訪日外国人の増加に伴い、よく耳にするようになってきた「ヴィーガン(ビーガン)」。自身が実践したいと考えている人もいれば、インバウンド客向けにヴィーガン対応をしようと検討している飲食店の担当者もいるのではないでしょうか。
ヴィーガンについて「何となく知っているけれど、実はよく分かっていない」「ベジタリアンとどう違うの?」という人も多くいるはずです。
本記事ではヴィーガン(ビーガン)の種類やメリット、ベジタリアンなどを詳しく解説します。
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1. ヴィーガン(ビーガン)とは?
ヴィーガンとは動物性の食品を一切口にしない人たちのことを指し、日本語では「完全菜食主義者」ともいわれています。1900年代にイギリスで発祥して以降その数は増えていて、近年はアメリカやヨーロッパを中心に増加傾向にあります。
体質的に肉や魚が合わないという理由でヴィーガンを実践する人もいますが、多くは環境や動物を保護する目的、宗教上の理由により始めるのが一般的です。
日本では環境や動物への配慮のほか、美容やダイエットへの意識からヴィーガンを選択する人も少なくありません。
1-1. ベジタリアンとの違いは“動物保護”の観点
ヴィーガンと混同されやすい言葉として「ベジタリアン」が挙げられます。ベジタリアンは菜食主義者の総称といわれ、ヴィーガンはベジタリアンの一種といえます。
日本ベジタリアン協会によれば、ベジタリアンという言葉は、英国ベジタリアン協会が発足した1847年に初めて使われたとされており、ヴィーガンに先んじて広まったと考えられます。
ヴィーガンの場合、肉や魚はもちろん、卵や乳製品も含めて動物性の食品は一切口にしません。蜂から蜜を奪うことで得られる蜂蜜や、動物性成分が含まれるゼラチンなども摂取しないという人もいます。
1-2. ヴィーガンの種類
ヴィーガンがベジタリアンの一種であることは先述した通りですが、じつはそのほかにもベジタリアンにはさまざまな種類が存在します。
一般的に「ヴィーガン」「ラクト・ベジタリアン」「ラクト・オボ・ベジタリアン」「ペスコ・ベジタリアン」の4つに大別できます。
ヴィーガンは動物由来のものを徹底して避けるいっぽうで、ラクト・ベジタリアンは乳製品、ラクト・オボ・ベジタリアンは乳製品と卵、ペスコ・ベジタリアンは乳製品と卵に加えて魚介類も摂取します。
ヴィーガンの種類 | 植物性食品 | 乳製品 | 卵 | 魚 |
ヴィーガン | 〇 | × | × | × |
ラクト・ベジタリアン | 〇 | 〇 | × | × |
ラクト・オボ・ベジタリアン |
〇 | 〇 | 〇 | × |
ペスコ・ベジタリアン |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
このほかにも、食生活だけでなく衣食住全般において動物性の製品を避ける「エシカル・ヴィーガン」が存在します。動物の毛皮を使っている製品や、製造過程で動物実験を行っている化粧品を避けるなど、厳格なヴィーガニズムを持っているのが特徴です。
さらに、“できる時だけ菜食にする”など、ゆるやかに菜食へシフトする「フレキシタリアン」も挑戦しやすい選択肢として注目されています。
1-3. ヴィーガンが注目されるようになった背景
近年ヴィーガンが注目されるようになった背景として、環境への世界的な意識の高まりが挙げられます。ヴィーガンを実践することで自然破壊などを防ぐことから注目されているともいわれています。
放牧用の土地を確保するために森林が伐採されたり、牛のゲップが温室効果ガスの原因になっているというデータがあったり。動物性食品を製造することで地球へ大きなダメージを与えていることが指摘されています。
インターネットの普及に伴い、SNSなどで動物の殺処分を目の当たりにし、ヴィーガンになることを決意する人も増えているようです。
1-4. ヴィーガンのメリット
ヴィーガンを取り入れるメリットとして、消化負担の大きい動物性食材を避けることで健康面の効果を感じやすいといったことが挙げられます。
環境へのメリットも少なからずありますが、近年とりわけ注目が高まっているのが、社会貢献にもつながるかもしれないという点です。
ヴィーガンはSDGsの17項目のうち、「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「海の豊かさを守ろう」など9つの項目に該当していると言われています。
- 2:飢餓をゼロに
- 3:すべての人に健康と福祉を
- 6:安全な水とトイレを世界中に
- 10:人や国の不平等をなくそう
- 12:つくる責任 つかう責任
- 13:気候変動に具体的な対策を
- 14:海の豊かさを守ろう
- 15:陸の豊かさも守ろう
- 16:平和と公正をすべての人に
1-5. ヴィーガン人口
日本ではヴィーガンはあまりメジャーではありませんが、世界規模で考えれば多くのヴィーガンがいると考えられます。
観光庁のデータによれば、ヴィーガンを含むベジタリアンなどの人口比率は、インドが28%、台湾14%、ドイツ10%、カナダ9%、イタリア7%、英国5%、フランス4%、アメリカ3%。
インドは宗教上の理由で高いベジタリアン率を誇り、近年ではインド市場のインバウンド需要が伸びている状況です。台湾は中国と韓国に次いで訪日客数が多いので、インバウンド対策を実施したい事業者にとってヴィーガン対応はマストといえるでしょう。
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2. ヴィーガンが食べられる食材と栄養について
動物性食材を避けるヴィーガンは「どんな食材なら食べられるのか」「栄養は偏らないのか」といった疑問を持つかもしれません。
ここからはヴィーガンが食べられる食材と栄養面について解説します。
2-1. 食べられる食材
ヴィーガンは植物性の食品なら基本的に制約なく摂取できます。植物性の食品には野菜や果物に加え、穀物、海藻、キノコ、ナッツ類が含まれます。お酒も植物由来のものなら飲んでも問題ありません。
近年では大豆や野菜など植物由来の食材を用いた「代替肉(フェイクミート)」が注目されており、日本の飲食店でも代替肉を使ったメニューが徐々に登場してきています。
2-2. 栄養
動物性食材を避けるヴィーガンは、食材の選択肢が限られているため栄養面が不安視されがち。しかし工夫次第で必要な栄養を摂ることも可能です。
例えば大豆をはじめとした豆類や小麦などからタンパク質を、キノコ類からビタミンDを、葉野菜や海藻類から鉄分、カルシウムを摂取できます。栄養素は組み合わせによって吸収率を上げられるものがあり、例えばキノコ類に含まれるビタミンDはカルシウムの吸収量をアップさせられます。
具体的なヴィーガンメニューとして「キノコたっぷりの葉野菜パスタ」が挙げられます。ビタミンDが豊富なキノコと、カルシウムを含む葉野菜を組み合わせれば栄養を効果的に摂取できます。
メニュー表に「ビタミンDとカルシウムたっぷり」などと説明を添えれば、健康意識の高いヴィーガンにも訴求できそうです。
3. ヴィーガンメニューの事例
動物性食材も積極的に取り入れる日本人にとっては、食材が限られるヴィーガンメニューは難しく感じられるかもしれません。
しかしポイントをおさえれば、簡単にヴィーガンメニューに挑戦できます。ここからは、ヴィーガンメニューの事例を解説します。
3-1. 大久手山本屋(愛知県名古屋市)の事例
「大久手山本屋」は、愛知県名古屋市に店舗を構える味噌煮込みうどんのお店です。老舗でありながら食の多様性対応に注力しており、山本屋伝統の味噌煮込みうどんをキノコのお出汁で楽しめるメニューを用意。ヴィーガンやベジタリアンで行列ができることでも知られています。
注目すべきはメニュー表への表記方法。「ヴィーガン対応メニュー」などと表記するとヴィーガンへはポジティブな訴求になる一方、一般客からは敬遠されてしまうもの。
そこで「大久手山本屋」では、「動物性素材不使用」「旨味調味料不使用」と明記することで、ヴィーガンだけでなく一般客からも受け入れられています。
また「厨房はヴィーガン専用ではないこと」などを明記したヴィーガンフレンドリーポリシーを用意し、来店客が安心して食べられる工夫も行っています。
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3-2. 熊本県人吉球磨(ひとよしくま)地域の事例
熊本県の人吉球磨地域では、食の多様性対応を意識した観光商品の開発を地域規模で行っています。
関連事業者を対象とした食の多様性に関する知識向上セミナーのほか、地産地消をベースとしたヴィーガンメニューの開発や、事業者向け試食会などを実施しています。
その結果、ヴィーガンやベジタリアンの訪日外国人から予約が入り始めるなど、結果も出ています。
4. ヴィーガン対応で訪日外国人への訴求を
日本ではまだヴィーガンがそれほどメジャーとはいえないものの、世界的には一定規模を誇るヴィーガン人口は、さらに拡大し続けています。
ヴィーガンがまだ日本で一般的でないからこそ、ヴィーガン対応をしている事業者にヴィーガンの集客が集中してしる状況です。
コロナ後に回復している訪日需要を捉えるためには、ヴィーガン対応がマストといえます。「インバウンドの教科書」には現場で使えるインバウンドのノウハウがたくさん紹介されています。すべて無料で読めるのでぜひチェックしてみてください。
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