「インバウンド銘柄」の正体【株式市場からインバウンド復活の動向を読み解く vol.2】

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日本初の欧米型フリーウォーキングツアーを運営しております、Japan Localizedインバウンドアナリストの宮本です。

さて、今回は旅行関連銘柄全般の話ではなく、インバウンド銘柄とは?というテーマで少し考えていければと思っております。

前回の連載
【株式市場からインバウンド復活の動向を読み解く】大手旅行会社2社の株価推移の差から分かる、市場の期待感は

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入国緩和のニュースの直後から旅行関連銘柄が大幅上昇

11月初めの日経新聞の記事で政府はコロナウイスルの水際対策の緩和に動き出しており、一定の条件下で自主隔離期間を10日から3日に短縮するという方向で調整しているという内容が伝わりました。

緩和された新たな水際対策は早くても11月内に運用が開始され、Withコロナ渦での入国緩和の第一歩に大きく踏み出し始めました。今後は段階的に海外一般観光客の緩和も検討されていくと考えられ、徐々にインバウンド復活の時が近づいてきたと思います。

そのニュースの翌日、東京証券取引所に上場している旅行関連銘柄のエイチ・アイ・エス(銘柄コード:9603)やKNT-CT(銘柄コード:9726、近畿日本ツーリストクラブツーリズム)、日本航空(銘柄コード:9201、JAL)や全日本空輸(銘柄コード:9202、ANA)の株価が大幅に上昇しました(11月2日終値ベース)。

つまり、旅行関連株は水際対策緩和のニュースを好感した格好となり、今後もこのような報道で旅行関連銘柄の株価は期待先行で反応していくと考えられます。

▲旅行関連銘柄の株価当落率(2021年11月2日時点):Japan Localised作成
▲旅行関連銘柄の株価当落率(2021年11月2日時点):Japan Localised作成

インバウンド銘柄の明確な定義は存在しない

実はインバウンド銘柄には決まった定義はありません。日本証券取引所が定めている東京証券取引所に上場している銘柄は33業種に分類されており、「インバウンド」や「国内旅行」、「アウトバウンド」と行った括りでは細分化されておりません。

もちろん、「旅行関連」という括りもございません。なので、33業種の中でのさらに細かい括りは「テーマ株」と言ったように各証券会社、資産運用会社によって独自に分類されております。例えば今話題である環境関連のテーマだと、「EV関連銘柄」や「クリーンエネルギー銘柄」などがございます。

なので、インターネット検索で「インバウンド株」や「インバウンド銘柄」と検索すると、各サイト独自の基準で選定したインバウンドに関する銘柄を「インバウンド銘柄」として紹介していると考えられます。

例えば、直感的に「爆買い」から連想すれば、家電、百貨店、ドラッグストア、化粧品関連の銘柄が思い浮かびます。それ以外には移動手段である空運(航空)や陸運(鉄道)、宿泊するホテル関連銘柄などが思い浮かぶかと思います。

売上高に占めるインバウンドの割合

上場企業の中では売上高に占めるインバウンドの割合を公表している会社があります。

例えばコロナ前ですが、大丸松坂屋を運営するJフロントリテイリング(銘柄コード:3086)の2018年2月期(2018年3月1日~2019年2月末)の決算説明資料を見ると、免税売上は588億円、大丸松坂百貨店全店に占めるシェアは8.9%にもなります。

▲松坂屋 百貨店売上高と免税売上高比率(コロナ前まで):Japan Localized作成
▲松坂屋 百貨店売上高と免税売上高比率(コロナ前まで):Japan Localized作成

また、マツキヨココカラ&カンパニー(銘柄コード:3088)の2019年3月期(2018年4月1日~2019年3月末)の決算資料を見ると、免税売上高は13%超と開示しており、全売上高は5,759億円になるので、免税売上高は約748億円になります。

また、東京ディズニーランド、ディズニーシーを運営するオリエンタルランド(銘柄コード:4661)の2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月末)の決算説明資料を見ると、2018年度の海外ゲスト数は313万人、海外ゲスト比率9.6%、2019年度の海外ゲスト数は290万人、海外ゲスト比率は10.0%となっており、ゲスト1人当たり売上高の11,606円を290万人と掛け合わせると海外ゲストで約336億円の売上高になります。

オリエンタルランドのテーマパーク事業の売上高は3,840億円なので、インバウンドが売上に占める割合が約8.7%と計算できます。

▲オリエンタルランド 入園者と海外ゲスト比率の推移(コロナ前まで):Japan Localized作成
▲オリエンタルランド 入園者と海外ゲスト比率の推移(コロナ前まで):Japan Localized作成

上場銘柄の決算発表資料等からインバウンドの動向を読み解く

上記3社からの決算発表資料から伺えるように、各社ともインバウンドが売上高に占める割合は約8-10%程度になります。

これはかなりの割合になると考えてもいいと思います。なので、このようにインバウンドの売上高を開示しており、数値で確認できる銘柄をインバウンド銘柄と位置付けしてもいいと思います。

もちろん、インバウンドに関する売上の数値の具体的な開示がなくても、連想でインバウンド銘柄と括ってもいい銘柄はたくさんございます。

例えば、日本航空(JAL)や全日本空運(ANA)の国際旅客収入を見ればアウトバウンドを含むインバウンドの動向がわかります。

またインバウンド銘柄なのか?と思える日本空港ビルデング株式会社(銘柄コード:9706))などの決算内容を追っていけば、羽田空港を中心とした、施設管理運営業、物品販売業、飲食業の動向からインバウンドの状況が把握できます。

モニタリングする銘柄を決めて、株価の推移を確認していく

次回の記事では、インバウンド復活を株式市場から読み解くための、インバウンド銘柄を選定し、企業業績の内容や株価の推移を詳しく見ていきたいと思います。お楽しみに。

筆者紹介:Japan Localized代表 宮本 大

立命館大学卒。SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社。外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当。

米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)。

Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事。

Japan Localized 公式サイト




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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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