データで見る、日本の観光コンテンツの現状【世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業 調査報告書 解説(2)】

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訪日ラボでは、観光庁が2024年3月に発表した「世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業 調査報告書」に基づき、日本の観光トレンドを紹介してきました。

今回は同報告書をもとに、日本の観光コンテンツの現状と課題の分析を紹介します。

前回の記事:世界の観光5大トレンドと「イマーシブ体験」の重要性【世界的潮流を踏まえた魅力的な観光コンテンツ造成のための基礎調査事業 調査報告書 解説(1)】

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日本の観光コンテンツの現状と課題

今回の調査では、訪日外国人消費動向調査の2018〜19年・2023年の調査から、アクティビティ別の訪日者の行動や満足度・期待度の分析が、以下の5つの指標によって行われました。

  • 全世界・全地域の実施率
  • 全世界・全地域の満足度
  • 全世界・全地域の期待度
  • 全世界・全地域の最期待度
  • 全世界・全地域の再訪時希望率

この調査によって、日本の観光コンテンツの現状が見えてきました。

日本食

日本食は観光客に非常に人気があり、どの指標でも高位安定を示しています。さらに、5つすべての指標において、2023年が最も高い数値をマークしています。日本の豊かな食文化の評価が国内外で年々上がっており、多くの観光客が食事を楽しむために訪れていることがうかがえます。

関連記事:訪日外国人観光客に人気の「日本食」は「ラーメン」「肉料理」、なぜ満足度が高いのか?

温泉入浴

温泉入浴については、あまり好調とはいえない状況にあります。実施率や期待度を見ると、右肩下がりの傾向が続いています。

■実施率

  • 2018年:37.6%
  • 2019年:36.2%
  • 2023年:27.5%

■期待度

  • 2018年:30.8%
  • 2019年:29.6%
  • 2023年:29.3%

一方で満足度は高く、すべての年で90%以上を維持。2018年から2023年までの推移では、91.6%・94.3%・94.4%と上昇傾向にあります。

自然体験・農漁村体験

自然体験や農漁村体験は実施率や期待度が低く、いずれの数値も10%未満にとどまっている状況です。一方で再訪希望率は以下のように右肩上がりとなっており、リピーターへの誘客促進が重要だと示されています。

  • 2018年:14.5%
  • 2019年:15.9%
  • 2023年:17.7%

ポップカルチャー

ポップカルチャーの実施率や期待度は年々上昇傾向にあります。実施率は2019年の14.1%から2023年には20.8%と、6.7ポイント増加しました。

期待度も2019年の10.8%から2023年には18.0%と、7.2ポイント増加。いずれの指標も約20%にまで達し、着実に人気を高めていることがうかがえます。

満足度も非常に高く、2023年には95.7%の観光客が「満足した」と答えています。

関連記事:大阪・日本橋にみる外国人観光客に愛される街づくりとは?ポップカルチャーの発信と受け入れ環境の整備、両面の取り組みの成功事例

映画・アニメの聖地巡礼

映画やアニメの聖地巡礼も人気を高めつつあります。実施率は2019年の4.7%から2023年には9.2%、期待度は5.0%から8.6%、再訪時希望率は11.1%から13.7%に増加しています。満足度も高く、2023年は95.6%です。

一方で、全体から見た数値はまだそこまで高いとは言えず、比較的マイナーなアクティビティとしての位置づけです。

舞台・音楽鑑賞

舞台や音楽鑑賞は、実施率・期待度・最期待度・再訪時希望率のいずれも10%未満であり、まだマイナーなアクティビティといえます。

ただし満足度は総じて高く、2023年には95.2%となっています。

日常生活体験

日常生活体験は、2019年の20.5%から2023年の27.5%にかけて実施率が7ポイント増加し、期待度は2018年の16.0%から2023年の22.4%にかけて6.4ポイント増加しています。

データが示す通り、日常生活体験の分野が徐々にメインストリームのアクティビティとして普及しつつあることがわかります。

Klookの予約データによるコロナ前後の比較

今回の調査では、Klook(海外・国内の旅行に関する大手レジャー予約サイト)と連携し、カテゴリ別の予約成長率(2019年から2023年)などの分析が行われました。

特に日本を含むアジア主要6か国*では、サブカテゴリ別の予約成長率・商品点数・価格について詳しく調査されています。また米国を含む主要10か国*では、出発地ごとのサブカテゴリ別予約成長率を分析し、コロナ前後での変化を明らかにしました。

*日本・香港シンガポール韓国台湾タイ・豪州・中国マレーシアフィリピン・米国

アクティビティやアトラクションのチケット、イベントが成長を牽引

コロナ前後を比較すると、アクティビティやアトラクションのチケット、イベントが成長を牽引していることが明らかになりました。

予約成長率の伸びを見ると、「チケット」が341%で伸び率トップ。これは入場券や利用券などを指し、商品点数は1,182と少なくなっていますが、売上ランキングでは4位です。次が「エンタメ・イベント」で187%と高く、特に香港シンガポールで展示会・ショーが急成長しています。

一方で、「動物観察」や「ガストロノミー」系カテゴリの成長率は低く、動物観察の予約成長率は-15%、ガストロノミーの成長率は-49%と低迷しています。動物観察においては水族館や庭園の減少、ガストロノミーにおいてはホテルダイニング・カフェ・デザートなどが減少したことが要因とされています。

(世界全体)「一般観光」やアクション・アドベンチャー」の商品価格が高い

世界全体の商品価格傾向としては、日帰りツアーを含む「一般観光」やネイチャーアクティビティを含む「アクション・アドベンチャー」が高くなっています。

商品価格における全体の平均は78ドルで、最も高い「一般観光」は133ドル、次いで「アクション・アドベンチャー」と「エンタメ・イベント」が132ドルです。

逆に最も商品価格が低いカテゴリは「ショッピング」で4ドルとなっています。

(サブカテゴリ)「キャンプ&グランピング」「農場のネイチャーアクティビティ系商品」が高成長

サブカテゴリ別の予約成長率によると、「野生動物・自然」の中では「キャンプ&グランピング」が44700%とダントツの成長を見せています。「農場」は2386%で、サブカテゴリの中で5番目の伸び率を示しています。

「ウェルネス」カテゴリ内の「ウェルネス&ヘルス」も3244%と、大きく伸びています。

日本の商品特性:風景やショッピングが強み

日本は、「風景」や「ショッピング」カテゴリで他国と比べて高い予約成長率を示しています。具体的には、「風景」が585%、「ショッピング」が4529%、「子ども・家族向け」が2965%です。

一方で、「ウェルネス」や「野生動物・自然」カテゴリでは成長率が低くなっています。「ウェルネス」は-52%、「野生動物・自然」は-38%、「エンタメ・イベント」は-63%で、特に香港台湾と比較すると大きな開きがあります。

海外動向から見る、日本の強みと成長余地

ここでは特に、台湾・香港・中国・米国の嗜好を分析し、日本の強みや今後の成長余地について解説します。

台湾市場では「子供・家族向け」「風景」「ショッピング」の予約増

台湾を分析すると、全目的地において「ショッピング」カテゴリが171%と大きく成長しています。

また、目的地を日本に絞ると、次のカテゴリがいずれも大きく成長しています。

  • 子供・家族向け(4780%)
  • 風景(184%)
  • ショッピング(2628%)

一方で「ウェルネス」と「野生動物・自然」カテゴリはいずれもマイナス成長となっており、訴求の余地があります。また「アクション・アドベンチャー」カテゴリについて、日本はまだ19%のプラス成長のため、まだまだ伸びしろがあるといえそうです。

関連記事:台湾と日本の関係をわかりやすく解説!親日家が多く、友好関係にある歴史的背景とは

香港の旅行者も日本の「風景」を求めている

香港旅行者は「風景」「エンタメ・イベント」への関心が高く、目的地を日本に限定しない場合の予約成長率は風景が172%、エンタメ・イベントが192%です。

対して目的地を日本に限定した場合、風景が690%とさらに大きく伸びます。これは同カテゴリにおいて、日本が国別の首位にあたり、次点の台湾は194%の成長です。また「ショッピング」カテゴリは日本のみが突出して高く、3130%の成長となっています。

一方で「ウェルネス」と「野生動物・自然」カテゴリは、他の国では高い成長率となっているのに対して、日本の成長率がそれぞれ-55%と36%と低いことから、成長余地があるといえるでしょう。

関連記事:香港と日本の関係をわかりやすく解説!経済・文化的なつながりや香港人が抱く日本の印象とは?

中国の旅行者は「芸術・文化・歴史」「風景」カテゴリのアクティビティが高成長

中国の旅行者の傾向として、以下のカテゴリが大きく成長しています。

  • 芸術・文化・歴史(506%)
  • エンタメ・イベント(932%)
  • ショッピング(401%)

それぞれのカテゴリ内において、他のすべての国の旅行者と比較して中国旅行者の成長率が最も高い数値を示しています。

目的地を日本に限定すると、「子ども・家族向け」が9600%成長と高く、同カテゴリでは日本が国別で首位です。「風景」も1171%成長し、日本が国別で首位となっています。

また「ショッピング」は日本の成長率が突出して高く、19352%の成長です。

一方で、「ウェルネス」「野生動物・自然」カテゴリは、他の国では高い成長率となっているのに対し、日本の成長率はそれぞれ44%と-90%と低くなっています。

関連記事:中国の富裕層・ミドルクラス旅行者の最新旅行トレンド【訪日ラボ中国人スタッフが解説】

米国の旅行者の間では「アクション・アドベンチャー」「芸術・文化・歴史」「風景」「ショッピング」が高成長

カテゴリ別の成長率を見ると、次のカテゴリがそれぞれ大きく成長しています。

  • アクション・アドベンチャー(143%)
  • 子ども・家族向け(775%)
  • 風景(316%)
  • ウェルネス(162%)

上記それぞれのカテゴリ内にて、他のすべての国の旅行者と比較して米国旅行者の成長率が最も高い結果となりました。

目的地を日本に限定すると、次のカテゴリがいずれも大きく成長しています。

  • アクション・アドベンチャー(704%)
  • 芸術・文化・歴史(723%)
  • 風景(2339%)
  • ショッピング(10095%)

これらのカテゴリでは、日本の成長率が他の国と比べて最も高く、強みといえます。一方で、上記4か国同様に「ウェルネス」と「野生動物・自然」カテゴリは成長率が低く、今後に期待がかかる結果となりました。

関連記事:アメリカと日本の関係は?2024年は「日米観光交流年」、改めて経済や政治、文化面のつながりをわかりやすく解説!

海外からの期待が高まる今、日本が取るべき対策は

日本の観光コンテンツには多くの強みがあり、海外からの期待も年々高まっている状況にあります。一方で、特定の分野では改善の余地が残されています。

特に「ウェルネス」や「野生動物・自然」カテゴリにおいては成長の余地が大きく、今後の戦略が重要といえるでしょう。

次回の記事ではさらにコンテンツごとに深堀りし、今後さらにインバウンド需要の拡大が見込まれる日本がどのような戦略を取っていくべきか、分析内容をご紹介します。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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