商品を購入できない」(49%)、「新しい商品や興味深い商品を発見できる」(34%)が多く回答されています。
*この調査は世界31か国を対象としたものです。
ではアメリカの越境ECユーザーがよく購入する日本商品はどういったものでしょうか。
BEENOS株式会社が発表した「BEENOS 越境EC 世界ヒットランキング 2020」によると、アメリカではジャパンカルチャーの人気が高く、おもちゃやゲーム、コミック、アニメグッズが人気を集めています。
またレディースファッションや音楽といった商材も特に伸長しました。
コロナ禍の今年、世界で売れた日本の商品ランキング:「日本ロス」消費が加速、第三次越境ECブームの内訳とは
訪日ラボ編集部は、11月10日に行われた、BEENOS株式会社による2020年の越境ECランキングの発表会に参加しました。ランキングは、BEENOSグループの商品代理購入サービス「Buyee」における2020年1月1日~2020年9月30日の売上及び前年同期比のデータをもとに、独自に算出されたものです。本記事ではBEENOSが発表した越境ECランキングの詳細をお伝えします。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備...
アメリカの越境EC進出の際に気を付けるポイント
アメリカの越境ECへ進出を試みる場合、気をつけるべき点がいくつかあります。
まず、配送料金を明示し、迅速な発送を行うことです。
前述したPayPalの同調査によれば、越境ECユーザーがもっとも大事にしている情報は「配送料金の明示」です。
またAvionosの2019年に発表した「SHOPPERS DEMAND SUPERIOR ECOMMERCE EXPERIENCES」によれば、アメリカの消費者がインターネットショッピングを利用する際にもっとも重視している点は「配達のスピードが速いこと」です。
そのため発送場所や方法によってかかる料金の違いを明示し、迅速な発送を対応することで、アメリカ消費者の信頼を得られ、購入につながると考えられます。
また、関税と禁制品の項目を確認しておく必要もあります。
アメリカにおける関税は輸入量と輸入価格で決定し、これらは、輸入者が計算し納税しなければなりません。
また、食品や医薬品などは輸入が規制される場合があるため、販売する商品が輸入禁止の項目に該当しないか確認する必要があります。
アメリカの3大ECプラットフォーム
eMarketerの調査によれば、2020年アメリカのEC市場における事業者シェアトップ10は以下のように示しています。
以下はシェア率トップ3の「Amazon」、「Walmart」、「eBay」を取り上げ、それぞれの特徴を紹介します。
1. Amazon
Amazon(アマゾン)はIT業界における支配的企業群「GAFA」や「FAANG」の一角に数えられる、世界的大企業の一つです。
上記eMarketerの「2020年アメリカのEC市場における事業者シェアトップ10」の図が示したように、アメリカのEC市場において、Amazonのシェア率が38.7%であり、2位「Walmart」の5.3%、3位「eBay」の4.7%と比べると遥かに高いです。
アメリカのAmazonで出品したい場合は、ますAmazon.co.jpでセラーアカウントを取得します。
その後「グローバルセリング」より、アメリカAmazonマーケットプレイスを開き、新規セラーアカウントを取得します。
最後にアメリカAmazonのセラーアカウントを日本Amazonのセラーアカウントに紐づければ、設定が完了となります。
この手続きについて、2020年よりAmazonジャパンがサポートし始め、日本語での出品管理ツールや出品ガイドも提供しています。
2. Walmart
Walmart(ウォルマート)は1962年に創業したアメリカのスーパーマーケットチェーンです。
デロイト・トウシュ・トーマツの「Global Powers of Retailing 2020」によれば、Walmartの2018年度(2019年6月30日までを期末とする事業年度)の売上高は5,144億米ドル(約54兆8,347億円)で、22年以上連続で世界一の小売企業となります。
またWalmartは実店舗の展開のみならず、2011年からソーシャルメディア関連のベンチャーやEC分野のスタートアップを買収したり、自社でデジタルテクノロジーのスタートアップを設立したりして、EC市場に対して積極的なアプローチをしています。
3. eBay
eBay(イーベイ)は1995年に設立し、世界190か国で展開するグローバルECプラットフォームです。
同社の公式サイトによると、出品数は14億点で、バイヤー数は1.85億人となり、取引高は10.9兆円に達します。(2021年2月時点)
イーベイ・ジャパンでは、日本のセラーを支援する日本語対応のサポートを提供しています。
アメリカECで注目のマーケティング方法
アメリカのEC市場は世界第2位の規模であり、競争率の高い市場ともいえます。
アメリカの越境ECにおいて成果を挙げるためには、有効なマーケティングを積み重ね、信頼とブランドを構築していく必要があります。
ここでは、近年アメリカのECで注目のマーケティング方法「ソーシャルコマース」について紹介します。
ソーシャルコマース
ソーシャルコマースとは、SNS経由でのネット購入を指しています。
近年、アメリカではSNSをきっかけにECサイトへの流入が増え続けています。
Adobe Digital Insightsによれば、アメリカにおいてSNSからのECサイトへのアクセスシェアは2016年Q1の3.1%から伸ばし続けており、2019年Q1で9.1%まで成長しています。
さらに、SNSからのECサイトへのアクセスの伸び率は有料検索や無料検索、ディスプレイ広告などほかの手法より高く、Adobeの「Retail Unwrapped: 2018 Holiday Predictions Report」では、2016年9月から2018年9月まで、110%の伸び率を見せました。
また、新型コロナウイルスがもたらした巣ごもり消費拡大の影響を受け、アメリカのソーシャルコマースの成長がさらに加速しています。
eMarketerの調査によると、2021年のアメリカのソーシャルコマースの売上高は34.8%増の360億9,000万米ドル(約3兆8,485億円)にのぼり、全小売eコマース売上の4.3%に相当すると予測されています。
また、同調査ではアメリカのソーシャルコマース購入者数は、2020年に25.2%増の8,010万人となり、2021年にはさらに成長し9,040万人になると推計されています。
このような傾向を踏まえて、今後アメリカで越境ECを展開する際に、SNSからの集客、またFacebookやInstagramなどEC機能を搭載するSNSプラットフォームへの出品など、SNSのマーケッティング手法を行う必要性が高くなるといえるでしょう。
ソーシャルコマースとは:強み、種類、代表的なプラットフォーム3選
スマートフォンの普及やSNSの発達は、社会構造やビジネスに大きな影響をもたらしています。近年では、従来プロモーションの場になっていたSNSにECの機能が装備された「ソーシャルコマース」という新たなビジネスモデルが誕生し、世界的な広がりをみせています。また、ソーシャルコマースは中国に代表される海外でも人気を集めていることから、コロナ禍におけるインバウンド対策として、越境EC参入の足ががりとなる可能性もあります。この記事では、ソーシャルコマースの市場規模や種類、代表的なソーシャルコマースプラッ...
効果的なマーケティングで、アメリカEC市場の進出へ
アメリカは世界2位のEC市場を有しており、Amazon、Walmart、eBayといった大手ECプラットフォームが存在し、それぞれの特徴を押さえつつ、自社の商品に合ったプラットフォームを選択することが重要です。
また、越境ECの効果を最大化するためには、ソーシャルコマースなど最新のトレンドを取り入れて、現地での商品の認知度拡大に向けたマーケティングを行うことが必要でしょう。
【独自】ワクチン報道が契機か、欧州の訪日旅行検索が23%増加「お花見シーズン」への関心依然として高く
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界全体に大きな変化をもたらしてから、約一年が経過しようとしています。訪日外国人観光客の客足は依然として止まっていますが、旅好きの訪日潜在層は今も旅行に関する情報収集を行いながら、再び旅行に行ける日を待ち望んでいます。それでは、訪日意欲のある人はどのような属性を持ち、何日先の旅行を計画しているのでしょうか。この度、訪日ラボと旅行データを扱うソリューション企業ADARAは、共同企画として「北米・欧州からの訪日旅行検索 COVID-19前後の変化」につい...
コロナ禍で注目される東南アジアの越境EC
全世界で流行が拡大し続けている新型コロナウイルスは、世界各国の経済に暗い影を落としています。しかしその一方で、新しいライフスタイルが求められる現状がむしろ追い風となり、業績を伸ばしている産業もあります。その代表格が国境を超えたビジネスである越境ECです。そこで本記事では、ECビジネスの中でも近年市場規模の拡大が注目を集めている東南アジアの越境ECについて、その現状や主要国の市場の特徴について整理します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、イ...
インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる
<参考>
・eMarketer:Top 10 Countries, Ranked by Retail Ecommerce Sales, 2020 & 2021
・eMarketer:Social Commerce 2021
・Paypal:2020 PayPal Borderless Commerce Report
・Statistia:eCommerce United States
・Statistia:Number of digital shoppers in the United States from 2016 to 2021
・Statista:Digital population in the United States as of January 2020
・経済産業省:「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」
・日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所:「米国における電子商取引市場調査」
中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!