「訪日フィリピン市場」から目を背けてはならない理由 知られざるポテンシャルについて

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海外からの観光客の受け入れ再開を認める国が増えている中、日本でも外国人の新規入国制限について緩和の動きがみられています。

国際観光の再開が本格的に検討されはじめている中、知っておきたいのが新しくターゲットとなりうる訪日市場についてでしょう。

2019年には約60万人が訪日していたフィリピン人は、これまでほとんど注目されることがなかったといって良いでしょう。

そうした訪日フィリピン市場の知られざるポテンシャルについて、フィリピン現地にて訪日インバウンド事業を手がける「NIPPON DISCOVERY」総責任者 松浦 篤志氏が語ります。



フィリピン市場のポテンシャル

世界中を震撼させた新型コロナウイルス。フィリピンでは一日あたりの新規感染者のピークだった9月11日には1日26,303人が確認されていましたが、現在では1日2,000人程度と減少傾向で、人々の暮らしも少しずつ通常に戻り始めています。

フィリピンの共通語はタガログ語が主ですが、公用語として英語が広く使われています。その英語は日本人の馴染みのあるアメリカ英語であることから、近年は「安価で英語を学ぶことができる比較的近い南国」として、学習目的で滞在する日本の若者も増えていました。

経済成長とともに、訪日フィリピン人は右肩上がりで増加

フィリピンと日本の関わりの歴史は古く、豊臣秀吉の時代にはすでに貿易を行っていました。現在もフィリピンにとって日本が最重要貿易国であることに変わりなく、コロナ前2019年の統計によると輸入額で米国に次いで第2位、輸出額では中国に次いで第2位となっていました。

近年、経済成長が著しいフィリピンのGDP成長率は1999年以降2019年まで常にプラスで、2012年以降は毎年6%を超えていました。東南アジア全域を見ると、同じく経済成長が著しいベトナムとほぼ対等に成長しています。

訪日フィリピン人観光客数 訪日ラボ作成
▲訪日フィリピン人観光客数:訪日ラボ作成

経済成長に伴い日本を訪れるフィリピン人の数は右肩上がりで増え、2014年以降〜コロナ前の2019年までは毎年前年比で18%~45%で増加。2019年には、初めて累計60万人に達しました。これは訪日旅行者を国別でみたとき世界で第8位、アジアで第6位、そして東南アジアでは第2位となる存在感です。

これだけ多くの訪日数であるにも関わらず、フィリピンはビザ申請なしに観光などで訪れることのできる短期滞在ビザ免除対象国ではありません。別の見方をすると、面倒な申請手続きがあっても日本に行きたいというフィリピン人がそれだけ多くいるということになります。

インバウンド対策で知っておくべきこと

ここからは旅行に対する動向をみていきましょう。フィリピン人の旅行に対する情報源はほぼ口コミによるものです。訪日前の情報源を見ると見事に1位から6位までが主に個人の体験や経験を伝える情報となっており、フィリピン人の多くは口コミ情報に頼る傾向があるということが、観光庁訪日外国人消費動向調査のデータからわかります。

▲フィリピン人の旅マエ情報源の多くは口コミ関連:訪日フィリピン人が役に立ったと答えた情報源及び情報 訪日ラボ作成
▲フィリピン人の旅マエ情報源の多くは口コミ関連:訪日フィリピン人が役に立ったと答えた情報源及び情報 訪日ラボ作成

訪日前の情報収集は英語で書かれているものに頼りますが、フィリピン人を対象とした情報はまだ比較的少なく、今後フィリピン人の誘致に特化するのであれば、そこを意識した情報発信をしていくと非常に有益なものとなっていくでしょう。

そしてもう一つ、インバウンド対策の重要なポイントとして押さえておきたことは、フィリピンがソーシャルメディア大国であるということです。

2020年発表の記録によると、フィリピンは「毎日ソーシャルメディアに使う時間」で世界第1位でした。人気のあるソーシャルメディアはチャットアプリを除きFacebookが96%で1位、YouTubeが95%でほぼ同率の2位、そしてInstagramTwitterがそれぞれ64%と54%でした。

フィリピン向けの情報発信をする際には、SNSを活用していくことが重要です。

旅行行程、消費傾向と価値観

フィリピン統計局が行った2018年の全国消費実態調査によると、全人口の40%(およそ4千万人)を中産階級が占め、富裕層は1.4%(およそ140万人)でした。

そんな富裕層の人々が海外旅行に行く際には、属する企業と提携している旅行会社を利用し、家族単位でプライベートな旅行をするのが一般的です。渡航先に居る家族や友人を頼ることも珍しくはありません。

リピーターになると、自分たちで宿や交通手段の手配、レストランの事前予約までもこなすファミリーも少なくありません。このように実際に経験した旅先での体験は、親族や友達家族へと口コミで伝えられていきます。

「高級ブランド志向」でもあるフィリピン人

訪日時、富裕層は高額なグルメを堪能しています。ワンランク上の寿司や鉄板焼、焼き肉などの日本食はもちろん、日本には美味しい洋食があることも、勉強熱心な彼らはよく調べて知っています。

フィリピン人は一般的にブランドコンシャスでありながらも、お金の使い方にはとてもシビアで、訪日前にはどこで買い物をするのか、旅前にしっかりとチェックする傾向があります。家族、友達思いのフィリピン人は、渡航先で必ず大量のお土産を購入しますが、比較的安価なものが多く、その傾向はこれからも続くでしょう。

一方、自分に対するご褒美や家族へのプレゼントは高価なものを買ったという話を最近はよく聞くようになりました。日本限定品モデルのブランド品なども注目しています。

フィリピン人旅行者により多く消費をしてもらうには、いかにして旅前に情報を提供できるかがポイントとなります。

訪日フィリピン人一人当たりのインバウンド消費額 訪日ラボ作成
▲訪日フィリピン人一人当たりのインバウンド消費額:訪日ラボ作成

フィリピン人1人一回あたりの旅行消費者単価は¥106,726で東南アジア4位です。この地域ではシンガポールが飛び抜けているものの、2位のインドネシア、3位のマレーシアとフィリピンはほぼ横ばいで並んでいます。

国別の消費額(1人一回あたりの旅行消費者単価x訪日客数)を見ると、フィリピンは東南アジアでタイ、シンガポールに次いで多く消費をしていることがわかります。

最短3時間20分で日本にアクセス可能。近距離という利点も

フィリピンと日本を結ぶ直行便の就航時間はマニラ~福岡は3時間20分、~中部/羽田/成田は4時間30分、~新千歳は5時間。欧米への旅行に慣れている特に富裕層にとって日本は、気楽に行ける身近な観光天国と言えるでしょう。常夏のフィリピンにとって最短の移動距離で雪を体験できる国でもあります。

ディズニーランドやUSJなど世界的に有名なテーマパークがあることに利点はありますが、アメリカ本土や他国で既に行っているので日本では行かないという旅行者は少なくありません。

ただし、リピーターになるとアメリカにはないデイズニーシーや本場にないアトラクションを求めてテーマパークを訪れることは少なくないようです。ハリーポッターが流行ったフィリピンだけに、USJも人気があります。

四季があり、食が充実していて、ショッピングも楽しめる日本は、フィリピンからの旅行者にとっては国全体が一大テーマパークのようにワクワク感に満ちていると感じているようです。

我々がテーマパークの新しいアトラクションに期待をふくらませるのと同じように、彼ら観光客の多くは、まだ行ったことのない、体験したことがない、日本での経験に期待を膨らませています。

年間60万人のフィリピン市場。東アジア市場依存から脱却へのヒントに

フィリピンから見ると熱い訪日市場ですが、残念ながらフィリピンを重要市場として率先して誘客を進めている地方自治体はほぼ「無い」に等しいでしょう。

それ故に、年間60万人を超えるフィリピン人観光客は未だに首都圏ゴールデンルートに集中しているという事実があります。

海外からの観光客の地方分散化が課題となっていますが、今後日本を訪れるフィリピン人のリピーターが増えていくにあたって、第2、第3のデスティネーションへ誘客する施策を行うことは双方にとって大変有意義になるでしょう。

これは、事ある度に観光客の減少が起こる中国や韓国からの依存から脱却するという大変勇気あることでもあるのです。

中国人/韓国人観光客の依存度が50%を超える地域がかなり多いという事実には驚きますが、その数値の高さは被害を受けるリスクの高さでもあることは周知の事実です。

常に増加する日本政府のインバウンド目標を、より達成しやすくするにはフィリピンをはじめとする東南アジア諸国からの誘客が不可欠です。

フィリピンからの観光客は必ず我々が期待する日本の観光業界の活性化に答えてくれると期待します。

関連記事:データでわかる訪日フィリピン人観光客

著者:松浦 篤志

株式会社エス・エム・エイ・シー 代表取締役社長

https://www.smacph.com

訪日インバウンド事業「NIPPON DISCOVERY」総責任者

https://www.nippondiscovery.com

※NIPPON DISCOVERY は株式会社エス・エム・エイ・シーの訪日インバウンド事業部の名称であり、フィリピン知的財産庁に登録されている同社の登録商標です。

1968年長野県塩尻市生まれ。3才の時に家族でフィリピンに移住。上智大学学国語学部英語学科中退。1991年にフィリピンで初めて起業して以来、フィリピンと日本の架け橋となるべく様々な事業に携わる。

プロのミュージシャンとしても現地で精通し、1989年には現地で有名なビールのCMソングの演奏とCM出演を果たす。2001年に行った全米7都市ツアーの途中ではニューヨークの同時多発テロに遭遇する。

2014年に訪日インバウンド事業を立ち上げ、主にフィリピン市場を紹介する活動を行っている。現在はJTBフィリピンの外部取締役も務め、フィリピン、マニラ首都圏、マカティ市に在住。

【2023年インバウンド最新動向を予測】国・地域別デジタルマーケティング戦略


2022年10月からついに入国者数の上限撤廃、短期滞在者のビザ免除等が実施され、訪日観光が本格的に再開されました。

未だ"完全回復"には至っていないものの、観光地によってはすでに多くの訪日外国人観光客が訪れているところもあり、「インバウンド対策」への関心が急速に高まっています。

では、今やるべきインバウンド対策とはなんでしょうか。そしてそれを国・地域別に見ると、どういった違いがあるのでしょうか。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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