城泊とは|長崎県平戸城、愛媛県大洲城、宮城県白石城の活用法

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城泊(キャッスルステイ/Castle Stay)とは、文字通り「城に宿泊する」ことです。ヨーロッパなどではすでに宿泊コンテンツとして活用されています。

日本では城泊の取り組みは2017年から始まっており、2020年から観光庁でも「城泊寺泊による歴史的資源の活用事業」として訪日外国人を誘致するための観光コンテンツの開拓を進めています。

またコロナ禍を機に「量から質へ」の転換を図るインバウンド事業者にとって、城泊アフターコロナにおいて欧米豪富裕層向けの新しいコンテンツとして注目を集めています。

本記事では城泊の定義や日本国内の代表事例、富裕層を獲得するためのインバウンド対策について整理します。

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城泊とは?観光庁もインバウンド効果を期待する観光スタイル

城泊とは、名前の通り「城に泊まること」です。しかも城を模した建物に宿泊するのではなく、現存する歴史ある城に宿泊できることが特徴です。

この城を使った宿泊形態は、すでにフランスやイギリス、ドイツ、オーストリアなど中世の城を有するヨーロッパ各国で実施されています。

城を丸々貸し切りにして長期滞在できるプランから、1泊2名利用で宿泊代金2万円前後で利用できるプランまでさまざまです。

特に城主気分を堪能できる貸し切り形式のプレミアム体験型宿泊は、世界の富裕層旅行者から注目を集めています。

日本でも2017年から城泊を推進しはじめており、アフターコロナの目玉観光コンテンツとして期待されています。

訪日外国人に人気な日本の城、城泊でさらなる消費拡大を狙う

2018年にじゃらんリサーチセンターが日本人及び訪日経験のある5か国(韓国、中国、アメリカ、インド、ドイツ)に居住している外国人対を対象にアンケートを行いました。

その結果によると、アメリカ人が今後訪日旅行で経験・実施してみたいことランキングで1位となったのがまさに「お城」で、日本の歴史や文化に対するインバウンド需要の底堅さをうかがわせています。

▲[今後、訪日旅行で経験・実施してみたいことランキング]:じゃらんリサーチセンター
▲[今後、訪日旅行で経験・実施してみたいことランキング]:じゃらんリサーチセンター

またトリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の観光スポット 2020」では、姫路城は9位にランクインしていることから、日本の城は訪日外国人にとって魅力的なコンテンツといえるでしょう。

城泊は、通常日帰りの神社仏閣や史跡訪問と比べて、宿泊の需要も取り入れられるため、滞在時間が長くなり、飲食や娯楽など地元での消費金額も大きくなると考えられます。

しかし現状、日本全国に200箇所の城が存在していますが、宿泊施設として利用される事例はわずかです。

こうした城や社寺など日本独自の歴史的資源を活用した体験型宿泊コンテンツを開拓するには、観光庁では2020年より「城泊寺泊による歴史的資源の活用事業」を進めています。

この取り組みにより、地域の新しい観光コンテンツを開発し、訪日外国人の地方誘客と旅行消費額の増加を促進し、「2030年6,000万人」の目標実現に寄与すると見込まれています。

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日本で進めはじめる城泊、平戸城や大洲城の先行事例を紹介

前述したとおり、日本では城泊に関する取り組みはまだ少なく、訪日外国人向けの体験型宿泊コンテンツの造成は十分ではありません。

ただし、2017年より長崎県の平戸城や愛媛県の大洲城、宮城県の白石城をはじめ、各地でインバウンド向けの体験宿泊イベントや城泊実証実験を実施しています。

ここでは、これらの城泊のコンテンツについて紹介します。

長崎県平戸城|日本初の城泊、欧米から強い人気

長崎県平戸市にある平戸城は、1559年、平戸藩藩主・松浦鎮信(まつうら しげのぶ)によって築城され、日本100名城にも選ばれている歴史ある名城です。

2017年に「平戸城キャッスルステイ無料宿泊イベント」という日本初の城泊イベントが実施されました。

海外のメディアにも取り上げられたため、1組の募集に対して、国内外から約7,500組の応募を獲得し、そのうち半数以上はヨーロッパからの応募でした。

また平戸城を舞台にした城泊は、観光庁の「令和2年度 観光振興事業費補助金(城泊寺泊による歴史的資源の活用事業)」の採択事業として選定されました。

当初は2020年の夏には常設の城泊事業をスタートさせる予定でしたが、現在は2021年4月1日の開業を目指して準備が進んでいます。

実際の宿泊は、平戸城の中の「懐柔櫓(かいじゅうやぐら)」を貸し切りにする形で行われ、施設内部は桃山〜江戸時代の雰囲気を感じさせながら、現代のモダニズムも加えた贅沢な空間にリノベーションされています。

また寝室から平戸港を一望でき、大名気分を味わえます。

ほかに平戸神楽、乗馬、居合道、剣道、座禅などの体験メニューを提供しており、宿泊客のニーズに合わせて内容をアレンジすることも可能です。

宿泊費は素泊まり1泊60万円と高額で、コロナ収束後の欧米の富裕層をターゲットにし、平戸市のインバウンド集客に寄与すると期待されています。

愛媛県大洲城|1泊100万で復元木造天守閣に宿泊

愛媛県にある「大洲城」の歴史は、鎌倉時代末期にまで遡ります。

江戸時代初期、藤堂高虎(とうどう たかとら)らによって整備されましたが、老朽化が原因で明治時代に廃城となりました。

しかし2004年に主に地元市民による寄付で、戦後初めて創建当時の工法を用いて木造天守が復元され、今回宿泊施設となっているのもこの木造天守です。

創建当時の工法で再現された天守だけに、施設だけでも戦国時代にタイムスリップしたような宿泊体験ができるようになっています。

さらに、大洲城の宿泊体験では、宿泊者が城泊を満喫できる企画が数多く盛り込まれています。

具体的には、宿泊者に対し、1617年に行われた当時の城主・加藤貞泰(かとう さだやす)の入城シーンの再現や幟隊による歓迎、鉄砲隊による祝砲が行われます。

また、宿泊者は馬で入城する城主をサポートする影武者の役割を体験できるといったコンテンツも用意されています。

2020年7月より宿泊客の受け入れをスタートし、初年度は30泊30組限定とし、2名1泊100万円という宿泊料金設定で、2〜6名まで宿泊可能です。(1名追加毎に+10万円、いずれも税抜)

料金には上記の入城体験のほか伝統芸能鑑賞、夕食、臥龍山荘の早朝貸切や松山空港・JR駅への送迎サービスが含まれています。

またこちらの城泊も、観光庁の「令和2年度 観光振興事業費補助金(城泊寺泊による歴史的資源の活用事業)」の採択事業です。

宮城県白石城|サンマリノ駐日大使が宿泊で伝統文化を体験

宮城県白石市の中心部にある白石城は、関ヶ原の戦いから明治維新までの260年余り伊達家の重臣・片倉氏の居城だった城です。

1874年に解体されましたが、片倉氏の偉業を偲び、1995年に天守閣、大手一ノ門・大手二ノ門が史実に忠実に復元されました。

こちらも城泊開始に向けての動きがあり、2019年にはイタリア半島の中東部にあるサンマリノ共和国駐日大使夫妻を招き、宿泊体験を開催しました。

この宿泊体験の中では武将隊による歓迎、甲冑や居合道体験が行われ、夕食には仙台の郷土料理がふるまわれました。

宿泊施設になったのは再建された天守閣最上部で、駐日大使夫妻もその眺望を絶賛していたと報道されています。

こちらの想定宿泊料金は80~100万円となっており、実際に事業として展開された場合には、主に欧米豪の富裕層向けのコンテンツとして提供される予定となっています。

※当初は2020年度の販売を目指していました。

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今後のインバウンドで注目の城泊|富裕層獲得なるか/課題は?

前述した事例を通して、城泊の多くは富裕層をターゲットにしていることがわかります。

またコロナ禍で経済ショックや旅行商品の高額化が起り、これらの影響から左右されにくい富裕層は非富裕層と比べるとインバウンド客足の回復が早いと考えられます。

JNTOも、コロナ禍による旅行トレンドの変化を受け、世界の旅行需要回復を牽引するのは「富裕層」であり、特に旅に「本物の体験」を求め、自分の趣味・関心に関するコンテンツに対して惜しむことなく高額消費をするタイプが、インバウンドにおいて大きなターゲットとなる、としています。

ここでは、ターゲットにマッチしたコンテンツとして注目を集める城泊を今後さらに拡充させていくための課題について検証していきます。

城泊で富裕層の訪日観光客獲得なるか

JNTOの2020年に発表した「富裕旅行市場に向けた取組について」によると、米・英・仏・独・豪の5か国の富裕旅行者(1回の旅行で100万円以上消費する者)数は、全海外旅行者の1%でありながらも、その消費額は、海外旅行消費額全体の13.1%を占めるといいます。

この消費額の割合のうち、日本の獲得分は1.3%と未だ小さいことから、JNTOは富裕旅行者のさらなる取り込みが必要との見解を示しています。

また少ない客数で大きな消費額が生み出せるので、富裕層の誘致は、ウィズコロナアフターコロナで求められる「量から質」への転換に順応できるといえるでしょう。

富裕層向けの観光コンテンツを造成するには、JNTOによれば以下3つの指標があります。

  • 「コアバリュー」:日本やその地域ならではの価値があるかどうか
  • 「バリュー提供」:一般的な旅行者に比べて特別感のあるコンテンツであるか
  • 「商品性」:コンテンツの希少性や価値にあった価格設定

城泊は日本独自の歴史的資源である城を活用した宿泊であり、宿泊人数も限定されており、貸し切りで特別な体験を提供することができます。

これら富裕層のニーズに刺さる要素を多く有している城泊は、コロナ収束後における富裕層誘致の有力なコンテンツとなるでしょう。

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城泊の課題は?自治体との協力体制・多言語対応

インバウンド向けに城泊を実施・展開する上で、現在どのような点が懸念材料となっているのでしょうか。

まず挙げられるのは、日本では歴史的価値がある本物の城に宿泊するというコンテンツの前例が少なく、宿泊施設として利用することにまだまだ抵抗感がある点です。

そして歴史的価値のある城は、そもそもの所有者が地元自治体などであることがほとんどです。

さらに歴史ある建物だけに老朽化が進んでいる施設も多く、宿泊施設として利用するためにはリノベーションが必須です。

そのため民間の事業者が事業に乗り出す場合には、施設改修の許可や財政面において、権利を所有する自治体の協力を欠かすことはできず、民間事業者としてはそこも大きな足かせのひとつとなっています。

またインバウンドをターゲットとしてコンテンツを造成していくためには、「多言語対応」をはじめとする外国人観光客のニーズに合わせた環境整備も欠かせません。

これらを解決するための初期投資の多さや手続きの複雑さも、城泊展開の課題となっています。

豪華な体験型宿泊「城泊」 今後のインバウンドで注目

日本の城は多くの訪日外国人にとって魅力的な観光スポットであり、実際の城に宿泊するという特別感のある贅沢体験は、地域の集客と消費拡大のための新たな観光コンテンツとして期待されています。

現在日本において城泊の事例はまだ少ないものの、欧米富裕層をターゲットにし商品の開拓や造成を進めている場所があります。

また城泊アフターコロナの旅行トレンドとの親和性が高いため、今後ますます注目度が高まっていくといえるでしょう。

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<参考>

・アイキャッチ画像:1日1組限定!日本100名城初の常設城泊施設「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」4月1日(木)オープン桃山~江戸時代の美意識を現代に伝える空間を「特別城主」として堪能

・JNTO:ウィズコロナ、アフターコロナにおけるインバウンドについて

・観光庁:令和2年度 観光振興事業費補助金(城泊・寺泊による歴史的資源の活用事業)における採択事業の公表

・じゃらんリサーチセンター:訪日外国人に人気の観光体験ランキング

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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