政府は2023年5月、インバウンド需要の拡大を目的とした「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定しました。本プランでは訪日旅行客を増やすのはもちろん、インバウンド需要を根づかせ、効果的に需要拡大を目指すための施策がまとめられています。その3本柱となるのが「ビジネス」「教育・研究」「文化芸術・スポーツ・自然」分野です。
本記事では、その中でも「ビジネス分野」をピックアップして、施策ごとの概要を紹介します。
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「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」とは
「観光立国推進閣僚会議」にて、政府はインバウンド需要拡大を目的とした「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を発表しました。
また2023年3月末には観光立国の実現に向けた「観光立国推進基本計画」を決定しており、以下のような目標が定められています。
- インバウンド旅行消費額「5兆円(年単位)」
- 訪日外国人旅行者数「3,188万人以上(コロナ前の水準越え)」
- 訪日旅行者一人当たりの地方部宿泊数「2泊(令和元年実績:1.4泊)」
今回発表された新時代のインバウンド拡大アクションプランは、「観光立国推進基本計画」を達成するため、そしてインバウンド需要を観光以外の方向性へ拡大していくための、具体的な施策が盛り込まれています。
インバウンドにおける「ビジネス分野」の目標
政府がビジネス分野において掲げている目標は、以下の3つです。
- ビジネス目的での訪日外国人旅行消費額を2割増加:7,200億円(2019年)→8,600億円(2025年)
- 国際会議の開催件数アジアで不動の1位、世界5位以内:2030年までの目標
- 展示会・見本市への外国人参加者数を2割増加:13万9,000人(2019年)→16万7,000人(2025年)
ここからは、これらビジネス分野の目標を達成するための40の施策を、7つにまとめて紹介します。
具体的な施策1「投資拡大の機会を捉えたビジネス交流の促進」
「投資拡大の機会をとらえたビジネス交流の促進」では、生産・研究拠点としてのアピールを行い、日本への投資・ビジネス拡大を目的とする海外企業の経営層や事業担当者、技術者、スタートアップなどの増加によるビジネス交流の拡大を図ります。
具体的な施策内容 | 概要 |
---|---|
国内開発拠点の拡大、スタートアップコミュニティの国際化 | 量子・AIなどの研究基盤、実装化に向けた開発拠点を整備し、海外への物資供給力を強化する。ピッチイベントや日本市場・国内プロジェクトなどの情報提供を行うことで、ビジネス交流の拡大につなげていく。 |
JETRO(日本貿易振興機構)を通した対日投資促進支援 | 外資企業などに対する日本国内での事業実行を支援し、海外企業の経営者層等の招へい、マッチングを規模拡大して実施する。 |
日本におけるビジネス機会の効果的なPR | 海外企業による日本進出および日本企業との協業を目的に、海外メディアやPR会社と提携して宣伝し、日本におけるビジネス機会を海外のビジネスパーソンに対して効果的にPRする。 |
対日直接投資推進のための各種施策の展開 | 半導体、DX、GX、バイオ・ヘルスケアなど戦略的に重要な分野への投資促進・グローバルサプライチェーンの再構築および、ビジネス・生活環境整備、オールジャパンでの誘致・フォローアップ体制の強化、世界への発信を強化することにより、さらなるビジネス交流の拡大につなげる。 |
具体的な施策2「国際金融センターの我が国における拠点化」
世界における国際金融センターとしての日本の地位向上を図ることとしています。そして海外関係者を積極的に日本に誘致することにより、 金融事業者や海外の市場関係者、日本の金融市場を活用しようとする企業などを日本に呼び込み、 ビジネス交流の拡大を図ります。
金融センターとは、金融に関する重要な役割を担う都市や市場のことで、特に活発に動いている場所は「国際金融センター」と呼ばれています。日本の場合、東京や大阪が対象となります。
具体的な施策3「外国人に対する粒子線治療等の医療の提供」
粒子線治療を必要とする外国人がん患者の受け入れを増やし、医療インバウンド拡大を狙います。
外国人患者の受け入れに対応するために、多言語対応の体制(カリキュラムやマニュアルの整備)の構築を進めていく方針です。
加えて、アジア諸国の医療渡航患者を対象にした情報発信を強化するとともに、国内外の保険会社や医療情報プラットフォームなどとの連携を含めた医療機関向けの支援を強化するとしています。
具体的な施策4「ビジネスマッチング等を通じた海外企業関係者等との交流拡大」
日本のスタートアップコミュニティやヘルスケア、デジタルなど、今後、成長が見込まれる分野の企業、意欲のある中小企業・地域とのマッチングなどを通じ、外国企業のスタートアップ、投資家、経営者などを呼び込み、ビジネス交流の拡大を図るとしています。
具体的な施策内容 | 概要 |
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スタートアップイベントの開催 | 世界をリードするベンチャーキャピタルや機関投資家、起業家を招待するイベントを開催し、ビジネスマッチングなどを通じて海外と日本のスタートアップ関係者のつながりを強化する。 |
海外のスタートアップコミュニティとのネットワーク強化 | スタートアップコミュニティとのネットワークを強化すべく、ピッチイベントや日本市場・国内プロジェクトなどの情報提供を行う。 |
中小企業と海外企業CEOのマッチング・商談 | 日本企業との合弁会社設立や共同開発などを狙う海外企業のCEOを日本に招待し、海外展開を目指す日本の中小企業とのマッチング、商談を実施する。 |
万博を契機とする地域企業と参加国とのビジネス交流 | 2025年に開催される大阪・関西万博をきっかけとして、日本の地域企業と参加国のビジネス交流などを促進する。 |
具体的な施策5「国際会議、国際見本市等の積極的な開催・誘致」
国際会議・国際見本市などの開催・誘致などに積極的に取り組むことにより、我が国の世界のビジネス拠点としての国際的な位置付けや世界への発信力、プレゼンスの向上につなげつつ、日本を舞台としたビジネス交流の拡大を図るとしています。
具体的な施策内容 | 概要 |
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日本に対する直接投資の促進 | さまざまな経済、外交上の会合の機会を捉え、対日直接投資促進のための会合の開催など、トップレベルでの我が国の魅力の発信やさまざまなプロモーションを実施する。 |
企業が行うグローバル会議の日本誘致 | グローバルに事業を展開している企業に対して日本開催を促すとともに、参加者が会議の開催地以外の地域にも訪れる機会を創出することで、ビジネス交流の拡大につなげる。 |
大阪・関西万博と連動した復興関連イベントの開催 | 被災地の復興に関する発信やイベントを大阪万博で行い、国内外からの誘客を狙う。 |
ほかにも、スポーツ施設や国立競技場を利用したMICE(集客が見込めるイベントの総称)への活用が検討されています。
具体的な施策6「産業資源の活用による新たなビジネス交流需要の獲得」
企業が有するデザインやアートといった産業資源を誘客に活用していくことで、 ビジネス交流需要の獲得を図るとしています。
具体的な施策内容 | 概要 |
全国各地のオープンファクトリー(ものづくりを体験、見学してもらう形態)を活用したビジネス交流促進 | 全国各地に広がる 「地域一体型オープンファクトリー」を活かし、 大阪・関西万博を契機とした、ビジネス交流にもつながる施策展開を検討・実施する。 |
企業が有するデザインやアート等の産業資源の可視化による観光資源化 | 全国に点在する企業のデザイン資産のネットワーク化、テキスタイルの産地と海外企業との協業促進、未公開の企業アートの可視化などを通して、企業が持つ魅力的な産業資源を観光資源化することで、ビジネス交流需要の獲得を図る。 |
具体的な施策7「人的交流の促進」
ビザの要件緩和や新規創設、在留資格の要件緩和など、国際的な人的交流を促進するための環境整備などを進めるとしています。
具体的な施策内容 | 概要 |
---|---|
スタートアップビザの要件緩和 | 外国人起業家の誘致加速化を目的とし、地方自治体だけでなく、国が認定した民間組織でも、スタートアップビザの確認手続きを行えるようにするとともに、最長在留期間の延長を図る。 |
MICE参加者などに対するビザ発給の円滑化 | 現在の商用・文化人・知識人に対する数次査証などについてMICE 参加者に対して一層の周知を行うとともに、今後のMICEの実需を踏まえつつ、査証発給要件の緩和などの具体的な施策を検討する。 |
MICE参加者や重要ビジネス旅客などの入国円滑化 | 空港業務の省力化・自動化を推進するとともに、空港業務に係る人材確保や業務効率化等に取り組む。また、ファーストレーン利用促進を図るため、成田・関西空港においては、空港の運用状況を踏まえ、利用促進のPRや利用時間の柔軟な運用を行うとともに、今後の需要に応じ、ファーストレーン対象者や対象空港の拡大に向けた検討を行う。 |
まとめ
新時代のインバウンド拡大アクションプランは、インバウンド需要拡大を目的とした施策。なかでもビジネス分野は、日本の技術力や特色を生かした「国内への誘致」「人的交流」に特化した施策となっています。インバウンド需要拡大へ向け、必要に応じて事業に落とし込んでいくとよいでしょう。
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