DX化が遅れているといわれる日本の産業。観光業界も例外ではなく、「観光DX」が強く求められています。
ここでいう観光DXとは、デジタル技術の活用により、観光に新たな体験価値を資源をもたらすことを目指した取り組みですが、具体的にどのような取り組みを指すのでしょうか。
本記事では観光DXとは何か、実際に行われている取り組みの狙いについて解説します。
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観光におけるDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
「DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)」は、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「進化し続けるテクノロジーが生活をより良くしていく」という概念です。
「Transformation」はそもそも、変形・変質・変換といった意味の単語で、既存のものを根底から変えることを指しています。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、IT活用を活用して単に作業を効率化するだけでなく、デジタル技術によって人々の生活がより良くなるような変革や、既存の価値観をくつがえす技術的革新がもたらされることを意味しています。
令和4年度の観光庁予算にも大きな配分が割かれている
観光庁は令和3年度事業として「DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」を推進し、体験価値の向上と観光消費額の増加への寄与を目指し、「観光サービスの変革」(開発事業)と「観光需要の創出」(活用事業)に分けて展開しています。
また令和4年度の観光庁関係予算にも「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」として7億8,100万円の予算が計上されており、「観光産業の変革」関連予算の中でもっとも配分が大きい項目となっています。
消費機会の拡大や消費単価の向上を目指す
新型コロナウイルスの世界的な流行により、観光は厳しい状況に置かれています。
観光庁は誘客可能となった国・地域からの回復を図り、2030年の訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円等の目標達成に向けた取り組みを継続する姿勢を示しています。
コロナ禍における海外への旅行制限とオンライン観光の普及により、オンラインのよりリアルな観光への期待が増大するなか、これまで以上に観光における新たな体験価値の提供が求められています。
観光庁はこれまで、インバウンド観光における消費機会拡大が期待できる潜在的コンテンツや新たな観光コンテンツの開拓・育成を実施し、その一環としてデジタル技術を活用した観光コンテンツを取り扱ってきました。
近年では様々な分野でデジタル技術の導入やDXが進んでいますが、観光コンテンツとしての付加価値の向上については課題が残っています。
観光庁はこのような社会的背景からも、観光需要の回復を見据えたデジタル技術の観光への活用は急務だと位置付けています。
デジタル技術の利用やICTの導入により、作業の省力化や情報・体験のデジタル化にとどまらず、Society5.0時代に向けた観光における体験価値を向上を目指し、技術と観光資源との掛合せによる相乗効果を生み出していくとしています。
観光DXにおける採択事業・事例
観光庁は令和3年、観光DXを強力に推進するため「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」及び「来訪意欲を増進させるためのオンライン技術活用事業」の公募を実施しました。
開発事業においては、技術開発や地域観光モデルの構築につながる5つの事業が採択されました。
それぞれ5G技術や顔認証技術といった最先端技術を生かした観光開発プランが明らかにされ、すでに実証実験が行われたところもあります。
地域の観光資源を強力に発信する5つの開発事業
開発事業においては以下の5つの事業が採択されています。
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鹿島アントラーズを基軸としたエリアマネジメントの変革(鹿島デジタルトランスフォーメーションコンソーシアム)
鹿島アントラーズの本拠地として知られる茨城県鹿嶋市では、高精度位置測位やビッグデータ解析、5G、XRといった技術を軸として、混雑度の可視化と渋滞回避、混雑情報に合わせたダイナミックプライシング、情報発信の高度化などの実現を目指しています。2021年11月に行われた実証実験では3試合を対象に、ダイナミックプライシングを取り入れたスタジアム内の実験店舗にて、混雑具合に応じて3段階の価格設定で提供し、混雑回避と効率的な販売を目指しました。その結果、3度の販売のいずれも価格変動が見られず、最安値の提供となったということです。混雑を回避し、時間帯にかかわらず満遍なく人が訪れる状態を作り出せたということです。
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XR技術を用いた屋外周遊型XRテーマパーク開発事業(世界へ発信する屋外周遊型XRテーマパーク開発プロジェクト)
神奈川県横浜市では、XR技術や3次元地図データによる高精度位置認識技術を用いたXRバスツアーを実施します。
赤レンガ倉庫や中華街といった観光スポットを擁しながら、インバウンド需要の引き込みが遅れていた課題を念頭に、満足度の詳細な測定によって収益化モデルの構築を目指すものです。京浜急行電鉄ではすでに、2021年3月に関係者のみを対象とした無料デモンストレーション、6月には一般モニターを募集して有償ツアーを実施しています。この二度の実証実験ではいずれも高い満足度が確認されたということです。
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顔認証と周遊eチケットを融合した手ぶら観光の実現(富士山エリア観光DX革新コンソーシアム)
山梨県富士吉田市をはじめとする富士山周辺エリアでは、顔認証や周遊eチケット、そしてデータ解析を融合させることで「手ぶら観光プラットフォーム」の開発を目指します。
周遊eチケットによって交通や決済の利便性を向上させることで、エリア内の回遊性を高めようという試みです。実証実験は2021年11月01日〜2022年01月16日まで行われました。
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次世代型ガイド価値拡張プラットフォーム事業(観光ガイド活性化連携協議会)
兵庫県姫路市では、訪日外国人に向けて360度仮想空間構築技術やガイド独自情報集積技術を駆使し、姫路エリアをオンライン仮想空間に再現します。
よりテレプレゼンスの高いオンライン多言語ガイドサービスや、ストック型デジタルコンテンツの作成を目指し、アフターコロナのオフライン需要の流入を創出します。
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5G・自動運転・XRが創る「どこでもテーマパーク」(コンフォートデジタルツーリズム事業化推進協議会)
福岡県北九州市では、自動運転技術とXR技術を融合させ、エリア全体をひとつのテーマパークのごとく有機的に機能させる「エリアテーマパーク化手法」の開発を目指します。
自動運転に加え、趣味や混雑状況に合わせて観光・物販サービスを提案するAI観光コンシェルジュを実現し、高齢者に優しい観光サービスを創り出します。実証実験では、地球の成り立ちとこの地域に根ざす鉄づくりのストーリーを学ぶ「鉄の道ガイディング&VRツアー」、そして現実の園内風景の中に3Dホログラムによる巨大な恐竜が出現する「デジタル恐竜パーク」の体験が行われました。
アフターコロナに備えて 可能性の模索すすむDX観光
5G技術やXR技術により、サイバー空間はより身近なものになりつつあります。
観光のあり方や観光客に提供できる価値そのものが変化するなか、DX観光は新たな観光需要を開拓し、来訪意欲の増進を目指すものとなっています。
効果的なDXは、観光へ大きな価値をもたらすことにつながります。
コロナ禍で観光事業やインバウンドは打撃を受けていますが、アフターコロナにおいて世界の観光需要は急回復が見込まれます。
改めて地域の魅力や資源を見直し、最先端技術を駆使した新たなコンテンツ開発を行うことが重要となります。
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<参照>
・観光庁:観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
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