一般旅行者の9倍消費する「富裕層旅行者」の実態:観光コンテンツ作りのポイントや事例も紹介

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JNTOの調査によれば、富裕層旅行者は340万人しかないものの、高い消費力を持つため、もたらした市場規模は4.7兆円にものぼり、近年インバウンド業界では注目されているターゲットです。

さらに、新型コロナウイルスによる経済ショックで、非富裕層の収入が減少傾向にあります。旅行商品も感染対策に対応することで高額化となり、非富裕層の観光需要の回復は遅くなると予測されています。

一方、富裕層旅行者は高い消費力を持ち、良質なサービスに高額を支払う傾向もあるため、非富裕層と比べるとインバウンド客足の回復が早いと考えられます。

本記事では、富裕層旅行者の市場規模、富裕層旅行者の消費動向、コンテンツ造成時の指標、そして日本で行われているインバウンド事例について解説します。

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富裕層旅行者の市場規模とは

富裕層旅行者を誘致するために、まず富裕層旅行者の市場規模を理解する必要があります。ここからは、JNTOが発表した具体的な数字を基に、富裕層インバウンドの市場規模を紐解いていきます。

富裕層旅行者の市場規模:340万人・4.7兆円

JNTOの定義によると、富裕層とは、「費用制限がなく、満足度の高さを求めた高消費額旅行を行う市場」であり、「旅行先の消費額が100万円以上/人回」であることを指しています。

JNTOが欧米豪5市場(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア) で行った調査結果から、全海外旅行者のうち約1%に当たる340万人が富裕層旅行者であり、彼らの海外現地での消費額が全体の13.1%の4.7兆円を占めることがわかりました。

そして、ひとり当たりの平均消費単価は約136万円であり、訪日外国人旅行者全体における15.3万円の平均消費単価と比べると、約9倍にものぼリます。

しかし、日本が獲得できた富裕層旅行者数と消費額はわずか4万9,000人、618億円と、全体富裕層旅行市場の1.4%しかありません。

このことから、日本における富裕層インバウンド市場はまだ成長する余地のある市場であるといえるでしょう。

▲[富裕層旅行者の市場規模]:JNTOより
▲[富裕層旅行者の市場規模]:JNTOより

富裕層旅行者の種類

一言に「富裕層旅行者」といっても、実は様々な種類があります。

より富裕層旅行者の消費動向を具体的に把握するために、下記、JNTOによる「志向(マインドセット)」と「消費性向(旅行タイプ)」の2軸で分類された富裕層旅行者の種類について解説します。

富裕層旅行者の志向(マインドセット):「Classic Luxury」と「Modern Luxury」

富裕層旅行者の志向(マインドセット)は、価値観が異なることから多様化がみられており、大きく分けて「Classic Luxury志向(従来型)」と「Modern Luxury志向(新型)」の2種類があります。

「Classic Luxury志向(従来型)」は、50~60代が中心で、富や地位、力などに重きを置き、旅に「高い快適性」や「ベストサービス」、「ステータスシンボル」を求める志向です。

一方、20~30代の若い層を中心に拡大している「Modern Luxury志向(新型)」は単なる贅沢を追求するより、文化や独自性、スタイルなどに重きを置き、旅に「本物の体験」や「エコツーリズム」、「サステイナビリティ」を求める志向です。

富裕層旅行者の消費性向(旅行タイプ):「All Luxury」と「Selective Luxury」

富裕層旅行者の消費性向(旅行タイプ)にも多様化がみられており、志向と同様に2つのタイプに分かれます。

1つ目は、「All Luxury」タイプです。彼らは、旅行に対するすべての費目に高額消費を惜しみません。

たとえば、飛行機はビジネスクラス以上、ホテルは5つ星のラグジュアリーホテルのみなどと、あらゆることに対し高額で消費を行います。

2つ目は、「Selective Luxury」タイプです。彼らは、優先度の高い費目にのみ高額消費をするタイプです。

たとえば、最高級のホテルには宿泊しませんが、自分の趣味や関心に関するコンテンツだけにプライベートガイドなど高額なサービスを利用します。

富裕層旅行者向けインバウンドコンテンツの指標

前述したように、富裕層旅行者には多様なタイプが存在しており、それぞれのタイプに応じてインバウンドコンテンツ商品の造成と磨き上げが必要となります。

では、富裕層旅行者向けのインバウンドコンテンツを開発する際に、どういったポイントを抑えると良いでしょうか。

JNTOが設けた、富裕層旅行者向けコンテンツを評価するための3つの指標から参考できます。

まず1つ目の指標は、「コアバリュー」です。

日本やその地域ならではの価値があるかどうかに重点を置く軸です。

その場所のみで「食べられる」「見られる」「体験できる」など、地域独自の魅力的なコンテンツになっているかどうかが重要なポイントとなります。

2つ目の指標は、「バリュー提供」です。

富裕層旅行者は、一般的な旅行者に比べて特別感のあるコンテンツに惹かれやすいという特徴があります。

たとえば、観光先で一般向けのガイドを聞くだけでなく、「ベテランから細かく深い話を聞きたい」「人間国宝の先生に直接指導してもらいたい」など、より価値のある体験を求めます。

さらに、富裕層旅行者は「ゆっくり楽しみたいから夜間貸し切りにしてほしい」「普段は立ち入れないような場所に行ってみたい」などと、一般旅行者がしないような要望をすることがあります。富裕層旅行者向けのコンテンツでは、このような要望に融通を利かせる体制を組んでおくことが大切です。

3つ目の指標は、「商品性」です。

コンテンツの希少性や価値にあった価格設定を重要とする軸です。富裕層旅行者は自身が興味のあることや価値が高いと感じることに対して大金をはらうことをいとわない傾向にあります。

特に世界遺産」「人間国宝」などが価値の保証をされているという点をアピールすることも、コンテンツ評価を上げるカギとなります。

富裕層旅行者向けのインバウンド事例

日本の各地では、富裕層旅行者を取り込むための取り組みが行われています。下記、富裕層旅行者向けのインバウンド事例を3つ紹介します。

熊野古道:地域ならではの魅力を引き出した観光コンテンツ

世界遺産に認定されている熊野古道は、熊野三山へと通じる参詣道の総称です。欧米豪が外国人旅行者の約7割を占めるとされ、体験に重点を置く「Modern Luxury志向」への誘致が効果的といわれる場所です。

なぜ熊野古道が多くの外国人観光客から熱い視線をあびているのかについて、自然と美しい風景のみならず、古道沿いの集落、日本食、歴史など日本ならではの体験を楽しめることが主な理由として挙げられます。

そして、古道沿いの集落にある宿泊施設は客室が10室以下の小さな民宿が大半であり、宿のご主人や女将さんなど地元の人と直接的に深い交流ができるのも外国人観光客から魅力的に感じられるようです。

【海外の反応】神社をつなぐ熊野古道が外国人観光客を惹きつけた魅力とPR手法とは

和歌山県の「熊野三山」と称される神社、熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社を目指す参詣道、「熊野古道」が外国人観光客から注目を集めています。人気の理由は、

大洲城:城泊で特別体験+日本の歴史について学ぶ

大洲城は愛媛県大洲市にある城で、老朽化が原因で天守閣が廃城となっていましたが、木造で完全復元されています。

その天守閣では、2020年(令和2年)より、木造天守で城主になった気分を体験できる宿泊企画が催されています。企画開始の初年度は、30泊30組限定としており、1泊100万円(2名利用時)との価格が設定されています。

体験内容は、大洲城での貸切宿泊・1617年の城主である加藤貞泰の入城シーンの体験、食事、伝統芸能、月見体験などがあります。この企画は、日本の歴史に興味がある外国人富裕層旅行者に向けて、効果的にアプローチできると考えられています。

「城泊」富裕層が夢中にならないわけがない?!長崎県平戸城、宮城県白石城の取り組み:サンマリノ駐日大使も日本の伝統文化を体験

インバウンド向けのユニークな宿泊コンテンツとして「城泊」が注目されています。2020年夏までに、長崎県平戸市にある平戸城の「城泊」開業と、宮城県白石市にある白石城の「城泊」旅行商品化が予定され、地域の歴史的資源や重要文化財を活用した地域活性化が期待されています。今回は、新たなインバウンド誘客コンテンツとしての「城泊」について、狙いやこれまでの取り組みを解説します。目次「城泊」で欧米豪観光客の富裕層を取り込み平戸城が日本初の常設「城泊」へ白石城でサンマリノ駐日大使が「城泊」体験まとめ:インバ...

仁和寺:世界遺産に宿泊+一般非公開の文化財鑑賞など特別体験

世界遺産に認定されている仁和寺は、京都市右京区御室に位置する、格式ある寺院です。

仁和寺では、境内で宿泊できるプログラムがあります。プログラムの内容は、宿泊以外に、一般非公開の文化財の鑑賞や特別な文化体験、歴史的建築物で滞在などがあります。プログラムは、1組1泊100万円(1組5名定員)で価格設定されています。

日本の特別な場所である「世界遺産」で希少な体験ができるため、富裕層旅行者からは評価が高くなりやすいプログラムでしょう。

日本の伝統文化「お座敷遊び」で欧米豪×富裕層インバウンドを誘致せよ!京都「花街」と仁和寺「高級宿坊」の取組事例からみるインバウンド次の一手

インバウンド市場において、買い物などのモノ消費より体験を重視するコト消費の需要が拡大しています。訪日客の興味関心は常に変化しており、現在はアジア人の爆買いだけに頼るのではなく、欧米圏の富裕層を狙ったインバウンド対策の活発化も見受けられるようになりました。欧米豪インバウンドの富裕層に向けたインバウンド対策の例として、京都の花街と仁和寺の高級宿坊を紹介し、訪日客数4,000万人突破へ向けて今後注目されるであろうインバウンド誘客のあり方を見ていきましょう。インバウンド対策なにから始めたら良いかわ...

富裕層旅行者は訪日客増加のカギ、コンテンツの造成でさらなる誘致を

費用制限なく満足度の高さを追求する富裕層旅行者の市場規模は4.7兆円に達し、ひとり当たりの消費単価は一般旅行者の9倍となっています。

富裕層旅行者の志向は、従来型であるClassic Luxury志向と、新型であるModern Luxury志向に分かれています。新型は、文化や独自性に重きを置く志向で、若い層を中心に拡大しています。

さらに、富裕層旅行者の消費性向も多様化しています。消費性向としては、高級なものに対して消費する「All Luxury」タイプと、自分が価値を見出す体験にだけお金に糸目をつけないような「Selective Luxury」タイプの2つに分けられます。

アフターコロナ時代における富裕層旅行者の回復を見据えて、インバウンド事業担当者は彼らの消費動向やニーズの特徴を理解したうえで、観光コンテンツのさらなる磨き上げが求められるでしょう。

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<参考>

・JNTO:富裕旅行市場の分析とコンテンツづくりのポイント(JNTOマーケティング研修会テーマ1 ※講演資料の一部掲載)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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