ロシアがウクライナに侵攻してからおよそ1か月になりますが、それでもいまだ解決の糸口は見えていません。
この状況に対して、中国人はどのような反応を示しているのでしょうか。
今回は「Weibo」や「百度」から見える中国人の反応を紹介します。また中国国内での報道のされ方や政府の動きについても取り上げます。
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中国人の反応
ウクライナ情勢に対して、中国人は高い関心を持っています。侵攻直後の25日の「百度」(中国の検索エンジン)のホットトピックは、ウクライナに関するワードが多くを占めました。
侵攻から約1か月がたった今でもウクライナに関するワードは上位にあり、関心の高さを示しています。
この紛争への中国人の反応はさまざまです。今回は検索エンジン「百度」の「知道」(中国版ヤフー知恵袋)やWeibo(中国版Twitter)に寄せられた意見などを紹介します。
停戦交渉に対する反応/「平和を望む」や「アメリカの陰謀」など
2月28日に行われたロシアとウクライナとの停戦交渉を中国共産党の機関紙である「人民日報」が報じました。
そのコメント欄には、「真的希望可以和平解决,还人民安宁,我们都不想有战争。」(心から和平的な解決と人々の安心を望む、私たちはみんな戦争を望んでいない。)と戦争反対を訴える意見の一方、「美国不想这事和平落幕,否则它怎么发战争财啊」(アメリカは平和裏に終わることを望んでいない、そうでなければアメリカはどうして戦争で金もうけをしているのか)とアメリカの陰謀を疑う声もありました。
一个高中生和一个小学生的打架(高校生と小学生のけんか)
ロシアの侵攻直後の28日に乌克兰局势最终会如何?(ウクライナ情勢は最終的にどうなる?)との質問が「百度」に投稿されました。
これに対して戦争はロシアの勝利で早期に終結するとの意見が多く寄せられました。
ロシアを高校生、ウクライナを小学生にたとえ、ロシアの勝利は疑いようがないとする意見もあります。·またEUやアメリカは「投鼠忌器」(周りの影響を恐れて行動できない)と、EUやアメリカは無力だとして、暗にアメリカやEUを批判しています。
美国=癌国/アメリカがウクライナに武器提供をするニュースへのコメント
新華社は、中国外交部がアメリカに武器提供によって民間人犠牲者が出でいると批判した定例会見の様子をWeiboに投稿しました。
そのコメント欄には、「地球之癌」「美国=癌国」といった激しいアメリカ批判が多くありました。一方で中国がウクライナに食品や医薬品、防寒具などを支給していることについては好意的な反応が見られした。
アメリカの武器援助に対する非難は、ロシアを支持しているからというよりも、戦線を拡大させていることにつながっているからという理由によるものでしょう。
在中国ウクライナ大使館の投稿に1万いいね!「阻止普京」(プーチンを止めろ)
3月14日に在中国ウクライナ大使館がWeiboに投稿した「阻止普京」(プーチンを止めろ)という動画に「いいね!」が集まっています。
動画内ではロシアのミサイル攻撃を受ける市街地や難民となった人々の様子が紹介されています。
コメント欄には「正义必胜,侵略者将死无葬身之地,乌克兰加油」(正義は必ず勝つ、侵略者は跡形もなく死ぬ、ウクライナ頑張れ)といった反ロシアのコメントが多くみられました。
「戦争反対」の声明、すぐに削除
ロシアが侵攻を開始した直後の26日、南京大学の教授らが「戦争反対」を訴える声明を発表しました。彼らはロシアによるウクライナ侵攻を批判し、平和的な交渉によって解決するよう求めました。
中国政府は平和的解決を促す一方で、ロシアの意向を尊重する立場を取っていたため、この声明はすぐに削除されました。
ロシア製品爆買い
中国の大手ECサイト「京東」では、ロシア製品が爆買いされています。
ロシア大使館公認のショップ「俄罗斯国家馆」(ロシア国家館)では、チョコレートやクッキーなどが販売されています。
日本やアメリカなどの制裁を受けて苦しむロシアを応援しようと、これらの商品を買う動きが広がっています。
中国人の高い関心とアメリカ批判
このように中国人のウクライナ情勢に対する反応はさまざまです。そして彼らは非常に高い関心を持っています。
それはロシアとは国境を接しておりロシアの動向が中国に大きな影響を与えることや、今回の侵攻が台湾への攻撃に通じるところがあるからだと考えられます。
ロシア支持者もいればウクライナ支持者もおり、世論は割れている状況です。これは情勢が詳細に多角的に報じられていることに加え、政府の立場がはっきりしないことも影響していると考えられます。
しかし日本と比べて特徴的なのは、アメリカが今回の紛争を助長したという見方が多いことでしょう。
この理由としては、潜在的な反アメリカの風潮があること、政府はロシア支持・ウクライナ支持を明確に打ち出しているわけではないもののアメリカ批判を展開していることが挙げられます。
中国のメディアの報じ方
ここでは中国の大手メディアがウクライナ情勢をどう報じているか解説します。
中国のメディアは中国政府のコントロール下にあるとされるため、政府の意向を反映した報道となっています。
人民日報
人民日報は、中国共産党の機関紙です。そのため党の広報機関としての色合いが濃いことで知られています。
人民日報では、ウクライナ情勢に関しての報道としてアメリカを批判するものが目立ちます。
例えば「米側は故意に緊張を高め、ユーラシア大陸の国家間の衝突と対立を誇張して、無責任で利己的な本性を露呈している。」としてアメリカを非難しています。
中国中央電視台(CCTV)
CCTVは、国営のテレビ局で、中国全土で放送されている中国最大級のテレビ局です。CCTVもその性質上、政府寄りの報道が多いとされています。
CCTVのウクライナ情勢に関する報道は、かなり詳細に行われています。軍事的な情勢や停戦交渉の様子、プーチン氏の発言などを非常に詳細に報じています。
報道内容としては、出来事を報じているのみで、意見を表明することはほとんどありません。そのため特にロシア寄りであったりウクライナ寄りであったりといったことは感じられません。
その一方で、「美国的表态及做法或将再次加剧乌克兰紧张局势」(アメリカの意思表明ややり方はウクライナ情勢を再び緊張させる)とアメリカへの批判は行っています。
報道内容まとめ
このように政府のコントロール下にある報道機関でも、ウクライナ情勢は事細かに報じられています。報道の仕方はロシア寄りやウクライナ寄りといったことは特に感じられません。
しかしアメリカが事態を悪化させていると報じている点は共通しています。今回の紛争を歓迎する声はあまりなく、紛争の泥沼の原因をアメリカに帰したい政府の本音が透けて見えます。
中国政府の動き
中国政府はロシアの侵攻に対して、あいまいな態度を取り続けています。
習主席とプーチン大統領は、侵攻開始の翌日(2/25)に電話会談を行いました。そこで習氏は外交交渉による終結を促しつつも、「関係国の合理的な懸念を尊重する」としてロシアに配慮する場面も見られました。
安保理や緊急の国連総会では、ロシアの即時撤退を求める決議案に対して棄権する一方で、8日に行われたフランス・ドイツとの首脳会談では国際社会と足並みをそろえる意向を示すなど、態度がはっきりしません。
19日に行われたバイデン大統領との首脳会談でも、アメリカが主導するロシアへの経済制裁や中国のロシアへの支援などをめぐって激しい応酬が行われました。議論は平行線のまま終了したとの見方が有力です。
習主席の本音は?
中国としてはアメリカとの対立を踏まえてロシアとの関係は維持したいものの、国際社会からの非難は避けたく、難しい状況におかれています。
今年の秋には中国共産党大会が開催されます。習主席は異例の3期目の首席就任を目指しており、彼の関心は、国外よりも国内にあると思われます。そのため国内基盤を揺るがしかねない今回の紛争への介入は、極力避けたいとの思惑があったと考えられます。
一方で事態が拡大し続ける中で、この紛争への対処が大きな政治イシューとなっています。もし対処に失敗すれば、自身の権力にも影響を与えかねません。
また習氏にとって悲願である台湾の取り込みにも暗雲が立ち込めています。
今回のようにすばやくアメリカ・EU・日本などが足並みをそろえて経済制裁を行えば、中国経済も厳しい状況におかれるのは間違いありません。加えて、頼みのロシアも今回の侵攻で影響力を失っています。
習主席としては、アメリカ批判をしつつこのままあいまいな態度を取り続けたい考えです。しかし国際社会のロシア批判が高まる中で、いつまでもあいまいな態度を取り続けることもリスクがあります。
習氏は念願の3期目へ向け、難しい決断を迫られています。
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