日本を代表する観光地のひとつとして、インバウンドにも人気の京都。そんな京都の観光政策の中核的な役割を担っているのが、公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)です。
日本に3法人しかない「先駆的DMO」の一つでもある京都市観光協会は、行政や関連団体と連携し、京都ならではの観光資源を活用した観光振興を積極的に推進しています。
そこでこの記事では、京都市観光協会による最新のインバウンド対策や、ゴールデンウィーク(GW)における観光対策の取り組みについてご紹介します。
関連記事:京都で外国人に人気の観光スポット!「伏見稲荷大社」は2位、1位は?
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
先駆的DMO・京都市観光協会とは
訪日ラボが調査した「インバウンド人気観光地ランキング」で、全国4,700箇所の中から2位となった清水寺や、3位の京都侍忍者ミュージアムなど、さまざまな観光資源を有する京都市。税収効果390億円(市税収入の12.8%)、雇用効果15万3,000人(全雇用者の5人に1人、京都の産業に占める割合12.4%)と、観光が基幹産業のひとつになっています。
そんな京都市の観光政策を担う京都市観光協会は、2017年より「日本版 DMO」に認定され、さらには2023年3月に観光庁より「先駆的DMO(※)」にも選定されました。日本全国のDMOや自治体においては、観光政策を考えるにあたり、その最先端を走る京都市観光協会がどういった施策を実施しているのかは押さえておくべきです。
※持続可能で国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりを行う「世界的なDMO」を目指す「観光地域づくり法人(DMO)」に対し、観光庁が戦略的に支援を実施するために募集・選定したDMOのこと
関連記事:外国人に人気の観光スポット!2位は「清水寺」、1位は?日本全国4,700箇所の観光地から選ばれたTOP30を発表
1. わかりやすさを追求した「ハンドブック」発行

2024年4月、京都市観光協会はインバウンド向けアクションプランに対する成果の一部として、事業者の共通課題をはじめ、京都で体験コンテンツの企画や販売、受け入れを行う上で知っておきたいポイントなどをまとめた「観光コンテンツ造成支援ハンドブック」を発行しました。
このハンドブックの大きな特徴は、文字ばかりのわかりにくい資料と一線を画す構成です。図や写真などを多用し、できるだけ長文にならないよう意識しながら、わかりやすく制作されています。
また、結論に至るまでの過程も詳細に紹介することで、応用しやすくなっています。もちろん複数の事例も参考になるでしょう。コンテンツづくりやマーケティングについても体系的に学べるため、教科書として常に手元に置いておきたくなるハンドブックです。
その他にも、観光庁が発行している「観光地域づくり法人(DMO) による観光地経営ガイドブック」も併せて確認すると、観光地経営の参考になります。
関連記事:【DMO向け】観光庁「観光地経営に役立つガイドブック」を解説
2. すぐに役立つ「外国語表記ガイドライン」

インバウンドフレンドリーでありたい事業者にとって、外国語表記は欠かせないものです。しかしいざとなると、「翻訳が正しいのか判断できない」「最適な掲示場所がわからない」「現場スタッフが何度も同じことを尋ねられる」など、さまざまな問題が起こりかねません。
そこで参考にしたいのが、京都市観光協会が作成した「外国語表記ガイドライン」です。京都市内の観光事業者を対象に外国語表記の実態調査を実施し、その結果をふまえて、間違いやすい表現や観光客にわかりやすい外国語表記を行うためのポイントをまとめています。
以下のような、気をつけるべきポイントについてビフォーアフターで具体的に図解されています。
- 翻訳ミス(Mistranslation)
- 表示サイズ(Text Size)
- 掲載場所(Placement)
- 英語がない、英語ではない(No English)
- 言葉遣い(Tone)
- 前提知識(Lack of Context)
- レイアウト(Layout Design)
参考になるテンプレート案も豊富なため、すぐに取り入れることが可能になっています。
関連記事:「残念な外国語」防ぐには?
3. 事業者だけでなく、市民も巻き込んだ観光地域づくり
京都市および京都市観光協会は、国内外の観光客を誘致してさらなる観光地域へと発展させるため、事業者だけではなく市民を巻き込んだ取り組みも開始しています。
地域の観光資源を活用した実証事業支援制度
京都市と京都市観光協会が、観光地の分散化による観光課題解決と地域活性化を目的として取り組んでいるのが、「とっておきの京都プロジェクト」です。
主体的に観光誘客に取り組む事業者による、地域ならではの観光資源を活用したツアーや体験、イベントなどの実証事業を募集。採択事業には50万円を上限に助成したり、事業計画や企画内容へのアドバイス、人材や企業の紹介をしたりするコンペを実施しています。
2022年度と2023年度は、6事業が採択されています。
募集期間は5月13日(月)17時までとなっており、5月中には採択事業が公表される予定です。
市民が思う観光課題を募集
京都市は、市民の暮らしの豊かさ向上と、京都観光に関わるすべての人の満足度向上につながる「持続可能な観光」を実現するため、観光課題や必要と考える対策を市民より広く集めるフォームを作成しました。
外国人観光客が多く訪れる環境はオーバーツーリズムと隣り合わせであり、そこで暮らす市民の日常を脅かしかねません。そこで具体的なエピソードを集めることにより、迅速に課題解決に向けて動き出せる体制づくりに取り組んでいることがうかがえます。
関連記事:改めて読みたい「オーバーツーリズム」特集
【GW中の対策は】京都市観光協会が観光課題への対策を実施
京都市観光協会は、ゴールデンウィークにおける観光課題について、下記のような対策を実施しています。
- デジタル広告を活用した啓発活動
- 京都駅における手ぶら観光の周知・啓発
- ライブカメラ映像へのテロップ表示機能
- ポータブルライブカメラの設置
昨年から実施している対策をリニューアルして強化したほか、新たに手荷物預かり窓口への誘導案内を設置するなど、京都の観光モラルおよび“手ぶら観光”の推進に向けた取り組みを行っています。
日本を代表する観光地・京都市に学ぼう
京都市は、国内外の観光客から人気を集める、日本を代表する観光地のひとつだと言えます。そんな京都市がインバウンド対策に取り組むことは必然であり、その試行錯誤は他の自治体やDMOでも参考になるものであるはずです。引き続き、これからの動向にも注目していくべきでしょう。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
京都市情報館:観光収入の分かりやすい還元について
京都市観光協会:京都市観光協会が「先駆的 DMO」に選定されました
京都市観光協会:「観光コンテンツ造成支援ハンドブック」の発行について
京都市観光協会:外国語表記ガイドライン
京都市観光協会:「とっておきの京都プロジェクト」 実証事業支援制度 事業募集
京都市観光協会:令和6年度ゴールデンウィークにおける観光課題対策
京都市情報館:皆さまが実際に経験した観光課題等に関するご意見をお聞かせください
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!