3月4日にBEENOSグループのBEENOS HR Link主催で「外国籍人材雇用記者説明会」が開催されました。
説明会では主に技能実習生、特定技能外国人の実情と問題点がBEENOS HR Link、一般社団法人国際連携推進協会、TIN PHAT技術貿易株式会社によって語られました。その実情と問題、そして解決策について詳しく見ていきます。
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外国籍人材雇用記者説明会の概要
3月4日に行われたBEENOS HR Link主催の外国籍人材雇用記者説明会では、3団体が登壇しました。司会のBEENOS HR Link、外国籍人材と監理団体を総合支援する一般社団法人国際連携推進協会、送り出し機関であるTIN PHAT技術貿易株式会社が登壇しました。
監理団体とは、技能実習生を受入れ、その活動及び受け入れ企業へのサポート等を行う非営利団体で、日本国内で活動しています。
一方、送り出し機関とは日本に技能実習生を派遣する団体や企業であり、実習生の母国で公的機関から推薦を受ける必要があります。
この説明会では、技能実習生と特定技能外国人にまつわる問題を、それぞれの企業や団体の視点で紹介されました。
技能実習・特定技能の現状
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、技能実習生や特定技能外国人が入国できない状況が続いています。
人数が大きく減った原因として、飛行機が飛ばず運賃が高止まりしていることと高額な隔離費用があげられます。
小松氏は、「自分も6月にベトナムから日本に帰国したが、運賃が高止まりしており、とてもじゃないけど技能実習生が出せる額ではありません。さらに、少ない飛行機の枠を日本に行きたい留学生と帰国したい留学生が取り合う形になっており、航空機の予約そのものが難しくなっています。」と語ります。
また、隔離費用について栗田氏は次のように述べました。「コロナ禍で外国から入国した際には実質15日間の隔離が必要ですが、隔離の条件である一人部屋で風呂・トイレ付きとなると条件にあてはまるものがビジネスホテルしかありません。もともと技能実習生は6人1部屋で生活していたので、一人部屋の費用を新たに捻出する必要がありますが、その費用を日本企業が負担する余裕もないし、技能実習生が負担する余裕もないということで困っています。」
さらに、外国籍人材のミスマッチも起きています。栗田氏は、「今まで外国籍人材を多く受け入れていた製造業の業績が悪化し、外国人が母国に帰りたくても帰れない、働きたくても働けないといった状況に陥っています。一方、ステイホーム特需で人手が足りていない飲食料品製造、農業は喉から手が出るほど人材を欲しています。しかし、もともと制度上技能実習生は転職ができなかった、国内にいる外国籍人材の移動が進んでいません。」
政府でもこの状況を受け、一時的に転職を認める特例を出していますが、制度の周知が進んでおらず、2021年3月においても人材のミスマッチ状態が続いています。
技能実習生と外国籍人材を取り巻く課題
新型コロナウイルス感染拡大に伴い新たに発生した問題以外にも、以前から外国籍人材を取り巻く悲惨な実態は社会的な問題として取り上げられていました。以下では、説明会で語られた主に4つの問題点について指摘します。
「外国人=安い労働力」の思い込み消えず
栗田氏は、受け入れ側の課題として次のように語りました。「企業側も、最低賃金が安い田舎で働かせようとの思いは制度が開始されたときから変わっておらず、悪質な監理団体ならびに企業が今でも多く存在しています。しかし、逆に実習生を家族として迎え入れている企業も実はたくさんあるんですね。数でいうと温かく迎え入れている企業の方が多いです。この実態を知ってもらい、安い労働力という認識を改めてもらいたいと強く思います。」
さらに、栗田氏は以前よりも日本への魅力度が低くなっていることに警戒感を覚えるべきだと指摘しました。「技能実習制度が始まった当初は中国からも数多くの技能実習生が来ていましたが、中国の方が経済成長スピードが速いため、経済成長度が停滞している日本に魅力を感じなくなってきています。この上、日本において外国籍人材の待遇が悪いという印象がつくと、外国籍人材が来日しなくなり、人手不足が一層深刻化する可能性もあります。」
外国人に日本語が通じず、文化の壁がある
栗田氏は、日本人の職員に対し「やさしい日本語」(※1)への理解が不足していることを訴えました。職員が外国人に対し指示を出す際にはできるだけわかりやすい日本語を使うことで、よりスムーズに業務が進むと述べています。また、小松氏は、マナー面で日本人とベトナム人の違いがあることを指摘します。「外国人が挨拶をしない、冗談が通じないとやはり不快に思われる日本人の住民が数多くいます。また、ベトナム人は文化的にあまり謝りませんが、日本ではまず謝ることが基本ですよね。その部分でコミュニケーションが取れず、ベトナム人に対して不信感を抱くこともあります。」
受け入れ側の日本人にも、相手の文化を思いやり丁寧に指摘することが求められています。
※1「やさしい日本語」
普段使われている言葉を、外国人にも分かるように配慮した簡単な日本語のことです。「やさしい日本語」を使う際に意識するポイントについて以下の資料に記載があります。
受け入れる日本側の生活環境が整っていない
栗田氏は、多くの外国人が生活環境に不安を感じていると述べています。「技能実習生、特定技能外国人は宿舎が入国するまで分かりません。この不安は、自身が外国に行くまで泊まる場所が分からないことを想像すると皆さんにわかっていただけると思います。また、多くの技能実習生、特定技能外国人は母国に家族を残して日本に来ています。中には新婚で、子供が生まれたばかりの人もいます。ビデオ通話が普及した現代において、Wi-Fi等の設備が宿泊先に整っておらず、顔を見て話すことができないことにすごくストレスを感じる外国人も多くいます。」
加えて、受け入れる企業が外国の宗教、食文化への理解が進んでいないことを指摘しています。
「異国の地に長くいると、食べなれた母国の味が恋しくなることは当然です。しかし、身近に母国でよく利用していたスパイスがないといった訴えがよく聞かれます。また、ムスリムの人々にとってお祈りする時間がない、お祈りする施設がないといったのは致命的な問題です。」
在留資格申請のデジタル化が進まず、手順が煩雑に
岡﨑氏は、在留資格申請においてデジタル化が進んでおらず、時間的、物理的にもコストが膨大になっていると指摘しています。「実は1人の技能実習生・特定技能外国人が入国するのに書類が70~80枚必要です。その大部分が紙ベースであり、手書き入力も行われています。そのため、送り出し機関がある海外から書類を郵送し、監理団体が日本で記入を終えると、入国管理局に直接持ち込むといったケースも多く見られます。」
続けて、アナログベースであるため、技能実習生や特定技能外国人一人ひとりの全体の流れを把握している団体がないことを問題視しています。「それぞれの外国人が技能実習として受け入れられるか否かの面接前なのか、面接を終えて日本への入国を待機しているのか、把握できている人が誰もいません。
外国人にとっては面接に受かったのか受かっていないのかよくわからず、流れが見通せないため困り果てています。」
特定技能外国人を取り巻く課題を解決するには
このように、技能実習生・特定技能外国人には新型コロナウイルス感染拡大以前から深刻な問題を抱えていました。これらの問題に対して、自治体や企業はどのように対処しているのか、以下でこれまでに紹介した課題の解決策について説明します。外国人の日本語にまつわるトラブルの解決
茨城県ではe-ラーニングを使って外国人に日本語教育を行っています。また、従来はほとんどの自治体において在留外国人の相談窓口が電話に限られていましたが、多くの外国人が日本の電話番号を持っていないことから、茨城県ではSNSを活用して相談に応じるようになりました。
また、群馬県では、県民からパブリックコメントを募りつつ、外国人との共生条例を2021年4月に施行する予定です。
資料作成の煩雑さをデジタル化で解決
BEENOS HR Linksは「Linkus」によって技能実習生・特定技能外国人が在留資格獲得までの流れでどこにいるのかを「見える化」しています。これにより、外国人が在留資格獲得までの先行きが見通せない不安を取り除くことができます。
また、70~80枚に及ぶ紙が使われていた在留資格申請書類作成をデジタルで、フォーマットに沿って回答するだけで作成できるようになっており、手書きで書く手間や同じ情報を書く二度手間を削減できます。
また、支援業務のTODOチェックや登録支援機関が主の義務である定期巡回にもデジタルで対応することにより、これまでは紙ベースでのチェックであったために確認してからもう一度決まったフォーマットに入力するなどの二度手間が生じていましたが、チェックや巡回をしたその場で記録することにより、手間を省いて報告することができます。
外国籍人材を取り巻く問題は数多いが、一人ひとりの思いやりやデジタル化で解決へ
観光業においては、「宿泊業」が技能実習・特定技能に追加された今、問題点について知っておくことが企業や団体の責務になります。上記で紹介したような解決例を参考に、適切に外国籍人材を活用することが求められているでしょう。(取材協力:Linkus https://linku-s.com/)
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<参照>
・出入国在留管理庁:新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援
・茨城県:日本語e-ラーニング
・茨城県国際交流協会:日本語インフォメーションセンター
・群馬県:群馬県多文化共生・共創推進条例
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