香港はいわゆる都市国家で、東京都の半分程度の面積に人口と経済が密集しています。中華圏に位置していますが、歴史的背景や文化の違いから中国本土とは異なる点が多くあります。
日本のポップカルチャーが広く浸透しており、親日傾向が強いことが特徴です。日本との距離の近さから訪日香港人のリピーターが多く、2023年の訪日香港人消費額は過去最高を記録しました。
本記事では、香港と日本の関係や香港人が抱く日本の印象について紹介します。
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1. 香港の基本情報
香港は中華人民共和国の南部にある特別行政区で、世界的な金融都市として知られています。150年以上にわたってイギリスの植民地支配を受け、途中日本の占領下におかれながら1997年に中国に返還されるなど、独自の歴史のなかで発展してきました。
1-1. 基本情報
面積 |
1,110平方キロメートル(東京都の約半分) |
人口 |
約740万人(2021年時点) |
公用語 |
広東語、英語、中国語(マンダリン)ほか |
宗教 |
仏教、道教、プロテスタント、カトリック、イスラム教、ヒンドゥー教、シーク教、ユダヤ教 |
一人あたりの名目GDP(US$) |
4万6,753ドル |
香港からの出国者数 |
約1,296万8,194人 |
香港への外国人訪問者数 |
約2,375万2,000人 |
訪日外客数(2023年) |
約211万4,400人 |
香港は東京都の約半分の面積の1,110平方キロメートルに約740万人が暮らす、世界でも人口密度が高い地域のひとつです。言語は中国語のひとつである広東語が広く話されています。イギリスの植民地だったことから、英語も公用語です。
香港の歴史について振り返ってみましょう。長らく中国の歴代王朝による支配が続きましたが、アヘン戦争後の1842年にイギリスの支配下に置かれます。その後、太平洋戦争時に日本の植民地となり、1945年に日本から返還されて以降、約半世紀にわたって再びイギリス領となりました。
1997年、中国への返還時に社会主義と資本主義が併存するなど、いわゆる「一国二制度」が適用されました。以降50年間は高度な自治が認められる条件のもと、経済成長を遂げてきました。しかし、2020年に中国によって「香港国家安全維持法」が制定されて国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託などが禁止されるなど、近年政治的圧力が強まっています。
香港と中国との関わりについては「中国と『香港』『台湾』何が違う?歴史や最近の情勢、観光名所まとめ」の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
1-2. 日本との距離
日本から香港へは羽田空港をはじめ全国各地の空港から直行便が運行しており、たとえば羽田空港から香港までの所要時間は約4時間40分で、香港から羽田空港までは約4時間15分です。
日本と香港は距離的に比較的近く、時差も1時間しかないため、香港からの外国旅行先として利用されるケースが多いと言えます。
1-3. 香港市場のインバウンドデータ
2023年の訪日香港人客数は約211万4,400人でした。2019年比92%で、ピークだった2017〜2019年の水準に向けて急速に回復しています。
年間消費額が大きく伸びており、2023年の訪日香港人の消費額は約4,795億円で2019年比136%でした。
訪日香港人はリピーターが多いことも特徴的です。2023年第3四半期には訪日香港人のリピーター率は87.8%と、調査対象の20か国のなかで最も高くなっています。
観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2019年には10回以上リピートしている香港人が約30%というデータもあり、日本が魅力的な旅行先として選ばれていることがわかります。
関連記事:2023年の訪日香港人は211万4,400人で、コロナ禍前の水準まで回復傾向。香港市場の最新インバウンドデータを徹底解説!
2. 香港と日本の関係をわかりやすく解説
戦後、香港と日本は経済や文化をはじめ、さまざまな面から交流し発展してきました。香港は親日度が高い傾向にあります。ここでは両国がどのように影響し合ってきたのか紹介します。
2-1. 【経済】農林水産物の輸出国第2位
香港は、日本にとって主要な農林水産物の輸出先です。農林水産省の発表したデータによると、2022年の農林水産物の輸出額は中国に次いで第2位となっています。
なかでも真珠の最大の輸出先で、輸出額全体の7割以上を占めています。香港では宝石や宝飾品を集めた大規模な国際見本市が開催されており、日本の宝飾関連企業も香港へ進出しています。
そのほか牛肉やりんごもそれぞれ第2位に位置するなど、日本の農林水産物の多くが香港に輸出されています。
2-2. 【文化】日本のさまざまな文化が浸透している親日国
香港は親日的な都市として知られ、生活のあらゆる面で日本文化が浸透しています。香港には日本のスーパーや百貨店、大手外食チェーンなどが進出しており、香港人にとって日本食や日本製品は馴染み深くなっています。
電通が実施した「ジャパンブランド調査」によると、香港は2019年時点で「親日度ランキング」全20か国・地域のうち6位となっており、親日度が高い傾向にあります。背景には、言論や表現の自由が制限されている中国への反中精神から、同じ資本主義社会である日本への友好感情が強まっていることがあるようです。
関連記事:訪日香港人観光客が抱く日本のイメージ:親日家が多く「日本ブランド」を信頼
3. 香港人が抱く日本の印象について
香港では日本の商品や日本語の広告などを多く見かけますが、日本製品を「日本ブランド」として憧れる人も少なくありません。香港人が日本にどんな印象を持っているのか、消費傾向や文化面から見ていきます。
3-1. 日本製品への揺るぎない信頼
日本からは電子部品や時計などが輸出されており、高品質で安全性の高い日本製品は香港で大きな信頼を得ています。中身だけではなく、外観やパッケージも清潔で洗練された印象を消費者に与えているようです。
ただし日本製品は比較的値段が高いため、日本製のように見せかけた中国製品が売られていることも少なくありません。「日本で直接購入したい」というニーズから、訪日香港人のリピーターが増えて消費額の伸びを後押ししているのかもしれません。
3-2. 香港でも日本のポップカルチャーが大人気
香港では日本の映画やアニメなどのポップカルチャーが人気を博しています。日本の国民的アニメやドラマをはじめ、数多くの作品が香港で放送されていて、香港人にとって身近な存在です。
日本文化への興味・関心の高さから、香港人は日本語を学ぶ人が多いことも特徴です。
3-3. 日本人は「ていねい」
訪日香港人観光客は、日本人にはていねいな人が多いと考える人が多い傾向にあります。日本独自の文化である「おもてなし」をはじめ、きめ細かなサービスやホスピタリティの高さが評価されています。
ホテル・旅館の口コミサイトなどでも、特にサービス面に感動したといった口コミを見かけることが多くあります。
3-4. 日本人は「おしゃれ」
日本の化粧品やスキンケアは香港で人気があり、日本人はおしゃれという印象を抱いているようです。日本の大手化粧品会社は香港でも店舗展開しているほか、コンビニでも日本の雑誌が手軽に買えるなど、日本のファッションを参考にしている人も多いようです。
4. 日本ブランドへの信頼度の高さから経済活性化に期待
香港と日本は経済や文化などさまざまな面から互いに影響を受け、友好関係を築いてきました。香港では、日本製品や日本独自の文化はとくに評価されており、「日本ブランド」へ高い信頼を寄せています。今後、訪日香港人客数や消費がさらに伸びることで、日本経済の活性化が期待できそうです。
昨今香港を取り巻く環境は変化しつつありますが、これからの香港と日本の関係にどのような影響を与えるのか、今後の香港情勢を注視していく必要がありそうです。
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<参照>
外務省:香港基礎データ
JNTO:香港の基礎データ、訪日外客数(2023 年 12 月および年間推計値)
農林水産省:農林水産物輸出入概況2022年(令和4年)、輸出入の動向
内閣府:クールジャパン戦略の推進に資する成功事例等に関する分析・調査