アドベンチャーツーリズムとは?概要から成功事例まで徹底解説

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新型コロナウィルスの影響で、旅行者は団体行動や人の多い場所への移動を避けるようになり「少人数」「都市から離れた場所」「自然を楽しむ」旅行に注目が集まっています。そんな変化を受け、旅行者のニーズを満たす旅行として今注目を集めているのが「アドベンチャーツーリズム」です。
本記事では、アドベンチャーツーリズムの概要と成功事例、今後の展望をご紹介します。

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アドベンチャーツーリズムに含まれる3つの要素

アドベンチャーツーリズムとは非日常体験を取り入れた観光形態のことです。世界最大のアドベンチャーツーリズム関連機関「Adventure Travel Trade Association(ATTA)」によると、「自然」「アクティビティ」「文化体験」のうち2つ以上を取り入れる旅行コンテンツだと定義されています。

さらに、同団体は3つの要素に加えて、5つの体験価値を掲げています。

・The Novel and Unique

ほかでは味わえない、その場所ならではの体験であると感じることができるか

・Transformation

自己が成長・変化していくと感じることができるか

・Challenge

身体的・心理的にさまざまな意味合いでの挑戦ができるか

・Wellness

旅行前より心身ともに健康になったと感じられるか

・Impact

文化や自然に対する悪影響を最低限に抑えられていると感じられるか

よく似た旅行形態として「エコツーリズム」「グリーンツーリズム」がありますが、それぞれ微妙に異なります。

エコツーリズム

資源の保護、観光業の成立、地域復興の融合を目指す観光のあり方で、社会貢献性やサステナビリティの高さを重視しています。歴史、自然、文化といった要素が含まれます。

グリーンツーリズム

職業体験の目的が強く、それを通して自然や異文化にも触れ合うといった観光の側面も持った活動です。第一次産業、自然、文化といった要素が含まれます。

アドベンチャーツーリズムは、自然や文化といった軸ではエコツーリズムグリーンツーリズムと共通項を持ちますが

  • アクティビティを通じて地域の文化と自然を体験する
  • 目的が自身の成長・変革と地域経済への貢献を実現

という部分が違います。

アドベンチャーツーリズムを求める旅行者の特徴

一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会の発表によると、アドベンチャーツーリズム旅行者には以下のような特徴があります。


とくに、旅行者は以下のような点に魅力を感じているとのことです。

  • 単なるアウトドア体験にとどまらず、アクティビティを通じて地域の魅力を感じたい
  • 地域の自然・社会環境のサスティナビリティに貢献したい
  • 地域住民の雇用・所得向上に貢献したい
  • 内面からの変化、視野拡大を通して人間的な成長をしたい

アドベンチャーツーリズム市場はさらに拡大し、地域経済を支えてくれるかも!?

国土交通省観光庁観光資源課が発表した「地域の自然体験型観光コンテンツ充実に向けたナレッジ集(2018年3月)」の報告によると、アドベンチャーツーリズムの市場規模は2016年に約49兆円だったのが、2023年には約147兆円まで拡大すると予想されています。

さらにアドベンチャーツーリズムの旅行者は1回あたり平均約33万円を消費するものとしています。これは訪日外国人旅行者の平均消費額15万4千円の2倍以上です。

とくに日本には火山や川、海などの自然資源が多くあり、国立公園や自然保護区も豊富です。豊かな自然を抱える地方こそ、旅行者向けのコンテンツとして、アドベンチャーツーリズムを打ち出すことで多くのインバウンドに来てもらえる可能性があります。アドベンチャーツーリズムを通して生まれた消費のうち、65%が地域に還元される(https://atjapan.org/adventure-tourism)という調査結果も出ているため、人口流出に悩んでいる場所こそ検討してみると良いかもしれません。

アドベンチャーツーリズムを導入するメリット

ここでは、アドベンチャーツーリズムのメリットを3つご紹介します。

新しい旅行者層を獲得できる

アドベンチャーツーリズムを求める人は通常の旅行客よりも、自然や文化に触れながら新しい体験や感覚を得ることを期待しています。そんな期待に応えるツアーや体験をつくることで、これまで訪れてくれていたのとは違った旅行客層を獲得できます。

最初は限られた人数しか増えなくても、SNSによって旅行客の方から情報を発信してもらえれば、同じ層の旅行客を増やすことも可能です。

地域資源を経済資源に結びつけられる

これまで旅行客が少ない市町村でも、その地域にしかない自然や文化にフォーカスをしツアーパッケージ化することで、眠っていた魅力を経済的価値につなげられます。

アドベンチャーツーリズムを求める旅行客の関心は地域の特産品や造形物にとどまらず、そこに暮らす人々との交流や暮らしにまで広がっています。工夫次第で地域ならではのストーリーも観光資源として活かせるかもしれません。

資源活用と持続可能性を両立できる

アドベンチャーツーリズムでは、大規模な観光スポットなどを開発する必要はなく、見せ方や伝え方を工夫するだけで、外国人観光客を取り込むことが可能です。そのため、地域にもともと住んでいる人が開発騒音や景観の変化を懸念することもなく、持続可能な旅行客誘致が可能です。

また、アドベンチャーツーリズムでは、自然や文化そのものを大切にし、サステナブルに興味のある旅行者が多いので、一部の地域に外国人旅行者が集中し、自然や文化資源、地域の住民たちの生活へ影響を与えるオーバーツーリズムも起こりにくいとされています。

観光庁も推進するアドベンチャーツーリズム

すでに募集は終了しているものの、政府は「アドベンチャーツーリズム等の新たなインバウンド層の誘致のための地域の魅力再発見事業」を実施していました。地域の観光資源を発掘し観光コンテンツへと磨き上げるための取り組みです。取り組みの内容は下記のレポートにまとめられています。

他にも、アドベンチャーツーリズムの推進のために必要な建物の改修、設備の購入などに使える「新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化・地域資源磨き上げ事業に係る観光振興事業費補助金」制度も実施していました。(※こちらもすでに募集は終了しています)

アドベンチャーツーリズムの事例紹介

ここでは、実際に取り組まれたアドベンチャーツーリズムの事例をご紹介します。その効果は検証中のところが多いですが参考にしてもらえればと思います。

Ringo meets Arー弘前りんご農園アートトリップー

年間約450万人の観光客が訪れる弘前ですが、春の「さくらまつり」と夏の「ねぷたまつり」がそのうちの大半を占めている状況で、他の時期にも観光客を呼びたいという課題がありました。さらに日中に楽しむアクティビティが多く、夜の観光資源が乏しいという課題もありました。

そこで、弘前の有名な特産物「りんご」と「アート」を掛け合わせ、2020年にオープンしたばかりの「弘前れんが倉庫美術館」を拠点に、りんごの美術史・哲学、りんご園と共生する地域の人々の暮らし等に触れる1泊2日のプログラムをつくりました。

プログラム参加者は夕方に夜の美術館でシードル(りんごの醸造酒)を飲み、アート作品を鑑賞し、隣のカフェレストランで地域の野菜等を使った特別な料理を楽しめます。

千年続く草原文化を次世代に紡ぐ阿蘇ツーリズム

阿蘇市は、国立公園とユネスコ世界ジオパークに指定・認定され、噴煙を上げる活火山と世界最大級のカルデラや、千年以上前から受け継がれてきた草原文化と草原で育まれた阿蘇のあか牛など、地域ならではの自然・文化資源を保有しています。しかし千年以上の歴史文化、阿蘇固有の伝統があるものの、それを高付加価値のコンテンツとして販売・催行できていませんでした。

そこで、千年以上受け継がれてきた草原の暮らし、ユニークな農耕祭事、郷土料理、伝統の「草泊まり」等を体験する滞在型のパッケージツアーをつくり、持続可能な草原活用についてのガイドラインの策定も行いました。

ツアー参加者は、阿蘇グリーンバレーでの乗馬、草泊まり、E-MTB(電動アシストマウンテンバイク)と、阿蘇の魅力を感じながらさまざまなアクティビティを体験できます。

日本独自のハードアクティビティ『沢登り』

福井県若狭町は、日本独自のハードアクティビティ「沢登り」ができるフィールドとガイドを有していました。一方で、旅行者数が少なく「わざわざ訪れる価値のある魅力的な地域」になるための他地域との差別化やプロモーションが課題でした。そこで、若狭町のユニークなアクティビティである沢登りを「本格的なハードアクティビティ」としてブラッシュアップし、情報発信を行いました。

アクティビティ参加者は沢登りを体験しながら、古民家を改装した上質な宿泊施設「八百熊川」へ宿泊でき、若狭熊川宿を中心としたユニークなまちの風景を楽しめます。

2023年9月、北海道で「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)2023」開催

アドベンチャー・トラベル・ワールドサミットとは、Adventure Travel Trade Association(ATTA)が毎年主催している世界的な商談会・イベントです。2021年のオンライン開催を経て、初のアジア開催地となる北海道で2023年9月11日〜14日に開催される予定です。小旅行や遊覧、懇親会、商談会、セミナーなどが開催予定で、旅行会社、宿泊事業者、アウトドアメーカー、観光局・観光協会、メディア、ガイドなどの関係者が世界中から集まります。ワールドサミットは開催地の魅力を世界に発信する絶好の機会であるため、北海道や日本全国のアドベチャーツーリズムのさらなる発展につながることが期待されます。

アドベンチャーツーリズムをインバウンドに賢く取り入れよう

本記事では、アドベンチャーツーリズムの概要から市場の成長性、具体的な事例まで紹介しました。

日本へのインバウンドがコロナ前よりもさらに増えることが予想されるなか、アドベンチャーツーリズムは旅行市場のなかで大きなシェアを占める重要なコンテンツになりそうです。

日本政府としてもインバウンド獲得に向けて旅行事業者や自治体のサポートを手厚くしている今こそ、新たなアクティビティやパッケージツアーを生み出すチャンスです。記事を読んで興味を持った方はぜひ新しい旅行形態の創出に挑戦してみてください。


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<参考>

日本アドベンチャーツーリズム協議会

地域の自然体験型観光コンテンツ充実に向けたナレッジ集

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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