今週金曜日の11月4日から、台湾最大の旅行博「台北国際旅行博(ITF)」が開催されます。
過去2年は世界的なパンデミックの影響により、出展者・来場者ともに種々の制限が課された中での開催となっていました。
しかし今年は10月11日から日本の水際対策が大幅に緩和され、そして台湾政府もウィズコロナに舵を切り「国境再開」を果たしたことで、3年ぶりに制限のほとんどない中での開催となります。
そのため日本からの出展者および台湾の事業者はこれまで以上の熱量をもって今回のITFに臨んでいます。
開催直前となる今回、ITFの主催者である公益社団法人日本観光振興協会の大須賀様に話を聞きました。
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台湾最大の旅行博、ITFとは
台湾国際旅行博(ITF、Taipei International Travel Fair)は、1987年に始まり、今回で30回目を迎える台湾最大の旅行博です。
世界各国の観光関連の企業・団体が、それぞれの旅行商品や観光地の魅力をPRするために出展します。その中でも日本ゾーンは、近年では参加国中で最大規模の出展数を誇る、来場者から大変人気のエリアとなっています。
その日本ゾーンの取りまとめを行っているのが、公益財団法人日本観光振興協会です。今回は、日本観光振興協会の大須賀様にインタビューを行い、開幕直前の様子や、主催者としての想いについてお話をうかがいました。「国境再開後初」 今回のITFにかける出展者の熱量
_過去2年間はコロナ禍の真っただ中で、多くの制限がありながらの開催となりましたが、今年度はついに国際往来も回復し、ITFのさらなる盛り上がりに注目が集まります。出展者の申し込み状況、顔ぶれはいかがでしょうか。
台湾政府が入国制限の大幅緩和を発表する以前には、「隔離期間中に展示会に参加することは可能なのか?」といった、コロナ関連の規制についてのお問い合わせが非常に多くありました。
そんな中、9月末には事実上の国際往来の自由化が発表され、これが主催者としてはいい方向に転んだと感じています。
出展者の募集は、期間内に申込のあった49団体・73ブースで締めきっていました。しかしビザが自由化したことにより、最後までたくさんのお問合せをいただきました。
_出展者の顔ぶれが揃った中で、昨年までは見られなかった新しい動きはあるのでしょうか。
まず出展者の属性として、過去2年に比べると今回は民間企業の出展者の割合が回復しました。
過去2年間はパンデミックの影響があり、出展者のほとんどが自治体や観光協会であり、民間企業の出展はほとんどありませんでした。それが今年は出展する全55団体のうち、民間企業が20社以上に増加しています。水際対策の大幅緩和を受けた民間企業におけるインバウンド誘客意欲の高まりを感じさせます。
加えて今回は普段申し込みのなかった業界からの団体もいくつか出展されています。また都道府県だけでなく、市レベルでの出展者が増加したのも今回の特徴です。
そしてなにより今回のITFでは、台湾を最重要のマーケットとして捉えている団体の熱量の高さを感じます。
例えば九州地方や東海地方では域内の自治体がまとまりをもって今回のITFに臨んでいます。「台湾市場を絶対にとっていくぞ」という熱意を感じます。
コロナ禍でも開催し続けた意義
_昨年、一昨年とコロナ禍で厳しい制限がある中でもITF開催を実現されていました。これは台湾とのつながり、交流を断ちたくない、という想いからでしょうか。
日本と台湾は政治的な問題が少なく、両国民の価値観も似ているといえます。そして互いに、災害などの逆境に立たされた時には手を差し伸べ合う、「恩や義理」を理解する国だと思います。
そうした関係性から、互いに往来の需要が安定して見込める国であるため、毎年何らかの形で顔を見せておきたいという想いはありました。そのため、コロナ禍の中でも、例えばオンラインで商談会を行うなど、できる限りのことをしてきました。
それに加えて、開催を続けていかないと協会の中でも運営のノウハウが途切れてしまう、という懸念もありました。コロナ禍の中でも開催し続けたことで、今年のイレギュラーな防疫措置の変更などにも、「引き算」の対応で乗り切ることができました。
これは出展する観光事業者などにも共通していえることですが、コロナ禍の間でも観光回復を見越して布石を打っていた団体が、いざ往来が再開した時に先頭を走れるのだと思います。
コロナ禍が収束したとしても、今後世界で新たな感染症の流行が発生しないとも言い切れません。そうした長期的な視点においても、イレギュラーな中でもつながりを途絶えさせなかったこれまでの経験が活きると確信しています。
コロナ後、台湾人の旅の嗜好は
_両国の往来が再開してすぐの間は、航空便の高騰の影響もあり、富裕層から余裕層にあたる人々が、最初に日本のインバウンド市場に戻ってくると考えられます。そうした台湾人に向けて、日本はどういったコンテンツを用意すればよいでしょうか。
台湾はアジアの中でも、経済的にも文化的にも成熟した国です。そのため「アジア市場」と一括りにみなすのではなく、むしろ欧米圏と通ずる視点をもつ市場と認識すべきです。
例えば台湾や香港では、ベジタリアンの人々が近年特に増加しています。日本では「ベジタリアンといえば欧米」というような考え方がまだあるように思います。そうした観点においても、「アジア/欧米」という二元的なターゲットの枠組みは見直した方がよいでしょう。
加えて観光の面においては、SDGsやグリーンツーリズムといった取り組みが琴線に触れるような、環境保全意識が高い台湾人が増えています。つまり単純に「ショッピングや日本食に興味がある」という粒度で台湾市場を捉えることは、コロナ後の訪日台湾人のニーズを見誤るおそれがあります。
また日本好きの台湾人の間では、「のんびり東北に行きたい」といった声も聞こえており、今後は大都市圏だけではなく地方にも商機が訪れると考えて良いでしょう。
「今まで行ったことはないけど、よさそうだよね」と台湾人が感じているエリアに、長期で滞在して大きく消費をする人が今後増加していくと予想しています。
11月4日開幕迫る。多くの来場に期待
ITFの開催を直前に控え、現地・台湾でも熱気が高まっているといいます。
台湾の旅行会社も、かなりの出展ブース数を確保しています。また商談会に向けて、「早く日本の商品を知りたい」という声も聞かれるなど、日本人気の高さがうかがえます。
ITFは今週金曜日11月4日、台北で開幕します。世界各国からの多くの参加者で、大いに賑わうことが期待されます。
大須賀 信(日本観光振興協会)
公益社団法人 日本観光振興協会
観光地域づくり・人材育成部門観光地域マネジメント担当部長 兼 交流促進部門 交流促進担当部長
千葉県出身。東京大学部法学部卒業後、米国系航空会社、日系設備会社などをへて2018年2月より地域連携DMO一般社団法人秋田犬ツーリズム勤務。
同年4月より2022年3月まで事務局長として、急速に少子高齢化・人口減少が進む秋田県北部で、地域住民と一体となった「観光地域づくり」を進める。
データに基づく戦略策定・コロナ禍での観光地域づくりなど、課題解決を最優先に取り組む。2022年4月より公益社団法人日本観光振興協会にて企画政策部門、交流促進部門を担当。同年10月より観光地域づくり・人材育成部門観光地域マネジメント担当としてDMOのサポート、台湾との交流関連事業などを手がける。
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2022台北国際旅行博:公式サイト
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